巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

ただ真っ直ぐに、ただがむしゃらに ―『ガールズフィスト!!!!』12.5無観客配信ワンマンライブ所感

 12月5日。『ガールズフィスト!!!!』の配信ライブが開催されリアルタイムにて視聴致しました。

 

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 単独ライブは3月の配信ライブ以来だという。
8月に配信で5thライブの開催が決まっていたが、当日にメンバーの一人の発熱によって中止を余儀なくされてしまう。この日の為に、懸命に練習を重ね体調管理にも細心の注意を払っていたのは想像に難くないが、どうにもならないモノはあってどうしようもないのだ。

このご時世、耐える事や困難はより多く圧し掛かってくるモノ。やりきれない思いや悔しい思いを抱いたのだろうし、同時に『ガールズフィスト!!!!』を応援されるファンの皆様も歯痒さや無念さを感じながらもこれまで以上に彼女達を応援してきたと思う。

出ていくチャンスは普通の年よりも限られた中、出来得る限り動き続けて掴み取ったといってもいい8か月ぶりの単独ライブ開催決定の報。
このライブは、コロナ禍に入り何度か延期されたワンマンライブの振替公演という形式らしいが、んなこたぁどうでもいい。このバンドを単独で見られる機会が訪れた事は素直に嬉しいモノだ。


 現状、オンライン配信形式のライブがスタンダードになってしまった事は、昨年からは想像し難かった事。物事には必ずプラスの面とマイナスの面が存在する。

やっぱり、現地参戦して肌で感じる熱気と聴覚にダイレクトで響く音の圧は現地にて直に感じるモノには及ばない。それはパフォーマンスする演者サイドも直に見えない画面越しという境界の向こう側の観客に向けてパフォーマンスする事に苦心したと思う。

お互いに抱いている想いは同じ。越えられない境界がある事を痛感しながら、それでもライブを開催する事と観る事を選択するのは、音楽を通じて興奮と熱狂を求めるからなのだろう。

今はこの状況でどうにかするしかないのが突き付けられた現実。
形式なんざどうでもいい。開催できた事を感謝してガッツリと楽しもうとライブの開始を待つ事数刻……ライブの幕が上がる。

 

 

 

 

 

 全身全霊でただ楽しむだけ 

 

 

 オープニングアクトに持って来たのはオリジナル楽曲『自分自信』
この楽曲をオープニングアクトに持って来た彼女達の真意は分からないので、私見でしかないのだがこう思っている。

原作の登場人物は、心に傷を抱えた少女達がパンクロックバンドを結成して成長していくストーリーが展開されていく。言い換えてしまうと自分に自信が持てないとも捉えられる。

この楽曲は初めての企画盤CD『Stand Up!!!!』に収録されている。
言うなれば『ガールズフィスト!!!!』としての原初の楽曲でもある。自分自身に自信を持つ事、現状から変わりたいという想いを謳う楽曲。

そして、今の世情を例えた節があって訴え掛けたいモノがあり、この楽曲を待ちに待ったワンマンライブの初手に持って来たのでは?と思っている。


 理想の世界が遠い


 変だな こんなの望んでない
 

 ―ガールズフィスト!!!!『自分自信』より引用


 大袈裟な表現だが、普通にライブやイベントが開催されていた当たり前の状況が今は当たり前では無いのが現状。全てが完全に揃ったモノは詞にもある遠い理想の世界と称してもいいのだろう。

マイナスでネガティブな事だらけだが、プラスでポジティブな事もあったはず。

思う様に動く事が出来なかったからこそ気付けた事、出来た事があって得たモノがあった。このワンマンライブの機はそいつを魅せ付けられる場だと。


 全開の笑顔で楽しみながらドラミングを披露する内山さん。

 クールな佇まいでベースを指弾き、時には凛とした歌声を響かせる古川さん。


 ほんわかとした和む雰囲気を纏いながらも、パワフルなビートを刻む奥村さん。


 楽曲によって様々な表情と表現を魅せて聴かせる浅見さんのボーカル。

 


そんなにこのバンドのパフォーマンスを観れてない自分が言うのはおこがましいが……
二か月前に観た『GIRLS LIVE STREAM -2020 AUTUMN SP-』の時とは何かが違う熱が滾り、ダダ漏れしていたのが画面越しでも感じられたのだ。

オリジナルの楽曲から、童謡ロックアレンジ、名バンドのカバー等…開幕でしっかりと暖気したら徹底的に楽しんで突っ走るのが『ガールズフィスト!!!!』のライブの流儀なのだと。


 そして、良い感じに盛り上がった所に持って来た『Full of Lies』が堪らない。


ノスタルジックなメロディで沁み入る様に聴かせる方向性で、ライブの雰囲気に落差を作る。この楽曲がある事は『ガールズフィスト!!!!』にとって強みだと思っている。
ワンマンだったらやるだろうと予想していたが、惹かれる切っ掛けになったこの楽曲がまた観られたのは本当に嬉しかったんだ。

 

 

 

 

 

 新たな可能性と引き出し

 

 それはMC明けで、『孤独の月』を披露する前の事だ。ベースの古川さんの前にキーボード(勿論、楽器の方)がセッティングされ、おもむろにイントロを奏でる。

この展開は完全にやられたと唸るしかできなかった。

古川さんがピアノ経験者という情報は知ってはいたが、まさかそれをこの場で披露するとは思わなかったからだ。思わぬ意外性という奇襲をやって来るのがライブの醍醐味でもある。

