巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

魂とPRIDEを一つにーBIG4編・46話~50話を斯く語る

 確証は無いし、コレと言った演出は無かったが…話の締め方から(勝手に)解釈すると、おそらくこの50話でもって、BIG4編・第1章のピリオド(区切り)ではないかと感じた。

観終わって率直に感じた事は、予想していた通りの落し所になったなというモノ。しかし、その落し所に対して、腑に落ちたインプレッションは抱けなかった。でも……その物語を否定し切れない要素もちゃんとあった様に感じられた。

そんな物語を観て感じた諸々の所感をこれから書き殴っていこうと思う。

 


 ※本記事はメインストーリーの内容について多数のネタバレを含んでおりますので、ストーリーをご視聴の上でご一読下さい。所感につきましては、個人の主観と偏見が多分に含まれた末に導き出したモノ。当然ながらここから書いたモノが絶対に正しいとは言えませんので、あくまでも個人の所感の一つとして捉えていただけたらと嬉しく思います。

 

 

 

 46話~50話までの展開


 肯定出来た面と否定する面を語っていく前に、まずは46話~50話まで描かれた展開についてざっくりと触れていこうと思う。

 四人の月ストと『BIG4』の一角にいる『どりきゅん』による、負けた方のグループ解散を賭けた再戦は、月ストの敗北という結果に終わってしまった。

月ストの健闘を称えつつも……約束通り彼女達にグループ解散を宣言しろと迫るどりきゅん。そんな中、ステージ袖で両グループの戦いを見届けていた琴乃がステージへと乱入して来た。元センターのお前の口から引導を渡してやれと迫る中、琴乃は四人の月ストの解散を宣言し……自分が加入して五人の月のテンペストとして再結成すると宣言する。

 何やかんやあって寮に戻った月ストの五人。今後の事や、急な琴乃の復帰宣言に複雑な思いを抱く四人は、沙季の提案でお互いに肚を割って思いの丈を曝け出す事に。また五人揃ってグループとして活動するにはそいつが条件だと。

四人が肚の内に秘めていた琴乃への想い。それは……琴乃への怒りと悲しみ、彼女がもがいて抗う姿を間近で見ていながらも寄り添えて力になれなかった事への悔しさもあった。琴乃も、焦燥感と停滞感に苛まれ身近にいる四人の強さや寄せてくれる想いから向き合う事を避けてしまった事を恥じて詫びて、四人が曝け出した想いを全て受け止めた。

 再結成を果たした月ストは記者会見を開く事に。その会見の前に、五人はレッスンをする事に。琴乃、渚、沙季、すず、芽衣は互いの強さと成長の証を肌で感じた。離れて途切れてしまった刻を再び繋げる様に、五人はパフォーマンスで対話を果たせた。
 
琴乃は、この一連の騒動の原因は自分自身にあるとして、決着の意味を込めて一人で会見の場に赴こうとしたが…五人全員で出なきゃ駄目だと四人から諭される。で、会見当日。再動の意味も込め、デビュー当時からの衣裳を着て臨む五人。厳しい声も浴びせられたが、五人は毅然とした応答で決意と覚悟を語った。

 そんなこんなで会見が無事に終わって……今後の行方、特に、どりきゅんともう一度戦う覚悟をあるか?と牧野から問いかけられる。五人は、超えなきゃいけない因縁深い相手として、戦う意志と覚悟を示した。決意を語る五人の双眸はより輝き、言葉にも力強さが漲っていた。

そして……四人は琴乃に『おかえりなさい』と彼女の帰還を心から感謝し、琴乃も四人の想いに心打たれ『ただいま』と微笑んで返した場面で締められた。

 

 

 落し所の感性のズレ


  50話まで観て、腑に落ちきれなかった最大の要因になったのが、長瀬琴乃の立ち振る舞いだった。その有様は『自分勝手が過ぎる』という沙季の言に集約されていた。

実際のところ、彼女のBIG4編を通じての行動が身勝手そのものでしかなく、46話での振る舞いが決定打になってしまった。コレをどう捉えるかで賛否が分かれたと言っても過言じゃないと思える。自分は、完全な否定とまではいかなかったが、前述した様に腑に落ちきれなかった点もあったのが率直な所感。(茶番と評した人もいたみたいだが……分からんでもない)

