巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #14 les plumes

 

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 les plumes/TRINITYAiLE



 TVアニメ第10話挿入歌。作中では、TRINITYAiLEが『NEXT VENUSグランプリ』・セミファイナルで披露した楽曲となっている。曲題の『les plumes』(レ・プリュム)とは、フランス語で『羽』(羽根)の意味。

鈴村優は『この曲が一番うちらの息が合う』と評し、奥山すみれは『目を瞑っていても瑠依達がどう動いているか分かる程』と優と同じく高い評価をしている。瑠依の方からこの楽曲について言及はされていないが、おそらく、優やすみれと同様の評価をしているだろうと考えられる。

 曲調の方は、『Aile to Yell』の系譜に連なっていく奇を衒わないデジタルポップ。
彼女達が大空を翔ける様なドライブ感を彷彿させる爽快さに、風が吹き抜けていく様な清涼感のある綺麗な音とハーモニーを響かせる。力強くもあるが沁み入る様な優しさもあって、両方の要素が絶妙に混ざり合った結果、聴き心地の良さと中毒性を醸し出している。


 『Aile to Yell』では、トリエルからファンに向けて謳う応援歌(エール)としての属性があり、彼女達が導き手となってファンと一緒に高みを目指そうという意味が込められ、双方向への想いの循環を謳っている。(詳細は『Aile to Yell』の項に譲る)

一方、『les plumes』で要となっているのは、瑠依・優・すみれの絆の深さ。そして、絆を尊重してこの三人にしか掴み取れない未来への希望と、そこからの軌跡を自らの手で遥か高みへと切り拓こうという意思の強さ。

この楽曲のMVにて、彼女達が色や柄などに彩られていない透明な旗を持って大空を翔けているのは、未来は与えられたり決まっているモノではなく、自分達の生きた証でもって旗を彩るという志の高さを表している……『つくりものじゃない未来』や『紛いものじゃない世界』という詞があるが、高潔かつ清廉であり続けようというTRINITYAiLEのアイデンティティを象徴している部分にも結び付く。


 タイトルの和訳の『羽根』が指しているのは、瑠依、優、すみれ自身という『個』なのだろう。『羽根』というモノは鳥の翼を構成している羽毛の1本1本の事を指している事から、彼女達の『個』、つまりは内面をクローズアップした楽曲だと自分は解釈付けた。彼女達が直向きに目指した、愚直なまでに求めたアイドルの姿。

勝ち続けなければ、飛び続けなければ何も得られない。真っ直ぐな双眸で謳う、瑠依・優・すみれの姿からはそれこそがアイドルとしてのPRIDEだと教えてくれているようだ。


 実は……この楽曲(音源のみ)を初めて聴いた当時、自分にとって印象の薄い楽曲だった。力強さと沁み入る様な雰囲気が整い過ぎている様に感じて、どうにも味気ない印象の方が勝っていた。もっと振り切れた楽曲でも良かったのではないかと。

しかし、アニメやその続きの時間軸を描いた続編となる東京編、TRINITYAiLEのサイドストーリーを、ゲームでプレイし、トリエルの物語を知っていって、改めてこの楽曲を向き合った時、自分が馬鹿だった事を痛感させられた。それは朝倉社長が言っていたアイドル=トリエルの物語を自分は軽視してしまった事に他ならない。

彼女達は、止まりたくないと思うのと同時に、もう意識的に止まる事が出来ないのだろう。トリエルの輝かしい未来を信じて、ただひたすらに高く飛び続けて進むしかない。



 この三人(瑠依・優・すみれ)なら最高の景色が見られる事を信じている……いや、歌詞からアイドルの想いとPRIDEに想いを馳せるのは無粋なのかもしれない。『素晴らしい楽曲』だと。この楽曲に対して最高となる賞賛の言葉はそれだけでいいのかもしれない。

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #13 song for you

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song for you/長瀬麻奈(CV:神田沙也加)


