巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDE 東京編を斯く語る

 アプリゲーム『IDOLY PRIDE』のメインシナリオとなる『東京編』が完結を迎えた。

 

 

 

 ネットの海には、数多の人達によってその感想が綴られている。自分もその時勢の波に乗っかって所感やら考察を書き殴っていこうと思います。タイトルに『斯く語る』とか書いておるが大したことは書いておりません。(って言うか書けない……)



 *本稿は、ゲームのストーリーのネタバレを多分に含んでおります。

 

 

 

 

 

 東京編の全体的なインプレッション

 

 『東京編』というのは、アニメ版やゲームの『星見編』の続編となる物語。
月のテンペスト&サニーピースがNEXT VENUSグランプリの同時優勝を勝ち取り、東京に活動の拠点を移した所から『東京編』の幕が上がった。


 星見編では、立ちはだかるライバル(ボスグループ)であったトリエル&リズノワが星見プロに移籍という流れは単純に面白く激熱な展開だったと唸った。その要因になったのが朝倉さんの逮捕によるモノというのがまたその面白さに拍車をかけたと思う。

朝倉さんが一方的に、トリエル&リズノワを解雇するに至ったのは、自分に良からぬことが降りかかってくるだろうと感じたからというのは分かり易いモノで、三枝さんもその事に一枚かんでるんだろうというのはベタと言ってしまえばそれまでかもしれないが……そこの落し所(真相)を二章以降どうつけていくかという期待感も抱かせるモノ。

朝倉さんが牧野に宛てた手紙の文末で、『娘(瑠依)を頼む』って所が……もう、涙腺がヤバい具合に……
 

 東京編では、アニメ版ではライバルグループという立ち位置から描写が少なかったトリエル&リズノワに焦点が当たった描写が多くあったのは、続編ならではという感じだった。


(……まだ少ない気もしてるし、リズノワが割食った感は否めない)


終盤は、サニピ&月スト寄りの展開になっていくのは当然な流れではあるのだけれども、そこまでにトリエルとリズノワがちゃんと物語を引っ張ってくれたのは好感を抱ける部分かなと思っている。瑠依及びトリエルを推されている人達にとって、彼女達が段々と落されていく展開は、気が気じゃない波乱万丈な展開だったかなと。

莉央は星見プロのアイドルの中で最年長者になったわけだが、東京編での彼女は良き姉貴分&先輩としての立ち振る舞いが印象深かった。アイドルとしてどうあるべきかを悩むさくらを優しく導く様な振る舞いや、スリクスに負けた月ストにあえて厳しい言葉を浴びせて立ち向かう気概を呼び起こさせたり。まあ、こころに当たりがキツいのはこころの言動のせいでもあるがwwww

特に、この二グループが直接対決する展開は本当に胸熱な展開。開戦の前に淡々と言葉を交わして健闘と誓う瑠依と莉央の描写が二人の気高さを象徴していてとにかく良かった。(語彙力……)


 そして、東京編において、強大なボスグループとして立ちはだかるBIG4の一角『ⅢX』(スリーエックス)の登場。彼女達は、星見編でボスグループとしての役割を担ったトリエルとリズノワとはまた違ったテイストを持つグループだったのではないかと。

基本的スタンスは、圧倒的な実力で真正面から徹底的に捻じ伏せるというボスグループらしさもありつつ、裏で清々しいまでの悪役ムーブを魅せる姫野さんの数多の奸計を知りながらも見逃しつつ、美味しい所はきっちり貰おうという狡猾な強かさというクセの強いヒール(悪役)としての面もあった。

ただ、星見編においてのトリエル&リズノワと同様に、圧倒的な凄さを魅せ付ける場面(ライブシーン)が無くて、それが伝わらなかったのが勿体ないし、Kanaの言動で小物臭を感じてしまった部分も勿体ない部分ではある。(敵役としてはいいキャラクターだから余計に勿体ない)更に言ってしまうと、センターなのにfranの影が薄すぎた(っうか、ほぼ空気になっておる……)

キャラクターの設定には、ある理由から極端にお金に執着している。とあったので、それ相応の闇抱えてんのかと期待したんだが……完全にスルーされてしまったので、彼女にも勿体ないインプレッションを抱いてしまった。


(mihoについてのインプレッションは個別で語りたいので後述する)


 で、サニーピース&月のテンペストは……まず、月ストがスリクスにちゃんと負けた描写にしたのは好感が持てた。一方でサニピがスリクスに勝ってしまった(あえてこう書く)のは、自分の中ではちょいと納得出来なかった。

