巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

輝きの中へ駆けて行けーRun Girls, Run!FINAL LIVE~新しい道の先へ~参戦レポ

 『Run Girls, Run!』の解散が発表されて、五周年LIVEの千秋楽にて発表されたFINAL LIVERun Girls, Run!FINAL LIVE~新しい道の先へ~』の開催決定の報。

 残された刻の中のどこかで、解散興行的なワンマンLIVEの開催があったり、餞的な新曲のリリースがあるのかな……という一縷の希望を抱いていたがそのどれもが叶わぬ夢物語となってしまった……

正直な話を曝してしまうが……前述した供給が無いっていうのは、推すという事のモチベーションが維持、もしくは上げづらいモノと捉えていた。ワンマンLIVEだったり楽曲リリースが一切無かったっていうのは、LIVEと楽曲の方を重視している身からすると本当に堪えた。自分のこんなスタイルは間違った応援の仕方なのかもというのは自覚しているので言い訳は出来ない。

 ただ……四年前に解散した直系の先輩グループである『Wake Up, Girls!』の様に終焉(解散)の瞬間に華々しい軌跡や餞となる楽曲を贈られるグループなんてほんの一握りしかいない。いろんな数字とか現実を突きつけられ、『お疲れさん』と肩叩かれてそのまま終わっていくグループの方がずっと多い。本当の終焉を見送れる刻と場を設けられたのはまだ救いがあるのかなと。

 そんな悶々とした心情を抱きつつ……その答えを探しに、俺は終焉の地である山野ホールへと向かった。



 ※ここからLIVEレポ的なヤツになりますが……昼公演のみの参戦&出涸らしの記憶から引っ張り出して書き殴っておりますので、抜け落ちや色々違った部分が多々出て来る為、話半分で読まれると幸いであり全て個人の所感です。

 

 


 境界を超えて繋がった魂。全ての始まりとなる『アンセム


 このFINAL LIVEのオープニングアクトとなったのが、RGRにとって原初の楽曲であり、共にここまでの軌跡を駆けて来た戦友と称しでもいい『アンセム』の系譜である『カケル×カケル』

終焉の刻と場で、この楽曲を初手で聴ける事……本当に感慨深くもあり、思えば、彼女達を直に観た最初のLIVEになった『Green Leaves Fes』で魅せた三人の叩き上げの魂と本気の想いに打ちのめされて惹かれて応援していこうと思った切っ掛けになった楽曲。

そして……RGRの三人にとって、掛け替えの無い『縁』と『絆』で繋がった“戦友”であるあの子達の想いと魂を連れて来たと勝手に思ってしまったのだ。

 この『カケル×カケル』という楽曲。RGRの三人のデビュー作となった『Wake Up, Girls!新章』のキャラクターソングという面のある楽曲。まあ……現実の楽曲と向こう側の楽曲との繋がりはナンセンスという声があるだろうが……自分の解釈ではきっちりとした繋がりを持つ楽曲という認識だったりしている。林鼓子森嶋優花厚木那奈美が初めて魂を共有して駆けてきた“戦友“である、速志歩、守島音芽、阿津木いつかへの巡り逢いの縁と絆を謳う楽曲。

歩・音芽・いつかの姿は、勿論あのステージにはいない。背面にあるスクリーンの映像にも流れていない。でも、林さん、森嶋さん、厚木さんの傍らにきっと寄り添っていたはず……


林鼓子の傍らには…速志歩の想いと魂が。

森嶋優花の傍らには…守島音芽の想いと魂が。

厚木那奈美の傍らには…阿津木いつかの想いと魂が共に在ったのだと。


 キャスト側とキャラクター側の境界は閉じられたままかもしれないが、想いと魂は共に寄り添ってこれまでの軌跡を共に駆けて来た様に思えるのです。当然かもしれないが、三人のパフォーマンスはこれまでの軌跡を駆けて来た中で、強く、洗練されたモノに進化を遂げている。でも、彼女達の内に秘めて滾る叩き上げの魂は変わっちゃいなかった。

 ここまで、双方との繋がりを感じさせ、このアクトのエモーショナルな感情を揺さぶった答えが…入場して、客席へ繋がる廊下に飾られたある一基のフラワースタンドにある。

 

 貼り付けたツイートの写真の一番手前にあるスタンドの名義にある七人の名。
まゆあいりみなみよしのななみかやみゆ。WUGのメンバーだった、吉岡茉祐さん永野愛理さん田中美海さん青山吉能さん山下七海さん奧野香耶さん高木美佑さんからの贈り物だと言う。(久々にこの七人全員の名前を打ち込んだな……)

で……記載されている名が、フルネームではなく、名前のかな読みとなっているのには七人の粋な計らいと想いが込められていたからなのだと。


※コレについて言及されている方がいらっしゃったので、そのコメントから引用させていただきます。


 WUGとRGRとの繋がりは、共演を果たしたWUG新章からのモノ。現実と同様に、作中でも、RGRはWUGの直系の後輩という立ち位置にいる存在。細かい事を書いていくとクソ長くなってしまうので簡潔に書いておくが…作中の方のWUGメンバーの名前の読みは、キャスト側と同じ読み方になっている。真夢=茉祐(まゆ)、藍里=愛理(あいり)という具合に。ちなみにRGRメンバーの方は苗字の読みがキャスト側と一緒のモノになってる。(双方共に漢字は違う)

だから、あの場に贈られた花は……吉岡茉祐であると同時に島田真夢でもあり、永野愛理であると同時に林田藍里でもあり、田中美海であると同時に片山実波でもあり、青山吉能であると同時に七瀬佳乃でもあり、山下七海であると同時に久海菜々美でもあり、奧野香耶であると同時に菊間夏夜でもあり、高木美佑であると同時に岡本未夕から……RGRの林鼓子と速志歩へ、森嶋優花と守島音芽へ、厚木那奈美と阿津木いつかへと贈られた新たな門出を祝う想いだったのだと。この刻において、今のRGRの心情に一番寄り添えたのは同じ経験を経たあの十四人なのだ。

 ここから未来の刻へ駆け出していく為に……絶対に駆ける事を止めないという『Run Girls, Run!』のアイデンティティを示す為、そして…キャストとキャラのRGRとしての最後の戦いを完遂する為の『アンセム』として、この楽曲を開幕の火付けの楽曲として選んだ。そこに、三年の刻を経てようやく還って来た観客の歓声というバフが加わる。最後の戦いで全てが揃ったワケだ。イントロが響いた瞬間、もう何もかも忘れて全身全霊で楽しめる刻が確約されたも同然。あとは身を任せるだけだと。

 そんな楽曲と彼女達のパフォーマンスが弱いワケがなかった。それだけの説得力をRGRはここまでの軌跡でこの楽曲に血を流せて共に戦って来た賜物。RGRの『アンセム・オブ・アンセム』としての強さを遺憾なく発揮していた。言わずもがな、こちらの魂にきっちりと火を点けさせて血を滾らせてもらえた。オープニングアクトとしてはこれ以上無いモノだった。

 

 


 Run Girls, Run!らしさを貫いた謳のチカラ


 FINAL LIVEという事もあって、このLIVEのセットリスト構成は持ち曲のほとんどを謳い尽くすという三人の偽りの無い伝えたい想いと魂を存分に感じさせられた。

昔からこの終焉の刻まで応援し続けた人、刻と機が空いていた人、RGRに惹かれて間もない人……彼女達は数多の想いと魂を感じられて『誰も置いてけぼりにしないLIVEにする!!!』という強い想いを込めてセットリストを作ったのだろう。(そこから感じるインプレッションはRGRに惹かれたタイミングで人それぞれ違ったモノになっているので何とも言い難いが……)おそらく、RGRのLIVEでは最多になる楽曲を披露したんじゃないかと思う。

 彼女達がこの六年の刻で巡り逢った楽曲は実に多彩だ。叩き上げの魂と滾る血と情熱を謳う『アンセム』の系譜。RGR楽曲の代名詞と評しても過言じゃない『プリチャンOP楽曲』の系譜。楽曲ごとに魅せる表情が可変していく『タイアップ楽曲』の系譜。メンバーの個のチカラを遺憾なく魅せ付けられる『ソロ楽曲』の系譜。RGRとしての表現力を飛躍的に上昇させ、キラーチューンの域まで進化を遂げた『四季シリーズ』の系譜……

どの楽曲も本当に強い楽曲なのは、今更俺の口から言っても何の説得力は無いし周知の事実。リリースされた時点で完成されているのだけれど、それだけでは数多の人の魂の奥に響かせるまでに至らない。林さん、森嶋さん、厚木さんが、ちゃんと楽曲と向き合って魂で対話して血を流したからこれらの楽曲がもっと強くなっていった。


そう、楽曲もまたRGRと共に駆け続けて来たんだ。色褪せるワケが無い。

 

 


 逆境に抗い、戦い続けた者達の意地と『我』の開放


 林さん、森嶋さん、厚木さんがRGRとして駆けて来た六年の軌跡。過去にもこの怪文書Blogで書いたと思うが、彼女達の軌跡は逆境という荒れ放題の軌跡を駆けて来たと言っても過言じゃなかった。そんな中でも、三人は自分の弱さをちゃんと受け入れて向き合って戦って来た。止まって駆ける事を諦めたら死ぬという事を三人は充分過ぎる程に痛感されていたのだと。

RGRはいつだって目の前に大きな壁を用意され、我々の想像も及ばない所で歯を食いしばりながら、時に乗り越え、時にブチ壊しながら駆けて来たのだと。
 
それでも、戦い続けて挑み続けても、それが全部報われるとは限らない。実際、彼女達の戦いは世報わなくて世に認めてもらえなかった。爆売れ出来なかった。願って立ちたいと約束の地に定めた日本武道館ワンマンLIVEの夢も叶えられなかった。無礼は承知で言ってしまうが、売れる事=勝ち、売れなかった=負けという勝手なジャッジを下すとRGRは敗者なのだろう……悔しくないワケがない。

それでも諦めきれないモノが彼女達の魂にある。今という刻を確かに生きていたという楔を撃ち込んでやる!!!という意地と生き様をこのFINAL LIVEというRGR終焉の刻で彼女達は魅せ付けた。

 RGRの謳の根幹を担っていると称しても過言ではない、林さんの血の流れる魂の絶唱
彼女の歌唱力の凄さというのは、この怪文書Blogでも散々書いたし、直に絶唱を浴びた多くの人にとっては解説の必要はないだろう。特に、歌声そのものの張りや伸びは尋常なモノではないモノを元々持っていたが、このFINAL LIVEでは更に凄い領域へと昇華されていた。

途中、マイク放り投げて生の声で歌い出すんじゃないかって位なテンションと、林さんが放つオーラは声そのもので会場全体捻じ伏せんばかりの気魄が漲っていたんだ。そんな彼女の血が流れる魂の絶唱に、何度も鳥肌が立って治まらなかったし血が滾って熱狂させられるエネルギーを『謳』で我々の魂に直接叩き込んで来た彼女のチカラは途方も無いモノだったんだと……今もなお鮮明に思い出される。大袈裟かもしれないが、あの刻の彼女の絶唱は神懸った領域に昇華していた。

 RGRのパフォーマンスの中枢を担っているのが、リーダーである森嶋さん。
彼女が持つ徹底されて洗練された表現のロジックと、それを確実に成功させる為の入念な準備は、森嶋さんが表現者として生きていく上での最大の武器だと勝手に思っている。勿論、このFINAL LIVEでも遺憾なく発揮されていたのではないだろうか。

中枢と評した様に、森嶋さんの立ち振る舞いと存在感がRGR全体のパフォーマンスの核になっている。林さんと厚木さんがより引き立つ様に一歩引く所はきっちり引けるし、当然ながら自分がここだと嗅ぎ取った魅せ場では確実にモノにしていく。彼女がステージにいるという事だけで、林さんと厚木さんは思う存分パフォーマンスに集中出来て、活き活きと躍動されているのかと改めて思い知らされる。

魅せ方の拘りやパフォーマンスの質は初めて見た頃からもの凄い進化を遂げているのだけど、何と言っても、本当に心底楽しんでパフォーマンスをしているのがもの凄く伝わって来るのは、初めて彼女を見た2017年のお披露目の頃から何ら変わっちゃいなかった。やっぱり、貴女はファンタジスタだった。

 そして、この日も……RGRのNana様=厚木さんに最初から最後まで見惚れてしまっていた。
流麗かつキレのあるダンスに目を奪われるのは相変わらずなんだが、そいつに加えて厚木さんが創造していく魅惑と魔性の領域は、(いい意味で)非常にタチが悪いってのもこれまた変わらず……人が惹かれたり、惑わされたり、魅了されるであろう数多の要素が、厚木さんのパフォーマンスから感じさせられたと言っても過言じゃなかった。静と動のメリハリが効きまくって痺れた。

可愛らしかったし、凛とした格好良さもあり、流麗かつ優雅な立ち振る舞いに艶っぽさ、そして、何よりも、メチャクチャ綺麗だった……彼女が持つあらゆるモノであの場を制圧に来ていた。

書いていてアレだが…自分でも何書いてるのか分からんし、読んでいる人もコイツ何書いてやがると思われるだろうが、あの刻と場で躍動する厚木那奈美を称賛する最適で最高な言葉が俺の中には存在していなかった……魔性の女(←褒めてる)の真骨頂と評すべきか。


