巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #3 一ノ瀬怜編

 『IDOLY PRIDE』キャラクター独自考察シリーズ。3回目にしてもう書くのが厳しくなって来た模様……

と、言うのも、アニメ版の物語全体が短い尺だった事もあり、その中で描写できる人物にはどうしても限りがあり、割りを食って描写に差が出るキャラが出てしまうのはどうにもならない。

なので…これ以降の独自考察は、前の2回以上に妄想と暴論が跋扈したモノになるという事を、予めご理解の上読んで下さるとありがたく思います。



それでは第3回目、一ノ瀬怜編を書き殴っていきます。

 

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 外からの”異分子”がもたらした『変化』



 外からの異分子と称した様に、一ノ瀬怜はオーディション加入組ではなく、牧野のスカウトによって星見プロに加入した経緯を持ち10人中最も遅い加入となった。(出逢い方はアレだったが……)

怜は、高校生のダンス全国大会で優勝したという実績があって次の目標を探していた頃に丁度牧野がスカウトに来て自ら加入を志願した。上昇志向が強く、ストイックで自他に厳しい所謂『意識高い系』の人物。アイドルに対しては憧れからではなく、自分が見据えている未来の姿(ダンスで糧を得る者として一人前になる)を目指す為と存在を世に認めさせる事が目的という人物。

ダンス経験者で技量があるのは勿論、知識も持ち合わせている事から彼女が所属する事になった『サニーピース』のメンバー達に容赦ないコーチングをしつつレッスンを行い、レッスンを終えた遙子以外のメンバーは怜の的確で容赦無い徹底したコーチングでグロッキー状態に。


 さくら、千紗、雫は、アイドルの軌跡へと駆け出したばかり。言い換えるなら、まだ何も成し遂げられていない者達。遙子は、さくら達とは違ってソロデビューを既に果たすも全く芽が出なかった雌伏の刻が続いている。彼女もさくら達同様に何も成し遂げられていない者だ。
当人たちはそんなつもりはないだろうが、極端な刺激の無いぬるま湯につかっている様な関係性と言えなくもない状況。

そこに、実績を持つ一ノ瀬怜という異物=石が投げ込まれた。そして、この『石』はただの石じゃなくてとんでもなく熱せられた焼け石。そんなモノが投げ込まれればぬるま湯は一気に煮滾る熱湯と急激に変化…即ち、環境が変わる事。

人と集団を活性化させるのに環境の変化は必要な事でもある。だが、このメンバー達は未来の期待よりは不安を抱く子達の方が多い。そこでもたらされた急激な環境の変化はストレスになってしまった。

特に、姉・沙季と離れ離れのグループに分けられた千紗の不安から来るストレスは徐々に大きな歪みとなって来る。

 

 ステージでも同じ事を言うんですか? 

 
 他のアイドル達は初心者の私達に優しくしてくれるんですか?


 デビューすれば同じプロなのに。

 

 

 

 ド正論で鋭利な言葉の刃。怜と同系統なキャラである琴乃でもここまで熾烈な言葉は浴びせないだろう。


(琴乃の場合、人と関わるのが面倒という理由で放置しそうだが…)


 確かに怜の言う通りプロの世界はデビューすればキャリアの差というのは全くもって意味を成さなくて結果のみでしか評価されない。
特に、この物語の世界はアイドルに対してAIであらゆる要素を数値化してジャッジを容赦なく下してハッキリと勝者と敗者を分ける過酷な世界。


 怜が厳しい物言いになるのは、大好きなダンスでは絶対に妥協したくないという想いが根底にあるからだろう。一方で、全ての人間が自分の様に直向きに頑張る事が出来ない事も彼女は理解出来てる。

ただ、理屈で分かっているが感情の面でどうしても譲れないモノというのが人それぞれにあって、好きな事に対して全力で出し尽くしていない、覚悟が決まっていない者を見ると許せないという感情が怜の中で湧いてくるのだろう。

