巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

畝吹版 Wake Up, Girls!が紡いだ奇跡の物語。~もう一つのワグナーの祭典

 あの七人が最後に遺し、謳った楽曲にこんな言の葉がある。

 

 また どこかの場所で そっと鍵をあければ

 勇気があふれだす 旅人を癒す水のように

 
 ―Wake Up,Girls! 『さようならのパレード』より引用 

 

 その扉の鍵がある西の地で開き、扉が開いた。
そして度重なる苦難を乗り越えてその水は音となり、その地を訪れた旅人を癒し、血を滾らせ、爆ぜる感情をぶちまけたと言う。

鬱積された負の感情が渦巻くこの現世で紡がれた奇跡の物語。
だが、その奇跡を呼び寄せたのは、幾度も絶望の淵に立たされても可能性を信じて懸けて諦めなかった人達の心の光の強さがあったからだ。


その想いが集まり、一つの音楽の祭典が関西・奈良の地で開催された。
その日、観客も演奏者も大いに楽しみ、音を奏で奇跡の物語に酔いしれた。


そう、これはもうひとつのワグナーの祭典だったのではないだろうか。


恥ずかしながら、コレ書いてる自分は現地に赴き参戦出来なかった。ハッキリ言ってしまえばこの演奏会についてのインプレッションを書くのはおこがましい事この上ないが……それでも書かせて欲しい。


 奈良県にある奈良県立畝傍(うねび)高等学校の吹奏楽部が定期的に開催している演奏会があって、その演奏会の1コーナーにて『Wake Up, Girls!』の楽曲を演奏するだけではなく、その演奏をバックに歌うという。

この演奏会は自分が知る限りでは、昨年のGW頃に開催される予定だったが……皆様ご存じの様に新型コロナのヤツの蔓延のせいで開催不可能になった経緯がある。何度も何度も開催予定が中止になることを繰り返しながらも日程を諦めず調整して…つい先日、7/22に無事開催された。


定期演奏会の告知画像の中にある『Wake Up, Girls!メドレー』の下にこんな言葉が綴られている。


 
 東日本大震災復興10年、そして新型コロナウイルス終息へ、タチアガレ!と。


 奈良の地から、東北とあの七人へ想いと願いを。


 依然猛威を振るう忌まわしき新型ウイルスに立ち向かう事。



 ちなみにこの演奏会では、現在制限されて不可能となっているコールが可能とだったと聞く。コレは難しい案件だっただろう。一般の公演では現状絶対出来ない事でそれを可能へ導く為に苦心し対策を練ったのは想像に難くない……本当に頭が下がる思いだ。


 そして、この吹奏楽団が演奏したのは『タチアガレ!』『16歳のアガペー』『少女交響曲』。
原初の楽曲、無償の愛を謳う楽曲、雑多な個を交わらせ響かせる楽曲。これらの楽曲はWUG楽曲の中でも人気の高い楽曲達。3rdツアーファイナルや5周年ライブでは生バンドの演奏という形でWUGが歌って通常のバージョンとは違ったインプレッションを感じさせた。

自分は現地で聴く事は叶わなかったが、ブラスバンドによる演奏で歌われるこれらの楽曲はバンドサウンドとはまた違うインプレッションを抱くのだろう。奏でる楽器や演奏方法で聴こえ方や感動はまた異なる奥行きを魅せる。音楽の持つ可能性は物差しで計り知れない無限の可能性があるのだと思い知らされる。

WUG楽曲を演奏するのみならず、歌い、ダンスを踊る。勿論簡単な事じゃない。
それこそ本当に血の滲む修練があっただろう。人前で披露するからには生半可なモノを魅せるワケにはいかないしあの七人の名を汚すと感じたはず。歌とダンスのパートを担当されたのが七人構成に拘ったのもその事を証明している様に思える。


 何度も書くが、自分はこの演奏会に参戦出来なかった奴だ。
けど、本気でWUGに向き合った人達の想いと魂が奏でた音楽と、盛り上げようと現地参戦されたワグナー諸氏の爆ぜる感情をどうにか形にして届けられたらという使命の様な想いを抱いた。

『Wake Up, Girls!』は素晴らしいグループであり、作品でもあり、コンテンツでもある。グループは終焉を迎えたが、新しく知る人はまだいる。

色々な入口があって、グループ、楽曲、作品に感化され、想いを形にされている方が大勢いると伝えていきたい。


『好き』が込められたモノに触れるというのは本当にいい。


このライブの模様は正直自分は分からない。でも、演奏者と観客の真愛の情に満ちた場所と刻だったのではないだろうか。祝いの花を寄贈したり、記念のイラストを描かれた人達。
マナーを守ってきっちりと盛り上げたワグナー諸氏。何度も予定が変わりながらも懸命に日程と世情を熟考し開催させた運営に携わり支援されたスタッフの皆様。


最後の一音一句まで奏で歌った畝傍高等学校の吹奏楽部の皆様と参戦し盛り上げたワグナー諸氏に勝手ながら感謝の念と拍手を送りたい。