巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #30 クロッカスの扉

 

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 クロッカスの扉/兵藤雫×天動瑠依


 サニーピースの兵藤雫(CV:首藤志奈)とTRINITYAiLEの天動瑠依(CV:雨宮天)によるグループの枠を超えたデュエット楽曲。音源は、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』に収録されており、ゲーム内の3DLIVEに実装されている。

 この組み合わせが、2022年2月27日に配信された『IDOLY PRIDE生放送』で発表された時、正直驚きを隠せなかった。最も多く予想されていたのは、この回の出演者である首藤さん(雫)と夏目さん(渚)の組み合わせか、雫もしくは渚と他の星見プロのアイドルとの組み合わせになるだろうと思っていたから、その驚きはとんでもないモノだった。

 楽曲の追加に合わせて、開催されたイベントストーリー『並び立つ歌姫のフルリール』では、雫と瑠依がユニットを結成してこの楽曲を歌うまでが描かれている。ちなみに、フルリールはフランス語で『花が咲く・開花』の意味を持つ。

 ある日、雫にソロデビューの話が舞い込んで来たが、アイドルがソロ楽曲を歌う事を特別なモノであるという事と、ソロ楽曲を歌う事に自信が持てない雫はその話を断るが……何やかんやの末に二人(デュエット)なら歌ってもいいとして、組みたい相手に瑠依の名を挙げた。

雫にとって、瑠依は憧れのアイドルであり目標にしていたアイドル。瑠依も、雫の想いに応える形で二人はユニットを結成する運びに。しかし、異なるグループのやり方で成長して来た雫と瑠依は、楽曲へのアプローチの方法の違いや、キャリアの差から生じる見えない上下関係等で、なかなか足並みが揃わない事態に……

この状態を打破する為、互いの魂により踏み込んで、雫と瑠依はもっとわかり合わなくてはならない……といった流れでストーリーは展開されていく。

 楽曲のテーマは、憧れる者と憧れられる者の両者を描いたと、制作(作詞・作編曲)されたやしきん氏は語る。そのテーマが最も濃く表れているのが、1・2番Bメロでの歌詞だと自分は思っている。

あくまでも勝手なイメージではあるが…楽曲のタイトルにもあるクロッカスの花は、決して派手で華やかな花ではない。『地味な花』という詞は、クロッカスの比喩でもあり、自分に自信が持てない雫を指しているのだろう。

そして、『かがやき』や『太陽』という詞を象徴しているのが瑠依ではないだろうか。努力に裏打ちされた自信に満ちた瑠依の姿は、雫にとって『太陽』の様に眩しい憧れの存在。でも、この『陽』の因子は、強烈に対象(クロッカスの花と雫自身)を単に照らすだけのモノじゃない。対象が持つ魅力を引き出させる為の役割も担う。瑠依の心情の変化が輝きの質を変えたと言っても過言ではない。

 曲調はシンプルで丁寧な構成のミディアムバラード。ボーカルで突き抜けて聴かせるという強い意志を感じさせる。クロッカスの花が咲く時期とされる春の陽気を想起させる様に吹き抜けていく雫(首藤さん)と瑠依(雨宮さん)のボーカル。二人の柔和で素直なハーモニーと丁寧なメロディとの親和性が実に絶妙でスッと沁み込んでいく様に浸透していく。それが何よりも心地が良いのだ。