巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDE BIG4編・1章(1話~35話まで)を斯く語る

 どうも。あかとんぼ弐号でございます。

 誰に言われたワケではありませんが、『IDOLY PRIDE』のメインシナリオの方にも触れねばなるまいと思い立ち……こうして筆を執った次第。そこで、現在まで公開されている『BIG4』編1章35話まで見た所感&独自考察という名目の怪文書を書き殴っていこうと思います。



 ※本記事では、メインストーリーのネタバレが大いに含んだモノとなっており ますのでご注意下さい。所感と考察につきましては、個人の思考や所感から導き出した一つの考えになっています。当然ながらここから書いたモノが絶対に正しいとは言えませんので、あくまでも個人の所感や考察の一つとして捉えていただけたらと嬉しく思います。

 

 


 月のテンペストとサニーピースの区別化


 東京編の後半辺りから、BIG4編の最新話までの月ストとサニピの成長過程は正反対な描写となっていた。

当たり前の話だが、アイドルの軌跡を駆ける際に、高い壁に行く手を阻まれ、それを越えていく為に苦悩するのは両グループ共に共通している。正反対に描かれているのはその苦悩に抗った後の事。ざっくりと書いてしまうが……サニピの方は、前述した様に困難にぶち当たって苦悩するが、仲間との絆と絶対に諦めないという不屈の魂によって困難に打ち勝つといった成長過程が描かれている。

一方の月スト側は、基本的にサニピと変わらないのだけれど…徹底的にきっちりと打ちのめされて敗北する流れが組み込まれている。しかもそれが長い事続いてしまっている。作中にて無双して勝ち続ける役目を担うサニピ、底辺を這いつくばる様に…敗れてもなお諦めきれずに勝利を目指す役割を担った月ストといった所か。

 自分は、この二グループをこういった正反対の役割に振り分けたのは素直に好感が持てた。分ける事で、物語を観て感じられるカタルシスの幅がグッと広がるのではと思える。これがあったからこそ、琴乃が決断したアレが活きて来るのだと。



 壊せない枠を壊す為の決意


 東京編において、月ストは『I-UNITY』という大会に出場し、当時『BIG4』の一角に就いていた『ⅢX』と戦い激闘の末敗れた。で、続編となるBIG4編では月ストは大苦戦を強いられてしまう。特に、琴乃の不調は悪い方に群を抜いてしまっている状態に。

そんな中でも、渚、沙季、すず、芽衣の激励によって再び立ち上がるが…数多いる他のアイドルに埋もれているという酷評を下されてしまう。仲間との固い絆があってもどうにもならない無情な現実を琴乃と月ストは容赦無く突き付けられる格好に。

で、月ストの逆転の一手として持ちかけられたのが、BIG4の一角である『どりきゅん』と直接対決出来る企画への参加という話が持ちかけられる。しかも、どりきゅんに勝つ事が出来ればBIG4の座を勝ち取れる特典付きでもある。琴乃達は話し合いの末、どりきゅんとのライブバトルへ臨む運びとなり、強化合宿を経てよりグループの結束を深めて決戦に挑むが……月ストはどりきゅんに敗れてしまう。

 バトル終了後、琴乃は偶然にもインタビューから逃げて来たどりきゅんと対話し、彼女達の強さの源となる要素について聞く事が出来た。

今の月ストに足りないモノ、ちょっと頑張った程度の努力では届かないモノ、枠を壊す為に今まで踏み込まなかった領域へ踏み出す勇気……そして、琴乃はある決断……月ストを脱退する決意を固めた。

 とは言え、この事はまだメンバー達には伝えていない。牧野にだけ打ち明けたモノだ。
圧倒的な個のチカラを得て月ストに還元するとは言っても、コレは完全な琴乃のエゴによる独断でしかない。ただ…琴乃は嘘が下手くそだ。明らかに様子がおかしい事を渚は感づいていた。琴乃の方も、このまま曖昧にして隠し通せるとは思っていなかったのか、単に観念したのか、渚に月ストを脱退する旨を話した。

当たり前の事だが、渚はショックを受ける。これまで通り五人で力を合わせてもっと成長出来る道を探せると琴乃を引き留めにかかる。でも、琴乃はそんなメンバー達の優しさが枷になっていると……

思い返してみると、琴乃は信頼できる相手にとことん依存してしまう傾向がある様に思える。姉であった麻奈や親友の渚だったり。言い方が悪いが…琴乃自身、自分が甘えん坊という事を自覚しているのだろう。だからこそすべてを捨てて勝負を仕掛けるという強い覚悟で臨まないといけないと感じた。

 ただ…言ったそばから渚も一緒に脱退しようと持ち掛けてしまったのは琴乃の弱さ。彼女の身勝手な部分でもある。渚を慮ったかもしれないが、琴乃の覚悟はその程度のモノなのかと。全てを懸けるといったのが軽い言葉に聞こえて、沙季、すず、芽衣に対しても失礼極まりない話だし、何よりも渚の事を琴乃にとって都合のいい存在として軽視している様にしか捉えられない。今の琴乃は月ストのリーダーでもあるワケだし。

