巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #10 兵藤雫編

 『IDOLY PRIDE』キャラクターの独自考察記事も、早いモノで10回目を迎えました。
実感があまり湧きませんが……ここまでこの妄想&暴論で書き殴った独自考察を読んで下さっている皆様には心から感謝致します。


 そんな10回目に考察していく人物は、星見プロに所属する最後のアイドルとなった兵藤雫。
他の人物の考察でも触れてるが、アニメ版におけるストーリー進行のウエイトは雫も所属している『サニーピース』サイドに偏っている。ストーリー的にダブル主人公の一角となった川咲さくら。外部からの“異物”として刺激を与えて変化を促す役割を担った一ノ瀬怜。持たざる者の意地と執念を描写した佐伯遙子。姉離れを主軸とした白石千紗の変わりたい想い。


と、まあ……メンバーそれぞれに濃い物語があったワケで、雫はどういう物語があったのか?それについての考察をいろいろと書き殴ってみようと思う。

 

 

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  “静”の貌と“動”の滾る感情



 兵藤雫という人物は根暗で寡黙なアイドルオタク。アイドルについて語る時は熱い語り口で饒舌だが、基本的には表向きの感情表現がちょっと苦手で積極的にはコミュニケーションを取らない感じ。ただ、意図して人を完全に避けているのではなく、人付き合いは初期の琴乃とは違って悪くはなくて意外と表情豊かな部分もある。

物語の中で彼女が見せた表情で自分が良いと感じたのは、5話の寮にてレッスンでグロッキー状態になってる所に怜が持って来た数多のダンス教則本の山を見て慄く表情と、10話で『TRINITYAiLE』と初めて対面した時に、テンション振り切れて目を見開いて拝みだすシーンが個人的に印象深く面白い。


 前述でも触れたが彼女は筋金入りのアイドルオタクである。しかも、年季の入ったファンからも一目置かれる程でアイドルオタク界隈では有名だとか。そんな彼女は、アイドルを深く知るが故に表向きの華やかな面だけではなく、アイドルがより輝く為に向き合っている過酷な現実が生半可なモノではない事も承知している。

で、アイドルへの深い知識を持つ雫がその知識を活かし、アニメ版の物語において与えられた重要な役割が、他に登場して来るアイドルについての解説役。特に、『NEXT VENUSグランプリ』で10人と競い合う事になる二組のボスユニットのレベルの高さについて語る場面が目立った。余談だが、おそらく本戦に進出した他のグループについても雫の知識にはあるのだろう。

 

 

 多分、出来る。『LizNoir』は本物……

 麻奈さんとずっと、競い合っていたアイドルだから…

 

 

 
 3話で描かれた『LizNoir』と星見プロの合同レッスンは、どう考えてもその時点では絶対倒せない相手に成す術無くやられるのが当然な所謂『負けイベント』ってヤツ。

琴乃達に与えられた課題曲を踊っていたのをたった一度見ただけで、莉央と葵は琴乃たち以上に完璧なパフォーマンスを魅せ付ける。ほとんどのメンバーが本物のアイドルとの圧倒的な差に打ちのめされた格好になっていたが、『LizNoir』の実力もよく知る雫は、今の自分達と彼女達との圧倒的な差は当然な結果として冷静に受け入れてた様に見える。

彼女の『LizNoir』評は、この作品の中において最高・最強のアイドルだった長瀬麻奈を引き合いに出し、『LizNoir』が麻奈に匹敵する存在である事を印象付けさせた。

 

 

 立てる、かな…… 次の相手は『TRINITYAiLE』

 デビューからずっと無敗の超人気アイドル。

 三人のパフォーマンスは完全無欠ッ!まさに最強ッ!!!

 それに、『TRINITYAiLE』のステージからは、絶対に負けないって、強い想い感じる。


 

 

 『LizNoir』とは違って『TRINITYAiLE』に対し、雫はファン目線で見ている節が強くある。
それは実際に10話で『TRINITYAiLE』と対面した時や彼女達の事についての語り口が普段の雫らしからぬちょっとした好意的な感情が激情になってダダ洩れしているからだろう。


 だが、ここで注目したいのは、アイドルとして本格的なレッスンを受けだした頃(3話)と、あれから刻が経って『NEXT VENUSグランプリ』の準決勝(10話)で変化した雫の力のある言葉ではないかと。

彼女の言う『立てるかな』というのは、雫の中においておそらく最も実力的に評価の高いアイドルである『TRINITYAiLE』の凄さをちゃんと踏まえつつ……でも、そういう相手に勝ち、決勝のステージに立つという事をイメージ出来ている事に繋がった様に思える。


 好きや憧れの気持ちだけではなく、そうなる為に負わなくてはならない苦難と現実が待ち受けている事も覚悟の上で、雫はアイドルへの軌跡に一歩踏み出している。琴乃とはまた違った意味で腹括っているキャラクターだと感じられた。

アニメでのストーリーにおいて、『サニーピース』への描写の割合は高い。但し、雫にスポットが当たっていた割合は他の四人(さくら、怜、遙子、千紗)に比べると少ないのだけれども…でも、影が薄いとは感じられずに(アニメの)最後まで描かれていたのは見事な塩梅だった。

 

 

 

 輝きたい未来の空へ…… 

 

