突然だが、I-1clubの楽曲で何が最も好きかと問われたら……
自分は『Jewelry Wonderland』を挙げる。迷いは無い。即決だ。
何をもって、この楽曲に自分の魂が惹き寄せられて魅せられたのか?単に曲調が良いのもあるし、詞が紡ぐ世界観も良いモノ。
しかし、自分が最もこの楽曲に魂を揺さぶられた要素は、曲調や詞の世界観ではない。
謳うI-1 clubの生き様や生き残ろうとする執念。生々しい要素がこの楽曲の『核』を担っている。
その要素は、自分のエモーショナルな感情を強く刺激して惹かれるモノ。
個人的な感覚で恐縮だが、この楽曲のみならずWUG楽曲には生々しい要素を感じてしまう楽曲が多くあって、物語に登場してくるグループに必ずそういう楽曲がある。それは、絶対王者のボス・グループであるI-1とて例外じゃない。物語の中の刻を生きているというしがらみの中にいて、その理からはどうやっても逃れられないのだ。ただの偶然なのか、きっちりと意図されて楽曲を制作していったのかは分からないが…
その要素を紐解く切っ掛けになる言を、奧野香耶さんはインタビューで仰っていた。
7人で激しくダンスをして、雰囲気もすごく楽しそうなんだけど、
どこか儚さがあるというか。明るい中にそういった影みたいなものが見え隠れするのが、
『WUG』の楽曲っぽさなのかもしれないなって思います。
奧野さんが仰ったこの言葉が、自分がWUG楽曲に抱いている生々しい要素だと感じる。
それは、I-1もそうだし、ネクストストームや『カケル×カケル』もそうだ。だから、それは全くの偶然ではなく、意図して制作されていて『ただ明るいだけの楽曲』にしていない事を『MONACA』の田中秀和氏は仰られてもいた。あながち、自分が抱いたこの感覚は間違っていなかった事は嬉しいモノだったりする。
と、言うワケで、これから『Jewelry Wonderland』の何に魂を揺さぶられて好きだという事を書き殴っていこうと思う。で、毎度の事ながらの妄想&虚言であり、この楽曲の解釈は100%正しいなどというつもりは毛頭無い。自分はただこの楽曲が好きなだけのリスナーのうちの一人でしかない。
ちなみに『何故、この機で?』と問われると……
この記事を投稿するのは、1月31日。今から三年前のこの日にこの楽曲はリリースされた。
楽曲のリリース日は誕生日と言ってもいいと自分は思っている。三年という刻は一つの区切りだったりもする。そんな時期だから『Jewelry Wonderland』に想いを馳せて一筆したためたくなっただけなんだよね。
Chapter1/ジャケットに描かれたモノクロの鈴木萌歌の生き様
この楽曲はI-1楽曲『君とプログレス』のカップリング楽曲でもある。
リリース当時は特に気に留めなかったが、色々と独自考察を重ねていく内にモノクロで描かれた彼女の『WUG新章』での心情描写に繋がっているモノではないかと思えてしまうのだ。
萌歌が岩崎志保とのセンター争いを制し、決戦用楽曲『止まらない未来』で青い衣裳を身に纏って、『青』という色が彼女のイメージカラーとなった。
だが、I-1は『アイドルの祭典』=WUGに勝つ事は叶わなかった。次の年の『アイドルの祭典』で優勝はしたが萌歌の望む形=WUGを負かしてという結果ではなかった。
そんな彼女に追い打ちをかけるかの様に『新章』での萌歌はことごとく運に見放され、更には負傷まで負ってしまい新しいI-1の体制でセンターの座を剥奪されてしまう。
与えられた萌歌の『青』という魂の色は彩りを失くした。徹底的に打ちのめされたなんて優しいモノじゃない。木っ端微塵に何もかも壊され焼き尽くされて灰になったと見てもいい。彼女のアイドルとしてのキャリアに消す事の出来ない自分が負けたという現実…最大の屈辱感と挫折という傷が付いてしまった。
言っておくが、灰になってモノクロになったと冗談やふざけて言ってるワケではない。
真面目にコレを書いていてその解釈をしている。『新章』の鈴木萌歌は輝く魂の色が無いのだ。
