2017年の4月から粛々と書き殴って来た
『WUG楽曲ライナーノーツシリーズ』今回で完結となります。
今回書き殴る楽曲の事だが……
この楽曲の存在が明るみになった頃、何時の日か聴ける事を心待ちにしていた。
そして、刻が巡ってようやくその機会が叶った。
そんな楽曲の事について書けるのは勿論嬉しいモノでもあるが、同時に戦々恐々しているところもある。
あるかないか分からん自分の文章力でこの楽曲の事をどれだけ書き記せるかは未知数だが、自分の中でこれまでいろいろ好き勝手に書き殴って来る過程で培ってきたモノがあると信じてこの楽曲に向き合い感じたモノを出し尽くしてこのライナーノーツシリーズの締めとしたい。
sweet sweet place/吉岡茉祐
2017年、2018年のWUGソロイベントに際して制作されたソロ楽曲を収録した、ダウンロード配信にて発売されたアルバム『Wake Up, Girls!Solo Collection -7 Stars-』に収録されていてこのアルバムを締める最終楽章でもある。
吉岡さんが歌う2018年のソロイベ楽曲『GloriA』と同じく、作詞は吉岡さん自身、作曲は渡辺翔さん、編曲はオダクラユウさんが担当されている。
この楽曲の存在が明るみとなったのは、2018年のWUGソロイベント。
吉岡さんのプロデュース公演として、3月11日に福島県郡山市のライブでサプライズで初披露。
その後は、彼女の出身地である大阪で開催されたライブイベントとWUGのファイナルツアー(Part2・3)での披露のみ。
ライブに参戦された人は勿論、参戦の叶わなかった人もこの楽曲の音源化は望むべき案件であった。その最中、Wake Up,Girls!解散があって…この楽曲の音源化は叶わないモノだと感じて落胆しただろう……そんな折、ソロイベ楽曲の一般販売とこの楽曲の音源化の報を知った時は本当に嬉しく心爆ぜる想いだった。
まず『sweet sweet place』を初聴したファーストインプレッションは
『GloriA』の系譜を準えるロックテイストな曲調という骨組みは継承されている。無骨で荒々しく獰猛と称するに相応しい攻撃的で、己の剣(≒才)で栄光を勝ち取る想いと誓いを謳う『GloriA』とは違った明瞭で疾走感溢れるベクトルに仕上げた楽曲。
その違うベクトルだが、吉岡さんの歌声から感じられる『熱』の質だと自分は感じている。
前述でも書いたが、『GloriA』での彼女の歌声の『熱』は荒々しく燃え滾って爆ぜる様な熱を発している。
それに対して、この楽曲での彼女の歌声の『熱』だが力強い熱さは変わらないものの、纏わりついて包み込むような温かさを同時に感じられるのだ。それは彼女が未来への刻への想い馳せている心情を力強く晴れやかなボーカルに乗せ、絶唱の域へと昇華させているのだと痛烈に思い知らせれたが……
でも、吉岡茉祐の絶唱は堪らなく素晴らしいモノなんだ。
曲題である『sweet sweet place』。直訳すれば『甘い場』となるが、sweetの俗語(スラング)では素晴らしいという意味でも訳される。あくまでもこの解釈は俺の完全な私見であるという前提で書いていくのだけれども……素晴らしい場という意味が込められて付けられたのだと勝手に思っておる次第である。
その『素晴らしい場』……これは二つの解釈があると思っている。
まず、一つ目の解釈だが……これはこの楽曲がライブで歌われた場であると思われる。
『sweet sweet place』が過去に歌われたのは、吉岡さんの故郷である大阪と彼女が第二の故郷と称している東北(福島)だけ。吉岡さんが抱いている故郷への望郷の念を彼女は福島でのソロイベ公演を終えて綴ったBlogにこう書かれている。
何かの縁で繋がり、訪れた地が、本当のふるさとじゃなくても、また帰ってきたいと思える場所になっていたり…
楽しかったライブを思い返して、またライブに来たいと思ってもらえるなら、どんなに嬉しいだろうかと、考えながらかきました。
―Wake Up,Girls! official blog 三月は毎年ドタバタしてます@まゆより引用
生まれ育った大阪への望郷の念は勿論、『Wake Up,Girls!』の一員として縁が繋がった未知だった東北の地への想い。そして、彼女の想いと魂を伝えられるライブという場と刻。これも彼女が抱く故郷の一つとして捉えても良いのだろう。詞にある『ありがとう』『おかえり』『僕』『君』は彼女の想いを詰め込み、繋がるという事へのアンサーである言の葉なのだろう。
で、二つ目の解釈は……当たり前という奇跡への感謝の念。
これこそが吉岡さんがこの楽曲だけではなく、ソロ楽曲『てがみ』や『GloriA』からの貫いてきた真に伝えたいメッセージだと勝手に感じている。
『sweet sweet place』が初めて披露された刻と場は、2018年3月11日の東北・福島の地。
この場で改めては書かないが、この日は東北の地が歴史に残る災害に遭い、当たり前の事や当たり前にいる人が理不尽に奪われた日……この日と場で歌うからこそこれまでに貫いて来た当たり前という”奇跡“に感謝と尊ぶ想いと魂を楽曲に込めて謳った。
断然 今日は君の中のほんの一部だってさ
当たり前 でも 当たり前じゃない
きっともう一回が明日を連れてきてくれるなら
once again また会えるね 『おかえり』
―吉岡茉祐 『sweet sweet place』より引用
ここの節々が『てがみ』、『GloriA』から繋がる系譜の締めとなり、この楽曲の要であると思っている。
未知の繋がりという『縁』も彼女にとっては当たり前となり、これも様々な積み重ねによる奇跡だと思えてしまう。
そして、繋がりといえば彼女と魂を共有している島田真夢との縁。
真夢との繋がりもまた、吉岡さんの中に於いて当たり前の事へと昇華しているし真夢の存在は無視出来ない。これもまた刻の積み重ねによる奇跡ではないだろうか。完全ではないが真夢との繋がりは一旦途切れる事(WUG解散)をおそらくこの楽曲が作られた時期に吉岡さんは知っていたかあるいは決断していたと推察するならば、島田真夢という存在へ巡り逢えたという奇跡への感謝もおそらく込められていて…『sweet』と二回綴っているのは吉岡茉祐と島田真夢互いの存在を素晴らしき存在である事への喩えなのではとも思える。
いつか、刻を経て吉岡さんと真夢は再会するかもしれない。
もう一度また会って互いに『おかえり』と語り合う…二人の”マユ“が再び巡り合う場もまた素晴らしき場…『sweet sweet place』なのだと思えてもくる。
そんな未来の刻の奇跡が来る事を信じてもいいんじゃないかと。
ラストの詞『sweet sweet place』と謳う吉岡さんの優しげな歌声は、言の葉を尊ぶ様で、また慈しんで当たり前という奇跡へ、巡り逢いへの縁、故郷への想いへの感謝……