巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #2 川咲さくら編

 完全な見切り発車で始めた『IDOLY PRIDE』キャラクター独自考察。
2回目は、もう一人の主人公と称しても差し支えない人物、川咲さくら編。

 

長瀬琴乃と同様に、アニメ版の物語において重要な役割を果たしていたさくら。
彼女に関わる様々な要素と紐付ながら、さくらの物語について考えを巡らせていこうと思う。

 

 

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 持つ者と持たざる者~相反する縁の巡り逢い

 

 

 この作品では、アイドル達の成長譚を描く物語であると同時に、相反する要素を持つ者がそれぞれの持ち場にて、その者にしか発揮できない要素で魅せる描写が多いのが特徴的だと感じた。

長瀬麻奈と琴乃、白石沙季と千紗の姉妹の絆と自立(…書いておいてなんだが、相反するモノなのかは分からん)。麻奈と牧野航平の関係性、麻奈の幻影を追う者達。


そして……琴乃とさくらとの関係性。


 琴乃の項でも触れたが、彼女は姉・麻奈の遺志を継ぎトップアイドルになる目標を抱いてアイドルへの軌跡へと踏み出した。だが、麻奈の様に歌う事が出来ず苦悩し足掻き続けている。そんな時に、ふと現れたのが川咲さくらだ。
 
飛び入りでオーディションに参加したさくらは麻奈にそっくりな歌声と雰囲気で、その場にいた、琴乃、牧野、アイドルとして在りし頃の麻奈を知る佐伯遙子、三枝社長を唸らせた。特に、麻奈の様に歌えないと絶望していた琴乃にとっては衝撃的なインプレッションだっただろう。どう足掻いても彼女が手に入れられなかったモノを持った者が突然現れたのだから。

そんなさくらだが、アイドルを志してここ(星見プロ)に来たのではなく、漠然で突拍子もない理由だった。

 

 私、自分にとって大切な事とか必要な事とか分かるんです。


 この胸が教えてくれるんです。ここに行けとかこれをやれとか…


 それで上手くいかなかったことがなくって。

 

 

 さくら曰く、心臓の鼓動の高鳴りに導かれた結果が星見プロのビルに辿り着いた事になった。その鼓動に従って行動する事でこれまでいい結果しか出ない事から、彼女はその鼓動がもたらす事については絶対的な信頼を持っている。この件もそうなのだと。


別の言い方すれば良い未来を頑なに信じる純粋な魂をもっているとも言える。
その背景には彼女の過去が多分に影響していた。


 さくらは、心臓に病を抱えていた過去があった。しかも、心臓移植をしないと生命に関わってしまうほど重い症状で当たり前に生活する事が困難だったと。でも、そんな境遇でも彼女は生きる事を諦めなかった。結果として、適合する心臓が見つかり、さくらは病を克服する事が叶った。生と死の狭間を経験したからこそ、さくらは当たり前に生きている今の刻の尊さを実感している。

 姉・麻奈がアイドル活動していたのを間近で見て育った琴乃とは違って、さくらはアイドルに対しての先入観が希薄だから、活動における様々な事に新鮮なインプレッションを抱く。

特に印象的に感じたのが、3話で星見プロに来ていた『LizNoir』の神崎莉央と井川葵がレッスンの際に魅せたパフォーマンスを見て、さくらは理屈抜きで魅了されつつ圧倒的な凄みを感じてアイドルの持つ真の輝きに心揺さぶられる。圧倒的な差を魅せ付けられて打ちのめされただけの琴乃とは対照的な描写だ。

それを経て、自分も『LizNoir』の様なアイドルになりたいとさくらは力強く吠えた。これもまた、彼女が良い未来が訪れるだろうという事を信じているから出て来た言葉だろう。
さくらの前向きな決意表明を受けて、琴乃も変わっていく切っ掛けに(他者との関わり合い)踏み出し、レッスンの模様を撮影していた雫に呼びかけて反省会を開こうと提案する。

さくら(太陽)の輝きを受けて、琴乃(月)も輝こうとする…というよりは、さくらがいたから琴乃は変わろうとする覚悟と勇気が持てたのではないだろうか。


 姉の様なアイドルにならねばならないと思い込み、本来の自分を認める事から避け続けた琴乃。それは、未来と可能性を信じたいが未来と弱さを受けいれる事に対して臆病である事にも繋がっている。

さくらは、降りかかる全てを受け入れて認める。さくらにとってはそれも『当たり前の事』の括りにある。


 さくらと琴乃は相反する要素を持ち、相容れない存在である様に見えてしまう。
でも、彼女達が巡り逢い関係を構築していくのは避けられない必然の縁だった。
琴乃はさくらが持つ自分に無い要素に惹かれていった。そして、さくらも琴乃が持つ自分に無い要素に惹かれた。


