巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #21 Pray for you

 

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 Pray for you/星見プロダクション


 TVアニメ第12話(最終話)EDテーマ楽曲であり、アニメ版『IDOLY PRIDE』のフィナーレを飾る楽曲。
音源は各ストリーミング配信サイトや、2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録。エンディングテーマ楽曲らしさに溢れたスローテンポで落ち着いた曲調が印象深く、一つの物語を観終わって得られたカタルシスと共にじっくり傾聴したい楽曲になっている。

作詞は利根川貴之氏。作曲・編曲は北川勝利氏。月のテンペストの楽曲に携わる利根川氏にサニーピースの楽曲に携わる北川氏の両名が組んだ楽曲というのも、前述したフィナーレ感を助長させエモーショナルな感情を揺さぶられる要素だと感じられる。

利根川氏がインタビュー内で語られていたのは『NEXT VENUSグランプリ』が終わった後の楽曲という設定がすでにあり、“その後”感を意識して楽曲(作詞)制作されたという。

ちなみに……当初はこの楽曲をEDとして使用する予定は無く、完成した楽曲を監督が気に入ったとの事で最終話のED楽曲に採用されたという話がある。


 この楽曲において、まず目を惹くのがタイトルに銘打たれた『Pray for you』だと考える。
字面から、長瀬麻奈の楽曲である『song for you』との繋がりや続きを強く感じさせ『対』になるアンサーソングの関係にあるだろうと匂わせて来る。

タイトルは『あなたの為に祈る』の意。『あなた』や詞にある『君』の対象として真っ先に挙がって来るのは長瀬麻奈と思える。

祈りとは神との対話の意味もある言葉。まあ、神は大袈裟な例えだが……霊魂となって、10人の傍に寄り添っていた麻奈との対話や関わりはまさしく『祈り』と称するに相応しいモノ。その刻の思い出を総じて『誇らしい時間』だと。それは、痛みも含まれた過去を受け入れ感謝を示す事にも繋がっていて、『今を生きる明日を望む力になってるから』と、10人は未来の刻に希望と決意を滾らせ力強く謳う。


 だから迷わない 振り向かず行け

 Pray for you 私なりのプライド 魅せてやる

 ―星見プロダクション『Pray for you』より引用


 奇跡の刻は終わり、麻奈との対話はもう叶わない。だからこそ10人は歌う事で麻奈へ『祈り』を捧げるのだろう。ここの節で歌われる彼女達の歌声は、力強いといった表現では収まりつかない程に剥き出した叩き上げの魂が滾っている荒々しさを感じさせる。でも、それは表にだだ洩れしているのではなくそれぞれ彼女達の内に秘めて滾らせる。それは、この楽曲が創造する『静』の要素に秘めた『動』の激情の真骨頂だと感じさせる。

捧げた祈りは誓いを立てる事。麻奈へ誓い(約束)を立てる事で前を向いて駆け出す事が出来ると信じた。そうして、彼女達はいろんな事を乗り越える為の勇気を奮い立たせるのだろう。迷いを振り切れたが故に、突き抜けるほどに伸びやかで晴れやかな歌声は、天に昇った麻奈へ届けといった願いでもあるのだと。麻奈の幻影を乗り越えた彼女達の前にしか謳えない『song for you』のアンサーソングと言っても過言ではない存在感と説得力に満ち溢れたエモーショナルな楽曲だと打ちのめされる。


 本曲のラストフレーズの歌声が本当に素晴らしい。『Pray for you』の部分、言の葉を大切にして消え入る様に吐息を残す。それは、優し気な微笑みから醸し出される様な歌声に聴こえて来る。アニメ版を彩った数多の楽曲の締めとしてこれ以上ないのではないだろうか。