 自分もその中の一人だが、RGRの三人のパフォーマンスの凄さを知っているのは、あの場に参戦された人や配信でこのLIVEを観られた人、とにかく『Run Girls, Run!』に惹かれた人なら周知の事実。

だが、一番理解…いや痛感されているのは、出逢ってから最期の刻まで共に寄り添って軌跡を駆けて来た当の彼女達自身ではないだろうか。戦友でもあるけれど、最も凄い所を知る強大な敵(ライバル)でもあった。三人のパフォーマンスを直で見ていて(勝手に)感じていたのは、彼女達から何か漲る剥き出しで野性的な執念めいたモノ。あのステージで彼女達は互いに戦いを挑んでいたんじゃないかって。

この領域まで踏み込んで来れるのか?なら、こっちはそれ以上のモノを魅せ付けてやるからと、互いが限界を超えようと最初から最後まで全力のハイスピードで駆けていた。行きつく所まで行くしかないと。彼女達も、どこまで限界領域の先まで踏み込めるのかをただ知りたかったのかもしれない。互いに信頼もしていただろう。この子ならきっと応えてくれると。


 譲れない三者三様の想いと魂。それぞれにしか出せない唯一無二の輝き、貫いた信念と意地、未来の刻への誓いと希望……あのステージには全てがあった。

 

 

 

 最期の刻で血が流れた真の『アンセム


 詳細な言葉は忘れてしまったし確証も無いが……最後の楽曲披露の前にこう言っていたと思う。


 最後の曲になります……『ランガリング・シンガソング!!!』

 
 その言葉と楽曲名を聞いた瞬間、俺の中の何かのスイッチが音を立てて外れた。
それは、理性というストッパー。その瞬間に血が滾ってEXTRA BOOST MODEが発動する。ようやく、あのパートで全身全霊懸けて思いっきり吠えられる。おそらく、血が滾っていたのは俺だけじゃない。ランナー諸氏もそうだろうし、何よりも謳うRGRの三人も同様な想いを抱いていただろう。このFINALで一番聴きたかった楽曲でもあるから。

人類の歴史に残るであろう忌まわしい感染症によって、これまで披露はされたが観客の声は届けられなかった。でも、RGR最期の刻と場ではようやく声出しが解禁された。この楽曲は勝ち残って生き延びる為に彼女達がココロから引き抜いた『剣』。綻び、折れかけた事は数え切れないが、彼女達は熱を与えて叩きまくって鍛え上げた。ユニットの愛称が付けられた彼女達だけの彼女達による楽曲をより強くしようという気持ち。


 林鼓子の伸びやかで張りがある力強い絶唱


 森嶋優花の溌剌で低音域に秘められた凛とした歌声。


 厚木那奈美の繊細ながらも芯がきっちりされた柔和な歌声による三者三様の個の力。

 
まさに『Run Girls, Run!』の為だけに作られた楽曲。誰の為でもない、まごう事無く純然にRGRを輝かせる為のアンセム。謳う者に相応しい楽曲と、楽曲に相応しい謳う者。それがきっちりと一部の隙間なく揃った。そんな偽り無い本気の想いが詰まった楽曲が弱いワケがない『戦いの謳』

綺麗に締め括る為じゃない。ここから突き進む為に覚悟を持って肚を括った。
闘う準備は出来ている。過去から今、そして未来の刻に……全ての縁と時間軸に意味を持たせて止まらずに駆けるだけ。彼女達の眸は前を見据えて前に向かう為にある。

前述でも触れた様に、売れたとか夢抱いた約束の地に立てなかった事を鑑みると、彼女達は敗北者なのだろう……ただ、彼女達のこれまでの戦いは無駄なモノではなかったという事実がある。そんな彼女達の魂の燃料になったと思えるのが、RGRを続けていく事と戦い続ける=駆け続ける事への意地とPRIDEだったと勝手ながら思えるのだ。

 この楽曲のクライマックスとなるあの箇所に近づいていく度に、逸る気持ちを抑えきれない自分がいた……もうすぐ、全てを懸ける刻が間近に迫っている事実が更に血の滾りを加速させる。


 そして……その刻が来た。


 好きだよ 好きだよ 叫んでいる

 Run Girls, Run!


 とどいて とどいて 熱い想い


 “のせて 走れッ!!!”

 


 俺は、夜公演には参戦出来なかった。即ち、この昼公演のラストアクトである『ランガリング・シンガソング』がLIVEで聴ける『Run Girls, Run!』最期の楽曲。全てを出し切って思いっきり吠えた。HIGHになって灰になる覚悟が決まっていたから。限界超えた本気を思う存分ぶつける箇所でもあるから。

ただただ凄まじかった……『ランガリング・シンガソング』に血が流れる刻と場に居れた事の喜びと歓喜で魂の鼓動が治まらなかった。深愛の情をもってグループの名を吠え、未知の可能性と未来の刻の希望を込めて彼女達を送り出せた……

 『ランガリング・シンガソング』に血が流れて、真の『アンセムの域へ昇華したあの刻の感動はきっと忘れ得ぬ感動になって俺の魂に刻み込まれた。そんな瞬間に立ち会えて全身全霊を懸けられたのは何よりも素晴らしい事の様に思えてならない。

 

 


 終わりではなく新たな始まり~輝きの中へ……


 終演して退場し寒風吹く会場の外で、全てを出し尽くした疲労感に膨大なインプレッションで放心状態へ陥った……でも、なんだか心地いい感覚でもあったのは、何の未練も無く全力全開で単も染み尽くせた充実感だったからだ。

本当に凄い三人だった。本当に強くなった……最後の最後まで我と意地を貫き通したんだって。さっきから言ってるが……確かに彼女達は勝利者ではなかった。沢山負けたかもしれない。でも、そこから目を背けないで何度でも駆け出した。三人は諦めるという選択肢を諦めて最後の瞬間までRGRがこの世界で生きていた証を刻み込もうと、続けていく戦いに身を投じてきたのだと。

 意味の無いモノなどこの世には無い。林さんだけが、森嶋さんだけが、厚木さんだけが気を張ってガムシャラに駆けた所でどうにもならなかった。勿論そう思っちゃいなかっただろうし。一人でRGRを引っ張っていこうというのはタダのエゴだから。時には彼女達が抱いている未来の希望や夢が呪いとなって彼女達を縛っていたかもしれない。現に、オーディションで勝ち残ったという事は、林さん、森嶋さん、厚木さんに夢と希望を打ち砕かれた数多の敗北者の姿がある。

今の彼女達は、言い方はアレだが……夢敗れし者達の躯の上に立っているのと同義なのだ。キレイなモノじゃない。でもそれがこの世の理であり人の性でもあるのだろう。

だから、ボロボロになっても、ギラついた双眸で未来を見据えて駆け続けたのだ。そんな彼女達の本気の想いと魂と生き様に俺は強烈に惹かれたのだと。あの小さな三つ星が数多の戦いを経て唯一無二の眩しい輝きを放つ星になっていた。


何度だって言ってしまうが……本当に凄い三人だ。


 最後に、林鼓子さん、森嶋優花さん、厚木那奈美さん。これから駆けていく貴女達の軌跡がどうか眩しい光に照らされた明るい未来であります様に……

 

そして、この怪文書を最後まで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

 

 

 

剥き出しの魂と真剣(ほんき)ーガールズフィスト!!!!GT 南松本高校パンクロック同好会ワンマンライブ Not Lonely!!!! Vol.3参戦レポ

 3月19日。秋葉原 CLUB GOODMANにて開催された『ガールズフィスト!!!!GT 南松本高校パンクロック同好会ワンマンライブ Not Lonely!!!! Vol.3』に参戦して来た。

 

 

 自分が『ガールズフィスト!!!!』のLIVEに参戦するのはコレで三回目。前の二回(昨年の6月と今年の1月)と明らかに違っている要素は……何と言っても観客の声出しが三年三ヶ月ぶりに解禁になった事だ。その報が告げられた時、コイツはこれまでのガールズフィストLIVEとは絶対に違う激熱なLIVEになるという根拠のまるっきり無い確信を抱いていた。

自分は、声出し有りだった時のガールズフィストLIVEの雰囲気を知らない。数多の楽曲と彼女達の歌と奏でる音が、観客の声援が付和されてどんな変化を見せて感覚に飛び込んで響いて来るのか?それはもう本当に楽しみで仕方がなかった。


 と、言うワケで……ここからはそんな激熱だったLIVEで感じたインプレッションをいろいろとぶちまけていこうと思います。

 

 


 爆ぜる情熱と魂が宿った“音”


 今回のLIVEの全体を通じて感じられたのが、これまでのLIVEとは明らかにこちらに響いて来る音質がいい意味で全く違った感じとなっていた。その要因になっていたのは、やっぱり観客の生の歓声があったからに他ならないだろう。四人の演奏スキルの上達ってのも勿論あるんだけども、それとは別に観客の発する熱と声が彼女達のバフになって+αのチカラをもたらしていたと思えてならなかった。

そんなバフによって強化された四人の想いと魂によって奏でる音は様々な表情を魅せてくれた。身体を突き刺し殴りつける様な荒々しく獰猛な音だったり、時には聴き惚れさせられてしまう色香を纏った艶やかさだったり、気持ちを抑えられず勢いよく動きたくなる衝動を後押しさせる音だったり……etc

そんな音を爆音で聴いて、胸が激熱になって楽しくならないワケがなかった。そして、何よりも四人の真剣に楽しみ尽くそう!!!!という想いと魂を魅せ付けられたってのもある。目の前でんなモノみせられちゃ我々だって真剣に楽しみ尽くさなきゃならない。

この怪文書Blogで何度も書いて来ておるが、LIVEってのは演者と観客互いの想いと魂をぶつけ合う真剣勝負=戦いの場だと思っている。演者が繰り出す渾身のパフォーマンスに興奮や熱狂して、観客は感謝と賞賛の念が込められた声援を送る。声援を受けた演者もまた限界を超えたパフォーマンスで更に応える。

あの刻と場ではそいつが確かにあったんだ。いや、そうじゃない。三年三ヶ月の刻を経てようやく還って来たんだって……

 きっちり目をかっ開いて私達の姿とパフォーマンスを!耳の穴かっぽじって私達の音と謳を聴けッ!!!!と。


 コレがガールズフィストだ!コレがガールズフィスト!!!!のLIVEだ!!!!


 実際に彼女達はこんな事言っていないがwwww四人のパフォーマンスからはそんな想いと魂を勝手ながら感じられたのだ。

 

 


 あたおか(頭のおかしい)達のハイスパートLIVE


 今回のLIVEで、彼女達が掲げたテーマは元気で楽しいLIVEにするとの事だった。
このLIVEがその言葉に違わないLIVEだったってのは、参戦された人や配信を観られた人は感じられたのではないだろうか。

ただ……その元気で楽しい度合いが、見出しで触れた様に(いい意味で)頭のおかしい振り切った激熱で狂気をはらんで、開幕から終演まで一切ペースの落ちないハイスパートなLIVEになっていた。その方向性を決定付けたのが、二曲目のアクトになったガールズフィスト楽曲随一のピーキーでクレイジーな変態楽曲『パン食うロック!!!!』だったと思っている。

オープニングアクトで披露された、THE BLUE HEARTSの『人にやさしく』のカバーの余韻と血の滾りに浸る間も僅かにこの変態楽曲のイントロが響いた瞬間何か悟ってしまったのよ。あぁ……このLIVEは想いと魂のリミッター全部解除して徹底的にきっちり楽しみ尽くせって。

彼女達がこの刻に懸けて来た想い、この刻でしか奏でられない爆音……何かいろんなモノが結びついて絡んだ結果、無意識で爆音に任せるままヘッドバンキングしてたwwww前にも言及したかもしれないが、この変態楽曲はこれからもっと進化して強くなる可能性に満ちているなと。こういう楽曲を持ってるのはガールズフィスト!!!!にとって何よりのアドバンテージ。

 で、個人的にこの日のハイライトになったのが『Ready and Rarin'to Go!!!!』。
元々音源でも好きな楽曲でもあったし、何しろ声出し解禁になったら絶対ブチ上がれて滾れる楽曲になるって確信を抱いていた。

特に、サビのコーラスの『Go! Go! Let's Go!!!!~』で吠えられる刻を待ち望んでいたモノだ……そいつがあの日ようやく叶った。メチャクチャ楽しくて漲る衝動で血が滾るパンクロックの真髄!!!!(んなモノあるのかは知らんwwww)みたいな楽しさがあったんだ。他の楽曲もそうだが、この楽曲はライブハウスの雰囲気に見事フィットしていてそれも極上だったのよね。

 

 

 
 浅見春那の『謳』がもたらした支配力


 今回のLIVE参戦にあたって自分が最も注目していたのが、ボーカル・浅見春那だった。
観客の声援というバフを受けて、彼女のボーカルがどんな爆発を起こすのか?今回のチケット代の8割はその要素が占めていたと言っても過言ぢゃなかった。

結論から先に言ってしまうが……声援のバフを受けた、浅見春那のボーカルは期待を見事に裏切って想像を遥かに凌ぐもの凄いインプレッションを魅せ付けたのだ。

 自分がこれまで観て来たLIVEだと、時間をかけて徐々に彼女のボルテージの上昇や限界の扉を開けていくイメージだった。

だが、今回のLIVEは違ってた。浅見さんがステージに出て来て歌い始めた瞬間、完全に限界の扉をフルオープンしてその先の領域に入ってる時の歌声と佇まいをしていた。もういきなりスイッチ入って客席をねじ伏せに来ていたと思う。って言うかそうだったに違いないんだよあの感じは。

