巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

RGR楽曲ライナーノーツ#13 ランガリング・シンガソング

 どうも。RGR楽曲私的ライナーノーツシリーズのお時間です。

 

 

今回で、『Run Girls, Run!』の1stアルバム『Run Girls, World!』に収録された楽曲解釈&所感は最後になる。

 

この楽曲は、1stアルバムにおけるリードトラック。それはこのアルバムの中で最も世間にアピールしたい楽曲。だからこそ一番最初のトラックではなくラストトラックに据える事に意味があったと自分は勝手に思っているのだ。

 


 

 

 
  ランガリング・シンガソング

 

 

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 原初の楽曲『カケル×カケル』、デビューシングル『スライドライド』、ターニングポイント的な『Break the Blue!!』『never-ending!!』と繋いできたアンセムとしての系譜に連なる楽曲。ただし、これは自分が勝手にほざいておるだけなので、曲調や世界観でみると『カケル×カケル』の続編的な楽曲だというのが多くの人の見解ではないだろうか。


そして、『Run Girls, Run!』が勝負を仕掛ける為の『闘いの謳』でもある。


 この楽曲を『闘いの謳』と自分が評したのは、これまでのRGR楽曲にはなかった『生々しさ』や『泥臭さ』といった生きようという執念めいたモノを感じたからである。軽快で疾走感溢れるバンドサウンドからは生々しさと泥臭い執念は感じられない。だが、歌う彼女達はそうじゃなかった。
今、抱いているむき出しの感情を余すところなくぶつける歌い方をしている。それに惹かれてしまうのだ。


三人はオーディションを勝ち抜いた結果『Run Girls, Run!』のメンバーとなった。
当然ながら、勝ち抜く為には技術的に光る『上手い』モノがあった事も要因だったと思う。
但し、その『上手い』要素は表現者としての一つの要素でしかないのも事実としてあり、それのみで闘って渡っていけるほど易しい世界ではない。それは彼女達が実際に表現の世界でこれまで闘って来て痛感させられたことだと思える。歌い出しの最初の節はその心情を表しているのではないだろうか。

 

 走るために生まれてきた

 でもまだ たりない たりない


 ―Run Girls, Run!『ランガリング・シンガソング』より引用

 

 楽曲の進行と並行する様に、燃え滾る情熱をメロディに乗せていくのではなく、最初から全力全開で今の彼女達が感じている想いと魂を解放するかの如く『たりない』と吠える。それによってこの楽曲が生々しい執念を謳う『闘いの謳』であるという事を強烈に訴えかける。

包み隠さない生の感情を曝す事で、この楽曲が今までの楽曲とは違ったベクトルで魅せて聴かせる事への興味をリスナーへと印象付けさせていく。だからこそ詞の所々に散りばめられたネガティブなワードが更なるエモーションを引き立たせていく。

 

 くやしさから 見上げたんだ 理想はまだ遠い

 眩しい光に澄んだその眼に 到らない私は映ってますか

 なにかと比べて落ちこむことで 少しずつライフを削ってしまう


 ―Run Girls, Run!『ランガリング・シンガソング』より引用

 

 
 林さんは、この楽曲を今の自分達にに共感できるポイントがすごく多い楽曲と評し、森嶋さんは、胸がグッと熱くなる楽曲と評し、厚木さんは、暗いかと思うが、いつもは見せないありのままの三人を表現している楽曲であると評されている。

これらの節はこの楽曲のネガティブ……負の感情の極致になる要素で三人が抱く感情でもあるのだろう。特に、『至らない私』と『なにかと比べて落ち込む』のワードが突き刺さって来る。

世の中を生きていく上で……何かと比較したりされたりは絶対に避けられない理と人の性(さが)だ。彼女達が身を置く表現の世界は正解や満点が無いけど、時には比較して白黒付けなければならない矛盾が存在しているのも事実で、他者から認められるというのもその中に含まれる。

駆ける事を止めるのは簡単。だが、徹底的に打ちのめされても彼女達にその選択肢はない。
何故なら、駆ける事を諦めるのは生きる事を諦めて死ぬ事と同義で、『ゴールで死ぬ』という詞はそれを直に表していてハッキリと『いやだ!!!』と吠えている。それは彼女達の生きようとする執念と本能の叫びなのだろう。

ちなみにここは二番のサビ前からサビへと至る箇所。
敢えて盛り上がる箇所にてネガティブなワードを歌う事で、弱い自分達を受け入れて現状に抗い変わりたいという本気の想いと闘う意志を示す。それがこの楽曲を『闘いの謳』であるというインプレッションを植え付けるモノだと勝手ながら思ってしまうのである。

 

 そして……まだ『ランガリング・シンガソング』という楽曲は真に完成していない。
詞を紡いで、メロディを奏で、彼女達が歌って形になってリリースされていてもだ。別の言い方すると、魂は宿っているが血が流れていない状態だ。