とは言え、不安になってしまうのも分からなくはない。もう、そこまでしないと変わる事は出来ないと本気で思って琴乃は動き出した。そこもひっくるめて面白い描写だったと感じてもいる。

 


 鎹の双眸に映る景色と覚悟


 渚についてのキャラクター考察した記でも書いた様に、自分は伊吹渚という人物を『鎹』(かすがい)と評して来た。『鎹』とは、材木と材木とをつなぎとめるために打ち込む両端の曲がった大釘の事であり、それになぞらえて、人と人を繋ぎ止めるモノとして評される時にも使われる。

渚がここまでのストーリーで見せて来たのは、琴乃を支えつつ星見のアイドル達とも関係を築く役割を担っていたと自分は思っている。人との縁と繋がりを何よりも大切にする人だと。

 琴乃から月ストの脱退&付いて来ないかという誘いを受けたが、即座にYesと答えられずに返事を待ってもらっている間、渚は星見市に趣き、アイドルの軌跡を思い返していた。デビューステージに立った高台のステージ、星見の寮、旧事務所を巡り歩いて、今の渚が本当に大事にしているモノを見出す。魂の再生…いや新生と呼ぶべきか。

 


 そうだ、私……みんなのことが大切になってる。

 琴乃ちゃんだけじゃない。沙季ちゃんも、すずちゃんも、芽衣ちゃんも……

 みんな、とっても大事な仲間。

 それに……今は、私自身もアイドルとして頑張りたい。

 もっと輝きたいと思ってる。

 

 

 本当に大切な想いと魂を呼び起こした渚は覚悟を決める。この時渚の双眸に宿った力強さと輝きは見事なモノに見えた。本当に大事に想うからこそ、嘘偽りの無い本気の想いと魂を琴乃へぶつけなきゃいけないと。

アイドルになりたての頃の渚だったら、琴乃に付いていく選択を下していただろう。でも、今の渚はその場で素直にYesとは答えられていない。渚が返答を保留しているのは、琴乃と渚の見えているモノが全部一緒ではない事を確認して証明する刻が必要だったからなのかもしれない。

渚が決意したのは琴乃に付いていく事ではなく、月のテンペストというホームを守り、なおかつ渚自身がアイドルとして今よりもっと輝く事。もしかすると、ちゃんとした答えは渚の中にずっとあったのではないだろうか。ただ、それを認めて一歩踏み込む勇気が持てなかった…琴乃の背中の先を見ようとしなかったとも言える。

 


 ここで止まっちゃダメだよね。私は行くよ、琴乃ちゃん

 今はそれぞれの道を進もう

 

 

 決意を語る渚の双眸は涙で潤んでいた。でも、その輝きは遥か先を見据えた力強いモノを秘めている様に感じられた。もう、琴乃の背中を『追いかける』だけじゃなく、自分にしか歩めない道に行き、琴乃と本当の意味で並ぶ為、彼女と袂を分かつという傷を負う覚悟を決めた。身を切る思いで決断したこの選択を間違いではない事を証明していく戦いの始まりでもある。

そして、彼女達が交わした『さよなら』は単なる別れの言葉じゃない。今よりももっと強く輝いて再会する為の誓いの言葉でもある。

 

 

 『全て』を捨てる覚悟


 琴乃は、脱退の旨を伝える際にこう言った。相手を打ち負かす強い心(=殺気染みたモノ)と圧倒的な『個』のチカラが足りないと。『月光惑う光耀の幻影』長瀬琴乃のストーリーにて、琴乃はスリクスのLIVEを観て感じた気迫。メインストーリーにて実際に戦ったどりきゅんから漲っていた気迫。それは、殺気…闘志と言い換えてもいい。

アイドル活動を経ていく内に、琴乃の雰囲気が変わっていったと渚は言う。確かに彼女が言う様に、物語の初期は、言葉の端々や態度に尖ったモノを出していたが、様々な人との関わりの影響を受けて、尖ったモノが鳴りを潜める。その変化は悪いモノじゃないが、同時に本来燃やしていた闘志が翳ってしまったとも考えられる。

 それ(闘志)がきっちりと燃やせないから、高く険しい壁を越えられるエネルギーを生み出せないと琴乃は解釈した。そして、前述でも触れた月スト&星見プロから脱退する事を決意して動き出す……ただし、星見プロの脱退と、どりきゅんの事務所への移籍は琴乃の独断。しかも、その行きついた所は…超えるべき相手となるBIG4・どりきゅんの懐。