 前にも記事にしたが、浅見春那のボーカルの真骨頂は歌う楽曲によって魅せる変幻自在の表情。
今回も、バチクソに格好良かったし、Berry(×2)cuteだったし、浅見さん自体すんげぇ楽しんでた。で、何よりも、リズム隊が響かせる爆音に浅見さんの謳がまったく引けを取っていない。声援というバフの恩恵を受けているのは浅見さんも同様だからなのだろう。


※ここから非常に駄目な文章を書き殴っていくので、読んでて少しでも不快に思ったらスルーして下さい……


 このLIVEで浅見春那が一番凄かったのが……シーナ&ザ・ロケッツの『レモンティー』(カバー)を歌っている時。このアクトの何が良かった、凄かったのか?もう暈さずストレートに言ってしまうが……


まあ、メチャクチャにエロかったよね。マジで。

 

 あのエロさは、艶やかと色っぽいなんてモノじゃない。とにかくエロかったとしか評せないし、それが一番通じるあのアクトの表現だと勝手に思って今書いている。

この『レモンティー』という楽曲のファーストインプレッションとして、おそらく一番多く挙げられるのが荒々しさのある激熱なカッコ良さだと思う。特に、ゴリゴリとした勢いあるギターリフがメチャクチャカッコ良い。それを踏まえてみると、この楽曲にエロティックな要素ってのは感じにくい。

一説によると、この楽曲の詞は暗喩的なエロさのある詞とも言われていて、女性ボーカルで歌われるとそいつがより増して聴こえるらしい。ただ、この楽曲のカバーをやるのは今回が初めてじゃない。結構な回数披露しているはずで、数は少ないが…自分が観て来た中でエロティックなモノは感じられなかった。

でも、今回はカッコ良い要素もありつつもエロさの方が圧倒的に勝っていた。歌ってる時の浅見さんは何かトリップしているかの様な目してたし所作も艶めかしい感じに見えた。そして、所作に伴って歌声もエロいモノへと昇華されていってた。もう、完全に彼女自身が創造した世界観にどっぷりと浸っていて……ブチ上がりながらも浅見春那の佇まいに魅入られて圧倒されてしまったんだ。

出そうと思ってこのエロさを出してるんじゃない。本能で感じて自然と色香を発してるのだと。あの場の雰囲気と熱などを察して、絶妙な間と緩急の付け方をもって、それらを的確に謳へ乗っけていく。

 声出し解禁になった時の浅見春那は半端無く凄いという話を聞いたが、あの場と刻でそいつを徹底的に思い知らされた……剥き出しになった浅見春那の叩き上げの真剣な魂があの刻と場感じられたのは本当に素晴らしく感動的だったと思えてならなかった。

 

 それと……書いといてアレだが……無いと思うけどコレが浅見さんの目に触れない事を願うwwww

 

 


 最後に……


 終演してしばらくは、LIVEの余韻に浸ってたのは勿論だが、全身全霊で滾って楽しみ尽くせた達成感だったり、いい心地の疲労感で放心状態に陥っていた。それほどまでに『ガールズフィスト!!!!』の四人が魅せてくれたパフォーマンスに圧倒された事の証明に他ならない。

月並みな言葉になってしまうが……とんでもねぇLIVEだったとしか評せなかった。何かもう、彼女達の音楽と観客のコールに乗せられる感あって問答無用に盛り上がるし、逆にあれだけやっといて盛り上がらんワケがなかったwwww

観客の声出し解禁というのは、ここまでLIVEの雰囲気や熱を飛躍的に進化させる要素なのかと思い知らされたLIVEでもあった。彼女達のオリジナル楽曲、往年のパンクロックやアニソン楽曲へのリスペクトを込め彼女達の色を出したカバーソング。やってた事はこれまで俺が観た『ガールズフィスト!!!!』のLIVEとほぼ変わらなくて奇を衒った構成でもなかった。でも、メチャクチャに楽しくて激熱で胸熱なLIVEになっていた。


観客の声が入っただけ。でも、それが無かったらこの領域までは絶対に到達できない興奮があった。


 何度も書いてしまっているが、とにかく盛り上がれて滾れたし、とにかく胸熱になっていた。
ここまでのモノを魅せ付けられて、空間を創造出来ていたバンド(声優ユニット)という事実に感動している。



 五月にはまたワンマンLIVEの開催が決まっている。先程チケットの購入が無事出来たので今から非常に楽しみにしつつ、LIVEレポの名を借りた怪文書の筆を置きたいと思います。


 

 

 

浅見春那のボーカルの凄い所を斯く語るーNot Lonely!!!! Vol.3開催に寄せて。

 どうも。あかとんぼ弐号でございます。
つい先日、TwitterのTLを流し見しておったらこんなtweetを目にした。



 

 コレは『ガールズフィストGT!!!!』藤森月(ふじもりるな)役の井上杏奈さんのtweet
その記述の中でひと際俺の網膜に強烈に焼き付いたのが『本番での爆発力』というワードに、3/19に控えたワンマンLIVEに向けてレッスンされている、ボーカルの浅見春那さんの写真だった。

要約すると、浅見さんのLIVEでのパフォーマンスの爆発力がとにかく凄いという意味なのだろうと。コレ見た時、俺も膝を叩いて首がもげそうになる程に頷きまくっておったワケだ……


そうなのよ。浅見さんのボーカルって凄いのよ……って。


 さて、ここからが本題。浅見春那のボーカリストの真髄とは?そして、爆発力とは何なのか?
もう間近に迫った『ガールズフィストGT!!!!』のワンマンLIVEに向けて、全力全開で楽しみ尽くしてHIGHになって灰になる為に、ボーカリスト・浅見春那の凄い所と爆発力を再確認して言語化してみようと思う。

 ちなみに……今から書き殴っていくモノは、あくまでも自分の私見に依ったモノと言うか……単なる自分の独り言。完全な偏見でもって書き殴ってますので見当違いが含まれている可能性は多分にあると思いますので、その点は予めご了承下さいという事と、本当に暇すぎて畳の目の数を数えたり天井のシミを数えるしかやる事がなくなったら、時間潰しの一つの手段程度として読んでいただくと嬉しく思います。

 

 

 

 クセの無い聴き心地のいい歌声という『武器』


 まず、浅見さんのボーカルを聴いてみて抱いたファーストインプレッションが、クセの無い聴き心地の良さだった。彼女の歌声をレーダーチャートで表すならば、どこも尖った部分の無い綺麗な図形が描かれていく様に勝手ながら思うのだ。

コレは、聴く人それぞれのインプレッションに依るモノなので、あくまでも自分のインプレッションだけれども……どこか尖ったクセのある歌声というのは、実質的には下手ではないのだが、そう聴こえてしまいがちになってしまう。その尖ってるクセの部分がリスナーの感性に上手い事ハマれば、強烈なインプレッションとして刻まれるが、ハマらない人には本当にハマらない……と、いう事になる。

くどい様だが、浅見さんの歌声はクセが無い。高音域が際立って突出しているでもなく、低音域がバリバリに響いて来るモノでもない。これもまた、人それぞれの受け取り方があるんだけど、一つの捉え方としてそのクセの無さは物足りない感じに捉えられなくもないが……ただ、クセが無い分聴覚にスッと響きやすいのではないだろうかと勝手ながら思う。

彼女……浅見さんが自分自身の歌声をどういう感じで捉えているのかは分からない。でも、一つ確かなモノとして自分が感じられたのは、浅見さんはこのクセの無さを最大の武器として戦う道を選択して表現者としての日々を今生きているのだと。

 そして、そのクセの無い歌声を最大限に活かす戦い方を浅見春那は持っていた。

 

 変幻自在の『貌』で謳う


 顔(貌)で謳うって表現を聞いた事があると思う。LIVEでの浅見さんの歌い方はまさしく『貌』で謳っているのだ。彼女に対しての贔屓目があるのは承知の上で言うが、コレが出来るからこそ俺は彼女のクセの無い歌声が物足りないというインプレッションにはならない。

楽曲によって、彼女が魅せる表情は多彩なモノ。楽しく朗らかな楽曲では、全身で楽しさを表現しつつ生き生きと笑顔全開で謳い、可愛らしい楽曲では、彼女が元々持っているナチュラルなキュートさを振りまき謳う。まあ、これらの要素はそんなに驚くモノではないと思う。彼女の歌声の本質というかベースになってるのは朗らかさとナチュラルな可愛さだから。それがちゃんとあるからこそ、これから挙げていく要素が際立ったインプレッションとなる。

 『ガールズフィスト!!!!』の楽曲はパンクロックテイスト。定義はいろいろあるけれど、パンクの精神みたいなヤツの一つとしてあるのは、叩き上げの魂を爆音に乗せて思いの丈を曝け出して謳う。

激熱でハードな楽曲を謳われる時の浅見春那の『貌』。これはマジでカッコいいんだよ……コレは誇張や過言でもない。彼女が歌っている所の数をそこまで見てない奴が何言ってやがると思われるでしょうが……本当にカッコいいとしか評せなくなってしまう。普段、不可思議でどこかフリーダムな振る舞いを見せている姿からは想像も及ばないから、そのギャップでもって圧倒されて魅了されるのだと。

浅見さんの謳っている表情や立ち姿は勿論の事、何よりも歌声の質がパワフルでエネルギッシュさを纏った生々しい歌声へと昇華している。コレは、初めて見た頃から刻が経つにつれて何かグッと重心みたいなモノが増していってる印象。技術云々じゃない。ただ単純に『私の謳を聴けッ!!!!』という想いと魂が爆ぜて成せるモノなのだろう。それでいて、歌声が爆音に負けないでちゃんと楽曲の詞がスッと入って来て楽曲として成立されている。


そして、何よりも俺が撃ち抜かれたのが、カッコよさと見事に共存されてるエロさだ。


 挙げといてどう表現していいか分かっていないが……パフォーマンスしている時にフッとした一つ一つの目配せだったり、特に低音域で歌っている歌声に艶やかさが乗っかっているみたいな。多分、狙ってやってないし出そうとして出してる感が一切ない。これも浅見さんの素の部分だと思う。だから、惹かれていって魅了されるんだろう。そういう部分を含んで素敵だと思える。

 


 
 爆発力=限界突破した者の強さ


 ここから好き勝手書く事が浅見春那のボーカルの真骨頂。ただ音をなぞって謳うだけじゃ多くの人のエモーショナルな感情は揺さぶられず、血を滾らせて興奮へ誘う事は出来ない。

楽曲が持つ世界観を掴んで、それぞれの楽曲にあった『貌』で謳う。浅見さんはその世界観を把握して、そこに入り込むスピードが尋常じゃないモノを持っていると思わされる。じゃなきゃ前述で触れた変幻自在の顔で歌うのは出来ないと。演技していると言い換えるのがしっくり来るかもしれない。

 そして、浅見さんの入り込むスピードの尋常じゃない所はもう一つ存在していて……限界領域の先(=所謂ゾーンってヤツ)に躊躇いなく突っ込める所ではないだろうか。人の本能として、これ以上限界の先へ突っ込むのはヤバいと無意識の内にリミッターをかけて突っ込まない様にするモノ。浅見さん自身、自覚されているのかは分からないが……彼女は迷うことなくその限界の先に躊躇なく踏み込んでいってる様に感じてしまうのだ。

 そうして、別のスイッチが入った時の浅見春那は本当に強い。コレは理屈じゃ説明出来ない。
おそらく、それが井上さんが言っていた爆発力の正体なのかもしれない。客席から観ている我々よりも、ずっと近くで浅見さんの強さを肌で感じたインプレッションなのどと。

 

 

 

 大切な伝えたいモノは本気の魂


 ここまで散々好き勝手に、自分が抱いている浅見春那のボーカルの凄い部分を書き殴ってまいりました。余す所無く書き切ったッ!!!!と言うつもりは無いし、そんな事は到底言えない。でも、一つ言えるなら、ここまで挙げて来たモノを活かす事が出来るのは、浅見春那の本気の魂から滾る燃料しかない。

どんなに優れて秀でたモノを持っていても、そいつをちゃんと引き出せるのは、その人の本気の魂在りきだと思うのです。前述した限界の先に踏み込むのもそうだ。彼女はいろいろ背負っているのだろう。そして、そこにちゃんと向き合い受け止めて、自分を強く持てる意識。そうした一つ一つの明確な意識の積み重ねによって、表現者・浅見春那が出来上がっていく。それが、彼女の本気の魂へと繋がっているのだと。

 歌というモノは嘘がつけないモノだと言われる。それは、謳う者の生き様と本気がそこに在るから。勿論、ステージで謳う浅見さんの伝えたい本気の想いと魂は周りにすぐ伝わって来る。そして、観ている人達にもちゃんと届いている。それらが感じられるからこそ本気で応援したくなるのです。


 それぐらい、浅見春那のボーカルは人を惹き付ける力のある謳だと思うのです。

 

 

 

 最後に


 と、言うワケで……自分が勝手に感じている浅見春那のボーカルの凄いと思う所を語ってしまいました……まあ、いるか分かりませんが、こんなまとまりの無い怪文書を最後まで読んで下さってありがとうございました。

 自分よりも長い期間、浅見さんを見て来た人からしたらこの怪文書の記述は間違っている点とか解釈違いしかないと思っています。冒頭の四方山話でも言った様に完全な私見&偏見まみれからの個人的な所感。読んでて気を悪くされたり、怒りが込み上げられたという人もいるのでしょう……それにつきましては自分の語彙力や文章力の拙さ故でしかありません。

ただ、本文中にも書いた様に、浅見春那さんのボーカルは感情に訴え掛けてエモーショナルなモノを揺さぶる魅力溢れるモノなのは間違っていないと思えるのです。

 
 3月19日のワンマンLIVEは、『ガールズフィスト!!!!』としては久しぶりになる声出し解禁だという。
自分はその頃のガールズフィストLIVEの雰囲気を知らない者。観客の興奮に満ちた声を浴びた時の浅見さんのボーカルがどんな凄い進化を遂げるのかは、今から本当に楽しみにして筆を置きたいと思います。


 

 

 

 

譲れないPRIDEと誓いの刻。-IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2023“未来”参戦レポ

 2月18日。パシフィコ横浜国立大ホールにて開催された
『LAWSON presents IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2023“未来”』昼夜共に参戦して来ましたッ!

 

 

 今回のLIVEタイトルに冠された“未来”という言葉。この言葉に対して抱くインプレッションで多いとされるのは、希望であったり明るく輝かしい展望が開けているポジティブな方向にベクトルが行ってるイメージではないだろうか。そこには『IDOLY PRIDE』というコンテンツや関わっている人達にも通じるモノだろうし、惹かれて応援する数多のファンも同様の想いがあるのだと。

 ただし、希望を夢見るだけでは未来を勝ち取る事は叶わない。『未来』だの『先』だのを語る前に、『今』という刻をきっちりと動いて戦えているのか?仮に、勝ち取れたとしてもそれが望んだモノである確証もない。だからこそ強く願い今を全力で戦わなければならない。そうしたら見えて来るかもしれない。このLIVEは、その覚悟や決意が問われる『戦い』の意味を含んでいるLIVEだったのではないかと、終演してしばらく経ってから率直に湧き上がってきた所感だった。


 そして、このLIVEにおいて大きな出来事と言ったら、アイプラLIVEでは初となった観客の声出し解禁だろう。ようやく叶った待望の機会ではあるけれど……同時に危機感を抱く声も少なくなかった。レギュレーションが緩和されると、節度と場の空気が読めないアホが出て来る可能性を危惧しているから声出し解禁を喜べないといった所だろう。最悪の場合今後のLIVEで二度と声出し不可になる事も有り得ない事では無い。

でも、終わってみれば、そういったアホは出て来なかったみたいだし(MCとかで時折大声で入ってたがアレは全然許容できるモノ)やっぱり声出し有りのLIVEはクッソ楽しくて全身全霊を出し尽くせるモノだったんだなと……この数年で失われたモノがこの刻と場にて一気に還って来た事を実感させられたLIVEでもあったのだと。


 と、まあ……四方山話はこれまでにして、ここからはLIVEで披露された楽曲についての所感を書き殴っていこうと思う。例によって出涸らしの記憶から無理矢理引っ張り出して書いていますので細かい所は違っている所だったり、熱が暴走したりして非常に頭の悪い怪文書になる可能性が多分にあります。もし、この参戦レポを読まれる際には、この怪文書は数多ある参戦レポの一つの形なんだなといった生温かい目で捉えてもらえると嬉しく思います。

 

 

 1.裏と表/月のテンペスト


 Overtureが終わり、未だ暗闇の中のステージだが、着ている衣裳のシルエットから月のテンペストの五人だと視覚が理解した。初手で持って来るのは月ストのアイコンソングである『月下儚美』かなと高を括っていたら……この変態楽曲&戦いの謳であるイントロが流れた。

この数年のLIVEでは、驚いていても声を出す事を止められたが、このLIVEでは違う。声を出して良いのだ。だから本能の赴くままに叫んだ。



??!!!うおおぉぉぉぉぉッ!!!!!って。



 声を漏らした…じゃない。当たり前だが吠えたのは俺だけじゃなかった。あの刻と場にいた観客全員がそうなった。正直な所、開演前まで疑問に思っていた。久方ぶりというにはこの数年で出来なくなってたLIVEで声出す事が解禁になった瞬間これまで通りに出来るモノなのかと……

けど、前述した様にイントロ流れた瞬間そんな疑問は一気に晴れて無意識で声出して吠えてた。会場の盛り上がり方は尋常じゃなかった。直前にこの楽曲が収録されたアルバムがリリースされたのも大きい。

自分の中ではイントロ聴いた瞬間、血が滾って『おおっ』ではなく『うおおぉぉぉっ!』と吠えたくなる様な衝動に駆られる楽曲がいくつか存在している。アイプラ楽曲ではそういう楽曲が多く、この楽曲もその仲間入りを見事に果たした。

 この『裏と表』。変態楽曲&戦いの謳と称した様に、月ストの叩き上げと反骨の魂がもたらす激情がメロディに乗っている楽曲。そんなピーキーな楽曲を初手に持って来たのは、月ストの五人の覚悟と決意が込められていた様に思えるのです。琴乃達と同様に、キャスト側の五人もここまでの刻で良い事もあったし悔しい思いをして乗り越えたモノがあった。

そういった想いと魂を持っていたであろう彼女達のパフォーマンスは本当に凄かった……場の雰囲気を徐々にアイドリングしていこう的な優しいものじゃなかった。いきなりリミッター解除して、初手から全開で攻めて仕留めてやろうというある種の殺気とも称していい姿勢。奇を衒わない偽りの無い本能を魅せ付けようと、橘さん、夏目さん、宮沢さん、相川さん、日向さんの身体から見えないんだけど何か気みたいなヤツが漲っていたのだと。

 彼女達にとっても、声援有りのLIVE出演というのは未知の領域。これまでのLIVEではゲームで言えばデバフが掛かって状態異常になっていた。けど、このLIVEではデバフから解き放たれた五人のパフォーマンスがより際立った。

凛とした佇まいに瑞々しく力強さのある橘さんのボーカルに切る様な鋭さを纏わせつつ、芯がハッキリして聴き心地の良い相川さんのボーカルは、月ストの屋台骨と評しても過言ではない安定感がある。

ただ、このアクトにおいて、自分に与えたインパクトがより強烈だったのは橘さんと相川さんじゃなかった。夏目さん、宮沢さん、日向さんのパフォーマンスの質が異次元方向へブーストが掛かっていたのよ……(勿論、橘さんと相川さんのパフォーマンスも負けず劣らず素晴らしかったのは言うまでもない)

 夏目さんの歌声は、甘々かつ柔和な要素がありながらハスキーなアクセントが加わって、結構クセのある声質。クールでスタイリッシュな曲調と彼女のギャップがこの楽曲に格好良さというエッセンスとなって彩っていく。で、LIVEではそれがモロに出ている。夏目さんが歌うソロパートはどこもメリハリの効いた低音域が格好いいんだが、特にCメロの『月の裏で愛を語るより~』からのソロがバキバキで段違いに格好良すぎて鳥肌が治まらんかった……

 歌声という点では、宮沢さんの歌声もまた凄かった。彼女だけではないが、この楽曲では他の楽曲よりも情感を曝け出して歌っていて、宮沢さんに関してはその中に漂う色香がまたヤバい……(語彙力の壊滅……)特に!!!彼女のソロパートになる『もっと見てよね』での吐息を残す様な歌声がエロ過ぎて魅了された……宮沢小春さんも『魅惑と魔性の領域』の持ち主だったんだなと痛感させられた。

 で、日向さん。彼女は、夏目さんの格好良い歌声と宮沢さんの情念と色香漂う歌声を、ダンスの所作や表情の魅せ方にフィードバックさせた様な、野性味あるしなやかなパフォーマンスで魅せ付けた感じに見えた。それでいて歌声はちょいと甘々なテイスト。そのギャップで視覚と聴覚がぶん殴られた……芽衣ってそういう極端な部分を持ってると思うのです。芽衣の想いと魂が日向もかに完全憑依してたのだと。

 印象は違ったモノになってるけど、五人に共通していたのはそれぞれが限界領域を超えたパフォーマンスで魅せ付けた所なんだと。で、彼女達の枠を壊す最大の要因になったのは、我々の魂の叫び(=声援)だったのかもしれない。彼女達にとっては声援浴びる中で歌い踊るのは初めてになるからなのか、五人は本当に楽しそうにパフォーマンスされてたのが印象深かった。

 このLIVEは私達月ストが引っ張る。そんな気概と変わろうとする覚悟を、橘さん、夏目さん、宮沢さん、相川さん、日向さんが示した。そんな彼女達の剥き出しになった本気の想いと魂を近くで感じて燃えないワケが無い。言わずもがな、オープニングアクトとしては最高のモノになった。

 

 

 2.クリスマスには君と/月のテンペスト


 オープニングアクト『裏と表』のクールでスタイリッシュな雰囲気とはガラッと変わり、クリスマスのイルミネーションを彷彿させる煌びやかさに、クリスマスが誕生日となる長瀬琴乃への純然な深愛の情を謳う楽曲。月ストのパフォーマンスもそんな楽曲のテイストを纏って、叙情的な歌声のハーモニーを響かせキュートさのあるダンスを舞う。

『大好き』という親愛の情と、詞にもあった『生まれて来てありがとう』という祝福の念を伝える為に、体と魂から発せられた偽り無い純然な想い。それは、渚だけじゃなくて、沙季、すず、芽衣もそうだし、祝われる対象の琴乃も彼女達の純然な想いと魂を感じて嬉しく思っているはず。

巡り逢ってからここまでの軌跡を共に駆けて来て、いろんな事を乗り越えたからメンバーの大切さを知る事が出来たのだろう。この楽曲はそんな慈愛に満ちてる謳なのだと。

 タイトル通り、クリスマスソングではあるのだけれど、どちらかと言えば琴乃の誕生日を祝う『祝福の謳』といった感じが強い。この楽曲のボーカルの主軸を担っているのは渚(夏目さん)だと思っている。琴乃への想いを込めて大切に語りかけている様に謳っている夏目さんの歌声がエモーショナルな感動をもたらす。どう例えれば良いのかは分かりませんが…歌い方が深かった。夏目さんはこういう歌い方も出来るのかといった新しい驚きがあった。

ギリギリまで気持ちを込めて音をなぞって歌いきる。それから次のフレーズに移ると言ったら良いのでしょうか。その歌声は残響となって空間に在る様に、次のフレーズを歌い出してもまだ残っている様に。落ちサビで渚が謳う『止まらない想い』というフレーズはそんな残響の比喩なのかも。

 『裏と表』で滾った熱が変化して、包み込まれるような温かさの熱になった。
LIVEにおいてエモーショナルの落差をつけられる楽曲があるのは何よりの武器でもある。この楽曲には相応しくない例えではあるが……この楽曲に血を流したのは紛れもなく月ストの五人のチカラ無くしては出来なかった事。

 


  3.Daytime Moon/月のテンペスト


 明朗かつ爽快感のある曲調に五人の純然な歌声が映え渡る。その純然さの根幹を成していたのは月スト五人の絆に他ならない。その絆が強固なモノである事、それぞれの胸に在る心の光を信じて未来への軌跡を駆けようと。

 キャラクター(琴乃・渚・沙季・すず・芽衣)もそうだし、キャスト(橘さん・夏目さん・宮沢さん・相川さん・日向さん)もまた、嬉しい事ばかりではなく悩み苦しむ事はあっても支えてくれる人々に感謝して、新しい自分(=理想の姿・叶えたい夢)になると宣言している様にも聴こえる謳。

未来への希望と不安を胸に秘めて、軌跡を駆けて来た少女達が今の刻を大切に生きこれからも力強く駆けていこうと宣誓する。ここから未来へ!ここから宇宙へ!!私たちの頂上目指して!!!(←ここはこの楽曲の詞ではないが……)といったPRIDEと決意を謳に乗せた。

そこに観客の声援というバフというブーストが付加され、この楽曲に新たな血が流れた。それはこれまでLIVEで聴いて来たモノとは明らかに違った……いや、進化したのだと。初めて聴いた時からこのLIVE前まで俺は『Daytime Moon』という楽曲に力強いというインプレッションは抱かなかった。

ただ……その力強い要素は、単純に彼女達の興奮や血の滾りから声を張り上げたというモノじゃなかったと思う。できるだけ通る歌声で遠くへと……朗々と響き渡る歌声に乗っていたのは始まりの予感。再起でもいい。それが伝わったのだと。そして、この五人でしか出せない強烈な『チカラ』と『一体感』を感じた。彼女達がステージで魅せ付けたパフォーマンスは現実のあの刻と場でしか出せない説得力があった。

 それは、メンバーそれぞれがここまでの刻で戦って磨き上げて来たモノが、感覚となっていろいろな想いと感動が込み上げて来る様なアクトだった。

 


 4.ココロDistance/一ノ瀬怜×早坂芽衣


 月ストがステージから立ち去って、お次はサニーピースかなと……思っていたら、ボイスドラマが流れた。声の主はサニーピースの一ノ瀬怜と先程月ストのアクトを終えた早坂芽衣


……?!こ、この展開はまさかッ!!!!


 なんやかんや言葉を交わす怜と芽衣(著者の勝手な都合でボイスドラマの詳細は省かせていただく)すぐにステージに出れるの?と芽衣に問う怜。すぐに行けると元気溌剌に答える芽衣。この二人が出るって事は歌われるのはもうあの楽曲しかない。

ようやく現地でこの楽曲が聴ける場と刻が来たのだと……感慨に震え、魂が戦(そよ)いで背筋がゾクって来ているのが分かる。星見プロダンス部門のツートップ・一ノ瀬怜(結城萌子さん)と早坂芽衣(日向もかさん)によるグループの枠組みを超えたユニット『MACARON DONUTS』がステージに見参。もう、結城さんと日向さんがステージに登場してイントロ流れた瞬間から場内のボルテージが上がっていく。勿論、俺のテンションも一気にアガる。

 お洒落かつスタイリッシュなEDM調のメロディは、ホールの地形効果も相まって凄まじい音圧になっており、んで、その音圧を纏ってステージに立つ結城さんと日向さんがバチクソに格好良い上に、とにかく美しいッ!!ビジュアルがバグって圧倒的に画になる。特に、静から動へのメリハリとキレ具合がとにかく痺れる程に格好良すぎて、なおかつ、色香を纏った艶やかさもありそれが楽曲に情熱的な魅力を加える。

そして、この楽曲はダンスパフォーマンスに目を奪われてしまうが、結城さんと日向さんのボーカルもダンスに負けず劣らずに素晴らしかった。特に、相性抜群の歌声から響かせる二人のハーモニーは至高で喉からCDどころかそれ以上で決めてくれた。切なさと、内に秘める激情、迸って来るエロさ……それらがサビのボーカルで一気に解放されていく様は圧巻という言葉しか出て来なかった。まあ、格好良くならないワケがなかったのよ。

 結城さんと日向さんは、どこまで怜と芽衣の動きへ近づけられるのか?二人の戦いは限界領域を超えた向こう側へ挑むのと同義なのだ。この楽曲の音源を初めて聴いた時、LIVEで歌われる際にお二人がきっちりとダンスを魅せ付けて見惚れさせる事が出来るのか?という疑問が付きまとっていた。

でも、蓋を開けて見たら、さっきから何度も言ってしまうがダンスはやっぱり凄かった。サビ前から歌い終わり部分のパートは、まさに歌詞通りに『私を見て』と言わんばかりで何度も度肝を抜かれ見惚れてしまった。結城さんと日向さんはあのステージにちゃんと怜と芽衣を連れて来てくれた。そして、お二方のキレまくりのダンスが観たいので円盤リリースを何卒ッ……


 

 5.つながる心Binary/白石沙季×白石千紗 


 『ココロDistance』の余韻冷めやらぬまま、間髪入れずイントロが流れ、宮沢小春さんと高尾奏音さんがステージに登場して来たのを視覚で認識出来た瞬間……


俺の膝と腰が逝って見事崩れ落ちました……尊いと。


 結城さんと日向さんのデュエットが創造した滅茶苦茶に痺れて格好良い雰囲気から一転して、宮沢さんと高尾さんは清楚な可愛らしさをもって場を塗り変える。いや、塗り変えるなんて優しいモノじゃない……アレは制圧しにかかってたといっても過言じゃなかった。

白石姉妹が揃って『共演』したアクトでもあったし、お互いの良さを引き出そうとする『協演』でもあった。そして、二人がより前に出られて限界を超えようと競いながら突っ走る『協演』の意味を持つアクト。デュエットなので当たり前の話だが、ステージの上に立っているのは宮沢小春と高尾奏音の二人だけ。守るモノなど何にもない状況に立ち向かうには、行きつく所まで突っ走るしかないと肚括ってパフォーマンスしていくしか無かったのだろう。

だからなのだろう。このアクトを観て、純然で清楚な可愛らしさという言葉だけでは収まらなかったのは。その言葉は頭痛が痛い的な重文と同じでこのアクトを総評するには相応しいモノとは思えない。

 純然で清楚な可愛らしさは当たり前にあって、過度にあざとくも無い。特に、千紗の立ち振る舞い方はアプローチを過剰にするとあざと過ぎる感じに見えてしまう(個人の偏見による主観だが…)でも、高尾さんの立ち振る舞い方からはそれを感じられなかった。それを成し得たのは高尾さんの持っている表現のロジックと計算の妙から導き出されたモノなのかもしれない。

そこに、宮沢さんの溢れ出る自然で上品な可愛らしさが付加される事で、この楽曲が更に強いモノ……少女達の謳に血が流れた。艶やかさと一緒で自然な可愛らしさってのも計算して出せるモノではないから。

 この楽曲をテーマにしたゲームのイベント『心紡ぎ合う輝きの競演』で、沙季と千紗が言ってた『今までとは……一味違いますから』の意味を痛感させられた。宮沢さん(沙季)と高尾さん(千紗)は『落し』に来てたと思う。感情を剥き出しにする楽曲ではないけれども、白石姉妹の絆だったり限界を互いに超えようとする本気の想いと魂……といった生々しい感情と人の温度が入っている。

それは、音源のみを聴いただけでは体験できなくて、現地でしか体験出来ない感覚なのだと。そういった要素を全部ひっくるめて昇華して自然と出て来る言葉が尊いという言葉であり、このアクトを評するに最も適した言葉だと思わずにはいられない。

 その尊さが結集していたのが……当たり前の奇跡と姉妹の確固たる絆を象徴している指切りの所作や、歌いきって捌けていく際に手を繋いで去っていく後ろ姿だ。あんなの見せられちゃ客席が沸くのは当然だ。これらの場面をちゃんとカメラで追ってスクリーンにアップで映し出したのは、満足と感謝しかない。その功績で映像周りのスタッフ陣に特別ボーナスを弾んでやって欲しい。

 


 6.SUNNY PEACE for You and Me!/サニーピース


 公式動画チャンネルにてアップされている『The SUN』が音声のみで流れる。
ちなみに、動画内ではある楽曲が流れているのだがそれも無い。さくら、怜、遙子、千紗、雫が苦悩と葛藤といったネガティブな感情を吐露していく。

そして……変わろうという想いと決意に満ちたポジティブな言葉を発していく。暗い道を歩んで来た五人の少女達は縁の奇跡に導かれて巡り逢ってここまで駆けて来た。そんな五人だからこそ謳える……いや、この五人にしか謳えない謳がある。限界領域の向こう側に辿り着いた彼女達にしか謳えないこの楽曲を……!!!!!

 もう歌い出しの『Wow Wow You & Me Wow Wow』で、魂が戦いで一気に血が滾って来てるのが分かった。それは、自分が前回現地でこの楽曲を聴いた『アイプラLIVE 約束』以上の滾り方だ。そうなった大きな要因はやっぱり声出し可能の要素が大きすぎるからに他ならない。

もう、分かってるんだ。この楽曲でMAXの本気を叩きつける箇所であり、今回のLIVEでここは絶対外せない一番の決め所であり重要な所。それは、ステージでさくら達の魂と共に謳っている、菅野真衣さん、結城萌子さん、佐々木奈緒さん、高尾奏音さん、首藤志奈さんも分かっているはず。見えないけれども……彼女達は本気で客席へ手を伸ばしていた。みんなのピース(本気の声援)を見せろと。(オタクの妄想全開)

彼女達が客席へ本気の想いで差し出した手。もう、何も邪魔するモノはない。その繋がる瞬間の刻へと段階を踏みつつ歌い継ぐ。そうして辿り着いた一つの到達点ッ!!!!!



 この指とまれ\と・ま・れッ!/

 SUNNY PEACE for You and Me!\You and Me!/



 パシフィコ横浜の天井を突き破らんとする勢いと気迫に満ちた魂の咆哮が響き渡る。ハーモニーと称すには、雄々しすぎて荒々しいが……それでいいんだよ。ようやく……ようやくだ。彼女達が本気で差し出した手を掴めたのは。それは、この楽曲に必要不可欠だった、観客の声援というラスト・ピースが戻って来てガッチリと一部の隙間なく嵌った瞬間。魂で繋がったんだ。

決め所をきっちり決めた会場の雰囲気はもの凄い事になった。サニピのメンバーは勿論の事、観客の想いと魂が相乗効果を発揮してパフォーマンスの質に2段階目のブーストかかった様に感じた。自然と熱を帯びて激しくなるサニピのパフォーマンスに熱狂する客席。お互いがお互いを高めながら……さしずめ、太陽が昇っていくかの様な滾りと昂りがこのアクトにあった。

 『SUNNY PEACE for You and Me!』に血が流れて、サニーピース楽曲の揺ぎ無い『アンセム・オブ・アンセムの域へ昇華した瞬間でもあった。それは、奇跡の刻であり、信じて果たされた約束でもあり、未来の刻への決意と誓いでもあったと。そんな瞬間に現地参戦出来て共有出来た事が何よりも素晴らしく貴重な体験だった。

 


 7.SUNNY PEACE HARMONY/サニーピース


 この楽曲の音源を初めて聴いた時から思っていた。声出し解禁のLIVEでやったら全力でこの楽曲を楽しむと。楽曲は進化していくモノ。歌い手の成長や客席のチカラも加わる事で可能性は無限に拡がっていくのだから。『SUNNY PEACE HARMONY』は未知数の可能性を秘めた楽曲。

あくまでも自分の勝手な意見でしかないが、声援が加わったらこの楽曲、水樹奈々さんの『POWER GATE』やWake Up, Girls!の『7 Girls war』と同等の域まで進化出来る可能性があるって感じちゃったのよ。

 まあ、予感してた通り声援が加わって盛り上がらないワケがなかった。サニーピースの五人の歌声が重なり合って響くHARMONY。キャラクターとキャストの双方の歌声がシンクロするHARMONY。そこにサニピとファンの想いと魂が交わって響かせるHARMONYが加わってサニピの強さを誇示するファンファーレになった。

五人の輝きに負けじと、客席全体からコールが巻き起こるも、臨界点を超えて輝く彼女達の勢いに先行され、絡みついていく様に会場の熱量が上がっていく。

全身全霊で吠えたサビの『サニピ』コールでは、あの場と刻にこの身体と魂がある事に溢れんばかりの喜びを感じた。ステージで謳うサニピだけではなく、会場全体の誰もがあの瞬間に全てを出し尽くそうと血を滾らせて生きる熱さと魂の輝きを感じられたのではないだろうか。

 この楽曲は、LIVEにおいてサニピの鉄板楽曲というか、サニーピースの原点にしてテーマソング的な立ち位置にある楽曲。ほぼ確実に歌われる1曲になっているが、やっぱりこの楽曲をLIVEで聴けると何とも形容し難いエモーショナルな衝動に駆られるし、サニピが変わらずにこの楽曲を大切に想い歌い続けているんだと安心出来る所でもある。

それらは、詞にもある『変わらないまま変わっていこう』を体現している事に繋がってもいて、『SUNNY PEACE HARMONY』にこそサニーピースに惹かれ、共感出来る要素が詰め込まれている。原点にして本質でもあるアイコン楽曲の強さを魅せ付けられて思い知らされたんだ。

 


 8.全力!絶対!!カウントダウン!!!/サニーピース


 『ちょっと疲れた?じゃあ落ち着こうか』なんて優しい世界なんてモノは無い。『もう無理? いやまだいけるでしょ♪』とさくら達は言ってるんだろうとwwwwwそう。先人(水樹奈々さん)曰くLIVEとは戦いなのだ。さくら達は我々にオープンな殴り合いを吹っかけて来たとも言える。声出し解禁という最後の封印を解かれてこの楽曲は骨ごと喰らう楽曲へと進化してしまったと。

『SUNNY PEACE for You and Me!』から始動し、『SUNNY PEACE HARMONY』に繋げて、止めと言わんばかりのこの楽曲でもってサニピゾーンの締めとなる鮮やか過ぎるコンボが完成してしまった。LIVEのセットリストはいかにしてコンボを繋いでエモーションを盛っていけるのかと気付かされた。

 さて、この楽曲……過去のLIVEで声出し不可というデバフが掛かっていた状態にも関わらず、クッソ楽しかったアクトだったという実績がある。『奇跡』の参戦レポに、この楽曲もいつか思いっきり声出して盛り上がりたい一曲ですな~なんて能天気な事を書き殴っていたが、その刻と場が遂に訪れたのだと、興奮すると同時に未知への領域へ踏み込む事への恐怖もあって膝が言う事を聞きやしなかったww

もう、腹は括った。どうにでもなれと。(勿論、周りの人の迷惑にならん様に……)あるんだか、そもそも無いのか分からん俺の脳ミソのネジを余す所無く緩めまくって全力で楽しんでやろうと。まあ、楽しみ尽くす為にこの場に来てるんだし。

で……我々に対して殴り合い吹っかけた彼女達。歌いながら立ち位置が目まぐるしくチェンジしながら舞い踊るのは言わずもがなハードなんだが……キレッキレで尋常じゃない動きをしてたし、歌声もブレていない。限界領域を超えてHIGHになった彼女達はステージから会場を制圧しにかかっていた。それは、問答無用なパワープレイ。細かい理屈抜きの力任せで殴りかかって来る。コレ、そういう楽曲ぢゃねぇんだけどwww五人の気迫がそう思わせたのだと。

ゲームのストーリーの話になるんだけど、このアクトは東京編のクライマックスにて『SUNNY PEACE for You and Me!』を謳った時とサニピは同じ事をしようとしたと勝手に思っている。この『全力!絶対!!カウントダウン!!!』も、リミッター解除してゾーンに突入してこそ更に真価を発揮する楽曲。そりゃ、LIVE後に音源だけで聴いても参戦して感じた熱と興奮には至らないワケだ。

 まあ、笑いが止まらんかったよね。この笑いはゲラゲラと笑うというヤツじゃなく、乾いた笑い。
何か例えようが出来ない程に打ちのめされた脱帽の意味を持つヤツ。完敗でした。ステージ上の彼女達よりも楽しみ尽くしてやると臨んだが、誰よりもサニピの五人があのステージで楽しんでいた。

 


 9.(昼)最高優美ロンリネス/LizNoir


 サニピの時と同じ様に、ボイスドラマが流れた。その声の主達は、神崎莉央(CV:戸松遥)、小美山愛(CV:寿美菜子)、赤崎こころ(CV:豊崎愛生)によるモノ。聞いて驚きを隠せなかったし会場が一気にざわつき始めた。いやいや、まさかんなワケねぇだろ……どうせ声だけ出演的なヤツでしょ?と高括っている部分と、いや……この流れは(サプライズ)あるんぢゃないの?前科前例あったし。って期待してる部分あって、もう情緒が忙しい!!!