 この作品に登場するアイドル達に最も多い志望動機は、アイドルという存在が放つ輝きに憧れを抱いて自分もそうなりたいと願う者が多い。それは変わりたいという想いの究極の形と称してもいい。雫もまた、アイドルの輝きに魅了されて憧れを抱く数多の少女達の一人だった。

メディアで活躍するアイドルに憧れ、自分もそうなりたいと願う。でも、雫の周りの人は彼女の根暗で寡黙な性格ではアイドルなんてなれるモノじゃないと決めつけて嗤ったのでしょう。ただ、雫自身も自分の性質は痛い程理解している。無理だという否定的で消極的な思考に脳ミソが支配されそうになる。でも、雫のアイドルに対する強く純然な想いが諦めないという前向きな思考へと進化していく。

雫の外見は、派手目なヘアスタイルと出で立ち。彼女がいつ頃からこういう格好をしていたのかは分からないが、彼女なりの変わろうとする覚悟を表現しているのかと思わせる。派手な外見というのは雫にとってはアイドルの輝きを表現したモノであり、それは彼女の『なりたい自分』の理想の姿なのでしょう。

 

 キラキラしてる……かわいい 私も、アイドルになりたい。

 周りの人は何て言うんだろう ちょっとだけやってみようかな……


 笑顔、難しい……私がアイドルなんて無理なんだ……

 どうしたら笑えるのかな 笑顔、難しい……


 ―【MV】サニーピース『EVERYDAY! SUNNYDAY! 』より引用



 この『EVERYDAY! SUNNYDAY! 』という楽曲、作中では『サニーピース』の五人によって作詞とダンスの振付が成された『サニーピース』による『サニーピース』だけのOne off的な楽曲。

この楽曲のMVでは、メンバーがそれぞれ抱えている『負』の要素にスポットを当てた描写がある。
上記は、雫が抱いているアイドルへの憧れと笑顔が思う様に作れない苦悩を描いている。


 雫の内に潜むアイドルへの想いと情熱は、現実を突き付けてもその場に留まって変わらない事を許してくれなかった。その想いと情熱が無尽蔵のエネルギーとなって雫をアイドルへの軌跡へと駆り立てて星見プロの門を叩いた。人というのは必ず門を叩かなきゃいけない刻が来る。叩くのもそうだし、門を開けた未知の領域へ一歩踏み出すのも勇気が要る。


 オーディションに合格し、晴れてアイドルへの軌跡を歩む事になった雫。
ライバルではあるのだけれども、志を共有する仲間でもある他の9人と関わっていく事で、自然とコミュニケーションが増えていく事になる。

でも、アイドルのオーディションに晴れて合格しても、なった瞬間に上手く笑顔が作れるモノではない。更には厳しくて楽しくない状況下にアイドルがあっても笑顔を見せないとならない。アイドルオタクである彼女はその事を痛感しているからこそ余計に上手く笑おうとしてしまうのかもしれない。ただ、裏を返せば、受け取り側の事をちゃんと考えられることだったりする。

6話で、デビューライブが決まって何かの撮影をしている時、アイドルらしいポーズは出来てるが表情は笑顔ではなかったし、インタビューもどこかぎこちなかった。でも、デビューライブのステージではちゃんと笑顔でパフォーマンスが出来ていた……いや、出来るようになったと称すのか。

普段の彼女では苦手にしている事が、歌とダンスという依り代を纏えば自然と笑顔になれた。
それは、過去の雫の魂を現在の雫がアイドルとして救えた『魂の再生』という物語の始まりでもあった。

 

 

 

 もらう勇気、背中を押す勇気

 

 雫のアイドルの軌跡を語っていく上で、欠く事の出来ない人物の縁がある。
その人物は、彼女と同じグループ『サニーピース』に所属している白石千紗。両者共に心の中で親友と思っている人物として互いの名を挙げている。

彼女達がストーリーのどの辺りで接点が交わり絆を育んで親友にまで至ったのかはアニメ版では分からないが、可能性として最も高いと思われるのは『サニーピース』を結成した頃を境に距離がグッと近づいたと考えられる。


 人との繋がりに関して、互いに似ている共通項があると惹かれやすいと一般的に言われる。
その観点で雫と千紗を見ていくと、この二人は内向的で自分に自信が持てない性格をしていてそれがコンプレックスになっている。それと、基礎体力がなくダンスレッスンで苦戦している所も共通点。

似たコンプレックスや悩みを抱いているからこそ、心情を察しやすくそっと寄り添えて励まし合って来たのだろう。それに、彼女達が他者の想いを慮れる思慮深い性格も影響しているのかもしれない。
千紗がいたから雫は頑張れる。千紗にとっての雫も支え合って背中を押す存在。
 
二人は否定するだろうが彼女達の関係性は『ライバル』でもある。『敵』と称される事もあるが雫と千紗はそういう関係性じゃなく助け合う関係性のライバルなのだと勝手ながら思っている。


 コレは余談なんだけども……今後もおそらく新曲がリリースされると思う。
その際には、雫と千紗によるデュエット楽曲のリリースを是非期待したいモノである。

 

 

 

 

 

 と、いう事で…兵藤雫編の独自考察でした。

 


我ながら、よく10人ものキャラクターの独自考察記事を書き切ったと思います。でもここで終わりではなく一つの通過点でしかありません。単なる勝手な考察でしかありませんが、読まれた方には本当にありがたくて感謝しかありません。

 

まだ残っているキャラクターの考察も引き続き書き殴っていきますので、また読んで下さると嬉しく思います。