好きだからこそ、ストイックにパフォーマンスの向上を求める。
今後もダンスに関わっていく為に、今のアイドル活動においても甘えや妥協を許さない。

それこそが、一ノ瀬怜が『輝き』を手に入れる為の唯一の手段であり、彼女の在り方が象徴されている。

 

 

 

 強いから闘うのではなく、闘うからこそ強くなれる

 

 レッスンでの怜の容赦ない指摘に対して、耐性の限界を超えてしまった千紗の火種が遂に爆発した。
以前より厳しさを増したレッスンについていけず取り残されてしまっている事への焦りと不安。
更には、心の拠り所でもある、姉・沙季と離れ離れの別グループに編成されてしまった環境の急激な変化もその要因。

ダンスがきっちり踊れる怜に、前向きな物言いが出来て、出来ない自分の気持ちが分かるわけがない!と、憤りの感情を千紗は爆ぜさせた。


 だが、千紗の感情の爆発を見ても、怜のリアクションは冷淡なモノだ。
区分けしてしまえば、ダンスの全国制覇という成果を成し遂げた怜は『強者』の部類。一方、アイドルの軌跡を駆けだして間もなく、まだ何者にもなれず能力の無さを嘆く千紗は『弱者』の部類になる。



 

 諦めない事、練習を重ねる事、始めたなら立ち止まらない事。


 まだ、何もしてないのに?本当にアイドルが好きなんですか?!


 

 

 怜は、千紗の弱気な性質自体を駄目な面として非難したワケではない。その弱さに甘んじて逃げ道にして闘わない事と、本当に好きなモノに懸ける覚悟の薄さに対して許せないという感情を抱いたのだろう。

怜も最初から強かったワケでは無かった。弱いと自覚しているのなら、きっちり認めて向き合いそこから逃げず尚の事闘えと。怜自身もそうやって立ち止まらず闘って来たから実績を勝ち取るに至った。勿論、積み重ねて来た努力が全て報われ叶うとは言い切れない。でも、叶えた者は必ず弛まぬ努力を積み重ねているモノ。

何もせずただ黙って見てる者をすくい上げてくれるそんな世界はどこにもない。心に蓋をしないで闘う意志を示し、今の刻を闘わないと雄飛の刻はやって来ない事を怜は頑なに信じている。


自らの在り方を自分の意志で決めて、闘い続ける事。


それが、一ノ瀬怜が貫き通したいプライドであり、アイデンティティでもあるのだと思える。

 

 

 

 踏み込まなければ触れられない



 『LizNoir』のパフォーマンスを動画で観て、彼女が想像していた以上のモノだったと感じ、トップアイドルへ辿り着く為には『LizNoir』以上のパフォーマンスを身に付けなければならない現実を突き付けられ、自分より格上の者達に勝つ為には、強敵よりも努力を重ね続ける刻を多くする……

怜はダンス経験が長い事から、経験者である彼女が率先し引っ張ってグループ全体のレベルを上げなければならないという義務感、危機感、責任感を同時に抱いてしまった。良くも悪くも彼女は直向きであり生真面目な性質なのだろう。


やがて、怜の純然な上昇志向は『焦り』へと変換されてしまう。


当人は焦りを悟らせない、もしくは自覚がないが『サニーピース』のリーダーである川咲さくらは怜が危うさを潜ませた焦燥感を抱き、それが苛烈なまでの物言いや意識の高さに繋がっていると感じ取る。それは、さくらが琴乃に抱いたファーストインプレッションと酷似していた。

これまで、メンバー達が怜に抱いたインプレッションは、ダンス経験や知識があって全国大会で優勝した実績があるという怜の強い面しか見えていなかった。そういう人間からあれこれ言われた事は額面通り受け取りずらいものがある。ましてや出逢って間もなく信頼関係が充分に築けていない状態ならなおさらの事。