いつか月ストへ戻る為に…と意気込んで懐に飛び込んだ琴乃。だが、その『いつか戻る』考えは甘すぎるとどりきゅんの二人に一蹴された。まあ、来夢とれもんの言い分は正論以外の何物でもない。『すべてを捨てる』と言って来たアイドル達をどりきゅんは沢山見て来たと思う。琴乃が言った様な『いつかは…』という言葉は逃げ道となる軽い言葉に聞こえるのでしょう。

おそらく、琴乃は自分が今いる場と環境をただ変える事が全てを捨てるという認識だったのだろう。全てを捨てるという覚悟はそういうモノではない。これまでの繋がりも、築いて来た絆や情…あるいは、人としての感情まで捨て去る事が『全て』を捨てた証明。それが、れもんが言う『鬼』になるという事。BIG4に座している者とそうじゃない者の差なのかもしれない。

その『差』がどれほどのモノかは分からない。紙一重、もしくは途轍もない差なのかもしれない。なかなか埋められるモノではない。いや、そもそも埋められるモノかも分からない……でも、その答えを掴み取って強くなる為に琴乃は退く事の許されない未知の戦いへと踏み込んだ。

 『全て』を捨てるという事の本当の意味を痛感させられた琴乃。何かを得るためには何かを捨てなければならないこれまで以上の茨の道を往く。行きつく先で琴乃は何を得て何者になるのか?そして、渚、沙季、すず、芽衣と再会を果たした刻と機でどんな物語を紡ぐのか……勝手な予想をするならば、彼女達が再会するのはステージの上という『戦場』かもしれない。

そこでぶつけ合うのは、ここまで貫いて来たアイドルとしての生き様とPRIDE。迷い続けて遠回りしたかもしれないが、互いの軌跡が再び交わる刻はきっとやって来るはず。

 


 新たに背負う者としての覚悟とPRIDE


 琴乃が月ストと星見プロから脱退し、身の振り方を決断しなければならなくなった、渚、沙季、すず、芽衣は、この四人でこれまで同様『月のテンペスト』として活動を続ける選択を下した。とは言え…強い覚悟で決断したものの、やっぱり不安感は拭えない。そして、やって来た月スト新体制発表の記者会見。

そこで四人と牧野に浴びせかけられるジャーナリスト陣による、真相究明という名目の容赦ない質問が襲い掛かる。その中には、彼女達をワザと激昂させようとする悪意に満ちたモノもあった。そんな気まずく重苦しい雰囲気が支配した会場をある少女……成宮すずの力強い言葉が払拭させた。

 すずは言う。琴乃が生半可で軽はずみな心情で脱退という決断を下したのではないと。仲間を思いやり、誰よりも苦悩して苦境に抗い続けていた事と、月ストのリーダー、そしてアイドルとしてのPRIDEを貫こうとしていたと力説する。この場面でのすずの言葉は、当然ながら琴乃を慮ったが故に出て来た言葉でもあったが、何よりも、琴乃のアイドルとしてのチカラを誰よりも信じていたし、認めているから。それは近くで琴乃を見ていてすずが心の底で感じた真実だから。

 で…会見が無事に終わり、月ストの新センターを誰に据えるのかを牧野は四人の意志に託した。
そこで立候補したのはすずだった。ここまでの話の中で、すずが月ストのセンターへの強い執着がうかがえる場面がいくつかあった。時にはセンターの座は琴乃に譲ったと言い張り、自信喪失した琴乃に対して、センターを譲れと迫ったり。(激励もあったが本心でもあっただろう)
 
 琴乃が脱退してしまったというのは、月ストにとっては生まれて欲しく無かった物語。でも、センターとしてもっと輝きたいと熱望していたすずにとっては最大のチャンスが転がり込んで来た事でもある。ただ、正々堂々と琴乃と競い合いきちんと勝ってその座に就きたいと願っていただろうが……宙ぶらりんのまま突き進むワケにはいかない。

思い込んだら一途にブレる事無く真っ直ぐに突き進める魂の強さが成宮すずにはある。渚、沙季、芽衣は、すずの強い決意と覚悟を汲んで快諾した。彼女達も、ずっと近くですずの事を見て来たしアイドルに懸ける想いとPRIDEを信じていたから。それに、すずが目指しているのは、スペシャル・ワンのアイドルである長瀬麻奈を超える事。彼女の抱いている志(野望でもいい)は壮大だ。この程度の逆境は逆境には入らんのだろう。

 そんなこんなで、すずをセンターに据えて、新生・月のテンペストは再び立ち上がった。まあ、ちょいちょいやらかす危ういセンターではあるのだけれど……そこは三人がちゃんとすずを支えて盛り立てていけるだろう。すずも支えてくれる仲間とファンの為に全身全霊で想いに応える。それは、琴乃がいた頃では得られなかった強さを得る事にも繋がるのだと。

 

 すず、渚、沙季、芽衣は、ここから吹き荒ぶ逆風の中を駆ける事になる。四人がこの先の物語で何を魅せてくれるのか?その物語の行く末を心待ちにして筆を置かせてもらう。