 

ただ、琴乃が言った様に、再結成するなとは一言も言ってなかったし、条件も指定しなかったどりきゅんサイドにも落ち度はある。(呆れてたが、おそらく琴乃がどうにかして月ストへ戻る事を見越してたとは思う)

 

 話を戻して……月ストのパフォーマンスをステージ袖から見て、圧倒的なチカラで相手を捻じ伏せる強さに疑問を抱いて、自分の選択が間違いだと思い知らされた描写になっているが、そこに至るまでの伏線が貼られてなくて急展開過ぎた。四人が琴乃への想いをパフォーマンスへ込めた。琴乃はそれを観て魂を揺さぶられたと言えば確かに印象は良いのだろうが、ちょいと説得力が弱いんじゃなかったかと。

コレは個人の好みでしかないし、仮定話なんだけども……頑固な琴乃に適した方法は、直に戦って分からせる描写が良かったと思える。チカラを求めた者が別の異質なチカラでもって打ちのめされて改心して復帰と言った流れだったら、『否』寄りの所感を抱く人は多くならなかったかもしれない。

 全体のバランス崩壊とまで言うつもりは無いが、物語の説得力が足りなかったと感じられたのは、シナリオの構成を考える人の見立てが甘かったのではないだろうか。当初の想定より物語が膨らんでしまい締め方の見当がつかなくて、打ち切り作品の締め方みたいな急展開になったと。その割を食って、視聴者のヘイトを一斉に向けられてしまったのが琴乃だった……

 当然、視聴者を甘く見ていて手を抜いたワケでは無いってのも分かるし、物語を観た人全員が納得して感動するってのも有り得ない話。ただ……その落し所に納得出来なかった人が多かったのも事実。

 

 

 自分勝手という業を背負う者


 全編通じて、琴乃の振る舞いを好意的に捉えるなら、圧倒的なチカラへの渇望と、四人の月ストが魅せ付けた理想としたチカラとの葛藤に揺れ動く心情を描いていた。だが、その一方で、琴乃の思い込みから、一方的なグループからの脱退からあっさり復帰という自分勝手な流れは、前の項でも触れたが視聴者のヘイトが彼女へ向いてしまった最大の要因でもある。

ヘイトを向けられる演出や、その役割を琴乃が担っていたとは言え、特に琴乃、月ストファンからすれば、長い間の不遇な扱われ方はやっぱり気が気じゃなかったと思う。イベントストーリー(音色の輝石が紡ぐ未来)にまでその不遇要素が持ち込まれてたし。

 でも、琴乃の自分勝手な行動は、数多の人達に多大な迷惑と心配をかけた裏切り行為。渚、沙季、すず、芽衣だけじゃないし、牧野もそう。更には、敵とは言え強くなりたいという想いを汲んで懐に飛び込んだ彼女を迎え入れ、鍛えてくれたどりきゅんの想いまで踏み躙った侮辱にも繋がっている。強い責任感による決意と覚悟から起こした行動ではあるが、琴乃自身も自覚した様にコレは到底許されるモノではない。

本気で思いやってくれる仲間の想いを汲んでやれなかった事、心配をかけてしまった事、巡り逢ってから積み重ねた刻、絆、強さから琴乃は目を背けて置き去りにしてしまった。琴乃がちゃんと向き合わなきゃいけなかったのはそこだった。

 でも……人間、特に琴乃の様な思春期の子の心情は、いろいろとブレやすいモノだと思う。表に出ない様にする子もいるが、心の中ではブレまくっているはず。そもそも、人の業にまみれたキャラ揃いなこの作品に、非の打ち所がない聖人君子を求める方がどうかしてる。(個人の勝手な偏見からの印象)

更に言えば、琴乃はいろいろなモノを背負って現在の刻に生きている。月ストのリーダーとセンターという役割だけじゃなく、伝説の域まで昇華したアイドルである麻奈の妹、川咲さくらの存在……そんな宿命を背負って全く心情がブレずに生きていくのは無理に等しいって話。

