巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #5 佐伯遙子編

 どうも。 

 

『IDOLY PRIDE』キャラクター独自考察シリーズ5回目。佐伯遙子編をお届けいたします。


星見プロの10人のアイドルの中で、唯一ソロデビューを果たしていた彼女は特別な立ち位置のキャラクター。そして、麻奈とのアプローチもちょっと違っていたキャラクターでもある。
そんな彼女が紡いだ物語を紐解きながら、様々な考えを巡らせてみたいと思います。

ちなみに、これまでのキャラクター独自考察とこれ以降の独自考察は、アニメ版とコミック版で描かれた物語が主となっています。なので、足りないと感じる部分が多々あり、異論と反論は大いにあるかと思いますが、温かい目で読んでいただけるとありがたく思います。



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 持たざる者の気迫と執念



 何度も書いているが、この作品は『持つ者』と『持たざる者』という相反する立場にいる者達の心情描写がテーマの一つになっている。佐伯遙子もその括りの中にいる者の一人で、彼女は『持たざる者』のカテゴリーにいる。


では、遙子は何を『持たざる者』なのか?


 彼女は、オーデイションに合格してアイドルへの軌跡を拓いた。
三枝さんも、何の可能性を見いだせない者を合格させるとはとても思えないので、遙子にアイドルとしての才能と可能性が全然ないという意味での『持たざる者』ではないと思えるし、巡って来るチャンスに全く恵まれていなかったと言うワケでもなかった。勿論、遊び惚けてもいないしちゃんと修練を積み上げて動く事とチャンスに手を出す事も止めてはいなかった。


遙子は、巡って来たチャンスを確かに掴み取る握力が無かった。ただそれだけだったのではないだろうか。


 しかし、それだけと言ってしまったがそれは決して小さいモノではなく、限られたごく少数の人間にしか掴めないモノだったりする。幸運が目の前に確かに存在していても、それをちゃんと掴み取れるだけの力の蓄えが自分に無かったらただの偶然で終わってしまう。

ソロデビューを果たしたが、彼女自身も言っている様に鳴かず飛ばずで雌伏の刻を過ごす。

そんな状況の中、遙子よりも後に星見プロに入った後輩である長瀬麻奈は巡って来た雄飛のチャンスをことごとく掴み取っていく。彼女にとって麻奈の存在は、単に凄いとか華のあるとかそういう言葉で語れないのだろう。それは、麻奈に近い所にいる遙子が痛感しているモノだ。更に、麻奈の本気と同じ速度で駆け続けられるのは並大抵の努力では足りない事も。

遙子が麻奈に抱く感情はそう単純に量れるモノじゃない。
キャリアは遙子がちょっとだけ上だが、歳は麻奈の方が上で、姉の様でもあり、友人や仲間でもあり、後輩でもあるし……何よりもアイドルとしてはライバルでもある。

彼女が語っている超えたい相手と、悔しさを抱きライバル視している人物は麻奈でおそらく間違いないだろう。


 自分よりも圧倒的で絶望さえ抱かせる程の存在と相対した時、そいつを超えたい、勝ちたいと徹底的に抗うか?こいつには勝てないと早々に諦めて闘わないか?の二択を迫られる。

当然ながら、どちらの答えも正解であり間違いは無い。その選択に後悔しなければいいだけ。と、言うがそれは簡単じゃない。遙子に突きつけられる容赦ない現実と挫折から来る不安という負の感情は確実に彼女の魂を蝕み、今後の身の振り方を本気で覚悟させる……


でも、遙子は踏み止まり闘う道を選択した。現状や自分自身を変えるには止まってなんかいられないから。

 

 成功できるかなんて分からない。

 
 だから、いっぱい練習するんじゃないかな。不安を消すために何度も繰り返して。


 

 

