自分の勝手な持論で恐縮であるが…アイドルを題材とした作品において楽曲との関わり合いは欠かす事の出来ない重要な要素であると思っておる。
その楽曲に懸けている想いと魂。制作に携わり苦闘する軌跡を描いていたり楽曲が物語の根幹を成す要素であったりと様々であると言えるしそれはこのWUG新章も例外ではない。
異端者(俺ww)による『Wake Up,Girls!新章』独自考察。
今回は、新章で使われた楽曲を自分の独断と偏見でいろいろと書き綴っていく。
とは言え…出て来た全ての楽曲を書いていくのは俺の気力がまず持たないのでww
根幹を成した楽曲と個人的に印象深かった楽曲を挙げて書き綴ろうと思う。
尚、楽曲そのものの考察ではなく、物語と人物との関わり合いに焦点を置いて考察(という妄想)しております。
タチアガレ!
2017年の3月13日(作中の日時)の仙台・勾当台公園にて、WUGに憧れを抱き少しでも近づきたいという想いを持つ三人の少女、速志歩・守島音芽・阿津木いつかがこの楽曲を舞い踊る。
『エターナル・センシズ』のラストで島田真夢はこの場に偶然居合わせ『わぐばん!』の収録の合間に、片山実波・菊間夏夜・岡本未夕が投稿されたダンス動画を観ていた。
この313という数字だが昨年のWUGの4thツアーのグッズ
(キーホルダー・ビブス・タオル)に刻まれた数字の一つであり藍里役の永野愛理さんがこの数字を考え刻んだとの事。
3月11日=311の次の素数がこの313という数字であり、次へ踏み出し進むという意味を込めて永野さんはこの数字を選択したそうです。
新章の物語で最初に登場したこの楽曲と3.13という日時と勾当台公園で次世代である歩・音芽・いつか(後のRun Girls,Run!)が舞い踊る事の意味
様々な要因が重なるWUGと歩・音芽・いつかとの『縁』はこの刻から繋がり始めて来た…と思われる。
そして、最終話での仙台公演でWUGがこの楽曲を歌った事も胸が熱くなった。
クリスマス・イブと言えば七人のデビューライブもこの日で勾当台公園の
野外ステージ。結成当初は確固たる信頼関係もステージ衣装もなかった…
しかし今は違う。揃いの衣装を身に纏い、七人を迎えてくれる観衆がいて
様々な苦難を経て強く血の繋がりより濃くなった七人の絆がある。
何度も壊れそうになった。でも前を向いて進む事を諦めずに続けて来たからこそこの日を迎えられた。
それは七人の楽曲への敬意と感謝の念を示すようでもあったと思えてならなかった。
君とプログレス
島田真夢と岩崎志保が主演したドラマ『夢見るふたり』の主題歌として登場した
I-1Clubの新曲。
アイドル戦国の世からアイドル不況時代へと刻は推移していく。
その時代の奔流に呑み込まれる形となったI-1。
まだ緩やかに流れていた刻の流れを急速にしたと考えられる最大の要因は、2015年のアイドルの祭典でのI-1の敗北であり優勝を飾ったのはI-1初代センターを勤めた島田真夢の在籍している『Wake Up,Girls!』だった。
I-1を追われた者の手でI-1に引導を渡される形となったのは何とも皮肉な話であろう…
2016年のアイドルの祭典でI-1は優勝を勝ち取るが、変わってしまった時勢の波はそう易々と変わるものではなかった。
二人の元・I-1のセンター、真夢と志保の共演という話題性に縋り付いてでも時勢の波を再びI-1主導の時代に引き寄せようと形振り構わないようにも捉えられ、プログレス=進化の形は決まった形ではない事を感じさせる。
ドラマの主人公であるヨウコとミツキの心情を描写した楽曲でもあるが、I-1側…特に、現・センターである鈴木萌歌の心情を描写している楽曲であるとこの新章の物語では役割を果たしているように自分は思えて来る。
同じ夢を見てる
君とプログレスの系譜を汲んでいるヨウコとミツキの心情描写を思わせる楽曲でもあるが、島田真夢と岩崎志保の関係と心情描写を表す楽曲であると思える。
自分の中ではどちらかと言うと、真夢と志保の関係と心情に寄り添った楽曲という認識で捉えている。
互いに認め合い、最も負けたくない相手。一度は途切れたかに思えたが『縁』はそれを許容せず二人を再び巡り会わせる。
(二人の関係性については人物編の独自考察にてじっくりと書き殴るつもりである)
一度敗れ、共に魂の奥底に眠っていた原初の想いを取り戻し、再び高み≒同じ夢へと挑む闘いに身を投じる。この『夢見るふたり』にて共演(競演)経た真夢と志保の関係は好敵手・宿敵という関係から、真の『戦友』へと昇華していったと思える。
HIGAWARI PRINCESS