この楽曲は幻想的なインプレッションが持ち味。キーボードから奏でられるサウンドがその雰囲気を更に助長させて新しい彩りを楽曲にもたらし、感銘で膝を叩きまくってしまう程に素晴らしいアレンジに酔いしれてしまった。


この奇襲は一曲だけじゃなかった。


次に披露した往年の名パンクロックバンド『THE BLUE HEARTS』のこれまた名曲である『TRAIN-TRAIN』のカバーでもやってきたのだ。

今度は古川さんではなく、ギター担当の奥村さんがキーボードを演奏した。
奥村さんもピアノ経験者。(ちなみに、ドラムも経験している)


コレ観た時、思わず声上げて叫んでしまったぜ。


『あんたも弾くんかいッ!!!!』とwww

 

『孤独の月』のアクト同様、意外性で攻めて来たがこちらは原曲を忠実に再現する形をとって来た。(前奏と間奏にピアノ演奏が入る)一応、後日調べたが『THE BLUE HEARTS』の楽曲カバーはワンマンライブで色々やって来たが、おそらくこの楽曲はワンマンライブでは初めて披露したと思う。(間違っていましたら御免なさい)


初めてライブで披露する楽曲で新しいチャレンジを敢行する大胆さと
偉大な名バンドの名曲へのリスペクトを感じた。


もし、コレを現地参戦して直に見てたら間違いなく頭抱えて膝から崩れてる。
まさにエモーショナルの暴力。圧巻で完敗だ……

 

 

 

 

 

 ボーカル・浅見春那の変幻自在の『貌』(かお)

 

 このライブで最も強烈なインプレッションを抱いたのが、ボーカル・浅見春奈だった。


彼女がライブで魅せた表情は本当に多彩で、驚いたと同時にその世界観に惹き込まれたと言ってもいい。


 コレに関しては多様な意見や持論があるでしょうから、これはあくまでも私見
ボーカリストには様々なタイプが存在している。技術で聴き惚れさせる者、技術云々より魂と情熱をぶつけて来る者、強引にバンドの奏でるサウンドが醸し出す雰囲気へ惹き込む者…etc

失礼な事なのは承知で言ってしまうが、浅見さんは技術で聴かせる系統ではない。
何故なら、彼女は『顔』で歌う系統のボーカリストだと感じたのだ。

つまりは、表情豊かで歌う事が本能的に備わった人なんだと。


見る目のある人から見たら、浅見さんの歌唱技術はまだ拙いモノなのかもしれない。でも、技術は後で詰め込むことが出来るし間に合うが、本能的なセンスはその人にしか無いモノで後から詰め込む事は不可能なモノ。

楽しい楽曲では楽しさ全開で歌い、激熱な楽曲ではエネルギッシュでパワフルな歌声を響かせたり、キュートな楽曲では可愛らしさと艶やかさを纏わせた表情だったりと本当に多彩な『貌』で歌われ、ライブが進むに連れてテンションがハイになったのか声の質はよりパワフルになり、表情の活きの良さ的な輝きが増していく。

テンションのキャパシティが大幅に超え、フラッシュオーバーして一種のトランス状態に踏み込める胆力。良い意味で無謀かつ向こう見ずなのが浅見春那の魂の強さなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 変わらない『今』を楽しんだもん勝ちという想い

 


 繰り返しになるが、自分は『ガールズフィスト!!!!』の事はまだ知らない事の方が多い。
なので……これから書く事は見当違いが多分にあるという事を予め記しておく。

ライブパフォーマンスもそうだが、MCに於いても彼女達は本当に楽しんでやっている。
今しかない瞬間を全力で楽しもうというのが『ガールズフィスト!!!!』というバンドのポリシーでありアイデンティティなのだろう。

ライブ中のメンバーは明るく元気で、コロナ禍であることを忘れさせてくれるような、最高の雰囲気を作ってくれた。


今を生きる者が越えられない困難と今を嘆くよりも、もっとみんなで楽しめ!


『ガールズフィスト!!!!』がこのライブで音楽に乗せて伝えたい本気の想いと魂が上記のモノだったのかもしれない。四人は反抗の志を持ってその拳を下す事無く掲げ続ける。


 ただ、世情は未だ厳しい状況にある。最近は感染者が激増しており、またイベントやライブの中止・延期の報が増えている。来年は更にライブを開催する事が難しい年になってしまうかもしれない。

それでも、ライブを止めない策を模索しているアーティストや、支える裏方の皆さんがいて、その想いに共感し協力するファンがいる。


エンタメの希望の火はまだ消えていない。


鬱積とした事が多かった年だが、楽しい発見や巡り逢いがあった。
『ガールズフィスト!!!!』に巡り逢いライブを観れた事だとか。


今はまだ難しい願いだが、来年は『ガールズフィスト!!!!』のライブに現地参戦がしたい。
彼女達の奏でるサウンドの奔流に身を委ねて、魂を燃え滾らせて拳を天高く掲げてはしゃぎたい。この配信ライブを観てその想いは強くなった。

 

 その日が早く戻って来る刻を信じて願って待ち望む。

 

 

 

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