 さくらが引っ張っていっている様に思えてしまうが、彼女も琴乃に引っ張ってもらっていた。
この両者の関係性は『IDOLY PRIDE』の『要』となる大きな要素だったのではないだろうか。

 

 

 

 Heart&Soul~川咲さくらの心臓と魂。そして自我の覚醒

 

 川咲さくらの物語を紐解くに欠かせない重要なピースと言えば…前述でも触れている彼女の心臓の事にまつわる数多のエピソードである。彼女の心臓の謎もまたこの物語において要となる要素。


 彼女は、心臓移植手術を受けて病を克服し、今の刻を生きている。
そのさくらの胸に在るのは不慮の事故にてこの世を去ってしまった長瀬麻奈の心臓であり、移植手術もその頃(本編の三年前)に行われた。ただし、いろいろな法の制約があってさくらが誰の心臓を移植されたのかはさくら自身も分からない。

でも、麻奈が生前所属していた星見プロのビルの前で心臓の鼓動が高まったり、移植されて以降自分の歌声が変わって歌う事が得意になったこと等を鑑みて、さくらは自分の胸に在る心臓が麻奈から提供されたものと情報は無いが確信した。

麻奈によって生命を繋ぎ止めたさくらは、心臓というピースによって麻奈の魂はさくらを依り代にして生きていると言ってもいいのだろう。それはさくらにしか理解できないモノ。コレは完全な妄想の域だが、麻奈が幽霊になっている要因の一つはさくらの心臓が影響しているのだろう。だとすると、さくらの確信は信憑性が高いモノに思えるし、長瀬麻奈の幻影に囚われた者の一人でもあった。


 『胸がドキドキしたから』という不可思議で漠然とし過ぎたアイドルの志望動機だったが、琴乃や他のアイドル達が頑張る姿を目の当たりにした事と、様々な経験を経た事が刺激となってさくらの心情も変化していく。それは、与えられたモノ(麻奈の歌声)に依存するだけではなく、川咲さくらというアイドルとして自立する事への始まりでもあり彼女自身が気が付けなかった本当に叶えたい夢。


そして……さくらは、長瀬麻奈の幻影と決着を付ける刻を決意する。

 

 

 

 感謝と決別の『song for you』

 

 

 琴乃と同様に、さくらにとってもこの『song for you』という楽曲は重要で切り離せない縁で結ばれて、アニメ版の物語の後半における重要なシーンが続々と展開されていく。

さくらから幽霊となってしまった麻奈を認識する事は不可能な為、認識可能な牧野と芽衣を通訳代わりとしてさくらと麻奈は対話する。麻奈が遺したこの楽曲をさくらが歌う事の無意味さを説く為に。だが、さくらは頑として麻奈の言葉を受け取ろうとはしない。
勿論、さくらにだって誰が歌うのが最も相応しくて多くの人の魂に響く事なのは理解している。

あの楽曲は自分だけのものであり、どんなに凄い技術や経験を持つ者や、仮に自分と同じ質の歌声を持つ者だとしても上手く歌う事は絶対出来ないと麻奈は吠える。それは、アイドル・長瀬麻奈が死してもなお貫き通す確固たるプライド。

それと同時に、自分の歌なんか歌わなくてもトップアイドルになれる素質を琴乃とさくらに感じていると激励の言を贈る。
 


譲れない想いと魂が麻奈にもある。当然、さくらにも譲れない想いと魂がある。

 

 
 私、ずっと悩んでました。麻奈さんの歌を私が歌っていいのか?


 でも、この心臓が麻奈さんのものだと知ってハッキリわかりました。


 あの歌は私が歌わなきゃって。


 麻奈さんほど上手く歌えるか分かりませんけど、琴乃ちゃんにも伝えます。


 この心臓は麻奈さんのものだから私が責任もってちゃんと歌うって。

 

 

 
 『NEXT VENUSグランプリ』でただ勝つための手段で歌うのではない。そんな単純なことじゃなかった。生命を救ってくれた麻奈への感謝、本当に目指す夢への軌跡を拓く切っ掛けになってくれた琴乃、サニーピース、星のテンペストとの絆への感謝、牧野と三枝への感謝。そして、当たり前という奇跡への感謝。

さくらを取り巻く全ての縁への感謝を持って歌う事で、麻奈の幻影との決着が付くとさくらは頑なに信じた。だから、麻奈の想いを知っても決意は揺るがなかったのだろう。それは、死線を彷徨った経験者にしか得られない意地の様なモノ。