前述でも触れたが、スリクスが何か物足りなく感じてしまった要因と考えているのは、サニピに負けてしまったという事。曲りなりにも、やっぱりBIG4という作中のアイドルのトップカテゴリーにいるのだから、そこは負ける展開にしてしまうのは何か違うなと。でも、ジャイアントキリングを盛り込むというのも面白い要素ではあるので結局の所は個人の好みによる評価に委ねられるとは思う。


 でも、スリクスとの決戦でサニピの描写は見事だったと素直に感じられた。


 言ってしまえば、アイドル物の作品では結構ベタな展開だと思うんです。
何らかの原因で音響トラブルが起こってその逆境をアイドルはどうやって乗り越えるのか?って描写は。(作中では、姫野さんがスタップ買収してサニピのアクトに音出さないよう指示した)

音が流れない、マイクに声が乗せられないのならと……さくらは生の声で歌い出す。それに雫が続いて歌い出し、怜、遙子、千紗も続いて…更には多くの観客に歌を届けるべくステージを降りて観客席へ舞い降りる。しかも歌う楽曲が『SUNNY PEACE HARMONY』ってのがまた良くて、曲のクライマックスでメロディとマイクが復旧するのも胸熱。

ただ、自分はへそ曲がりなおっさんなので……ここまでの描写しておいて落す展開を期待し、『勝負に勝って試合に負けた』的な落し所だったら何の文句も抱かなかった。スリクスが勝っても、姫野さんの野望は叶うが、結局は何やかんやあって数多の奸計が暴露されて全部無かった事になる的な……あるいは、サニピのアクトを観て刺激されたスリクスが限界突破して、BIG4としての格と底力を魅せ付け普通に勝ったという展開でも良かった。


 で……最後。三枝さんが姫野さんの不正を暴く為に協力していた人物と電話で話している場面。東京編はこのシーンで幕引きになる。

その人物の正体は、敵となった際にはという三枝さんの言葉から察すると芸能関係者だろうというのが有力か。他のBIG4の事務所か?三枝さんのバンプロ時代の知り合いとか?もしかすると、現役のアイドル(BIG4の一角)という可能性もあり得なくはない。あとは、ものすごい資産家かもしれない……と、続編への妄想は捗るばかりである。


 まあ、文句はいろいろ言ってるけども……好感出来る部分と納得出来る落し所の方が勝っていたので、この東京編も楽しめる作品だったというのが総合的な所感。

 

 

 

 

 

 影で蠢く奸計~アイドルのPRIDEを踏み躙った者


 東京編で、違った意味で輝いていたのが姫野霧子の存在。
この人物は、アニメ版から登場はしていたがそこまで存在感のあった人物ではなかった。

前述でちょいちょい触れているが、彼女が本格的に物語に絡んで来るのが朝倉さんが逮捕された後の二章から。行方をくらましてたと思いきや、スリクスが所属するプレタポルテにしれっと転職(移籍)を果たしていた。ここから彼女は(悪い方向に)輝きを放った。

姫野さんは野心家でドライな面があると公式の設定にはある。ゲームに収録されているLizNoirのサイドストーリーでは、麻奈がデビューした当時麻奈を貶めようとスキャンダルをマスコミに流そうと朝倉さんに提案した場面があり、その事から彼女は目的を果たして利を得る為には手段を選ばない所がうかがえる。朝倉さんはアイドルに対して並ならぬ情熱がある人だが、姫野さんにとってアイドルはビジネスで利益を出す為の商品…もしくは駒の一部でしかないのだろう。

それは、自分の意のままにならなかったトリエルを、無実の罪を被せただけじゃなく斬り捨てた(契約解除)冷酷さから伺える。

アイドルへの向き合い方において好意的に捉えられるのは朝倉さんの方だが、姫野さんの一部の捉え方も間違っているとは言えない。コレに関してはここで語るべきモノではないと思うのでこれ以上の言及はしませんが……

そんなワケで、二章の姫野さんは完全な悪役として数多の奸計(っうか、その手の法を犯すフルコンボかましてるが……)を張り巡らしていく。トリエルを切り捨てた件で姫野さんにさくらがキレたり、八百長を持ちかけられた優が満面の笑みを浮かべつつもキレていたり。普段温厚で朗らかなさくらや優をキレさせたという点では姫野さんは立派な悪党だと思える。


 朝倉さんは姫野さんに対して、プロデューサーとしての有能さは認めてはいたけど、完全に信用してなくていつかは自分にとって有害な存在になり得るだろうと警戒していた様に思う。それが、トリエル&リズノワの解雇に繋がって彼女の奸計に巻き込まれるのを防ぎたかった。姫野さんの方も朝倉さんを邪魔に思っていた節があって叛意を肚に秘めていた。
 
