どうも。RGR楽曲ライナーノーツシリーズのお時間です。
今回触れる楽曲は、このミニアルバム『Get Set, Go!』の中で一番自分のストライクゾーンに見事に決まった楽曲でもあり、RGR楽曲全体として捉えていっても上位に来る程に好きな楽曲。
フルを初聴したファーストインプレッションは、イントロからアウトロまでゾクゾクってした感覚に陥って鳥肌が治まらなかった。ありのままで言ってしまえば、気が昂って血が滾った意味での感情になる。
“彼女”は生き様とPRIDEを懸けてこの楽曲に血を流した。だからこそ、リスナーの魂に楔を撃ち込めたと自分は勝手に感じてしまったのだ……
点とミライ/林 鼓子
前作のソロ楽曲『りんごの木』の続編となるロックテイストの楽曲。
林さんは、憧れに手を伸ばしている最中を描いた前作の『りんごの木』から、一歩進んだ先に見える世界を描いて欲しいというリクエストをされたと云う。ラップパートと台詞パートは一歩進んだチャレンジとなり、見事なアクセントになっている。
全体のメロディに真新しさや変態的な進行はなく、ベーシックで王道的な構成になっているのは、彼女のクソ生真面目な人柄がそのまま曲調に反映されている印象。そこに加えてロックサウンド特有の無骨な荒々しさもある。この辺は、林さんが楽曲の魅力として挙げる『オラオラなはやまる』を象徴しているモノだろう。
ロック(ハードorパンク)は私が好きなジャンルだと彼女は言及されている。RGRの中では明瞭かつ力強くて太い歌声の質を持つ彼女にロックテイストは本当によく合うのだ。
冒頭のしょうもない四方山話の中で、生き様とPRIDEを懸けてこの楽曲に彼女は血を流したと言った。その要因になっているのが彼女が現状で抱く『飢え』と『怒り』だと考える。それは彼女が軌跡を駆ける燃料にもなっている。
ここで言う飢えは、もっと多くの人に見つけてもらいたい、認めて欲しいという承認欲求を満たしたいというモノや、現状に一切満足はしないで貪欲に先を見据えている事だろうし、怒りは理不尽な事に対しての反抗だったり攻撃的な激情そのものを指す。以下の節は彼女の激情を表している様に思える。
ぼんやり見てた アコガレてた
渦中にいるんだどんな日も
だから向かうよ 自分が思う最前線へ
今を道にするため
(もっと高みへ)
―林 鼓子 『点とミライへ』より引用
『りんごの木』の系譜に連なるだけあり、この楽曲もエネルギッシュで獰猛さがダダ洩れしている攻撃的な楽曲。しかも、獰猛さについては制御不能なレベルの域まで振り切っている。当然ながら、林さんの絶唱も楽曲が持つ力の強さに負けない強さが伝わって来る『闘いの謳』なのだと。
走り始めたのなら立ち止まらない事。転んで傷を負ってもしても前のめりですぐに立ち上がる。
『折れない』『負けない』『立ち向かってたい』とは彼女のFighting style。どんなに傷を負いながら、それでも私は強くなりたいとその傷が吠えているみたいな。台詞になっている『もっと高みへ』は彼女の生きようとする、荒々しい叩き上げの魂から来る執念の叫びなのだと。
森嶋さんのソロ楽曲の項で書くのをすっ飛ばしてしまったが……今回のソロ楽曲もメンバーのパーソナリティを想起させるワードが詞に散りばめてある。『感情にダッシュ!』においては森嶋さんの愛称である『もっちー』がそのまま詞に使われている。
『点とミライ』では『ここにいる』という詞があって、彼女の名である鼓子の読みそのものが使われている。曲題の『点』は彼女がこれまで駆けて来た軌跡だったり、今駆けている現在進行形の軌跡。即ち、林鼓子の存在そのものを指すのだろう。
この楽曲は、彼女がこれまでに経験した様々な経験があって、そういったバラバラに散りばめられた『点』が繋がって道となって未来の刻に繋がる事を謳う楽曲でもある。
行け!葛藤も運命も いっそ軽々と超えて
“ここにいる”を何度だって過去形にしよう
そう 一瞬をつないだ世界の果て 飛び込ませてよ
My promised new world
途方もない願い事 叶えてみたい
―林 鼓子 『点とミライへ』より引用
サビで歌われるこの箇所が、彼女の変わりたい想いや覚悟の精髄となるモノと考えられる。つまりは、彼女が今の刻で真に伝えたい本気の想いと魂でもある。『“ここにいる”を何度だって過去形にしよう』は『今を道にする』へのアンサー。
憧れを抱いた道に進む事は叶ったけれども、順風満帆に駆けて来られたワケじゃなかった。むしろ、悔しさだったり自分の力だけじゃどうにもならない理不尽にも見舞われた事の方が多かっただろう。今の刻で彼女だけじゃなくリスナーの我々も確実にやれる事は『点』を出来るだけ多く撃ち込んでいくしかない。点が多ければ多い程、ミライへの希望が増えて道になる可能性が拓ける。
『自分ひとりで進んでいるのではなく、今度は私が先頭に立ってみんなを引っ張っていくような曲にしたい』と彼女は想いと魂を込めた。作詞された真崎エリカ氏は林さんの想いを汲み取ってメッセージ(歌詞)にして返した。
激熱でドラマチックな、滾って溢れ出して来る激情を制御しきれない。本能を解き放った彼女の一点の曇りの無い血が流れる魂の絶唱が点と点を結んで道になる。
この楽曲は、林さんの歌声在りきで魂に響いてくる。どんなに凄い絶唱で謳っても、豊富な経験があっても林鼓子以外には謳えない。彼女のPRIDEが『アンセム』へと昇華させたのだ。