こころ『サプライズです!!!』(注:正確な台詞は忘却の彼方……)


 こころがそう言い放った瞬間会場全体が歓声で轟く。そして、戸松遥さん、寿美菜子さん、豊崎愛生さんがステージに本当に見参。葵(高垣さん)は参戦が叶わなかったが、このサプライズジャックに沸かないワケが無い。まあ……相変わらずこのお姉様方はやる事がエグいwww

そして、激熱さとクールでスタイリッシュ感満載なLizNoir楽曲の真骨頂とされる変態的なテイスト(褒めてる)なイントロが響き渡った瞬間、自然とヘッドバンキングしてた。

 サプライズジャックを託された者が果たす役割は一つしかない。圧倒的なパフォーマンスを魅せ付けて観客のエモーションを完全制圧する事。とは言え……葵抜きのリズノワさんは75%状態と言ってもいい不完全な状態。なおかつ、初手で披露する『最高優美ロンリネス』は新曲で声援解禁のLIVEでどれだけ盛り上がるのか?といったデータもない。今のリズノワさんは逆境の真っただ中に身を置いている。

でも、あのステージに立つリズノワさんはマジで強かった。その程度は逆境の内には入らないと言わんばかりに圧倒的なパフォーマンスを魅せ付けていった。逆境を打破して観客を魅了して制圧し、賑やかしで来たんじゃなく真剣にこの場と刻に向き合う為に、強いから戦うのではなく、戦い続けて来たからこそ強くなれた者として、この楽曲とLizNoirを甘く見るな!といった気魄を歌とダンスに込めて戦う。

 そんなの魅せ付けられたら興奮して我を失うってもんですよ。『凄ぇ』としか言葉が出て来ない程に圧倒された。でもその感覚が自然な人の性かもしれないと自己弁護しておくwww

ただ、莉央、愛、こころでの『最高優美ロンリネス』は前述した様に75%のチカラしか発揮されていない。やはり、葵(高垣さん)が入って四人全員が揃ってこそ、完全に真価が発揮されるモノだから、未来の刻でそれが叶う機会を待ち望みたい。

 


 10.(昼)Shock out, Dance!!/LizNoir


 昨年の『奇跡』では四人全員の完成形。昨夏の『約束』ではサプライズで愛とこころverの披露。で、今回は莉央・愛・こころの三人verとして披露された。

リズノワさんの原初の楽曲にしてアイコンソングを締めに持って来たのは、原点回帰だったり、常に最新、常に前を向くといった意味合いなのかなと勝手に解釈させてもらった。走り続けるのは強くあり続ける為。莉央と葵はそうやってここまでの軌跡を駆けて来て、その背を見て追いかけてる愛とこころもそうなのだと。

 格好良い姿=強さを魅せ付けるという事。リズノワキャスト側の皆さんがどう思っているのかは分からないが、やっぱりLizNoirの楽曲を歌う以上は絶対に格好悪い所は見せられないという危機感や意識はある様に思うんです。月ストより、サニピより、トリエルよりも格好良くて強くなければならない。そこは絶対に譲れないLizNoirのPRIDE。

月ストとサニピは素晴らしいパフォーマンスで成長の証を刻み込んだ。頼もしいといった心情もあったでしょうが、まだまだ私達の背中は遠いぞという所も示さなきゃいけない。気合が入らないワケがなかった。前述した様にサプライズジャックした者の役割として、LizNoirのステージが圧倒的に凄かったという楔を撃ち込まなきゃいけない。

 力強くて激熱、艶やかさを含んだ歌声。聴く者全てにあぁ、リズノワがこの場にいると実感させる説得力。さも当たり前の様にやっているが、当たり前ではないのだろう。一回り、二回りと進化した成果なのでしょう。完敗でした。極上の挫折を味わってしまった……


 

 9.(夜)Top of the Tops/ⅢX


 サニピがステージから捌けていって暗闇に覆われたステージ。しばらくすると、モニターには妖しく光るネオンイエローで彩られたあのグループのロゴが映し出された。一気に堰を切ったかの如き勢いで巻き起こる歓声が凄まじかった……そして、響き渡る不敵で不穏な重低音を効かせた治安の悪さ全開なイントロがEmergency感満載でそこもまた痺れる。こんなイントロの楽曲を持ってるのはあのグループだけだ。



 ⅢXの襲来である。

 


 ボイスドラマを挟まずに、楽曲のイントロでカチコミかけて来る辺りは、ⅢXの大胆不敵さを象徴する様で痺れる程に格好良かったし、圧倒的ダーティなヒール感も堪らない。(あくまでも雰囲気の話で、作中の三人は正々堂々としてる。ただクセが強烈過ぎるがwww)

Lynnさん、田中あいみさん、村川梨衣さんが放っているオーラ(気)の圧が圧倒的過ぎた……ガンダムでいう所の『何だ、このプレッシャーはッ!!!』的なヤツ。(←伝わんのか?コレwww)

キャラクターも強烈だが、この楽曲も特異で尖りまくっておる変態楽曲。滾ってブチ上がってんだけども、初めて披露されるってのもあったんだろうが、コールを挟む余地が見当たらない感じ。いや、そうじゃなかった……三人が放つプレッシャーがそうさせなかった。私達のパフォーマンスは誰にも邪魔はさせない。黙って見惚れていろって。絶望すら抱かせてしまうボスグループとしてのPRIDEを誇示していく。

 楽曲に深みと安定感をもたらす村川さんの低音の歌声。甘く妖しい色香のある小悪魔感満載な田中さんの歌声、芯があって力強く瑞々しいLynnさんの歌声。ぶつかって取っ散らかりそうな三人の歌声だがそれぞれの良さがちゃんと際立つ。LIVEという場だとそれがハッキリと感じられた。

それに、痺れる格好良さと蠱惑的な妖しい色香を纏った迫力満点のダンスが視覚へ武力介入して来る。これらの情報が視覚と聴覚を通して脳ミソに情報として伝わって興奮へと誘われる。

 この世界観、楽曲のワールド、スリクスのゾーンは、これまでのアイプラLIVEとは一線を画す程に異質で強烈なインプレッションとして脳ミソに叩き込まれた。何もさせてもらえない完全敗北だった……


 

 10.(夜)Bang Bang/ⅢX


 引き続きスリクスさんのターン。この楽曲も振り切った中毒性のある変態楽曲。
初手の『Top of the Tops』がクリティカルヒットしてほぼ瀕死状態の所に、更なる強烈過ぎる一撃が客席を襲う。さしずめ、RPGのボスキャラの固有スキルとなる同一ターン二回攻撃と言った所かwww

ちなみに、こちらは行動不能(この楽曲も今の所コール挟める余地が無い)のデバフが掛かったままだ。ただ、コレはおそらくコンセプトとして、スリクスの楽曲にそういったモノ(コールの類)は似合わないというモノがあるのかもしれない。そうする事で他のグループとの差別化を図ったのかと。

スリクスにとっては、外部からのコールで干渉されるのは無駄なモノなのだろう。自分達の純粋なチカラだけで完全勝利とトップを目指す。そこにスリクスのアイデンティティが詰め込まれて演出になってる。不敵な格好良さと、内に秘めて青く燃え滾る炎の様な激熱さをスリクスはアクトのパフォーマンスに込めてた。見事だと膝を叩いて頭を抱えるしか出来ない……抗うのではなくただ振り回されるのが最善策なのかもしれん。

 ただ上手く歌うだけじゃ駄目、上手く踊れても駄目、それだけじゃこの楽曲はスリクスのステージとして成立出来ない。なら、何が出来るか?どうしたら徹底的に圧倒できるか。fran、kana、mihoの魂を感じられるのか。その成果がステージのいたる所に散りばめられていた。初めて見たからこそ、それらが色鮮やかに見えたのだと。

 ⅢXがアイプラLIVEに参戦するのは今回が初めて。その戦いは他のアイドル達とは明らかに違うボスグループとしてのシンプルだけれど圧倒的な強さを魅せ付けて魂に爪痕をきっちり刻み込んでいった。色んなインプレッションが脳ミソでぶわっと繋がっていって興奮になってたんだが、鳥肌が治まらなかった……
 

 

 11.パジャマパーティー/ぱじゃパ!


 『ぱじゃパ!』は、こころ×すみれ×千紗×すず×雫による越境グループ。それぞれの衣裳の上にパジャマの上着を羽織ってステージイン。立ち位置から察するにすみれ(夏川椎菜さん)がセンターという解釈で良いのかなと。

登場した五人(首藤さん、高尾さん、夏川さん、相川さん、豊崎さん)を目で追って、豊崎さんの姿に一番目を惹かれた。豊崎さんだけ上着の羽織り方が違っていて、肩を出す様に羽織っていてだな……エロ艶っぽかったのよ。

ただ、コレはこころのあざといモノ(※著者の偏見)を出そうとされていたのでなく、こころのリズノワ衣裳は肩部分に大き目な装飾があって、それを痛めない為に肩出す様な羽織り方をされてたのかなと。

 可愛らしさからもたらされる癒しにステータスを全振りしたこの楽曲。昼のLizNoirや夜のⅢXが魅せ付けた格好良さとの温度差が激し過ぎる。何だろうな。興奮して煮えた脳ミソを優~しく蕩けるまで揉みほぐされていく様な感覚に落とされる……コレは音源で聴いただけではそこまで落とされる感覚にはならない。実際に観て聴く五人の柔和でキュートな歌声とダンスが組み合って落とされる領域に誘われる。また、フューチャーベース調のメロディが沁み入る。

 ただ、可愛さを過度に出すと、盛り過ぎ感から逆に興醒めしてしまうし、単純な癒しの雰囲気を出し過ぎると物足りないインプレッションになってしまう。勿論、それらの演出で成立するアクトはあるんだけれども、ぱじゃパ!のパジャマパーティーというアクトではバランスを考えて立ち回らないと成立出来なくて観客のエモーションを揺さぶられないんだが、実際に体験すると……

ああ、可愛い。癒される。とにかくいい……とインプレッションの語彙力までも揉みほぐされて無力化された言葉を反復して五人の舞い踊る姿にどっぷり浸りきっていた。そうなれたのは、ぱじゃパ!の五人のパフォーマンスが絶妙な塩梅でもって魅せられたからなんだろう。

 終わった直後は、魂の浄化と言った方が正しい様な多幸感をこの身で享受していたのでこのアクトの詳細は憶えていない。前述の通り憶えていたのは、五人がただただ可愛かったという事しかない……

 


 12.(昼)未来模様/長瀬琴乃


 この楽曲は、LIVEで聴いたら涙が流れるか、グっと込み上げて来るモノを感じながら聴くのかなと予想していた。でも、そうはならなかったんですよね。自分の感覚が麻痺して鈍くなってたワケでもない。イントロのピアノの旋律で、ヤバい!何か込み上げて来てるって感覚が沸いて来たし、何なら歌い出しの橘さんの声も切ない感じだった。

でも、『未来模様』を聴いている間は、泣けるような感情が沸き上がって来る事は無かった。それは、このアクトが物足りないインプレッションだったからかと言うとそうでもない。コレは、あくまでも自分の解釈でしかないが……そもそも、この楽曲は泣かせようという性質を持っていないという結論に辿り着いた。

  辛い現実に立ち向かい、乗り越える為の一歩を踏み込んだ悲壮な決意を胸に秘めた琴乃。
それがこの楽曲に込められたテーマだと自分は音源聴いた時から思い込んでいた。琴乃の内面、あるいは過去の琴乃との対話に焦点を当てた楽曲。歌い方のアプローチを間違えると前述した様に悲壮な歌に聴こえてしまう。

ところが、LIVEで聴いて感じられたのは琴乃の内側=過去の琴乃が見えてこない。それは、橘さんの意識がもう一人の琴乃(過去)に向いていなかったのだろうと。どちらかと言えば、今の琴乃と境界を超えた魂の対話を橘さんは謳で伝えていった様に思えてならない。橘さんと琴乃はステージで内側じゃなくずっと遠くの世界……未来を見据えていたんだと。

