巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #7 白石千紗編

 『IDOLY PRIDE』キャラクター独自考察と称した、おっさんの妄想垂れ流しも、早いモノで七人目になりました。

 


 そんな七人目の生贄キャラクターは、白石姉妹の妹の方である白石千紗。
彼女が所属する事になる『サニーピース』サイドでは、川咲さくらに次ぐ物語の濃さを担ったキャラでもあります。

その濃さ故に、様々な解釈が成り立ち考察するのが難しいキャラクターではありますが…これまで同様手前勝手な解釈と考察をぶつけていこうかと思います。

毎度ながら、個人的な偏見や視点も含んだ考察になっておりますので、その辺についてはご了承していただけると幸いです。



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 差し伸べる手と大きな背中、そして……

 

 この世に数多あるアイドルを題材にした作品において、アイドルへの軌跡を志す動機で王道的なのが、アイドルへの憧れから夢を抱き自分もそうなりたいと願う者。歌やダンスが好きだという者。世間や特定の誰かに認められたいと野心を抱く者。殻を破り人生を劇的に変えたいと願う者と多岐に渡る。

千紗の場合は、内気な自分の殻を破りたいという想いを抱いてアイドルを志す。そして、アイドルへの憧れもあったという。でも、沙季と一緒にいたいからという想いの方が大きい。


 前述で触れたが、アイドルを志す者の動機の一つとしてアイドルへの憧れがある。
多くの場合、数多のメディアにて活躍するアイドルに憧れを抱くのがほとんどだったりするモノだ。麻奈の様なアイドルになりたいと願う琴乃やすず、アイドルという存在が放つ輝きに魅了された雫、そして、千紗と最も多くの刻を共に過ごしてきた姉の沙季もアイドルへの憧れを抱く者の一人。

千紗も、沙季と同様にメディアで活躍するアイドルを観て憧れを抱いているが、それ以上に彼女が憧れを抱く存在がすぐ間近にいて、千紗にとってはその人物こそが最高のアイドル。


故に、千紗が最も憧れを抱くアイドルは姉でもある白石沙季だった。


 メディアに必ず出てパフォーマンスをすべきなのがアイドルとしてあるべき姿だという論理はあって、何らか形を決めたがる傾向は多い。ただ、多くの人を惹き付けるメジャーアイドルよりも、自分の身近な存在が凄くてより惹かれるのならその人にとっての唯一無二なアイドルと称しても良いのだろう。その観点で捉えていくと、千紗にとっての沙季は大好きな姉である事は前提としてあるが、憧れの対象のアイドルとして捉えていた様にも感じられる。

優しい姉でもあり、親代わり。もしかすると沙季と比較される事は勿論あったが、姉が高い評価を周りがしている事は千紗にとって劣等感を抱くよりも、むしろ誇らしいと感じていたのだと思ってしまうほど特別な存在。でも、超えられない存在でもある。


 白石千紗というキャラクターに自分が抱いたファーストインプレッションは、自己肯定感の低さ…つまりは自信の無さだ。それは、千紗にとって非の打ち所の無い姉である沙季の存在が大きすぎて彼女のコンプレックスになってもいて、身近にいる沙季にも悟らせまいとしている。千紗自身も、そんな自分を変えたいと願っているが踏み出す一歩がどうしても踏み出せない。

そんな悶々としていた千紗は姉がアイドルを志す事を知る。そして、沙季は千紗も一緒にアイドルの軌跡を駆けようと手を差し伸べた。


この差し伸べられた手を握り返さなかったら、沙季がもう自分の手が届かない存在へと走り去ってしまう……血の繋がりという縁が途切れるワケではないが、千紗はそれに近い感覚と恐怖を抱いたのかもしれない。でも、自信の持てないこんな自分を信じて一緒に駆けようという沙季の信愛の情が嬉しかった。だから、千紗は沙季が本気で差し出した手を取って握り返す。


 しかし、一緒にいたいというのは様々な意味がある。ただ一緒の刻と居場所に居たいだけなのか?共に高い志を遂げようと挑み、切磋琢磨し合う関係性でいたいのか?



