巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

サニーピース番外編 Rei's Memoriesを斯く語る。

 今更な話ではあるが…アプリゲーム『IDOLY PRIDE』には、様々なモードが実装されている。
あまりに種類が多いのでここでの詳しい言及は避けさせてもらうが…まあ、本当に多種多様だと思う。

 その中の一つになるストーリーモードには、本編になるメインストーリーだけでなく、アイドル個別にフォーカスしたストーリー(ガチャで☆5を当ててレベルを上げていくと見られる)や、期間限定で開催されるイベントストーリーのヤツとか、グループやアイドルの過去の物語を描いた番外編があったりする。

で、今回これから書き殴っていくのは…番外編になる、サニーピース編一ノ瀬怜のストーリーの所感と独自考察についてのモノになる。彼女の過去編というかバックボーンは、割と本編内だったりイベントストーリー『夢踊るステージに架け橋を』や、サニピ楽曲『EVERYDAY ! SUNNYDAY !』MVの描写で触れているので、大まかな展開はある程度想像の範囲だったというのが全体的な総評。

ただ、わざわざこうして筆を執って書き殴ろうとしているのは、その中でもある程度を超えたインプレッションを受けて感銘を受けたからに他ならない。それをどこまで言語化出来るかは未知数ですが…これから書き殴ってみようと思います。

 

 

 始まりの切っ掛けと大切な存在


 物語は、怜が実家に帰省した場面から始まった。どういうワケか怜にくっついて早坂芽衣と成宮すずもいたりする。芽衣の言によると、怜の母親がLIVEに来た時に連絡先を教えてもらったとの事。時間軸的には『夢踊るステージに架け橋を』の後の事で、ゲームリリース一周年記念の時のスペシャルムービーでの怜の写真はおそらくこの時のモノだと勝手に思っている。
 
で、三人は(なかば強引に)怜の部屋に行きいろいろと語り合う。ここで、芽衣とすずが話題にした怜の部屋にある二つのアイテムこそが、一ノ瀬怜のアイデンティティを確立させる重要なモノであると自分は解釈させてもらった。

 一つ目のアイテムは、芽衣が言及したダンス大会で優勝した時のトロフィー。怜がダンスに並ならない想いを抱いて、その熱量が彼女の魂を滾らせ、全身全霊を懸けて動かす燃料になっている。

そしてもう一つは、すずが言及したコルクボードに貼り付けた数多の写真。家族写真や、テーマパークでキャストと一緒に撮った写真、怜がダンスしている写真、そして、兄との写真。

 怜がダンスを始めた切っ掛けは、テーマパークのパレードを観て、ダンスで多くの人達を魅了させる事に感動して、彼女が抱いた様にダンスで多くの人を感動させられる様になりたいという憧れからだった。この頃の怜は本当に純粋無垢な想いだったというのが窺える。
 
 で、ダンスと同等に大切に想っているのが兄の存在。IDOLY PRIDEの“一問一答”での怜の回でも触れられているが、怜は兄から色々な影響を受けていたのだろう。おそらく両親は忙しく(あの親父さんは典型的な仕事人間だろうし……)幼い頃から怜を彼はいろいろ面倒を見てくれていた事が怜の口から明かされる。

その兄は、既に実家を出ていて東京でバンド活動しているという。(怜曰く、ギターを弾いているお兄ちゃんは格好良いとの事)そんな仲睦まじい兄妹に試練の刻は容赦無くやって来た……更にこの試練が後に怜の人生を大きく左右する。もうここまでの描写で、ガッツリと怜の過去の物語に入り込まれたのは言うまでも無かった。

 ストーリー内では触れられていなかったが、一応親父さんとの関係は完全ではないにしろ良い方には向かっただろうから、この親子がどういう会話をしたのかは非常に気になる所だったりする。まあ、この親子は頑固者だから素っ気ない会話になりそう。怪我してないか?だったり、ちゃんと食べているのか?とかwww

 

 

 失敗しない『いい子』という偽りの魂。そして…取り戻せた原初の魂。


 怜と兄に降りかかって来た試練とは、兄が夢見ていた音楽(バンド)での成功を父親に一切認めてもらえなかった事。この親父さん、本編やイベントストーリーでも言及されているが非常に厳格でなおかつ頭も固く所謂『頑固親父』という人。

自分の稼業(家業)である医者を息子に継がせたい。これが親父さんが考え得る失敗しない率の高い生き方だと信じている。その想いは子を想う親の愛情に溢れたモノだろうが……この人も朝倉社長と同様に不器用な人なのだろう。とにかく言葉が足りない上に歪んでいる。

もう一つ考えられるのは、親父さんもかつては医者以外の夢を若かりし頃に抱いていたのかもしれない。でも、才能のある人間にしか夢は掴めない事を徹底的に痛感させられて諦めざるを得なかった側の人間だったのかもしれない。