彼女にあてがわれた『青』は真の魂の色ではなかったのかもしれなく、実は何も掴み取っていなかったのだとも思える。でも、そこに望みがある。
以下の節は萌歌の生き残ろうとする強い意志……執念が滲みだしている箇所であり、自分がこの楽曲に生々しさを最も感じる部分である。
知ってるの 私も 私も おんなじ
(ほかの場所で生きられないの)
―I-1club『Jewelry Wonderland』より引用
この楽曲はI-1の楽曲でもあるのは勿論だが、同時に鈴木萌歌のキャラクターソングでもあると勝手に思っている。
前述にある様にWUGに負けて以降、辛酸を嘗めて来た萌歌だがアイドルとして生きる事を諦めていない。岩崎志保がI-1を脱退した代わりとして彼女は返り咲く機を与えられるが、それは彼女の望んだ形ではない。それを突っぱねる事は出来たが、そうしなかったのは生きる事と自分の魂の色を取り戻す事……形振り構わず生きようとする意志を感じてしまうのだ。
物語のエンディングで、萌歌は再びI-1のセンターの座に返り咲くが……彼女はその座を返上したとある。この時点でも彼女の魂の色はまだ確定されていないモノクロのままなのだろう。
何を思って萌歌がセンターを辞退したかは分からないが、彩りの無いモノクロのままの自分では駄目だと彼女は痛感していたのかもしれない。与えられる未来ではなく自身の力で勝ち取る未来に真の価値=真のセンターの姿があると。
苦悩を謳う楽曲でもあるが、自身にしか彩る事の出来ない色を探す闘いの謳でもあると自分は思えて、その要素が堪らなくて魂を揺さぶられてしまうのである。
Chapter2/白を纏う事の意味
『Jewelry Wonderland』でI-1が纏う衣裳の色はこれまでのI-1ではおそらく無かった『白』を基調とした衣裳。頭に王冠の飾りがあるのはアイドル界の絶対王者の証だという事を誇示している様に見える。ここで語っていくのは『白』という要素である。
ちなみに、WUGの『Polaris』衣裳のティアラは各々形状が違う。
これは雑多な個性=WUGのアイデンティティを模しているのかと思っている。
『白』という色のイメージは、光を反射する最も明るい色。
ポジティブでクリーンなイメージがあって、エンターテイメントと携わるアイドルを神聖で無垢な希望の存在として捉えていると思われる白木さんの信念が伺えて、楽曲が醸し出す上品でお洒落な魅力を一層際立だせていて、洗練され尽くされて一部の隙も見当たらない。
そして、白色には何か物事を始めたり、中途半端に放ったらかしっぱなしになっていた事などを一度全部手放し、心機一転また一から新たに再出発するという意味もあると言われてもいて、『新章』でのI-1の立ち位置的に再出発=アイドル業界を盛り立てる要素に繋がり……尚且つ、前述の項で触れたモノクロの鈴木萌歌の空虚というネガティブなイメージにも捉えられる。
絶対王者としての変わらない洗練された矜持を持ちながらも、時勢の波に抗い変わろうとする想いと覚悟を持って、I-1では纏わなかった白を基調とした衣裳で『白星』を勝ち取る闘いへ赴く。
洗練されたお洒落なインプレッションの中に潜んでいる生きる事への執念。
相反する要素なのは承知だが、『闘いの謳』であり『生命の謳』でもある様に自分はこの楽曲の『白』は表していて更に魅力を感じていると思うのである。
Chapter3/変わらない魂、変わった血
WUG楽曲の集大成となった『Polaris』は、東北への想いとメンバー達の絆に加えて人の負の感情まで含めている壮大な楽曲で自分は『アンセムソング』でもあると思っている。
で、『Jewelry Wonderland』も『Polaris』に比肩し、I-1楽曲の集大成と称するに相応しい楽曲。
曲の冒頭からサビの間は、落ち着いた『静』の要素でメロディが構成されていて
詞もそれに伴ってなのか内省的な心情を描写している様に捉えられる。2番の冒頭の詞はそれを強く感じさせる。
シークレットな ハートの深くに沈めた
人間的な感情 宝石箱も持っている