『未来模様』は悲壮な覚悟と決意を謳う楽曲じゃない。喜びと希望の謳。だから泣かせようという性質は待っていない。橘さんは信じている。琴乃が橘さんの手を握り返してくれる事を。だからこの楽曲は未来の希望と期待に満ちていなければならなかった。何度涙を流しても拭い去って。それはこの楽曲の意志なのだ。

 橘さんの歌声は素晴らしかった。濃密で熱く滾る血が楽曲に流れていた。更に、見えないんだけど隣に琴乃も居て一緒に謳っていた。最初から最後まで音源のみで聴く『未来模様』を完全に凌駕していた。何度でも言うがこの楽曲は悲壮感を押し出した楽曲じゃない。クソ真面目で強情で不器用で危なっかしい……でも、思い込んだら一途な強さを持つ長瀬琴乃の過去と今……そして未来へ向かう決意がある。

 だからだろう。歌っている橘さんの顔が終始凄く晴れやかで楽しそうだったのは。橘美來から長瀬琴乃へ、長瀬琴乃から橘美來への『song for you』でもあったと。ステージから橘さんと琴乃が見えた無数の青く光る心の光の先は無限の可能性と未来が続いている。

 


 12.(夜)もういいよ/川咲さくら


 サプライズジャックしたⅢXも凄かったが、夜公演はこのアクトが全部持ってったと言っても過言じゃなかった。川咲さくらがバケモンたる所以を思い知らされたと言ってもいい程に圧倒された。

この『もういいよ』という楽曲は、さくらのポジティブな部分とネガティブな部分が魂の対話を経て昇華して未来の旅路に踏み出す楽曲。それと同時に、川咲さくらと菅野真衣との魂の対話をしている楽曲でもあった。キャストとキャラクターの境界を曖昧にしてステージで魅せるってのは昼の部の『未来模様』と同質だがこのアクトは違った。

先の項でも書いた様に『未来模様』では、橘さんの隣に寄り添う琴乃と一緒に歌っていたと。しかし、このアクトでは、川咲さくら=菅野真衣だったし、菅野真衣=川咲さくらの魂が完全にシンクロして謳っていた。演じる役に魂が引っ張られるって話があるがまさにそれだった。

おいおい……コイツとうとうおかしくなったか?と思われるでしょう。うん、今これ書いてる俺も自分でワケ分かんねぇ事書いてんなって自覚は大ありだ……

 妄想と暴論の域でしかないが……その領域を引っ張りだした要因は、菅野さんの意識が、『さくらの謳を謳う』から、『ステージにさくらとして立って謳う』決意をもって立っていた。演じるのではなく、川咲さくらの人生と魂を背負って添い遂げる菅野さんの覚悟でもあるのだろうなと。そんな決意と覚悟を持った人が歌う謳。昼の橘さんのソロを見ていて彼女も何か思う所もあったのでしょう。

 歌い始めから何かがおかしい。見えないんだけど……もう菅野さんから何かが出てたんだ。
このアクトを総評すると、尻上がりに歌声に力が出ていて、後半の盛り上がり方が尋常じゃなかった。1番は音源と大差ない感じの聴こえ方だったんだけど、サビに差し掛かった時、スイッチがいっぺんに全部入って、音源での歌から完全に逸脱して、何だ!コレッ!!!っていう迫力が歌に宿り…


血が流れる魂の絶唱の域まで昇華してた。


 歌声の音圧でぶん殴られた的な衝撃を感じた。血が滾ったし、身の毛がよだって鳥肌が立って治まらなかった……アニメ9話でさくらが歌った『song for you』の画が脳ミソによぎってた。でも……このアクトの最高潮になったのはコレじゃない。Dメロ(落ちサビ?)で一瞬無音になる箇所があるんだけどここでの間の溜め方が神懸かっていた。

音源だと、この箇所の無音は1秒~2秒程なんだが、あのアクトではなかなか菅野さんはラスサビを歌い出さなかった。で、客席も息を飲むかの様に押し黙って静寂が会場を支配する。ちなみに、この無音を長く設ける演出の提案は菅野さん自身によるモノだと仰られていた。

測ってたワケじゃないからどの位かは分からない……いや、測るなんて無粋の極みだ。その無音で、おそらく菅野さんとさくらは魂の対話をされていたのだろう。それは、何人も割り込んではならない神聖な儀式。巡り逢いの縁と出逢いに感謝してこれからの軌跡を共に駆けていくといった言葉を交わしたのかもしれない。それは、さくらと菅野さんにしか分からないモノ。


そして……無音の終焉が訪れ、彼女の吐息からの魂の絶唱が響き渡る。


 この短い時間で更に限界領域を超えて2段階目のブーストを発動させた。それは、ありとあらゆるしがらみから解き放たれたかの様に晴れやかで温かさすら感じられる魂の絶唱。そんなの聴かされちゃどうにもならない……ただこの人凄ぇなって言葉しか出ない。

持てる真価を全て出し尽くすかのようなエモーショナルな絶唱。会場全体を支配してコントロールする力に圧倒されて、アクトが終わった直後は胸の中がもぬけの殻になるほど燃え尽きた。

 川咲さくらもバケモンだが、菅野真衣もバケモンだった事を思い知らされた極上のアクトだった。

 


 13.les plumes/TRINITYAiLE


 満を持して、パシフィコ横浜のステージに降臨するTRINITYAiLE。
初手に切って来たのは、アイコンソングにしてアンセムである『Aile to Yell』ではなく、瑠依・優・すみれの絆と未来の刻への希望を謳う楽曲。この選曲は意外に感じたが、おそらく今回のLIVEのタイトルに銘打たれた『未来』を最も体現している楽曲だからチョイスされたのかなと。

そんなに見て来たワケじゃないけれど、何と言うかトリエルさんのパフォーマンスは安心感を抱いて観ている。この楽曲のテイストも相まっているからってのもあるのだろう。『約束』の参戦レポでも書いたが、雨宮さん、麻倉さん、夏川さんの清廉なハーモニーの聴き心地が堪らなくいい。瑠依、優、すみれが最も三人の息が合う楽曲を評した様に、キャスト側の三人もやりやすい楽曲なんだろうな。

 劇的で激熱な楽曲ではないんだけど、違うベクトルでもって熱い想いを沸き立たせてもらえる楽曲。この楽曲も、音源とLIVEで聴いた時の差がいい意味で大きい楽曲。奏でられて会場を漂う音に身を任せてドライブ感を体験出来る。

で、トリエルさんはやっぱり凄かった。素人の戯言でしかないが……この楽曲、難易度が特に高い部類の楽曲だと思うんです。早いテンポに感情の揺らぎをどこまで乗せられるかがキモになってる。それを掛け違うと淡々とした聴こえ方になると思う。それこそ、ちゃんと大空を翔けているドライブ感は創造出来ないし彼女達も翔べない。でも、見事に感情を乗せて翔んでいる。

 飾り気がなく、どこまでも真っ直ぐ。余計なモノは要らない。
彼女達の謳とダンス、それらの表現力で楽曲も世界観を見事に体現したステージ。それは、瑠依、優、すみれが、自分達の道を自らのチカラで切り拓いて翔けていくんだといった意志を刻み付けるモノだった。

 


 14.Magical Melody/TRINITYAiLE


 解釈はいろいろとあるでしょうが、このTRINITYAiLEver.はこれまでのTRINITYAiLE楽曲の集大成となる楽曲ではないだろうか。特に、巡り逢いの縁の奇跡に感謝を示す謳だと。

スピーカーを通じて低音が空間を揺らして、トリエル楽曲の真骨頂であるデジタルサウンドと相性抜群な、凛とした清涼感のある雨宮さんの歌声と、麻倉さんの甘さを効かせた柔和な歌声に、素直で伸びやかさのある夏川さんの歌声が折り重なっていって、一体感と高揚感を創造していく。

 誰の声も負けてない。勿論、いろんな加減はあるんだけども、三人全員全力出しても歌声が喧嘩せず三角形として成立する絶妙なバランスを醸し出している。ステージに視線を釘付けにして魅入ってしまいたい気持ちと、音に身を任せて踊らせたい気持ちとのせめぎ合いで、『どうすりゃいいんだコレ!!!』って頭抱えて悶えそうになる衝動を抑えたwww

間奏~ラスサビにかけて畳み掛ける様な三人の歌声。ここが突き抜けて羽ばたく様なイメージが湧いて来て堪らなく格好良かったのよね。ラスサビのパートはメロディが鳴り響いている中、三人のボーカルが冴えていてメロディに全然負けていない。むしろ、ボーカルがガンガンに主張している感じが痺れる。歌いたい謳がある。この三人にしか謳えない謳があるんだって。

 綺麗な音と歌声だった。でも、三人のパフォーマンスからは、譲れないPRIDE、退けない想いと魂が滾ってダダ洩れしていた様に思えてならない。音源ではそういった生々しい要素は出てないんだけど、このLIVEではそれを感じられた。それは楽曲が進化した事の何よりの証。


 それは、三人の想いと魂が魔力となり、謳に宿った奇跡。

 


 EN1.Gemstones/星見プロダクション


 星見プロ10人楽曲では、久しぶりとなる新曲。楽曲名の訳は、宝石へ加工する前の原石。
どこか落ち着いてしっとりとした沁み入る様な優し気な曲調。歌う10人も横一線に並んで、最初の立ち位置からほぼ動かず、紡がれた歌詞を噛みしめながら、語りかける様に歌っている姿が印象深い。

歌詞を深く読み捉える事が出来なかったが、穏やかだけど、背中を押してくれる様な決意と誓いの謳なのかなと思える。楽曲に銘打たれたGemstones=原石は星見の10人の事を指しているのだろう。彼女達はまだ宝石として輝いてはいないけれども、磨き方や加工次第で未知の輝きを放つ可能性に満ち溢れていると。

 曲後のMCで、佐々木奈緒さんが語られていましたが、この楽曲は麻奈に縁の深い楽曲だと。それを踏まえて見ると、原石という意味では麻奈もまだそうだったのだという解釈も成り立つ様にも思える。麻奈の日記にある楽曲について綴った項目があるが、その記述の中で、いつかたくさん後輩が出来たらこの楽曲はみんなで歌いたいという願いを綴っている。


琴乃はあるストーリーで、こう語った。


 麻奈は成仏してもステージにいてその存在を感じられると。そして、ステージで謳えばきっと麻奈に想いは届くと信じている。

 この楽曲がその楽曲がどうかは今の時点では分からない……仮にその楽曲だったなら、一緒に歌うという願いは叶わなかったけれど、意志と想いを継ぐ子達が謳ったあの刻は本当に尊くて素敵な瞬間ではないだろうか。

 そして、この楽曲もまだ真に完成してない未知の可能性を秘めた原石。ここから歌い継いでいってちゃんと血を流して輝かせられるのはこの10人にしか出来ない。5月に音源がリリースされた際には聴き込んで考えを巡らせようと思う。

 


 EN2.Pray for you/星見プロダクション


 ラストを飾るのは、祈りの謳であり、未来への希望と決意を謳うこの楽曲。
そんな謳を彼女達10人はどこへ伝えたかったんだろうか。麻奈の想いもあるだろうし、漠然な未来の刻への希望なのか。『IDOLY PRIDE』という存在なのか。多分、正解は彼女達の中にしか無いんだろうな。

 『私なりのプライド 魅せてやる』の箇所で拳を握って前に突き出す振り。あれ、いいんだよね。だからこそ試す。何一つままならない世界だからこそ、どこまで己のPRIDEを貫き通せるか。

…どこまで自分を信じて前に進んでいけるか。どんな未来が待っていても、今この瞬間に抗い続けて生き様を貫き通す覚悟や決意に満ちてて、生身の感覚がギュっと詰まっている。10人の生き様とPRIDEがちゃんとあるのを感じられなきゃ響いて来ない楽曲。だからこそ謳に血が流れて何かが宿るのかもしれない。器用で利口に何かをやろうとしなくてもいい。全身全霊を懸けて力の限り謳えと。

それもあって音源のみとは違った強さを現地で感じられたんだろう。アイドル達が持つ物語が増えて臨在間が増していく事で、詞の持つ意味が鮮やかに彩られていく。世界が彩られると言うべきか。

 彼女達が辿り着く先はどこなのか。ここから未来の刻ではどんな景色が待ち受けているのか。予想がつかない事もまた楽しみなのだと。

 


 あとがき


 終演して一気に疲労感が襲って来た。でも、それが滅茶苦茶に心地良かった。久しぶりになる声出し解禁となったLIVEは本当にクッソ楽しかったの一言に尽きる。失われていたモノが一気に還って来た嬉しさもある本当に素晴らしいLIVEだった。次のLIVEの開催が決定した事も発表されたのも喜ばしい事だ。

 

 

 

 最後になりますが……出演者の皆様、運営スタップの皆様、マナーをきちんと守って最高に楽しい空間を作り上げたマネージャー諸氏(参戦されたファン)に感謝を賛辞を。そして、この20000字越えのクソ長い怪文書を最後まで読んで下さった方……本当にありがとうございました。

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #21 Pray for you

 