 TVアニメ第9話エンディングテーマ。第12話(最終話)挿入歌。
9話のエンディングはサニーピースによるバージョン。12話では長瀬琴乃のソロバージョン。長瀬麻奈が謳う本来のバージョンは、IDOLY PRIDE Collection Album[奇跡]に収録されている。本稿では、麻奈・琴乃・さくらが歌ったバージョンも語っていく。

自分が『IDOLY PRIDEを象徴する楽曲と言えば?』と訊かれた際真っ先に答える楽曲。この楽曲が自分にもたらした衝撃は絶大だったし、おそらくは、『IDOLY PRIDE』を知って、アニメを観た人は誰しもが自分と同様の衝撃的なインプレッションを抱いたと思う。

アイプラ楽曲では稀少な、ミディアムテンポのバラード調。ピアノとストリングスを軸として奏でるメロディが壮大さと重厚感を醸し出している。作曲を担当されたさかいゆう氏は、楽曲制作でイメージした事、こだわったポイントについてこう語っている。

 

 

 いただいた台本の印象を大事に、ファンタジーとリアリティ、生と死の境目をイメージしました。

 そんな境目を表現するために、メジャーコード、マイナーコードのようなわかりやすい響きではなく、どちらとも言えない空気感をどのように作ろうかと、悩んでいたときに、このイントロが降ってきました。(中略)

打ち込みやシンセなどの音を一切使わず、生楽器の抑揚だけでドラマティックな世界観を表現することができたと思います。

 

 

 

 聴いた際、特に印象深かったのが、メロディのそこかしこに心臓の鼓動(=生命の鼓動)を思わせる様なリズムを刻んでいる所。この鼓動を刻むリズムという部分が、さかい氏が言う生と死の境目の答えであり、更には『IDOLY PRIDE』の重要なテーマにも通じていると自分は捉えている。

命に換えても、マネージャを引き受けてくれた事を後悔させないと牧野に誓いを立てる麻奈。作中の描写では作詞を彼女が担当している。静かで切なさを感じられる旋律で始まって、徐々に盛り上がっていく様は、三者三様のPRIDEと決意を表す力強い旋律へ進行していく。勿論、詞の方も曲調とリンクしていく進行になっている。

サビ始まりの『song for you』が、徐々に盛り上がる部分の最高潮で、そこから歯車が噛み合って勢いを増して回り出す様に、旋律と歌声の力強さも増していく。2番サビが終わって、間奏へと進行して大サビで、感情を爆ぜさせる様に解き放つ歌声は絶唱の域へと昇華していく様は、ただ圧巻と言うしか出来ない説得力がある。

そして、長瀬麻奈(CV:神田沙也加)・長瀬琴乃(CV:橘美來)・川咲さくら(CV:菅野真衣)の歌声が、楽曲に血を流して命を吹き込む。この楽曲は、三人の歌声の質によって異なる解釈が可能なトリプルミーニングが成されている。歌う者によって、想いを届ける対象が変化していく要素は、この楽曲がより沁み込んでエモーショナルなインプレッションに繋がっていくポイント。


 曲題となっている『song for you』、訳すると『あなたに贈る謳』。または、『あなたの為に謳う謳』。さくら、琴乃、麻奈は、それぞれに抱く意味と想いを込めている。


 麻奈の心臓を移植されて生命を救われた事。そうして今、当たり前に日常を過ごせているという奇跡への感謝、全ての刻と巡り逢いの縁への感謝も込め、さくらは謳う。受け継いだ麻奈の歌声で謳うのはこの楽曲で最後にする決意と覚悟も込めて。牧野と芽衣を介して間接的にだが、麻奈と対話出来た事でさくらの心情が変化したからだと思える。

サニーピースverで響かせる菅野真衣の歌声は、他のサニーピースの楽曲とは明らかに違い、明朗な可愛らしさは鳴りを潜めている。麻奈の歌声から一人立ちして変わろうとする誓い……肚を括った。そう感じさせる歌声に聴こえて来る。さくらを除く四人がサビ以外では歌わない構成になっているのも、この楽曲を謳うさくらのアイドルの自我の覚醒と自立というテーマに則っているからだろう。


