巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #27 セカイは夢を燃やしたがる

 

 

 セカイは夢を燃やしたがる/LizNoir


 2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録。ただし、現時点(2023年6月)まで、この楽曲のゲーム内での実装、3DLIVE映像、MVの公開はされていない。ゲームリリース二周年間近に迫っておるのに、一体いつまでこの楽曲を干しておくのか!!!!と、運営サイドにキレそう、あるいはとっくにキレちらかしておるのは自分だけではないはず……

 気を取り直して……曲調は、これまでのLizNoir楽曲『Shock out, Dance!!』『The Last Chance』『GIRI-GIRI borderless world』の主軸となる『動』の要素が支配するハードロックテイスト。ただ、前の3曲と違っているのが、楽曲全体のムードやテンポはミディアムorスローなテンポに仕上がっていて、『静』の雰囲気がありつつも、これまでのリズノワ楽曲の系譜から継承される『動』の雰囲気も併せ持つ楽曲という印象。四人のボーカルも、ハイスピード&ハイテンポで歌うのでなく、じっくりと踏みしめる様に歌っている。

さしずめ、莉央、葵、愛、こころの魂の炎が、激しくはないものの…ゆらゆらと青く燃え滾っている模様を謳に乗せている様を表しているのではないだろうか。楽曲を聴いて思い浮かんで来る画は、乾いた向い風が吹き荒ぶ荒野を、一歩一歩力強く踏みしめながらゆっくりと歩みを進めていくイメージ。あるいは、草木の生えていない荒野にて、力強く凛と咲き誇っている四輪の黒百合もイメージとして浮かんでも来る。

 『NEXT VENUSグランプリ』のセミファイナルにて、LizNoirは月のテンペストに敗北した。
敗れたものの……悔しい気持ちはあるものの、全身全霊を懸けて戦いに臨めた充実感にも満たされた莉央と葵はLizNoirを終わらせる(解散)覚悟を固めていた。

しかし、彼女達には、バンプロの養成所から昇格した新人アイドルである小美山愛と赤崎こころを新たなLizNoirのメンバーとして加入させて、新生LizNoirとして再動させる事を告げられた。当然ながら、愛とこころの加入を認められない莉央と葵。憧れのLizNoirに加入出来るチャンスを掴んだものの、いっぱいいっぱいな愛とこころとの温度差には途轍もない差が存在していた……

そんなバラバラな四人だが、朝倉社長の命によってアメリカへの武者修行を言い渡された。(葵曰く島流し…)四人は慣れない海外の地でなんやかんや苦闘しながら……莉央と葵は、愛とこころの本気の想いと魂と未知の可能性を知り、二人が置き去りにしてしまった滾る情熱と挑戦者魂を取り戻す……ここまでの件はゲームに収録されているLizNoirの番外編にて描かれたモノ。この楽曲を聴いて真っ先に思い浮かぶのがそれらのシーンだったりする。
 
 あくまでも、個人的なインプレッションではあるのだが……前述のイメージとして浮かんだ荒野は、タイトルにある『セカイ』と『夢を燃やしたがる』に繋がっている。莉央、葵、愛、こころが生きている世界そのものでもあるしアイドル業界の事でもある。その『セカイ』は華やかなだけのモノじゃない。数多のアイドルの夢を容赦無く燃やし尽くす無慈悲かつ理不尽な炎を放つセカイでもある。

ちゃんと努力を積み重ねていれば絶対に報われるセカイじゃない。でも、動き続けなければ無慈悲な炎によって燃やし尽くされてしまう。『翼もハネもいらないよ さらに遠くても なんとかなる』という詞には彼女達の反骨の魂が宿る。

何一つままならないセカイだからこそ彼女達を燃やし尽くそうとする炎に負けない魂の炎を燃やそうと四人は挑んでいく……2番のBメロではその事を強烈に訴えかける様に謳われている。


 いまを切り裂け (自分を信じろ)

 いまの先へと (自分の場所見つけろ)

 進むんだ もう迷うんじゃない! (ひたすら走れ)

 ―LizNoir 『セカイは夢を燃やしたがる』より引用


 『自分を~』の件にて、魂の炎を更に燃え滾らせるかの様に力強く鼓舞する神崎莉央の台詞には、彼女のアイドルとしての在り方とアイデンティティを象徴しているモノだと思い知らされた。莉央は云う。自身がアイドルとして生きていく根底にあるのは『戦い』であると。自分の成したい事の為にその戦いへ身を投じていく生き様が莉央のアイドルとしての在り方なのだと…莉央の魂の叫びからそれを痛烈に感じる。

 莉央は、葵、愛、こころの四人で、本気でトップアイドルを勝ち取りにいっている。それは、一度は終わらせようとしたが…新たな血を入れて変化していく事を受け入れ、苦楽を共にしたこの四人でなければいけないのだ。『最高の勝利 求める想い (勝ちたいよ) 解放してみるさ 燃やせ夢を…熱く!』とはなんとも無骨でド直球な歌詞だろうか……LizNoirの生き残ろうとする執念と勝利への渇望を、莉央、葵、愛、こころの歌声から激しい熱を帯びて伝わって来る『誓い』なのだろう。

手が届かないのなら、届くまで手を差し出す事を止めない。何度倒れて傷を負いながらも、這ってでも前に進む事を止めない。このまま敗者でいいワケが無い。この程度だと蔑まれたまま埋もれて良いワケがない……この四人なら、最高の景色が絶対見られる事を信じて。

 この楽曲では、そんな彼女達が運命に抗って覆そうとする生々しくも剥き出しになっている叩き上げの魂に意地とPRIDEを証明する決起と戦いの謳……即ち、LizNoirの新たなアンセムである事を実感させられるのは過言ではないと思えてならないのだ。