作中で言及されてないから分からないが、おそらく本編の数年前から姫野さんは策を練り、根回しを入念にしながらコネクションを築き、決起の刻を待っていたのだろう。


 アイドル業界を統括する組織の設立とファンの為に祭典を開催する。表向きは、アイドル業界の為という旗印を掲げながら……その実は全部彼女に利益が集中する仕掛けだ。何しろBIG4に属する『ⅢX』が切り札にあるのがデカい。勿論、行方をくらましてる三枝さんにも注意は怠らなかった。

盤石の体制を敷き、後は普通にスリクスが勝って締め括る所まで来た。ただ、最後の最後で阻んだ相手が悪すぎたんだ。枠に嵌らないバケモノ=川咲さくらのPRIDEを見誤り、敵に回して闘う事になったのが姫野さんのやらかしてしまった最大の敗因だったと思える。姫野さんが最もすべきだったのは、トリエルを抱き込むのでなく、さくらとサニピをプレタポルテに抱き込み闘わない事だったのかもしれない。

 


 つまるところ、アイドルを駒の一つとしてしか見えて無く、アイドルそのものを侮り過ぎたのだ。アイドルのPRIDEを踏み躙った彼女には相応しい敗北だったのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 死人の魂と記憶を殺そうとする者


 物騒極まりない見出しだが……コレに該当する人物が東京編で登場する。
その人物は、『ⅢX』のmiho(本名武田美穂子さん)

第13回NEXT VENUSグランプリの覇者で、BIG4に手が届く寸前で突如解散した人気二人組アイドルのメンバーだった過去を持つ。メンバーのブレーン的存在で基本的に温厚だが執念深い一面も。


彼女の執念というのは、長瀬麻奈の幻影への執着。


 麻奈の幻影を追う者の存在というのも、『IDOLY PRIDE』のテーマとなる要素。
だが、mihoの執念は尋常じゃない負の要素で塗り固められている。彼女曰く、麻奈が伝説の域まで昇華出来た要因は不慮の事故死という悲劇によると。

そして……麻奈が伝説として祀り上げられている事を良しとしていない。それは、死んだ者と真っ当に闘う事が出来ない事と、正当に評価されない事がどうしても許せないと肚の内を曝す。


 まあ、mihoが憤っているのは理解出来る。いない者、特に亡くなってしまった人と比較されるのはたまったもんじゃない。更にmihoがキレてるのは、自分はNEXT VENUSグランプリの覇者で今はBIG4であるのに、麻奈は覇者でも何でもなく決勝に進出しただけの実績の無いアイドル。でも、麻奈の方が自分より上だと世間が認識している事だろう。


 そんな彼女はガンダムファイトI-UNITYを優勝して、その優勝特典である統括組織の理事にプレタポルテの人間(姫野さん)を就かせ、業界の発言権を絶大なモノにして、長瀬麻奈の持ち曲の権利を剥奪して、麻奈が存在していた証と人々から麻奈が存在した過去の記憶までを消し去る=麻奈の抹殺という野望を抱く。

彼女の肚に抱えてる暗部は、これまでに登場しているアイドル達とはマイナスのベクトルで一線を画すヤバさがある。額面通り捉えてみると、mihoの殺意まで抱く憎悪は私怨の域を出ないモノだとは思う。ただ…私怨と同じく、世間やファンも彼女と同様、未だに麻奈の幻影に捉えられている事に怒りの感情も湧いているのだろう。

まあ、実際問題数多の人の記憶から完全に消し去るのは無理だと思う所だが…そこまで踏み込んで突っ込むのは野暮ってモノではある。


 利用し利用される関係性でもあるが、mihoと姫野さんは仲良しこよしではない危うい繋がり。
姫野さんの奸計を知りつつスルーしているけども、ライブバトルは正面からちゃんと闘っている。まあ、知りつつも止めずにスルーしてる時点で同罪ちゃ同罪なんだが……

でも、こういう部分で、同じく麻奈の幻影を追う者だった莉央の立ち位置とはまた違った執念(闇)を抱くmihoはキャラとして面白いなと思うのです。

 

 

 

 

 

 “答え”を導き出せた者と導き出せなかった者との『差』

 

 この作品のテーマだと思われる言葉『WHAT IS “IDOL”?』
意訳するとアイドルとは?という意味。更に言い換えればアイドルとしての在り方とは?的な感じだろうか。自分はそういう解釈で捉えている。

ストーリー終盤において、スリクスに勝つ為にはアイドルとしての在り方を確固たるモノにしなければならないと月ストやサニピの面々はいろいろ模索していく。スリクスに勝てば、姫野さんの企んでいる野望は何の意味もなくなる。アイドルはステージの上で決着を付ける事は、琴乃やさくら達も共通で思っていたはず。