 散々触れた様に、琴乃の自分勝手さは背負ったモノの大きさを加味したって擁護しきれない許されざる行為。それでも、迷ってもがきながらも前を向いて駆け続けたからこそ、最後に本当に大切なモノを取り戻せた。強引に締め括った感は否めないけれど、琴乃のPRIDEが甦る物語に胸が熱くなって腑に落ちたってのも揺るがない事実だった。

 

 

 肚割って本音で話す事。


 前にも書いたが、四人は、どこか琴乃を特別な存在として線引きし、これまでの四人は無意識に『我』を抑えてしまったとも言える。琴乃の方も、クソ真面目で責任感の強さ故に自分が支えなきゃという想いがあった。ただ、それは一人で背負い過ぎてしまう琴乃の悪癖でもあった。

その悪癖を拗らせてしまい、琴乃は自分勝手な行動に出てしまった。同じ刻と場にいるのに、同じグループのメンバーなのに、琴乃だけ別の場所で独り戦わせてしまった。四人は、それが凄く悔しかった。悲しくて寂しかったし、もっと同じメンバーとして戦いたかった。全てを共有して、真の意味で一つのグループで在りたかったのだと思う。

琴乃は背負った責任を全員に委ねなきゃいけなかった。渚、沙季、すず、芽衣は、琴乃にもっと踏み込んで本音を曝け出さなきゃいけなかった。それに気付くまで、幾度もすれ違って随分遠回りもした。伝えたい本当の想いを打ち明けて前へ進む為に対話する。

 怒り、悲しみ、悔しさ、寂しさ、五人一緒に積み重ねて来た刻の重さ……それは、数多の感情を互いにぶつけて受け止める喧嘩だ。個人的にBIG4編・第1章の最大のキモになっていたのは、月ストが真の意味で一丸になって、何でも言い合えるグループへ進化する事。それにはこの喧嘩は避けて通れない道。

 魂の告白を経て、お互いの気持ちが同じ方向に向いて本当の意味で対等になった。ちゃんと喧嘩出来て、本音を曝け出して、互いへの愛着は深まって、ようやく真の意味で一つにまとまった月ストは互いの壁を越えて再起を果たせた。この件をきっちり描いてくれた事は素直に評価したいと思う。

 

 

 おかえりなさいとただいま。そして……


 一切の遠慮の無い本音でぶつかり合った『喧嘩』の儀式を乗り越えた五人。
再結成を果たした月ストは、久々に五人揃ってレッスンをする。四人は、どりきゅんの懐に飛び込んで鍛え上げられた琴乃の個のチカラの強さに驚愕し、琴乃の方も自分がいない間、必死に抗って戦い続けた四人の魂の強靭さを思い知らされた。

まあ、良いシーンではあるのだけれども……この件、もっと早い段階でやるべきだったと思う。差し込むのは、どりきゅんとの再戦前か、四人体制になってからライブバトルを挑みまくっていた辺りで。私見の域でしか無いが、実際に琴乃vs四人の月ストとのバトルorレッスンでも良いんだけど、初見で四人のパフォーマンスに心揺さぶられ『私が加入して再結成します!』の展開よりは受け入れやすかったのではないだろうか。

 で、ラストシーン。一連の自分勝手さを会見で詫びてケジメをつけて、超えなきゃいけない相手(どりきゅん)への戦いへ闘志を燃やす。そして…五人でしなきゃいけない最後の『儀式』である、渚、芽衣、すず、沙季から『おかえりなさい』と琴乃の帰還を祝福し、琴乃は『ただいま』と心の底からの笑顔で答える。

 

 

 

 一人で背負い過ぎて、悩んで、もがいて抗い、繋がりも断って居るべき場まで捨てた琴乃を、渚、芽衣、すず、沙季は『おかえりなさい』と許し彼女を受け入れた。大袈裟かもしれないが、琴乃はそれを聞いて自分は月ストにいていいんだと思えて魂も救われた……ラストカットでの、感激溢れている琴乃の微笑みはそれを表していたのかなと。

 

 真の復活を遂げた月スト。ここから、彼女達の本当の戦いが始まっていくのだろう。
どんな未来が待っているのか、この五人にしか紡げない物語の続きを楽しみにしたいと思う。