本編では9話と最終話での登場。現実でもこの楽曲は東北地域のイオンCMソングとして使われた。作中では全国展開しているスーパーマーケット『ニャオン』の仙台ローカルのCMソングとして登場。
自分は9話でのチャリティライブでのこの楽曲の使われ方が印象的に思えた。
来てくれる観客を一人でも多く楽しませようと様々な魅せ方を模索して意気込んで臨んだWUGだがこの楽曲のアクトの最中七瀬佳乃は客席で自分達ではなく携帯端末をずっと見ている観客を目撃してしまった。
自分達に一切の興味を抱かない者…言わば、観客側の負の部分を見せる役割を与えられた楽曲とも捉えられる。興味を抱かない観客の描写は新章だけの描写ではなく、これまでのシリーズでも見られたモノだ。
一期のTVシリーズ(二話)での健康ランドでの営業や続・劇場版前編でWUGが出演したフェスでのトイレタイム扱いされた描写がそれに当たる。
この二つの項目よりはマイルドに描かれてるように思えなくも無いが、徹底的に無関心を貫く描写というのも結構厳しく背筋が凍えるような感覚になるが…
興味を抱かない観客の描写を踏襲してくれたのは個人的には嬉しい要素であった。
Glossy World
最先端の技術で生み出された次世代のアイドルであるマキナXに、稀代の天才サウンドプロデューサー・早坂相が書き下ろした楽曲。
完璧な存在であるバーチャルアイドルと楽曲との関係がもたらすモノに早坂さんは未知の可能性を見出し挑んでいく。
結果、この楽曲は全米のヒットチャートを賑わせる事となったが、早坂さんが求めていたのは単に世界的にヒットする楽曲を作り出すことではなかったと思える。
おそらく彼にとってヒットチャートを賑わせ成果を出す事は刺激的で面白い事ではなく、人とテクノロジーの融合≒Glossy World(光り輝く世界)が枠を壊し限界を超えられる存在であるかを見出したいのだろう。
そして、枠を壊すという事では早坂さん自身にも言える事だったのではないだろうかと思えてならなかった。
カケル×カケル
紆余曲折あって、グリーンリーヴスの研究生としてアイドルへの軌跡を行く事となった速志歩・守島音芽・阿津木いつかの三人。
自分たちのレッスンをこなしつつ、個々の仕事でレッスンに来られないWUGメンバーの代役を務めたり、直前でようやく決まった仙台公演の会場設営も手伝い
WUGの陰で献身的に動き続けてくれた三人の想いに応えてやりたいと思った七人は、千秋楽公演のステージに三人を上げてやりたいと丹下社長に訴え掛ける。
そんな七人の熱意に圧された丹下さんがTwinkleが三人のために作ったこの楽曲を渡す。
『これ(カケル×カケル)をこんなに早く出す事になるとは』と言う丹下さんの言から推測するとこれはWUGの楽曲としてではなく、Twinkleが事務所に来訪して歩達を初めて見た時に三人の為の楽曲として丹下さんが制作依頼をしたと考えるのが適切と考えられ、将来彼女達三人をユニットとしてデビューさせるプランを構想していたのだろう。
自分たちだけの楽曲とユニット『Run Girls,Run!』の名を授けられ、本番に向けてWUGからアドバイスをもらいレッスンに励む三人。
WUGの七人とランガの三人の『縁』が繋がって次世代に技術と魂を伝承していく。本番の刻に初陣に臨む三人に七人の絆を象徴するシュシュを渡したのもその一環だろう。
託された想いに応えるには、自分達の全力を出し尽くし限界領域へと踏み込む事。まだ小さな一歩だったかもしれない。だが、踏み込んで駆け出さなければ先へは進めない。
TwinkleがWUGに提供した『タチアガレ!』を舞い踊った三人。そして系譜を受け継ぐ姉妹曲と巡り合えた事…三人が諦めず必死に駆けて来たからこそ繋がった想いと『縁』と荒削りながらも突き進む覚悟。『Run Girls,Run!』なりの挑戦状的な楽曲と言えるかもしれない。
Jewelry Wonderland
自分の中ではこの楽曲の要となる人物が三人いる。まず一人目は高科里佳。
サビに突入する前の節『鏡を覗き込んだ さぁ!』と『開くMagical Box さぁ!』の部分でのソロパートは彼女が担当している。
この節以降から『静』の曲調だったのが一気に爆ぜるように『動』の曲調へと変化していき最高潮に盛り上がっていく。
鏡という句が志保のアンダーを務めていた時と解釈して、彼女越しに見えていたのであろう未来の里佳自身の姿。開くMagical Boxという句がI-1全体を指す句。
脱退した岩崎志保からI-1の未来を託された次世代の者である彼女がこの楽曲の堰を切る役割を担う事は何ともエモーショナルな感覚に浸ってしまう。