 医者になる為に意味を持たない音楽を取り上げる親父さんと、どうしても音楽の道を往きたい息子。そんな二人の主義主張は真っ向からぶつかり合い火花を散らす。古来からこの手の頑固親父が持つ二大奥義『親の言う事は聞け』『コレはお前の為だで済ませてしまうのだから息子にとっては戦いにすらならない……

そんな彼(怜の兄)は、勿論、音楽を諦めるのでなくバンドで成功して実力で認めさせてやると誓う。そこに決定打になったのが、医大への受験失敗や内緒でバンド活動を続けていた事がバレて大喧嘩に発展。この親父の言いなりの人生を歩むのでなく、抱いた夢を掴む為に兄は実家を出て行った。

 この進路に関した親子喧嘩の顛末だが、おそらく世代によって感じるインプレッションは違ってくるのだろう。怜の兄と同世代(10代後半~20代前半)や抱いた夢でメシを食っていこうと思っていた人は兄の心情にウエイトが寄せられるだろうし、親父さんと同世代や子を持つ人、夢を諦めざるを得なかった人はこの親父さんの言う事も一理あると感じられる。(まあ、医師になるのも簡単ぢゃないが…)

 まあ、息子と娘が夢破れて路頭に迷う姿は想像したくないだろう。子供の将来を案じて幸せを願うのは親だったら当然な心情。『好き』と吠えて突き進むだけでは食えていけないのも世の理。親父さんが言ってた様に、エンターテインメントの世界は本当に一握りの限られた勝者より敗れた者の方が多い冷酷で無慈悲な世界。それだけの覚悟があるのか?という問いでもあったのだろう。

でも、熱い想いに駆られている子供達を止める事はきっと出来ないとも感じていたのかもしれない。故に、愛想を尽かして徹底的に突き放す態度になっていったのかなと。 

 そんなこんなで話を戻して……完全に失望した息子の替わりに生贄になってしまったのが娘の怜。
この親父さんは、怜からダンスを取り上げて医者になる生き方を(勝手に)託した。怜も、そんな親の期待に応える為に『いい子』を演じていく。ただ、彼女が『いい子』を演じるに至ったまでの深掘りがあまり上手く描き切れていなかったのはちょっと物足りない印象ではある。

まあ、親父さんの言いつけ通り、医者になる為に日々勉強に明け暮れる怜だったが、そんな生き方に疑問を抱く。そうなったのはまあ当然の流れだっただろう。怜がその『いい子』の生き方を心底から納得していないから。そう、彼女は親父さんの夢を叶える為だけの操り人形じゃない。一ノ瀬怜という確固たる自我を持つ一人の少女…人間なのだ。



 私の進路も将来も全部お父さんが決めて、私の意志はお構いなし……

 
 私って何のために勉強しているんだろう。親に言われてやるんじゃない。

 
 お兄ちゃんみたいに 私も自分の意志で、やりたい事に挑戦出来たら……



 

 でも、何に挑むのか?何が出来るのか分からない怜は考えながらある公園に辿り着く。
そこは、かつて彼女がダンスの練習場としてよく利用した公園だった。怜にとっては魂の還れる場所だったのだろう。おそらく意識して向かったワケじゃなかった。自然と怜の魂がその公園に引き寄せられたのだ。ただ、踊る事が楽しくて無我夢中だったあの頃を懐かしむ様に怜は踊って、原初の魂…即ち、置き去りにしてしまったダンスが大好きという気持ちを取り戻せた。

 



 通りすがりの親子が……小さな女の子が私の踊りを見て感動してくれている……

 どうしてだろう、そんな些細なことが震えるくらい嬉しくて、胸が高鳴って……

 ああ、そうか……私はダンスが好きなんだ

 私はこんなにもダンスを好きになっていたんだ

 

 

 

 その公園は、怜がダンスを始める切っ掛けになった華やかなテマパークのステージではなかった。でも、当時の怜がダンスに魅了されて夢を抱いた様に、通りすがりの少女を魅了して喝采を受けている。怜が人生懸けて挑むべき夢とこれから往くべき軌跡が拓けた刻。それと同時に…怜にとって最大最強の『敵』である親父さんとの戦いの幕が上がった刻でもあった……




 激闘の末に掴んだ答え


 親父さんに内緒でダンスレッスンに励む怜。しかし、高校受験に失敗して親父さんと揉める。
医者の仕事に誇りを持ち、自分と同じくそこに喜びを感じて充実した人生を送って欲しいと願うが…言い過ぎかもしれないが、そいつは怜にとって親父さんのエゴの押し付けでしかなかった。怜の見出している幸せはそこには無いのだから。我慢の限界を超えた怜は感情を爆発させた。ここは絶対に退けない戦いだと怜は感じていたのだろう。