千紗に関しては前者の思考が大きなウエイトを占めていると言える。



一度はオーディションに落選したが、何やかんやあって結果的に合格し、沙季と一緒にアイドルの軌跡を駆ける事になったが…千紗の目的は合格した時点で大方は果たされてしまったが、それが決して悪いモノではない。一緒にいる事がモチベーションとなって頑張ればいいだけの事。



しかし、そんな千紗のモチベーションを揺るがす事態が彼女に降りかかる。



『サニーピース』と『月のテンペスト』の結成によるグループ再編である。これにより、千紗は沙季と違うグループ『サニーピース』のメンバーとして組み込まれ、沙季とは離れ離れとなってしまう。

 

 

 お姉ちゃんと違うグループになっちゃったなって……


 ダンスも歌もみんなより遅れてるし、一人で本当にアイドルになれるのかな……

 

 

 自分の至らなさと情けなさを自覚はしている。みんなや特に沙季に追いつきたい意欲も当然あるが、それは沙季と同じ刻と場に千紗がいなければ頑張るモチベ―ションが持てないと言ってしまっている。一人という言葉にはそういう意味の例えなのだろう。
さくらや雫は千紗に励ましの言葉をかけるが二人の声は有難いけれど今の彼女には届かない。沙季がグループ分けに関して異を唱えなかった事も影響しているだろう。それほどまでに千紗は追い込まれて心の余裕が無くなってしまった。



 刻と機というのは無情なモノ。そんな余裕のない千紗にも環境の変化は容赦なく訪れる。
外からのニューカマー(異物)である一ノ瀬怜の存在が、千紗の物語を新たな局面へと導いていく。



そう、姉離れする刻と機がやってきたのだ。

 

 

 

  熱に触れ、変わろうとする刻~“呪縛”という幻影の先へ。

 

 ダンスの全国大会で優勝という実績を持つ怜と、既にアイドルとしてデビューしている遙子が『サニーピース』の新しいメンバーとして加入。その実績(ダンス大会全国優勝)を買われ、怜が中心になって徹底したビエルサ指導をメンバーに課していく。強度を増したレッスンに加えて、寮では数多のダンス教則本を持ち出して知識も叩き込めと言う。

そんな千紗の不安とストレスは日に日に積みあがり、姉の気遣う言葉にも『大丈夫、心配要らない』とどこか気が抜けた生返事で返してしまうまでに追い詰められていく。そして、我慢の限界という臨界点を越えて本心を曝け出し千紗は怜に噛みつくが、あっさりと怜に正論で諭されてしまう。

 

 

 私は、そんな風に頑張れない……


 お姉ちゃんが一緒だったから、お姉ちゃんと一緒がいいから……
 

 今は上手くできる自信ないよ……

 

 

 アイドルが大好きというよりは、姉とずっと一緒にいられる為の手段として誘われるままにアイドルの軌跡へ千紗は踏み込んだ。故に、オーディションに受かった時点で目的は果たされて、そこから先の軌跡なんて彼女は見えていなくて『今』を闘えてない。別な言い方をすると、強者の位置にいる怜に、自分の気持ちなんかが理解出来るワケがないと吠える。

怜も怜で、弱いと自覚していながらそれを口実に闘わない者の言い分なんざ聞く耳持たないと言わんばかりに千紗の物言いを一蹴する。



交わる事のない二人の感情と距離。けど、意外な事でその関係は変化の兆しを見せた。



 怜のスーパーでのバイトが見つかってしまい、どうしてバイトをしているのかやアイドルを志した経緯を怜から聞く。


アイドルになりたかったワケでもなく憧れもない。ダンスを続ける事を認めてくれない両親をトップアイドルになって見返して認めさせようとする一心でアイドルになる事を決めたという。そして、バイトをしているのも、実家からの援助が見込めないし受けるつもりもないからだと本音を曝け出す。