 『song for you』を麻奈の代わりとして謳う。それは、琴乃がアイドルの軌跡を駆ける為に燃やし続けていた燃料。つまりはアイデンティティと称しても良い。だが、その強過ぎる想いは麻奈の幻影という呪縛となって琴乃を縛ってしまった。

おそらくは、琴乃自身も薄々感じていたはずだ。麻奈への想いが深すぎて本来の想いを置き去りにして麻奈の幻影の先を見る事が出来なかった……いや、敢えて目を背けていたのだろう。
それは、一人のアイドル・長瀬琴乃がまだ何者でもない無価値という現実と向き合う恐怖もあった。

でも、弱さを認めて受け入れて、ただ直向きに努力して支えてくれる仲間の想いに応える事で、琴乃は答えに辿り着いた。麻奈の代わりではなく、琴乃にしかなれない本物のアイドルになる決意を。

琴乃の『song for you』。麻奈への感謝の為に謳うというのはさくらと同様なモノだが、琴乃の苦悩、悲哀、麻奈に酷い言葉を浴びせてしまった事への贖罪……そして、未来への希望と真のアイドルを目指すという誓いを込めて謳う。ステージで謳えばきっと麻奈に届くと信じて。

麻奈の代わりではなく長瀬琴乃として『素』で勝負する……荒削りだけれども真っ直ぐな橘美來の歌声からは剥き出しの本気の想いを感じるのである。そして、琴乃の想いともリンクしていって麻奈の声を聞くという奇跡へと昇華していく。


 長瀬麻奈も、琴乃やさくらと同じく数多の感謝を込めて詞を綴った。
琴乃への深愛の情、支えてくれる身近な周りの人との縁とファン。歌う事への感謝もある。故に、麻奈は1話にて『私は、いろいろ背負っている』と言った。一人のアイドルだが、一人のアイドルじゃない。それこそが長瀬麻奈が貫き通したPRIDEでもあった。

そして、麻奈が綴った想いは感謝だけじゃなかった。最も近くに寄り添って共にアイドルの軌跡を駆けてくれた牧野航平への感謝と恋慕の情も込められている。(と……言うよりも、彼への想いにウエイトを寄せている気はする。)最終話で牧野との別れのシーンを観た後で聴くと、牧野に贈るラブソングだったのだろうと思えるのだ。



 さくら(サニーピースver)や琴乃が謳うバージョンも、言わずもがな素晴らしいモノで本当に優劣の付け様が無い。その事実を踏まえてもなお、神田沙也加の謳う本来のバージョンの説得力はずば抜けている。麻奈がさくらに説いた『私の歌は私だけのモノだから!』と言い放つだけの事はあったのだ。

それは、経験や技術を凌駕した想いの力が歌声に乗って、楽曲の限界領域を超えたPRIDEの証だと思えてならない。

 


 この楽曲こそ、神曲揃いのアイプラ楽曲の中でも、至高と評するに相応しいのは過言ではない。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #12 Daytime Moon

 

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 Daytime Moon/月のテンペスト



 TVアニメ第8話エンディングテーマ。


 月ストの二曲目となる楽曲。原初の楽曲『月下儚美』とは一転した、明朗かつポップな曲調が印象的で、曲題の『Daytime Moon』=昼の月と称すのに相応しい楽曲。原初の楽曲『月下儚美』のスタイリッシュでクールな雰囲気から一転させた楽曲を二曲目に持って来るというのは、サニピの二曲目『Shining Days』と同様。


 この楽曲を語っていく上で、まずは8話の内容に触れておく必要がある。
デビューを果たした月ストとサニピは共に、『NEXT VENUSグランプリ』の予選を通過して本選出場が叶った。そんな中、麻奈にそっくりな歌声を持つさくらを、世間は『長瀬麻奈の再来』と話題にし始め……琴乃とさくらの関係に軋轢が生じてしまい、更に、琴乃はグランプリに出場する事の意味とアイドルとしての存在価値を見失う。

そんな思い悩む琴乃の魂を救う為に、渚、沙季、すず、芽衣が動く。
渚が言った『みんなね、琴乃ちゃんの歌声が好きなんだよ。麻奈さんの事は関係なく、琴乃ちゃんと一緒に歌いたい』というこの言葉に、渚、沙季、すず、芽衣が琴乃を想う信愛の情が溢れている。