自分がその解釈に至ったカギになったのが、『ランガリング・シンガソング』という曲題とアルバムの(CD+Blu-ray版の方の)ジャケット写真。


 まず、曲題の方で気になるのが『リング』と『シンガソング』というワードだ。
『リング』は指輪ではなく輪(環)になるという意味で付けられたと思える。彼女達が手を取り合った絆でもあるし、彼女達とランナーとの繋がりという意味でもあるのだろう。また、MVで彼女達が手紙を渡されて読むシーンがあるが、その手紙はランナー諸氏からのモノだと表現していると言う。これも、『輪』の一旦を成す要素だと思う。

手紙の件だけではなく、この楽曲のMVでは彼女達の日常を描いたモノになっている。
休日の過ごし方やレッスンだったり、着飾って歌い踊る姿。どれもRGRには欠かせない日常の姿だ。これは見せなくて他の要素で演出しても問題の無い事だが、この楽曲のテーマとされる生々しい感情を見せるという事を考えてみると、現実のRGRと映像でのRGRを摺り寄せリンクさせる事は意味がちゃんとあって、等身大のありのまま今という刻を生きている私達を見て欲しいというメッセージに結びついているのだろう。


想いを文章という形にする人がいて、それを受け取る人達がいる。
想いを形にする為の手段は、文章に限らず多種多様に現在の世では存在するが、たった一つ変わらない事がある。


それは、人しか放つ事が出来なくて、人しか受け取る事しか出来ない事だ。


彼女達がこれまでの軌跡を駆けて来た中で、色々な想いのカタチを受け取って返した事だろう。
それは思い出になって彼女達の大きな糧にもなっていると思う。それがあったからこの楽曲をきっちりと歌う事が出来て、『私達の為の楽曲なんだ!』と言う三人の言葉がちゃんと意味のあるモノだと感じられる。この楽曲に叩き上げの荒削りな魂を感じるのはその影響があるのだと思う。


で、それ(ランガとランナーとの繋がり)をビジュアル化したのが、ジャケットの写真だ。

 

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走っている三人がゴールテープを切り、それぞれがどこか遠くの方を見ている構図になっている。ゴールとは言っても終わったのではなく一つの区切りとしてのゴールという意味だと考えられる。そして、彼女達が見ているのは未来の軌跡でもあり、ステージから見ているランナーでもある様にも見えなくない。


リリース当時のインタビューの中で、彼女達はこの楽曲をライブで自分達が歌った際に彼女達がどういう心情になっているのか?また、ランナーがどういうインプレッションとレスポンスになるのかは未知の領域だと語った。曲題の『シンガソング』=『sing a song』は彼女達が歌う意味でもあるが……けど、皆で歌うという意味の『シンガロング』にも掛かっていると自分は思えてならないのだ。それを証明し、この楽曲の要となる箇所がある。

 

 

 好きだよ 好きだよ 叫んでいる

 (Run Girls, Run!)

 とどいて とどいて 熱い想い

    (のせて走れ!)


 ―Run Girls, Run!『ランガリング・シンガソング』より引用

 

 

 彼女達は偽り無い本気の想いをとどけたいと謳い、ランナー諸氏は彼女達の名を叫ぶ。
この箇所を彼女達とランナー諸氏が一緒に歌った時、この楽曲に血が流れて真に完成する。
観客の前で歌われる事は叶ったが、現状、諸々の制限があって一緒に歌うという事はまだ叶っていない(……はず)

それが叶った刻と機会と場で……音と彼女達の歌声が更に熱を帯びて、メロデイは血が流れて全身に巡って魂が鼓動する。瞼を閉じてRGRが歌いランナーが吠える光景と音をイメージするだけで心が戦いで魂が爆ぜる衝動に駆られてしまう……本物の現場にてそれが観れて体験したい……!!!

 
 この楽曲は勝ち残って生き延びる為に彼女達がココロから引き抜いた『剣』。
綻び、折れかけた事は数え切れないが、彼女達は熱を与えて叩きまくって鍛え上げた。

 

 ユニットの略称が付けられた彼女達だけの楽曲をより強くしようという気持ち。

 林鼓子の伸びやかで張りがある力強い歌声。


 森嶋優花の溌剌で低音域に秘められた凛とした歌声。


 厚木那奈美の繊細ながらも芯がきっちりされた柔和な歌声による三者三様の個の力。

 
   そして、まだ伸び代が未知数な将来の可能性……

 
まさに、『Run Girls, Run!』の為だけに作られた楽曲。
誰の為でもない、まごう事無く純然にRGRを輝かせる為のアンセム

歌う者に相応しい楽曲と、楽曲に相応しい歌う者。
それがきっちりと一部の隙間なく揃った。そんな偽り無い本気の想いが詰まった楽曲が弱いワケがない。だからこそこの楽曲を初めてのアルバムのリードトラック&ラストトラックに据えた。
何かのタイアップという後ろ盾はこの楽曲には無く、完全に退路を断つ潔さ。
その潔さも『闘いの謳』というインプレッションを濃密なモノにしているのだ。


それは、綺麗に締め括る為じゃない。ここから突き進む為に覚悟を持って肚を括った。
闘う準備は出来ている。過去から今、そして未来の刻に……全ての縁と時間軸に意味を持たせて止まらずに駆けるだけ。彼女達の眸は前を見据えて前に向かう為にあるのだから。