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 Pray for you/星見プロダクション


 TVアニメ第12話(最終話)EDテーマ楽曲であり、アニメ版『IDOLY PRIDE』のフィナーレを飾る楽曲。
音源は各ストリーミング配信サイトや、2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録。エンディングテーマ楽曲らしさに溢れたスローテンポで落ち着いた曲調が印象深く、一つの物語を観終わって得られたカタルシスと共にじっくり傾聴したい楽曲になっている。

作詞は利根川貴之氏。作曲・編曲は北川勝利氏。月のテンペストの楽曲に携わる利根川氏にサニーピースの楽曲に携わる北川氏の両名が組んだ楽曲というのも、前述したフィナーレ感を助長させエモーショナルな感情を揺さぶられる要素だと感じられる。

利根川氏がインタビュー内で語られていたのは『NEXT VENUSグランプリ』が終わった後の楽曲という設定がすでにあり、“その後”感を意識して楽曲(作詞)制作されたという。

ちなみに……当初はこの楽曲をEDとして使用する予定は無く、完成した楽曲を監督が気に入ったとの事で最終話のED楽曲に採用されたという話がある。


 この楽曲において、まず目を惹くのがタイトルに銘打たれた『Pray for you』だと考える。
字面から、長瀬麻奈の楽曲である『song for you』との繋がりや続きを強く感じさせ『対』になるアンサーソングの関係にあるだろうと匂わせて来る。

タイトルは『あなたの為に祈る』の意。『あなた』や詞にある『君』の対象として真っ先に挙がって来るのは長瀬麻奈と思える。

祈りとは神との対話の意味もある言葉。まあ、神は大袈裟な例えだが……霊魂となって、10人の傍に寄り添っていた麻奈との対話や関わりはまさしく『祈り』と称するに相応しいモノ。その刻の思い出を総じて『誇らしい時間』だと。それは、痛みも含まれた過去を受け入れ感謝を示す事にも繋がっていて、『今を生きる明日を望む力になってるから』と、10人は未来の刻に希望と決意を滾らせ力強く謳う。


 だから迷わない 振り向かず行け

 Pray for you 私なりのプライド 魅せてやる

 ―星見プロダクション『Pray for you』より引用


 奇跡の刻は終わり、麻奈との対話はもう叶わない。だからこそ10人は歌う事で麻奈へ『祈り』を捧げるのだろう。ここの節で歌われる彼女達の歌声は、力強いといった表現では収まりつかない程に剥き出した叩き上げの魂が滾っている荒々しさを感じさせる。でも、それは表にだだ洩れしているのではなくそれぞれ彼女達の内に秘めて滾らせる。それは、この楽曲が創造する『静』の要素に秘めた『動』の激情の真骨頂だと感じさせる。

捧げた祈りは誓いを立てる事。麻奈へ誓い(約束)を立てる事で前を向いて駆け出す事が出来ると信じた。そうして、彼女達はいろんな事を乗り越える為の勇気を奮い立たせるのだろう。迷いを振り切れたが故に、突き抜けるほどに伸びやかで晴れやかな歌声は、天に昇った麻奈へ届けといった願いでもあるのだと。麻奈の幻影を乗り越えた彼女達の前にしか謳えない『song for you』のアンサーソングと言っても過言ではない存在感と説得力に満ち溢れたエモーショナルな楽曲だと打ちのめされる。


 本曲のラストフレーズの歌声が本当に素晴らしい。『Pray for you』の部分、言の葉を大切にして消え入る様に吐息を残す。それは、優し気な微笑みから醸し出される様な歌声に聴こえて来る。アニメ版を彩った数多の楽曲の締めとしてこれ以上ないのではないだろうか。


 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #20 サヨナラから始まる物語

 

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 サヨナラから始まる物語/星見プロダクション


 TVアニメ第12話(最終話)挿入歌。作中では、『NEXT VENUSグランプリ』同時優勝を成し遂げた、月のテンペストとサニーピースが、ウイニングステージにてこの楽曲を歌った。

この楽曲は、2020年8月30日にIDOLY PRIDE公式チャンネルで公開された『IDOLY PRIDE ミュージックプログラム #1』で発表された。作詞と作曲は、大石昌良オーイシマサヨシ)氏が担当。
IDOLY PRIDEという作品は知らないがこの楽曲は知っている。または、聴いた事があるという人は多いのかもしれない。あと、この楽曲を切っ掛けに『IDOLY PRIDE』を知り惹かれた人も多いのではないだろうか。

音源は、各種ダウンロード・ストリーミングサイトでの配信及び、2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録。そして、3rdアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』のボーナストラックにて、牧野航平(CV:石谷春貴)、三枝真司(CV:小山力也)、朝倉恭一(CV:速水奨)による限定ユニット『spring battler』が歌う『サヨナラから始まる物語(春闘 short ver.) 』が収録されている。


 曲調は、キャッチ―なメロディに小気味いいリズムを奏で爽快感満載なロックテイスト。ただ、曲題に『サヨナラ』と銘打たれている事から、単純に明朗快活なだけではなく、切なげな要素も感じさせるけれども、それを乗り越えて進もうという起伏に富んだドラマチックで、外連味無い王道的なアイドルソングとして仕上がっている印象。それは『IDOLY PRIDE』の特筆すべき物語の核となるモノでもある。

歌詞のテーマに大石氏が掲げたのは『奇跡みたいな出逢い』。それを強烈に実感させられるのは、アニメ(ゲーム星見編)のストーリーが終わって聴くと、登場するキャラクター達との縁の巡り逢いと別れを想起させていく仕掛けが組み込まれていた。


 その巡り逢いと別れを象徴する存在だと自分が解釈しているのが、作品においてスペシャルワンのアイドルである長瀬麻奈。そして、星見プロのアイドルで麻奈と繋がりが深いのが妹の琴乃。彼女の心臓を移植され生命を繋ぎ止めたさくら。幽霊となった麻奈を認識出来て交流を深めた芽衣。間近で麻奈の背を追い続け、彼女が果たせなかった成果を勝ち取った遙子。

自分の手前勝手な一つの解釈でしかないが……この楽曲の詞は、琴乃、さくら、芽衣、遙子の心情に結構寄り添っているインプレッションを抱いた。サビの一節にある『胸の奥に刺さった切なさが痛いけど』や『言えなかった言葉がまだたくさんあるよ』は、麻奈に直接伝えきれなかった想いの丈を代弁しているかの様でもある。このパートを遙子が歌っているのが何とも胸熱で激熱なエモーションを感じさせる。

麻奈と関わり合った過去の刻には絶対に戻れない。当然、麻奈だってそう。人も世界も変わっていくモノ。人は終わらないモノなど無い事を知っていて進み行く刻の流れには抗えない。だからこそ『サヨナラ』(さようなら)という言の葉でもって、一つの終着点として決着を付け、未来の刻が始まり進んでいく意志を示すのだと。そこには、巡り逢いの奇跡に感謝する意味も込められていると。


 その巡り逢いの奇跡に感謝しているのは、琴乃、さくら、芽衣、遙子に限った話じゃない。他のメンバー達も同様で、この10人にしか紡げなかった物語があり乗り越えられた事ばかり。様々な想いが彼女達の心の中に渦巻いていた。そして、この作品のテーマの一つとして掲げられた長瀬麻奈という存在を乗り越える運命を背負った者達でもある。

星見プロの10人で勝ち取った『NEXT VENUSグランプリ』同時優勝は一つの夢の終着点でもあるが、新たな夢への軌跡が始まった瞬間。それは麻奈を乗り越えた先に立つ事が出来た事に繋がり、最終話のクライマックスで謳われた事によって、10人の成長譚は集大成を迎える描写になっている。

その最たるモノが、月のテンペスト&サニーピースの『NEXT VENUSグランプリ』同時優勝という前代未聞とされる奇跡を起こした事へ結びつく。この楽曲が素晴らしいのは言わずもがなだが、1話から最終話までに紡がれて来たストーリーが組み合わさっていって、それを見て知っているとより痺れるカタルシスを得る。


 故に、星見プロの10人が紡いだ物語の軌跡の一つの到達点として『サヨナラから始まる物語』という楽曲があると言っても過言ではない。この楽曲はそんな説得力に満ち溢れた楽曲だと思えてならないのである。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #19 The One and Only

 

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 The One and Only/月のテンペスト


 TVアニメ第11話挿入歌。この回で描かれた『NEXT VENUSグランプリ』セミファイナルにて、月のテンペストが歌った楽曲。音源は、各種ダウンロード・ストリーミングサイトでの配信及び、2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録。

 幻想的で煌びやかな風情があり、なおかつ、月ストの物語の集大成を思わせる様な壮大さを醸し出している曲調。まるで、あらゆるしがらみやら迷いから解脱した五人の魂が嵐が過ぎ去った後の夜空を翔けている様な清々しさを感じさせる。そこに、月ストの五人の歌声が楽曲に血を流す。

この楽曲において、彼女達が意識しているのか、もしくは歌う際に受けたディレクションなのかは分からないけれども彼女達の歌い方として印象深いのは、歌詞を紡いでいる言葉を、優し気に寄り添い大切に語りかける様に歌っている事だと思える。

その語りかける対象として真っ先にイメージされるのは、月ストのリーダーである長瀬琴乃だと考える。TVアニメ版の全体的なストーリー展開の主軸を担っていた要素は、麻奈、琴乃、さくらに関わっている縁(因縁・因果)。

その中で琴乃は、長瀬麻奈の幻影という因縁と呪縛からの解放(=自立)という成長のテーマが存在している。曲題に銘打たれた『The One and Only』の和訳である唯一無二とは、琴乃が悩んで必死に抗いながらも、麻奈の幻影の先が見えて踏み出せた末に掴んだ答えであり、アイドル・長瀬琴乃としての未来への誓いの言葉でもある。それを象徴していると思えるのが以下の節だと思っている。
  

 誰かの真似じゃない自分の場所探せ

 『追いかける』じゃなくて自分の道歩め

 
 ―月のテンペスト『The One and Only』より一部引用


 長瀬麻奈の替わりではなく、長瀬琴乃としてきちんと輝くという事。
その答えを掴み取れたのは同じグループを組んでいる、渚、沙季、すず、芽衣という巡り逢いの縁がもたらした要素。それと、月のテンペストでトップアイドルを目指すという月ストの五人にしか描けない物語であり彼女達だけの夢という捉え方も出来ると思う。

ただ、彼女達は最初から強かったワケでは無かった。詞にある様に何度もつまずいて立ち止まっていくつかの傷を負う……でも、刻を経て、その傷跡も意味のある愛おしいモノとして彼女達は受け入れる程に強くなった。

そんな琴乃達の生き様を宿したキャスト側五人のボーカルは、優し気で寄り添うかの様な『静』の極致から、一転してサビで澄み切った夜空を翔ける解放的な『動』の極致へと抑揚を聴かせ、彼女達の歌声の力強さに感服させられる。

 冒頭でも言及したが、この楽曲は月ストの物語の集大成を思わせる楽曲。
アイドルとしての居場所を見つけ、輝く事の意味を知り邁進する叩き上げの魂を謳う『月下儚美』。仲間との絆と違う輝きも許容する深愛の情を謳う『Daytime Moon』。そして……自分らしく自分の道を切り拓いていく意思を謳う『The One and Only』。月スト楽曲の系譜にあるこの三曲の詞を読んでいくと、作中での月ストメンバーの境遇や心情に寄り添ったモノになっている。

それぞれが『唯一無二の輝き』を見出して、仮に彼女達の軌跡を遮るモノがあったとしても、信念をもって駆け出し、強靭な意思で天を駆け上がろうとする様が劇的に描かれている。

 コレは、自分の暴論&妄想の域でしかないのだが……どこかこの楽曲は、キャラクターの魂とキャストの魂がリンクしていく印象が強い。長瀬琴乃、伊吹渚、白石沙季、成宮すず、早坂芽衣によるキャラクターソングであるものの、彼女達を演じる、橘美來、夏目ここな、宮沢小春、相川奏多、日向もかの視点や現状とも多分に重なり合っている様な……双方の境界が混ざり合って曖昧になる様な感覚に魅力を感じる。以下の節は双方の繋がりの強さを謳っているのではないだろうか。

 

 一番側にいた 君がいてくれた
 
 迷いない笑顔の理由 月の光


 ―月のテンペスト『The One and Only』より引用


 『君』とは様々な解釈が成り立つが、キャラクター達からキャスト側へ、そして、キャスト側からキャラクター達へ……双方への掛け替えない巡り逢いの奇跡への感謝を謳っている様に感じさせるエモーショナルな感情を揺さぶられる素晴らしい楽曲。

ただし、この楽曲にきっちりと血を流せるのは、長瀬琴乃、伊吹渚、白石沙季、成宮すず、早坂芽衣であり、橘美來、夏目ここな、宮沢小春、相川奏多、日向もかにしか出来ない。単なる技術だけではなく、そこから的確な感情表現や感情描写へ結実して歌声の昇華へと至る。

 セミファイナルにて、サニーピースが歌った楽曲『EVERYDAY! SUNNYDAY!』が、サニピを取り巻く全ての縁と時間軸に意味を持たせるサニピにしか謳えないサニピだけの『アンセム』であった様に、月ストが歌う『The One and Only』も、月ストにしか謳えない月ストだけの『アンセムであり、または“生命の謳”と称して過言ではないと思っている。


 だからこそ、この楽曲は、誰のモノではない、月ストの為の月ストの『唯一無二』な楽曲であると納得出来る事実がここにあって、聴く人の魂を揺り動かすのだと。