 そんなこんなで、怜はこれまで以上にダンスに打ち込んだ。勿論、親の(金銭的)支援は無い。
全ては、父親に本気を認めてもらう事の一心だ。こういう場合、そういう想いが空回りして上手い事いかない場合になりがちだが、ここでは反骨心が上手く作用して怜の頑張れる燃料へと変換されていった。そして、導いてくれたコーチや切磋琢磨出来るライバル(平島エリカ)との巡り逢いの縁にも恵まれて、全国大会優勝という栄冠を勝ち取った。

 親父さんとの第一次激闘とダンスの全国大会という二つの戦いを乗り越えた怜は、再び親父さんとの対話に臨んだ。今度は全国大会優勝という確固たる成果を引っ提げて。

(まあ、この対話の結果は知っておるのだが……)


 しかし、そんな怜の本気は一切この親父さんには響かなかった。自分の思い描いて敷いたレールから外れた娘には全く興味は無いという事なのだろう。そこで怜も悟ったのでしょう。兄が説得をしないで隠れる様にバンドを続けていた理由を。

自分の思い通りにならない者の話は最初から一切聞く耳は無い。兄がそうだった様に彼女の話も……そういう相手に説得は刻と労力の無駄だと。そこで怜も肚を括れたのだろう。兄と同じく、好きな事を職業にして食っていける事を証明する事が認めてもらえる最良の手段だと信じて。そこから本編(アニメ版&星見編)に繋がって新たな縁の巡り逢いがあった。

 アニメでは、バイト先であるスーパータケミヤの駐車場で、ゲーム版では怜の自室でダンスの自主練をしている所を芽衣と牧野に覗き見される。この出逢いの縁は最悪だったかもしれない……でも、コレが怜にとって最良の出逢いになっていくのはまた別の話。

 

 

 真の夜明けと、新たな夢の目醒め

 

 実家から東京に戻って来た怜の元に一通の封筒が届いた。差出人は怜の兄からで手紙と彼が所属しているバンドのLIVEチケットだった。

受け取った際の怜の反応や台詞から察すると、現在でも兄との関係は昔と変わらず良好そのものだというのが窺える。彼が実家を飛び出してもおそらく連絡は取り合っていたのだろう。厳格な親父さんの期待に添えなかった事で、その期待が全部怜に向かってしまった事への負い目もあったのかもしれない。

怜は、いろいろな困難に遭っても負けず、直向きに夢を追い続ける兄に尊敬の念を抱いていたと同時に、彼女自身に負い目を感じていた。怜が吐露している様に、デビュー当時彼女がアイドルになったのは親父さんにダンスで糧を得る者としての本気を認めて欲しい為の手段でしかなかった。ここは他の星見のアイドル達とは一線を画す要素でもある。怜の目には他の子達が眩しく見えたのだろう。

 過去に書いた怜の独自考察の記事でも触れたが、良くも悪くも、彼女はクソ真面目で不器用なんだなと感じさせる。なおかつ頭の固さも親父さんや兄と似ている。挙句の果てには不純な動機でアイドルになった自分がサニピにいていいのかと本気で思っている……

 サニピの初めてになる握手会で、怜は一人の少女に再び出逢う。
その少女は、公園で怜が踊っていた場面に偶然居合わせて怜のダンスに見惚れて喝采を送った少女だった。サニピのデビューLIVEも観ていて、あの刻のお姉さんだと確信を抱いてこの握手会に馳せ参じたと言う。そこまでのインパクトを怜のダンスは少女に与えていた。

怜にとって、この少女の偽り無い想いは何よりの言葉だっただろう。また仮の話になるが…怜の様に踊ってみたいという台詞から勝手に察すると、これからダンスを始めようとしているのか、既にダンスを初めていつかは怜の様になりたいと夢を抱いているのかもしれない。この第一号のファンとなった少女の言葉で希望を抱き、怜の魂は救われたと言っても過言ではないのだろう。

 

 

 

 きっかけはなりゆきかもしれないけれど

 私を見て喜んでくれる人がいるのなら……

    私は本気でアイドルを頑張ってみたい 

    みんなと一緒に、アイドルとして輝きたい!

 

 

 アイドルへの憧れや好きという純然なモノではなく、見返したい、認めさせてやるといった志望動機を『不純』だと怜は思い込み、皆と彼女自身との許容し難い『ズレ』に思い悩み迷っていた。でも、怜はそこから目を背けないで心の蓋を解放して動く事…戦う事を諦めなかった。

 『だって私、アイドルが好きだから』。そう語る彼女には負い目や迷いは一切無かった。そこには一人の少女の『救いと成長』という物語の帰結が描かれていて、感動し揺さぶられたのだ。