二人目が近藤麻衣。ラスサビ前での彼女のソロパートである以下の節が印象的だ。
dancing レッスンは
血のにじむような 自分が見てた部屋の中だけ
Show Timeに見せる輝きこそ
―I-1 Club 『Jewelry Wonderland』より引用
I-1の黎明期からキャプテンとして束ねて来た者として、また一人のアイドルとしての矜持・覚悟・信念。ここの節々にはI-1への……そして彼女の想いが込められていると思える。
そして最後の一人が白木さん。この楽曲を誰が作ったのかという描写はありませんので完全な妄想と暴論ではあるが…作詞をしたのはおそらく白木さんではないかと思える。詞の紡ぎ出した世界観はI-1の理念と彼のアイドルへ抱いている想いが凝縮された集大成的なモノと捉えられる。
次世代の『血』である高科里佳とかつての『束ねる者』で理念を色濃く継ぐ者でもある近藤麻衣に先述のソロパートを託した事は、彼がまだ変革の刻で翻弄されながらも、なお刻の流れに抗う事、強くあり続ける為に闘い貪欲に挑み続けるからこそ強くなれる不屈の魂を彼女らに託したように思えなくもない。
人の限界を超えた力と心の光を誰よりも頑なに信じているのが白木徹という男なのだろう…
7 Senses
新章のOPテーマ曲。Senses=感覚、そして『7』という数字。作中において重点的に描かれた事の一つであるWUG七人の更なる個の成長を象徴する楽曲と言えるだろう。
詞の一節にある『過去と未来つながっている場所』という箇所も、過去の楽曲と新章にて登場する楽曲の系譜を表す要素でもある。
決起を象徴する『タチアガレ!』七人の闘いの楽曲『7 Girls war』再起を象徴する『少女交響曲』分水嶺となる『Beyond the Bottom』そして……未来に繋がるあの楽曲。
Seven Senses Wake up Go!!!!!!!の節は、七人の秘められた更なる可能性を覚醒させただ直向きに前へと突き進む七人の生き様・懸けている想いと魂を象徴していると思えるので物語の関わりは最終話でのライブシーンのみで掘り下げた描写はなかったが挙げさせてもらった。
Polaris
新章後半の物語は、この楽曲の制作過程(七人の作詞)に重点を置いた描写となる。作詞に悪戦苦闘するも七人が一所懸命に言葉と向き合い、今感じている事、伝えたい本当の想いや叩き上げの魂を境界線の存在しない空で繋いで輝く事。Polaris=北極星はほぼ動かずに定位置で輝き旅人を導く光となる。
七人がそうありたいと願い、また想いを寄せる人達に導かれるような…
『想い』の相互循環を繋ぎ・導き・輝く……
そして、人の負の感情にも触れている。綺麗事だけで誤魔化さず真実と人に向き合う事。結束しようと紡いだ絆の糸は完全に繋がるまで何度も絡まり解れそうになった。
詞の無かったこの楽曲に『魂』を宿らせ血を通わせられるとWUGの本当の力と七人の心の光に早坂さんは懸けて七人にこの楽曲を託したように思えてならない。
そして…繋がった心の光は絶望の淵に落とされた鈴木萌歌に一つの『答』を導かせる。
闇があるから星は強く輝ける。その逆も然り。
この二つの要素は切り離せない密接な関係として成り立っている。
人の負の感情=闇とするならば人の心の光=星。星は夢や憧れ、貫きたい信念や覚悟、何かに縋りたい人の『性』(さが)のようにも捉えられる。
闇と向き合い、そこから光=人の心の光を見出す事。それは島田真夢が言う
『幸せの形』を表すモノなのかもしれない。
ひと粒の瞬きがボクを導いてく ココロから憧れた世界 満天の星空になる日まで
―Wake Up, Girls!『Polaris』より引用
人の意思の力(数多の星)が繋がって一つの"絵"となり、満点の星空(奇跡)が広がる。
人の心に光を灯し奇跡を起こせる存在が七人が導きだした理想のアイドル像としての
この『Polaris』という楽曲に七人が想いを込めて魂を懸けた楽曲と言えるのではないだろうか。
最後に。
…と、好き勝手にWUG新章の物語に関わった楽曲について書き殴ってみました。
本稿にて挙げた楽曲だけではなく、他に登場した楽曲にもそれぞれの物語がありますし、挙げた楽曲にもまだ秘めた物語があります。
無論、俺が書いた独自考察が完全な答であるとは思っちゃいません。本稿がきっかけとなってWUGの物語と楽曲の魅力を知る方が
一人でも多く増えてくれれば、ありがたく嬉しいものであります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。