琴乃も仲間達の信頼に応えたいと願い、変わろうとする一歩を踏み出し本戦へに臨む。直接の描写が無い為、個人の妄想の域であるが……本戦にて歌ったのがこの楽曲だと自分は考えている。ざっくりしているが、ここまでの流れが8話で描かれた物語。


 詞を読み進めていくと、この楽曲は近しい存在にある人物を想う絆の謳。その近しい存在にある人物は、言うまでもなく長瀬琴乃ではないだろうか。公式での設定及び描写が無く、これもまた個人の妄想の域でしかないが……この楽曲の詞を書いたのは渚ではないかと思っている。

伊吹渚という人物は、他者と触れ合って繋げる『鎹』の様な人物。親友としてずっと琴乃を見ていたし、月スト全体見ていた。詞に綴られた言の葉からは、包み込む様な優しさに溢れたモノとなっている。

昼間にあっても月が見えるのは、月の光そのものが強くあり、太陽の光を反射して輝いているから。そして、地球から近い星であるからとも言われる。それらの関係性は琴乃自身の輝きであり、渚と琴乃の縁の繋がりの暗示であると考えざるを得ない。


 1・2番共に、琴乃のソロから始まり、メンバーがそれに追随していく形でソロパートは進行していく。
琴乃が苦悩している心模様を、渚、沙季、すず、芽衣が琴乃を肯定する想いを込めて歌声を繋ぐ。夜の闇に輝くだけが月の存在価値ではない。

昼に見える月にも存在価値がある。ネガティブな要素を謳いながらも、前に進む為に違った輝きを受け入れようとするポジティブな要素へ変換する謳になる。

それは、仲間との絆の再確認と、新しい輝きの在り方に気付いて魂が新生された琴乃とリンクしている様でもあり、そうなって欲しいと願う渚の想いが織りなした楽曲なのだと。

 出逢ってからここまでの刻、最も長く琴乃を見て寄り添った渚だからこそ、紡げる言の葉があっただろうし、伝えたい言の葉があったのだろう。この楽曲を聴くとそんなインプレッションを抱かずにはいられないのである。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #11 Shining Days



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 Shining Days/サニーピース



 TVアニメ第7話エンディングテーマ。


 『SUNNY PEACE HARMONY』から一転して、こちらの楽曲は夕暮れ刻もしくは、雨上がりに差し込む陽の光を想起させる。雨雲の切れ間から差し込む柔らかな太陽の輝きになぞらえている曲調は、EDテーマらしい爽快かつ落ち着いたインプレッションを抱かせる。

そんな世界観を忠実に表現する様に、楽曲を構成している音も優しく柔らかいモノになっている。そこに、サニピメンバーの歌声が言葉を零さぬように切々と歌を紡いでいく。サニピは落ち着いた楽曲を落ち着き過ぎない様に表現していくのが上手い様に思える。それを違和感無く楽曲に落とし込んでいる。


キャスト達が、サニピというグループの持つ明るくキュートなイメージを忠実に表現している事も当然ある。それぞれの声質を理解し、楽曲への対応を皆が熟考して突き詰められたからこそ歌声の輪郭はぼやける事無く、丁度良い塩梅になっているのだと。



 楽曲との対話には、メロディのみでなく歌手による歌詞への理解も必要不可欠。
『SUNNY PEACE HARMONY』では、ステージ上で輝くアイドルとしてのさくら達の姿を想像するのは容易なモノだった。『5つのピース 重ねれば 星になるんだ』と目指す夢に向かう少女達の想いがきっちりと作品に結びついている。

この『Shining Days』は角度を変えていて、サニピの五人の心の情景に寄り添う表現をしている内省要素の強い楽曲。『不安』『涙』『見失いそう』『諦めそう』。これらのネガティブなキーワードは、雨雲に隠れた太陽を想起させる。デビュー前、もしくは日々の生活にて彼女達が抱えている不安や葛藤の比喩なのだろう。