―I-1club『Jewelry Wonderland』より引用
I-1の一員であるならば、人としての感情を抑え込みアイドルとしての役目を全うする事。
ここでの『宝石箱』とは、I-1メンバーの事を指していてシークレットなハートに人の感情を沈める=抑え込む事なのだろう。特に2番の詞は負の感情を表に出した詞が多くある様に思う。
で、サビ直前のパートを謳うある人物が負の要素を纏う『静』から、輝きを増す『動』へと舵をきっていく。この流れはこの楽曲の『要』の一つを成す要素で、リスナーのテンションも昂らせる。
そのある人物とは、I-1の新しい『血』である高科里佳(CV:上田麗奈)である。
里佳が歌うパートの詞にある『鏡を覗きこんだ』と『開くMagical Box』は抑え込んだ感情を解き放つ事を例えている様に感じる。自分は彼女達がいるのは鏡の中や箱の中だと思っていて、そこから飛び出して未知の領域へと進んで行くかのように里佳の歌声がポジティブで弾けたモノになる。
さながら、未知の領域へ導く役割を若い『血』である高科里佳に託したとも捉えられる。
では、変わらない魂とは何か?その答えを持つ人物が謳うパートが二つ目の『要』だ。
Dancing レッスンは
血のにじむような 自分が見てた部屋の中だけ
Show Timeに見せる輝きこそ
―I-1club『Jewelry Wonderland』より引用
このパート、落ちサビを謳うのは近藤麻衣である。
ここの詞にI-1……白木さんの信念、変わらない魂の象徴があると思えるのだ。
そして、I-1がステージに出陣する際にキャプテンが鼓舞するために吠えるあの言葉。
誰よりも激しく! 誰よりも美しく! 誰よりも正確に!
麻衣もキャプテンの任に就いていた頃に数え切れない程吠えてきた言葉。
最高のパフォーマンスを生み出す者は、連日の徹底した血の滲む様な努力とそれに裏打ちされたメンタル。でも、その努力している様子はファンの前で悟らせない事(自分の部屋の中だけ)が肝要。要はその細かい部分に於いても人間らしさを感じさせてはならない。
『神は細部に宿る』という格言があるが、I-1はそれを実践させている。
白木徹という男はアイドルを神聖な存在として捉えている。
ほんの些細な綻びによって神聖なモノが穢れて台無しになる。それはおそらく彼の中では忌むべき過去の傷跡として疼くのだろう。だからこそI-1では完璧なモノを追い求める。
そして、彼の信念をキャプテンの任を解かれてもなお、ステージの上で実践しようと懸命に闘う麻衣の胸中にあるのは彼女自身が輝き続ける事。
麻衣が謳うここのパートには、白木徹の信念もあるが、同時に近藤麻衣の貫くべき信念……変わらないI-1の魂が凝縮されている。神の領域へ挑もうとしているが人間の持つ生々しい要素も表している様にも思えてしまう。
でも、その相反する要素に魂が揺さぶられて、この楽曲がまた魅力的に感じられるのだ。
終わりに
長々と語ってみましたが、いかがだったでしょうか。
拙いながらも『Jewelry Wonderland』に惹かれて好きだという想いを吐き出してみました。
当然ですが、ここに書いて来たモノはあくまでも個人が感じて惹かれた要素をただ書き殴っただけで、それが楽曲全体の雰囲気を決定づけるモノではないし、この解釈が正解だというつもりもありません。
冒頭の件にもありますが、『Jewelry Wonderland』に想いを馳せてただ好きだという事を叫びたかっただけです。
劇中の場と刻を生きているI-1の少女達は、完璧な存在ではない。
WUGの七人の少女達と同様に、何かに翻弄されながらも抗い生きようと闘っている。
そんな彼女達に寄り添って物語を彩る楽曲陣は本当に素晴らしい。
他の楽曲についても踏み込んで何か書き残せればという想いは変わらずに自分の中にある。
そんな願いを以って、そろそろ筆を置かせていただきます。
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございました。