巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #31 つながる心Binary

 

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 つながる心Binary /白石沙季×白石千紗

 
 月のテンペストの白石沙季(CV:宮沢小春)と、サニーピースの白石千紗(CV:高尾奏音)による、グループの枠を超えたデュエットソングの系譜に連なる楽曲。音源は、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』に収録。ゲーム内の3DLIVEにも実装されている。

 血の繋がった姉妹によるデュエットソングの発表を待ち望んでいたマネージャー「IDOLY PRIDE」のファンの呼称)は多かった事だろう。自分もその中の一人だ。そして、作詞、作曲、編曲を、千紗役の高尾奏音の実兄である高尾奏之介氏が手掛けられている事も、この楽曲における大きなアピールポイントでもある。

作中での沙季と千紗の仲睦まじい姉妹関係を、そのままメロディと詞が紡ぐ世界観に落とし込み、白石姉妹の絆の強さが伝わる様に……と、奏之介氏はコメントを寄せている。

オーソドックスかつ正統派なガールポップ調のメロディに、宮沢さんと高尾さんのナチュラルな可愛らしさと純然さを纏う歌声がこれまた見事な親和性を醸し出している。最も印象深いのが、ラスサビの一節にある『ちいさく指切りしたら もっとさきに行こう』の節での言葉選びと言うか遊びが実に見事。

『ちいさく指切りしたら』には千紗の名が、『もっとさきに行こう』では沙季の名が入っていて、それぞれのパートになっているのがまた趣き深く、エモーショナルな衝動を揺さぶられる。それは、二人並び立って共に輝こうという決意と誓いの儀式の様にも思えて来る。

 この楽曲をモチーフにしたイベントストーリー『心紡ぎ合う輝きの競演』では、他の星見プロのアイドルの活動に刺激を受けた沙季と千紗が、二人組限定のユニットによるライブバトルの大会に真っ先に出場を立候補する所から始まる。

レッスンを重ねていくが、二人の互いを慮って『我』を抑え込んでしまう気質が、彼女達を縛り付けて上手くいかない事態に陥らせる……そんな中でも、姉妹の絆の強さと互いの変わろうとする覚悟と踏み出す勇気を描いていく運びとなっている。

四話で、千紗が激情を露わにして沙季に指摘する場面に沙季がこれまで抑え込んでいた本音を曝け出す場面。この二つの要素はイベントストーリーの要であり、更にはこの楽曲の真髄となる要素だと自分は捉えさせてもらった。

 聞き分けの良い大人しい妹ではなく、周りから頼られ周囲の期待に応え続けて来た優等生の姉でもない。二人は変わろうとする覚悟を激情に籠めて等身大の本性を解き放った。これまで互いに抑圧して来たモノが爆発しているのだ。そのエネルギーは途轍もないモノ。

 この楽曲の雰囲気からは微塵も感じる事は出来ないが、沙季と千紗はパフォーマンスを通じて、きちんと姉妹喧嘩をしている。でも、それは決してネガティブに相手を傷つけるモノではない。一切の遠慮の無い感情を露わにしてぶつかり合う刻を二人は楽しんでいる。それは、何者も介入する事は出来ない沙季と千紗だけの刻。

 互いの成長した姿を見せ合う事が出来るのは何にも代え難い尊いモノ。曲題に銘打たれた『Binary』の訳は諸説あり、その一つの意味で、二個一組とある。『転びそうなときは すぐ隣を見て どんなときも照らせるんだ 私の一等星』という歌詞は、互いに支え合い、導き合い、照らし合って、彼女達が未来へ前進している事を思い起こさせてくれる。Binary star(連星)という意味も含んでいるのかもしれない。

 そして、ラストフレーズの『You are my precious one』(あなたは私の大切な掛け替えない最愛の人)に、白石沙季と白石千紗の生き様、姉妹の絆、誓い、PRIDE…即ち、彼女達にしか紡げない物語としての全てが詰まっていると言っても過言ではない。

 前述でも触れたが、楽曲が放つ雰囲気とは真逆な、どこか生々しい沙季と千紗の本心や本性が溢れ出して…この楽曲が、白石沙季と白石千紗の二人にしか謳えない楽曲だという説得力へ繋がっているのだと思わせる。