 そんな不安や葛藤をそれぞれが受け止めて、未来への希望を胸に抱き前に進むべく道を駆けだす。雨雲の切れ間から差し込んで来る陽の光の温かさと、青空の爽快感を思わせる五人の歌声が一つにまとまったハーモニーへの昇華は、彼女達の魂がそれぞれ違う想いを持ちながらも、同じ志で重なっている事を示している。

個人の印象ではあるが、この楽曲では五人の内の誰かの突出した歌声が聴き所という感じはない。どこかノスタルジックで柔和な歌声が自分の魂に沁み込んでいく。その要素は『SUNNY PEACE HARMONY』とはまた違うモノ。



 楽しい事も、辛い事も、サニピの身の回りに起きる事全てを楽しむ。そうする事で輝かしい未来の刻(Shining Days)がきっと巡って来る。雨上がりの空を見上げるサニピの五人の双眸にも希望の光が輝いているのだろう。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #10 Shock out, Dance!!



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 Shock out, Dance!!/LizNoir


 バンプロダクションに所属する、神崎莉央(CV:戸松遥)、井川葵(CV:高垣彩陽)、小美山愛(CV:寿美菜子)、赤崎こころ(CV:豊崎愛生)の四人によるアニメ版(星見編)における、ライバル(ボス)グループの一角『LizNoir』の楽曲。*1

LizNoirの楽曲では、一番早い時期に発表されリリースされている。アニメ版では第3話の挿入歌であり、作中で当時の時間軸では、小美山愛と赤崎こころは当時はまだバンプロの養成所のアイドル候補生だった為、3話にて歌っているのは莉央と葵のデュエットになっている。*2

 LizNoir楽曲の系譜で、大きな特徴として挙げられるのは、アグレッシブな激情を謳うハードロックテイストとちょっとした影の要素を感じさせるビートが激しい変態性の強い楽曲揃いで、この二つの要素はリズノワ楽曲の主軸を担っている。

星見プロ、月スト、サニピ、トリエル……そして、長瀬麻奈の原初の楽曲は、そのグループや個人が持つアイデンティティを示す『アイコン』(象徴)として確立させていると感じられる。

グループの紹介文にある比類なきパフォーマンス(=Dance)で魅せる(=驚愕させるの意=Shock out)。楽曲タイトルの訳は違って来るが……リズノワ原初の楽曲とされるこの楽曲も他のアイドル達に違わずリズノワ楽曲の『アイコン』としての役割を担っているのだと。


 前述にもあった様にこの楽曲は、影の要素(=負の感情)を忌憚なく盛り込んでいる。
象徴しているのが、詞にある『痛み』という直接的な言葉に、痛みを想起させる間接的な言葉の羅列ではないだろうか。それを立証しているのが神崎莉央と井川葵が辿って来たアイドルの軌跡。



 Don't stop Dance 誰もが痛みを抱えてる

 もう会えない人に会いたがる 

 No no! さあ心を闇から取り戻せ

 新しく始まれ 生まれ変われ My dream!


 ―Liznoir 『Shock out, Dance!!』より引用



 ド直球なここの節に、この楽曲の真髄がある。受け入れ難い痛みを受け入れて前に進まなければならない。でも、それが出来ない。ここで示している痛みとは、作中で麻奈の他界という現実を受け入れられず、アイドルから身を引く決意を固めていた莉央の心情だったり、莉央が再びアイドルとして戻って来る事をただ信じて待ち続けていた葵の心情とリンクしている節の様に思える。

推測の域を出ないが、『もう会えない人に会いたがる』の会えない人というのは、長瀬麻奈の事なのだろう。もう会えない人と謳う時、莉央は麻奈への想いを込めて謳っているに違いないと。

そして、受け入れがたい痛みを受け入れ再起する心情も綴られている。莉央が再びアイドルの軌跡へ復帰した事だったり、愛とこころというLizNoirの新しい血が加わり四人のLizNoirとして、新しく生まれ変わる決意も込められているのだろう。これは、莉央の魂の再生を謳う楽曲でもある。

 