そんな怜の身の上を聞いた千紗は、退路を完全に断って怜の様に闘えるか?と自問自答して比較し自分だったら不安で諦めてしまうと。そして、そんな中で闘える怜に尊敬の念を抱く。そして、遙子が怜を慮って言った『不安だから、その不安を消す為にひたすら頑張れる』という言葉は、不安だからただ逃げてしまうのでなく、真っ向から闘う選択もあるという意味でもあったのだと。

出来ないから諦めるのではなく、きっちり向き合って闘って来たから怜は強くなれた。
その強さは千紗には無かったモノで、これまでの自分がいかに姉に依存し甘えてしまっていた事を痛感させられたのでしょう。それは、千紗が弱さを認めて受け入れた事でもある。


 あくる日、さくらはネモフィラが咲き誇る公園へとメンバーを呼びつけた。
ネモフィラ花言葉『どこでも成功』であるが、もう一つの意味で『あなたを許す』がある。このあなたを許すは慈悲の意味合いだと言われる。相手の個性や性格などを認めようという意味でもあるのだろう。


そして、千紗は意を決した表情に変わって彼女の双眸は力強い光を放つ。

 
 私、怜さんみたいな努力もしないで、自分には出来ないって諦めて

 
 でも、このままじゃダメなのも分かっているんです。


 だから、ダンスの事教えて下さい!

 

 

 怜がもたらした厳しさというのも成長には必要不可欠なモノとして受け入れた。
最後の付け加えで『もう少し優しくお願いします』と言うのは彼女らしいというか…何とも微笑ましいモノである。自分に自信が持てなかった千紗はおそらくここまで激しめな自己主張は出来なかった様に思える。それを成し得たのは彼女が変わろうとする一歩を踏み出す勇気と覚悟の表れ。理屈じゃない。千紗と怜はどこかで徹底的にやり合わなければならなかったのだ。



 ちゃんと自分の気持ち 向き合えたら


 私は私って もっと強くなれるね


 ―サニーピース 『SUNNY PEACE HARMONY』より引用



 この刻での千紗の心情が『サニーピース』のデビュー楽曲『SUNNY PEACE HARMONY』のこの一節とリンクしている様に思えてしまう。更に、このパートを千紗と怜が歌う構成も二人が感情をぶつけあった模様を想起させてエモーショナルな感情を揺さぶるのだ。その事実は千紗というキャラクターの成長を最も端的に表現していて、この歌詞にある様に千紗はこの物語を通じてもっと『強く』なれたのだと思える。

 躓いて転んだ時、手を差し伸べて起こしてくれた沙季はもう近くにいない。自分の力で立って歩き出さなければならない自立の刻が千紗に訪れた。千紗が自立する為に最も必要だったのは、自分自身が持つ輝きを信じて自信を取り戻す事。

ネモフィラの咲き誇る公園でみんなと記念撮影した時、千紗は満面の笑みを浮かべた。
それまでは、沙季の陰に隠れてどこかオドオドしていた彼女が作中初めてと言っていいほどに見せる心底楽しそうな笑顔。

そうなったのは、互いにどこか遠慮しあっていた『サニーピース』のメンバー達が変わろうと踏み出して分かり合おうとした事でグループの雰囲気が一気に変わった事も、千紗を満面の笑顔にしてくれた要因でもあった。



 ほんの少しかもしれないが、自分自身を信じてやれて自信が持てたからこそ、千紗は周りの目を気にしすぎて萎縮する必要が無くなったという事なのだろう。

 

 

 

 真の夢~あの人と肩を並べる為に。

 

 アイドルとして、レッスンを始めたばかりの頃はストレッチの時誰かのサポートが無いとロクに曲げられなかったが、刻を経ていくうちにサポート無しでちゃんと前屈が出来る様になった。