 怜の抱える事情と闘える理由を知り、彼女の心情を慮った遙子の言葉だが、これは遙子自身にも言い聞かせている様に思える。

アイドルが好きだという想いと意地がエネルギーになり、遙子の魂を滾らせ身体を突き動かす。その努力が必ず実を結ぶかどうかなんて保障なんて分からなくてもやらなければアイドル・佐伯遙子としての死を意味する。アイドルとしての才能が無いと思いながら、売れなくてチャンスもなかなか巡って来ない現実を思い知らされても腐らずに黙々と努力を積み重ねる……

牧野から『サニーピース』への加入を告げられた時、遙子の心中はいろいろな想いが当然あっただろう。素直に首を縦には触れなかったはずだし、言い換えれば遙子をソロで輝かせるのは現状では厳しいと通告している様なモノでもある。でも、チャンスが目の前に舞い降りたのも事実。


 自分が持っていようが持っていないかなんて遙子にはどうだっていい。いつ報われるか分からない雌伏の刻を過ごしながらも、アイドルとして生きる事を諦めなかった者の叩き上げの魂と気迫と執念はこれがラストチャンスなんだと本能で悟った。そして、彼女は腹を括って懸けてみようと。

おおらかで、周りへの細やかな気配りや気遣いの出来る彼女から気迫や執念という言葉が結びつくのは見当違いなのかもしれない。けれど、佐伯遙子という人物のバックグラウンドを知って、彼女を評するのに最も相応しいと思える言葉が、認められたい気迫、懸ける執念といった言葉が浮かんで来るのだ。

 

 

 

 

 止まった時計が再び動く刻



 

 佐伯遙子、17歳ですッ!!!!!!!

 

 

 琴乃達のグループから分けられた、さくら、千紗、雫のグループには新たに二人のメンバーが加入する。一人は、ダンスで全国優勝を成し遂げた一ノ瀬怜。もう一人が、既に星見プロに所属していてソロデビューを果たしていた遙子。


皆の前で紹介された時、遙子は学生時代の制服を着て上記の言葉を挨拶で解き放った。


 ちなみに、彼女の実年齢は20歳。その挨拶を聞いた他の面々は唖然として場の雰囲気は微妙なモノに変わってしまった。遙子の振舞い様はどこか痛々しくもあり、所謂スベった状態に……彼女の考えは分からないが、ソロアイドルとしてのキャラとは別にグループ内でのキャラ作りとしてユーモアネタの一環で掴みの挨拶的なモノとしてやったのだろう。その解釈で概ね間違いはないとも思える。

それと、遙子以外の星見プロのアイドル達は中学生~高校生。わざわざ学生時代の制服を着て来たのは、最年長者でキャリアのある先輩というより目線を同じくする仲間として見て欲しい、年齢差から生じる距離感やしがらみを無くしたかったという解釈でも成り立つだろう。


そして、敢えて17歳と言い張るのは、遙子にとって重大な意味があって、それが『キモ』だと考えている。


ここから先に書く事は何の確証もないただの妄想&暴論によるモノなので、そのつもりで読み進めて下さいwww


 彼女が17歳の時、つまり、三年前にある出来事……事件が起こっている。


そう、長瀬麻奈が事故で亡くなった年だ。


麻奈の死は、世間・人との縁共に多大な影響を与えた。それこそ人生を変えてしまう者がいた程。アイドルの麻奈と近しい所にいた遙子も例外ではなかった。

 
 前述でも触れたが、遙子が麻奈に抱く感情はシンプルではない。
姉の様でもあり、事務所の後輩、友人でもあるし、遥か先を駆ける目標でもありライバルでもあった。

これまでと変わらずに直向きに黙々と努力は続けていた。自分が星見プロを盛り立てていきたいという意欲もある。だがそれ以上に、遙子の中では目標と理想であり超えたい対象である麻奈を亡くした事は大きくて、刻の流れが止まってしまった様な感覚に陥って17歳の刻で止まった。それは血の繋がった身内を亡くした琴乃とはまた違う痛み。