 

 

*1:愛とこころは結成当初からのメンバーではなく、アニメ最終話のエピローグにて加入。

*2:この楽曲の莉央&葵バージョンの音源はリリースされていないが、公式YouTubeチャンネルに莉央&葵verによるバーチャルライブがある

アイプラ楽曲ライナーノーツ #9 Aile to Yell

 

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 Aile to Yell/TRINITYAiLE



 天動瑠依(CV:雨宮天)、鈴村優(CV:麻倉もも)、奥山すみれ(CV:夏川椎菜)の三人で構成されたアニメ版(星見編)における、ライバル(ボス)グループの一角とされる『TRINITYAiLE』の楽曲。

アニメ第4話の挿入歌であり、4話サブタイトル『もっともっとボリュームを上げて』はこの楽曲の詞の一節である。

グループ名と楽曲タイトルの双方に冠される『Aile』はフランス語で『翼』の意。『Aile』と同じ読みである『Yell』は一般的には英語で『応援する』の意。もしくは『大声を上げる』の意。更には、メンバーが纏っている純白の衣裳『シュヴァリエール』(仏語で騎士の意)にも掛かっているのかもしれない。

直接の言及がない為憶測になるが……最初のグループ紹介の動画内にてBGMとして流れていた楽曲である事から、おそらくトリエルにとって原初の楽曲だと。


 星見プロ(月のテンペスト、サニーピース)の楽曲の雰囲気とはまた違い、軽妙洒脱な趣のあるEDM調で構成された曲調が翼を羽ばたかせて大空を翔けるインプレッションをリスナーにもたらす。そして、グループのイメージとされる清廉で純然な気高さにも結び付いていって、トリエルの名刺代わりの一曲……つまりは『TRINITYAiLE』の『アイコン』(象徴)の役割を担う楽曲だと感じさせる。

作詞・作曲されたKZ氏曰く、ライバル(ボス)グループの楽曲という事で、ライバルとしての矜持であったり強さを持たせる事を意識されて制作したと語っている。三人が自分自身を信じてファンを応援して引っ張っていく翼として『応援する為の翼』という意味を持たせたと。


この『応援する翼』という言葉に、この楽曲の精髄が詰まっている。それを象徴しているのが、歌詞の至る箇所にある『君』と『私』という語句だ。


 前述の通り、アイドル側(トリエル)からファンへ贈る応援歌(エール)としての属性が強いのだけれども、アイドルとしての、瑠依・優・すみれから、一人の少女でもある、瑠依・優・すみれへのエール。一人の少女である前にアイドルでもあり……一人のアイドルである前に少女でもある双方向へのエールという意味を含むのだと。魂の片割れが共に存在する限り、瑠依・優・すみれが翼を失う事は無いし、彼女達自身が翼を失わない為でもある。

詞を読み進めていくと、単に煌びやかな要素で綴られているのではなく、ステージで輝く為に弛まぬ努力を重ね続けている心情が綴られているのが読み取れると思う。それこそが、朝倉社長の云うアイドルの物語。即ち、TRINITYAiLEにしか紡げない物語なのだと。この物語が成立しているからこそ歌詞のみならず、高潔で軽妙洒脱な曲調が映える。



 だからこそ、この楽曲はTRINITYAiLEにとって、彼女達のアイドルとしてのアイデンティティとされる『アイコン』(象徴)。彼女達からファンへ、または、彼女達自身へのエール(応援歌)でもあり、そして……TRINITYAiLEとしてのPRIDEを証明する『アンセムとしての強さを醸し出しているのだと言っても過言では無いと思える。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #8 SUNNY PEACE HARMONY



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 SUNNY PEACE HARMONY/サニーピース


 星見プロダクションに所属する、川咲さくら(CV:菅野真衣)をリーダーとし、白石千紗(CV:高尾奏音)、兵藤雫(CV:首藤志奈)に、マネージャー(牧野)がスカウトした一ノ瀬怜(CV:結城萌子)と、四人よりも先にアイドルデビューしていた佐伯遙子(CV:佐々木奈緒)によるアイドルユニット『サニーピース』のデビュー楽曲。