怜が加入して間もない頃、強度を増した厳しいレッスンプログラムに音を上げてグロッキーになっていたが、デビューライブ前夜ではレッスン後にも関わらず寮の庭で雫と共に率先してダンスステップを踏む。その熱の入れようはストイックな怜が翌日のライブに支障をきたす可能性があるから控えろとまで言わしめた。


大事の前だからこそ、入念で徹底した準備が自信に繋がりそれが結果に結びつく。
これは、沙季が実践している事でもあって、幼い頃から姉の背中を見て育って来た千紗にも備わっていたのだ。


千紗がアイドルの軌跡を駆けだして、必死に積み重ねてきた時間。どんなに辛くても止めなかった時間は絶対に彼女を裏切らなかった。そして、千紗は一つの答に辿り着いた。

 

 

 私も同じ…怖いけど頑張る。

 
 お姉ちゃんと同じ舞台に立ちたいから。立たないと後悔するから。

 

 

 
 違うグループに分けられた彼女達が同じ舞台に立つという事は、『NEXT VENUSグランプリ』で戦うという事。これは千紗から沙季への宣戦布告でもある。

一緒にいたいという想いは変わらずに持ち続けている。でも、そのベクトルは違う方へと変化していた。沙季の背中の陰ではなく肩を並べて共に走る事こそが千紗が辿り着いた答えであり、千紗にしか描けない千紗だけの夢。



 千紗は、自分が抱く理想のアイドル像について
『私と同じように臆病で、前に進むのを躊躇っている人を元気づけられる存在でありたい』と言及している。



その答えを導き出せたのはおぼろげながら抱き続けていた理想のアイドル像があって、彼女がそうなりたいと強く願って挑み続けているからだろう。



 過酷なアイドルの世界への不安を沙季が吐露した様に、千紗も同じ不安と恐怖を抱いていてそいつを認めている。でも、今の千紗はその不安と恐怖から逃げずに真っ向から闘う意志を示す魂の強さがあった。その勇気は誰かから与えられたのでなく千紗自身が絞り出したモノだ。おそらく沙季も千紗の魂が放つ熱にあてられて、沙季の魂も燃え滾ったのだと思える。


 そして……立ち塞がる数多の強敵に打ち勝って、『サニーピース』は『NEXT VENUSグランプリ』ファイナルの舞台に立つ事が叶う。その相手は、姉・沙季が所属する『月のテンペスト』になった。


白石姉妹の絆と純然な想いは、人知の及ばない運命の悪戯をも超えて引き合わせる。



 離れ離れになって互いに気付けて培ったモノ全てを懸けて絆を確かめ合う。それは、誰にも割り込めない心躍り、最も望んでいた悔いのない戦い。全身全霊のパフォーマンスを終えて結果を待つ千紗と沙季の視線が交わる。沙季を見た千紗の双眸はしっかり沙季の双眸を見据えて優しく微笑んだ。

 


 そんな千紗の自信に満ちた輝く双眸と微笑みに、気弱で臆病だった頃の面影はもう無い。変わろうとする想いを抱き続けて、一歩踏み出す勇気と覚悟を持って挑んで変わる事が出来た。

 


 これもまた、彼女が言及していた理想のアイドル像。彼女が見せた勇気と可能性の物語に魂を揺さぶられたのは改めて書く事ではないだろう。

 

 

 


 と、いう事で白石千紗編でした。


感情の赴くまま筆を走らせた結果、キャラクター考察で最長の文字数になってしまった……
ちなみに、もう一つ書きたい項があったのですが…それは別のキャラクターの考察にて書き殴ろうと思っています。

 


 毎度ながら、異論・反論しかないでしょうが…取りあえず、楽しんでいただけたなら嬉しく思います。手前勝手な解釈(妄想&暴論)も結構含んだ考察になっていまいましたので、別な意見や詳しい解釈があれば教えていただくと有難いです。