遙子もまた……琴乃やさくら、神崎莉央と同じく、死人(麻奈)に魂を縛られたのだ。


勿論、刻が止まるという現象が起こるワケが無い。幽霊になった麻奈を一部の人が認識出来てコミュニケーション可能なファンタジー要素のある本作でも、刻の経過まで止めてしまう要素までは盛り込んでいない。あくまでも、遙子の中にしかない刻の経過を司る時計の様なモノ(精神的な感覚)が止まってしまったという説をでっちあげて考えている。


 で、牧野から新ユニット『サニーピース』への加入というチャンスを得た遙子。
彼女にとってはここで輝けなければもう後がないと思ったのは間違いない決起の刻。

雌伏の刻の中で、誰よりも汗を流し、涙を流し、闘う準備を怠らなかった。
アイドルとしてのプライドを胸に、夢への軌跡を駆けて長瀬麻奈の幻影を越える事。


痛々しかろうが、場の空気がどうなるかなんて知ったこっちゃない。17歳で止まってしまった刻を動かす為に敢えて自分は17歳だと言い放ち高校時代の制服まで着た。


 それは、遙子にとって闘いへ赴く為に必要な決起の儀式だったと思ってしまうのだ。

 

 

 

 

 PRIDE AND GLORY~持たざる者のプライドと掴んだ栄光



 遙子は三年前の『NEXT VENUSグランプリ』にソロで出場したが、あっさりと敗退してしまった。彼女にとって今回のグランプリはリベンジもかかっている。三年前の自分とは境遇も積み重ねた努力の成果は裏切らないと、不安を抱えながらも予選の結果報告を待ちわびる。

そして、予選突破の報を告げられた遙子は拳を振り上げて雄々しく吠えた。その姿は普段の彼女からは想像できない行動。身体を突き動かして大声張り上げたのは、誰よりも強い想いと覚悟を持って今回のグランプリに懸けていたのだ。

とは言え、『サニーピース』の予選順位は16番手でギリギリ通過。でも、この順位は予選限りのモノ。グランプリ本戦では全グループがまた同じスタートラインに立ち、本当の戦いはここから始まる。遙子の咆哮は本戦への意気込み、闘志の表れでもあるし……

逆に、これまで積み重ねてきた努力の成果で得た自信がまだ足りなくて不安を打ち消したくて吠えたのかもしれない。優勝出来なかったらまた遙子の刻は止まると彼女は本気で信じ、麻奈ですら成し得なかった『NEXT VENUSグランプリ』優勝を勝ち取る事で麻奈を超える事が叶う。それが叶った刻こそ麻奈の幻影を越えた先に立つ事が出来る。


 『サニーピース』のメンバーとしてグランプリを戦ってきたが、遙子個人としては長瀬麻奈とも戦っていた。『持たざる者』のプライドを胸に秘め三年の刻を迷いながら必死に。
その三年の刻の間は刻が止まっていたかもしれないが、積み重ねた刻は決して無駄な刻ではないはず。

遙子にも麻奈にも、誰にも割り込めない心躍る悔いのない戦いに終焉の刻が近づく。そう、グランプリの優勝という言葉と『持たざる者』の執念が起こした『奇跡』とともに。


 同時優勝が決まった刻、10人の中で人目を憚らず号泣していた遙子。
グループとしての夢を勝ち取った事。志半ばで散った友であり、憧れた目標・ライバルでもあった麻奈への想い。そして……遙子が長い雌伏の刻を過ごした過去と、諦めずに闘い続けた事が報われた待望の刻でもあった。

 
 敗れても尚、諦められきれない不遇の者。星見プロのアイドルの中では遙子にその要素が色濃く反映されていた。その彼女の努力と闘いが報われ想いが溢れて涙を流す姿は、生の感情や叩き上げの魂が剥き出しでいてその姿に胸が熱くなるカタルシスを抱いたのである。

 

 


 
 と、言う具合で、佐伯遙子編でした。


 次回は、これまたブラックボックス的な存在である白石沙季編。
どういう切り口で彼女の事を書き殴っていくか……今から容量の少ない脳ミソ振り絞って抗ってみようと思います。


 
 今回も、最後まで読んで下さってありがとうございました。