アニメでは、デビューLIVEを描いた6話、7話、『月のテンペスト』と殴り合った競い合った『NEXT VENUSグランプリ』の決勝を描いた最終話(12話)の挿入歌。

『サニーピース』のコンセプトになっているのは、太陽のような眩しさで観客を自然と笑顔にする、光溢れるアイドルグループ。そのコンセプトと楽曲名に違わない、五人のポップでキュートな歌声のハーモニーを響かせる直球的かつ王道なアイドルソングで、実際のLIVEにおいてもマストになる楽曲。

現在の情勢下ではまだ叶わぬ事ではあるが……コールを入れてくれと言わんばかりの構成になっていて、同じ星見プロに属する『月のテンペスト』の『月下儚美』とは対になる趣向ではないだろうか。


そして、この楽曲を語る際に触れなくてはならないのは、川咲さくら(CV:菅野真衣)の歌声。


 音源であるモノのレコーディングや実際のLIVEにおいては全てさくらの歌声で歌っているが、アニメ6話の『SUNNY PEACE HARMONY』に関しては、長瀬麻奈(CV:神田沙也加)の雰囲気に寄せた歌声にして歌ったと菅野さんはインタビューにて語られている。本編のストーリーと重なっているというのもエモーショナルなインプレッションを抱かせる。

 

 デビュー楽曲、つまりはグループにとっての原初の楽曲であり『初心』と称する事も出来る。
前述にて、Theアイドルソングの王道を往く楽曲だと評したが、可愛らしい明るく楽しいというだけの単純な楽曲には仕上がっていない。『IDOLY PRIDE』というコンテンツのテーマとされる表舞台の華やかさのみならず、葛藤や苦悩を乗り越えようとする裏のテーマもきっちりと楽曲に盛り込まれている。

ここでの詳しい言及は避けるが……アニメの5話で描写されたメンバーの心情模様と歌詞からもたらされるインプレッションが単純な明朗快活なアイドルソングには収まらないモノと解釈している。

胸の鼓動(=本能)の赴くままアイドルの軌跡に足を踏み入れた者(さくら)、真に認めさせたい相手(父親)を認めさせる為(怜)、ラストチャンスに懸ける者(遙子)、変わりたいという想いと覚悟を抱く者(千紗)、勇気を振り絞って憧れへの扉を叩いた者(雫)

形も大きさもバラバラな雑多な五つ……いや、十個のピース(欠片)。この十人がそれぞれの想いと魂を胸に秘め、歌声を重ねてHARMONYとなって響かせていく。

曲題にある『HARMONY』とは、複数のものが対立することなくまとまっている状態という意味がある。ここで言う複数のモノとはキャストとキャラクターの境界を越えるという事も含まれている。更には、サニピとファンとの境界も。



 ゲーム版・東京編2章のクライマックスで、サニピとファンとの境界を越えるシーンが顕現した。
場所は、I-UNITYファイナルのステージ。この楽曲を披露する事になったが、姫野の奸計によって機材トラブルが仕組まれ曲が流れないトラブルに見舞われたサニピ。

だが、さくらの終わりたくない、終わらせたくないという想いと魂が彼女を突き動かし、アカペラで歌い出す。そんなさくらの意図を察知して雫も歌い出し、怜、遙子、千紗はファンの近くに歌を届ける為にステージから客席に降りて歌い始める。そして、五人の姿に心打たれて観客も一緒に歌い始めて、会場は一つになり、極光の心の光を放つHARMONYとなって響き渡った。



 みんなで!サニピ!(サニピ!)


 ―サニーピース 『SUNNY PEACE HARMONY』より引用



 サニーピースの五人の歌声が重なり合って響くHARMONY。キャラクターとキャストの双方の歌声がシンクロするHARMONY。サニピとファンの想いと魂が交わって響かせるHARMONY。

単純に一つの意味だけではない。声を合わせて、想いと魂を合わせた誰もが、太陽(SUNNY)の輝きを秘めた欠片(PEACE)を持っている。そんな者達が響かせるHARMONYなのだと。