でも、それだけじゃBIG4の壁を超えるのは不可能だと痛感させられ、結果として、それ(アイドルの在り方)をきちんと見つけられなかった琴乃達はスリクスに負けてしまう。


 さくら達の方は、いろいろと話を聞いて回って熟考して悩んだ末に導き出せた。ざっくり書くとサニピとファンの想いの相互循環。それがサニピが目指すべきアイドルの在り方だと。

サニピは決勝の為に、新曲『SUNNY PEACE for You and Me!』を引っ提げて最終決戦に臨む。音源が一切無かったのでどういう楽曲なのかは本編では分からんが、テーマに掲げているのは導き出せた答えである五人とファンの想いと魂の相互循環の尊さを謳う楽曲だと思う。こういう展開もまた胸熱なモノだ。(WUGのPolarisを想起したのは内緒……)

 

だからこそ、スリクスとの決戦でトラブルに見舞われてもサニピの五人はPRIDEを貫いて動けた。おそらく、月ストだったらサニピの様に動く事は出来なかったかもしれない。(答えを導き出せないという前提の話ではあるが……)そこまでに至れたのはさくらが持つ輝きの強さの質なのだと。

 

さくらの強さを目の当たりにして琴乃が諦観しちゃった感が見受けられたのは、さくらとの『差』を痛感させられた……その差は紙一重しれないが途轍もない差の様にも思える。琴乃のメンタルが深淵まで落ちてしまうのではとも思ってしまったが……追いついてみせると決意を誓って新たに立ち上がれたのは胸を撫で下ろせた感があった。



 この結末で、さくらはより高い次元へと昇った。今後の展開は、このまま彼女を負け知らずのスペシャル・ワンへと昇華させるのか?そして、さくらを追う琴乃・瑠依・莉央の構図にはなるのでしょう。

さくらを負かすのであれば、琴乃達か他のBIG4できっちりと負かしてもらいたいと思っている。麻奈の様な予期せぬアクシデントなモノによる横やりは要らない。その辺はマジでお願いします。


 一応、誤解の無い様に言っておくけど、さくらに対して当たりがキツいニュアンスになっているが、彼女が嫌いとかそういう単純な理由ではない。ご都合主義的なモノじゃなく、ちゃんと彼女も壁にぶち当たって、悩んで考えたからこそ限界の向こう側の領域に踏み出せたのだから。

 

 

 

 

 

 翳る月……負けてからが本当の勝負


 前述でも触れたが、さくらは答えを見つけて限界の向こう側の領域へと踏み出せた。
一方の琴乃は、答えを導き出せずスリクスに敗北する結果になり、なおかつ、さくらとの間には何か超えられない境界の様なモノ=限界を感じてしまった。


 星見編から琴乃の物語を振り返ってみると、彼女は常に誰かと比較されている。ただし、それは琴乃にだけに限った話じゃないが、彼女の場合はよりクローズアップされている様に感じられる。伝説の域まで昇華した実の姉である麻奈、そして、川咲さくらと。

横に並べる所までは辿り着けた。だが、彼女達より前に踏み出せる域まで行けない。それが『遠いなあ……』という彼女の台詞に凝縮されていた様に思えたのです。遠かったのは勝てなかったスリクス、麻奈、さくらと琴乃との距離の『差』でもあった……言い換えると、前に出れないという事実は琴乃が負けた意味にもなる。

僅かに届かなかった一歩の差。その差が答えを導き出せるか否かになってしまったのか。その差はこれから詰められるモノなのか?詰められるモノではないのかもしれない……琴乃はそれも踏まえて『遠いなあ…』というどこか諦観した言葉が出てしまったのだろう。


 でも、琴乃は止まってはいなかった。敗者のままで終わるつもりなんて無いと。
そして、救い…と言うと大袈裟になってしまうが、最終話のI-UNITY表彰式を控えた所でさくらが麻奈の事を思い返して沈んだ表情をしている琴乃を(無理矢理に)笑顔にしようとするシーンがある。

所作の描写が無いので推測の域になるが、アニメ版の5話で芽衣が琴乃の頬をこね回すシーンがあって、それと同じ事をさくらはしたと考えるのが妥当か。

まあ、脳ミソに花咲いてる考察になるが、さくらが近くにいる事で琴乃は落ちる所まで落ちて道を外すまでは至らないと思う。今回は、さくらの輝きで琴乃は翳った格好になったが、彼女がちゃんと才を咲かせて輝く意味を知る物語がきっと来る。

 


 その描写が最後にあった事で、何か琴乃は救われた……そう思えてならないのだ。