巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

RGR楽曲ライナーノーツ#22 拝啓ディアナイト(厚木那奈美ソロ楽曲)

 どうも。RGR楽曲ライナーノーツシリーズのお時間です。

 


今回で、Run Girls, Run!のミニアルバム『Get Set, Go!』に収録されている楽曲所感はラスト。
そのラスト・ナンバーを飾るのは、厚木那奈美さんのソロ楽曲。

 

この楽曲に詰め込んだ想いを、厚木さんはこう答えていた。

 

 

 会えない期間が続いた時に、すごく皆さんから頂いたお手紙で

 元気を出して頑張ってこれたので

 曲を通してみんなにお手紙の返事を書けたらいいなって。

 みんなからたくさんの愛を頂いているので

 私もみんなにこの曲を通してBIGなLOVEをお返ししたい。

 

 

 BIG LOVE。直訳してしまうと大きな愛。ただ、厚木さんはその言葉に込めた想いは測れないモノなのだろう。親(深)愛の情でもあり、広義的な博愛の情でもある。

シンプルなテーマであるが、それ故に奥深く難解。今回のソロ楽曲も、厚木那奈美のクレバーで強かなもう一つの『貌』が独特の不可思議な深みを感じさせる楽曲になったと勝手に膝叩いて感嘆してしまったのである。


まあ、どこまで言語化出来るか分からないが……彼女の開いた『扉』の向こう側に拓けた未知の領域へ踏み込んでみようと思います。

 

 
 

 

 

 拝啓ディアナイト / 厚木那奈美

 

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 EDM調のミドルテンポが沁み渡る、上質なヒーリング効果で聴き心地の良い“癒しの謳”というのが、フルで聴いた直後に抱いたファーストインプレッション。

その聴き心地の良さを醸し出しているのは言うまでもなく、厚木さんの柔和な歌声によるモノなのは勿論だが、メロディの根幹を成しているEDM調と彼女の歌声との相性が抜群に良いからというのもある。それと、厚木さんのパーソナリティの一つでもある掴み所のない不可思議さをなぞっている様な浮遊感のあるメロディも影響している様に感じられる『静』に振り切った楽曲。


 その『静』という要素は、厚木さんが今回のソロ楽曲に掲げたテーマでもある、夜寝る前でリラックスしている時に聴いてもらいたいという事と、彼女がファンに想いを馳せて貰った手紙の返事を考えている安穏とした刻の流れを盛り込んでいるからで、厚木さんの感覚や視点と多分に重なっている部分でもある様に思う。



 あのね。

 ホントはちゃんと贈ってみたい ワードばっかりだけど

 言えない

 かわりに届ける ごきげんよう

 聞こえているといいな キミに綴ろう


 ―厚木那奈美 『拝啓ディアナイト』より引用

 

 

 厚木さんが貰ったメッセージは、多種多様な想いに溢れたモノばかり。でも、その全てに対して想いを込めつつ真摯な返答を贈るのは非常に大変なモノ。失礼なのは承知で言ってしまうが……厚木さんはそんなに器用な人じゃないと思っている。『言えない』は彼女の限界を痛感しているのかもしれない。

だからこそ、歌が持つチカラで多くの深愛の情に厚木さんも深愛の情でもって応える。彼女が言う『BIG LOVE』には歌のチカラも含まれているのだろう。そして、『ごきげんよう』というワードは厚木さんが挨拶の時に言う口上で、彼女の存在そのものを指すワードでもあって、偽らない自分らしさというパーソナリティを魅せる事。それも多くの人からの深愛に応える為のモノ。

本気の想いを伝える為の方法は必ずしも一つに限定されるモノではない事を、彼女は意志表示として謳に込めているのだと感じさせられた。


 そして、この楽曲は厚木さんの内面を描写している楽曲だと感じられた。
それをダイレクトに感じるのが歌詞カードで括弧になっている箇所の語りかける様に歌う所。

この箇所は、厚木さんが抱いているであろう未来の刻への不安と葛藤を歌に乗せている。楽曲のテーマの一つとして夜のリラックスしている刻を盛り込んであり、そこで彼女自身との対話をしている様に考えを巡らす。括弧内のワードと括弧外の『大丈夫』や『私らしさ』とで双方の対話として成立させている描写は面白いモノで、単に癒しの謳では収まらない奥深さも感じられる。

この対話もまた、厚木さん自身がこれまでに経験して来て、なおかつ今も継続されている習慣なのかもしれない。前しか見据えず駆けていく為必要不可欠な彼女自身に宛てた手紙でもあると。曲題に冠している『ディア』(Dear)=親愛は、ファンの皆という意味でもあるがもう一人の彼女への意味も含まれているのだろう。

 

 

 いつもありがとう

 どんな距離あいても 信じられる人がいるよ

 このまま未来へ走るのを 見守っていてくれる?


 ―厚木那奈美 『拝啓ディアナイト』より引用


 
 多くの人への深愛の謳でもありながら、究極的には彼女自身に向けての深愛の謳でもあった。
だからこそ曲題にDear(ディア)=親愛という意味のワードを入れたのだと自分は解釈している。厚木さんに情熱を持って接する人達がいてその想いを様々なカタチで彼女は受けとめる。直に逢えない刻があったからこそその大切さと尊さを彼女は知り、今の刻においてこの楽曲を謳えるのだと。


 直情的な『動』の要素で聴き惚れさせる森嶋さんと林さんの新たなソロ楽曲とは違ったアプローチにて、じっくり沁み入る様に聴き惚れさせた『静』の要素で厚木さんは答えを示した。


 厚木那奈美『深』なる愛、『親』しみの愛、『真』の愛。
対象や種類という狭い枠で括らずに、限り無く包み込もうとするが故の『BIG LOVE』だと思えてならないのである。