さくら達の中では、最初から怜は特別で違う存在と認識してしまったからこそ、怜とメンバー達(特に千紗)の間に意識の差という壁が出来てしまったのでしょう。


 そんな折、レッスン後に寮の近所のスーパーに買い物に訪れたさくら達は、そこでバイトしている怜に遭遇する。怜が夜に外出している用事はスーパーでのアルバイトだという事が判明した。レジ打ちしている姿が見つかり慌ててミスを連発するというレッスン中の厳しさとはまるで違った『弱み』を見せてしまう。でも、その弱み=怜の人間性を見せた事で近づいて寄り添う切っ掛けが出来たと思える。


 ダンスが好きでたまらなくて、将来はダンスに関わる仕事に就きたいと夢抱くが……怜の両親はダンスに対して良いインプレッションは抱いていなくて、両親が敷くレールにあるモノではない為、怜の思い描く夢を否定して、全国大会で優勝した結果で証明しても認めてはくれない。

そんな厳格に枠に嵌めようとする両親(おそらく父親が反対しているだろうと予想)が、アイドルになる為に家を飛び出すという事を素直に了承するとは思えないから、大喧嘩した末に彼女を追い出したか、または何も告げない家出同然の身で怜はアイドルへの軌跡を駆けだした様に思える。バイトを始めたのは、家族から経済的な援助は望めないしそんなつもりもないという完全に退路を断った本気の表れなのだ。

怜が話している最中、整列されたショッピングカートと、列から離れて放置された一個のカートが怜の心情及び状況とリンクしている様な描写がこれまた面白くていい。

 トップアイドルになれば世間の多くの注目を浴びる。そうすれば嫌でも怜の事を両親は認めざるを得ない。彼女が最も悔しいと感じているのが、認めて欲しい相手が認めてくれなかった時だと言う。それは怜の最強で最大の敵でもある両親なのだろう。

そんな相手に勝つ=認めさせるには立ち止まらない事。それは怜の魂に滾るエネルギーが彼女の身体を突き動かし、闘い続けられる理由にも繋がっているのでしょう。

 

 きっと、怜ちゃんも不安だと思うよ。成功できるかなんて分からない。

 
 だから、いっぱい練習するんじゃないかな。不安を消すために何度も繰り返して。

 

 

 怜がアイドルに懸けている想いと闘い続けられる理由をサニーピース全員が知った。そして、今の彼女の心情に一番寄り添えている遙子の言は重い。それは彼女も不安を抱えながら雌伏の刻を過ごして直向きに努力してきたから、報われない事と認められない事の辛さが遙子の境遇とも重なるからこそ分かったのだろう。

怜は強い特別な存在でも何でもなく、メンバー達と同じく不安を抱えながら今を生きている等身大の変わりたいと願う一人の少女だった。その事実は、怜に対し枠を作って閉じこもってしまった千紗の枠を壊して一歩踏み出す勇気が湧きだした。同時にそれは千紗の成長へと繋がる為の始まりの一歩でもあった。

そして、怜もさくらの敬語禁止という提案にはにかみながらその提案に乗っかる。
それは、怜が変わろうとしていく想いと、メンバーに寄り添おうと一歩踏み込んだ事の証明ではないだろうか。

 

 

 と、言う事で、一ノ瀬怜の独自考察でした。


正直、物語全体通しての彼女の考察というよりは、クローズアップされた5話で描かれた彼女のパーソナリティしか書けてません……それにつきましては、自分の物語を読み解く範囲の狭さという不甲斐ないモノで何の言い訳もございません。

本文中にて、一ノ瀬怜のパーソナリティを『闘い続けられる者』と評していたのはあくまでも自分の勝手な解釈です。


 毎度ながらの取っ散らかった怪文書ですが、今回はこの辺で筆を置かせていただきます。
次回以降の独自考察もこんな感じの散らかりまくった怪文書になると思いますが……読んで下さると嬉しく思います。