 

 

 私ね、麻奈さんの歌声で歌うのは次のステージで最後にしようと思う。

 

 

 さくらは『song for you』という楽曲を、全ての縁の記憶と感謝を謳う楽曲だと解釈した。
特に、麻奈に対しての感謝を歌う事で決着が付いて本当に目指す軌跡への一歩が踏み出せる。偶然手に入れたモノ(麻奈の歌声)に依存してきたこれまでの自分から自立する事。即ち、自分が望んだ未来へ踏み出す事へ繋がり、誰にも屈しないさくらの魂の輝きが拡がっていったと思えてならない。

 

 

 

 自分達にしか歌えない『謳』とネモフィラの花

 

 

 10話で描かれた『NEXT VENUSグランプリ』セミファイナル。さくら率いる『サニーピース』の相手は、新人では異例の知名度とデビューからのライブバトルでは無敗の実力を持つ(ボスユニット)『TRINITYAiLE』。

そんな強敵に対し、さくら達は『サニーピース』にしか謳う事が出来ない楽曲で闘う事を決意する。歌詞やダンスの振付は彼女達が全部考えた楽曲『EVERYDAY! SUNNYDAY!』で勝負を懸ける。失うモノは何もない挑戦者魂でさくらにとってもリスタートの意味を持つセカンドステージの始まりとなる闘いに挑む。

麻奈の歌声ではなく、今のさくらの歌声が好きだとメンバー達は肯定してくれる。
ありのままの自分を肯定して認めてくれる仲間が寄り添ってくれる。これもさくらが得た答え。

そして、彼女達がセミファイナルで着ていた衣裳もこれまでのモノとは違うモノ。衣装で最も特徴的なのは、首元にネモフィラの花を模したアクセサリーが着いている事だ。


ネモフィラ花言葉『どこでも成功』『可憐』『あなたを許す』。


『どこでも成功』とは、場所自体を指す言葉ではなく、麻奈の歌声ではない川咲さくらの歌声でもって、サニーピースの五人にしか謳えない楽曲で成功を目指すという意味になり、『可憐』はアイドルらしく在ることでもあり……『あなたを許す』は、誰かが何かをやらかした負の要素を許すのではなくて、それぞれの個性を認めて許容するという意味へと繋がる。

かつて結成当初に、事務所の近所で咲き誇っていたネモフィラの花畑にて、正論と厳しさを突き付けた怜の言動をグループが成長していく為に必要なモノとして受け入れて、メンバー間にあった見えない壁を壊す切っ掛けになった事。

前述にもある、さくら自身の歌声と彼女が歩む新たな軌跡を共に往く事を受け入れる意味での『許容』という意味があるのだろう。そして、出陣前の円陣で五人がピースした指を寄せて星型を作るのは、単に輝く星を目指す意味もありつつ、星に形が似ているネモフィラの花という意味もあるのかもしれない。だから……

 


このネモフィラの花は、サニーピースにとっては絆の象徴と称すべき花でもある。

 

 

 さくら、怜、遙子、千紗、雫が選んだアイドルの軌跡が間違いではなかった事を証明する為に。ぶつかりながらも試す事=(アイドルとして)生きる事を諦めなかった刻に未来への必然としての意味を持たせる為に『NEXT VENUSグランプリ』優勝を勝ち取ると誓う。

 

 私は、私たちの歌でサニーピースの歌で頂点を目指します。

 

 

 胸の鼓動の高鳴りではなく、麻奈の幻影を超えて、その先へたどり着いた今の刻の川咲さくらの『答え』。この台詞から、彼女の成長の全てが詰め込まれている様に思える。

全ての縁と時間軸に意味があった。本当の意味での始まりと決戦の楽曲『EVERYDAY! SUNNYDAY!』にも通じる世界観。



 Everyday いつもいつまでも Sunnyday 一緒に歌おう


 今が最高のハーモニー


 ―サニーピース 『EVERYDAY! SUNNYDAY!』より引用

 


 楽曲や衣裳に込めたメッセージと、物語においてのさくらの進化は無関係なモノではないと思っている。

 

 

 

 
 と、いう事で、キャラクター独自考察第2回目・川咲さくら編でした。
正直な所、考察とは名ばかりな妄言塗れとなってしまったので、異論・反論がある事だと思います。

何度もこの場で言っておりますが、コレが正解などと言うおこがましい事は言えません。
その辺りは、コメントやTwitter等で当方にぶつけてもらえたらと思います。

 

最後まで読んで下さりありがとうございました。