巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

WUG楽曲 ライナーノーツ #31 Character song series 菊間夏夜編

 どうも。WUG楽曲ライナーノーツのお時間です。


今回を含めて残り4回と終焉が見えて来たこの連載企画。と言う訳で、今回はWUGのサブリーダー・菊間夏夜のキャラクターソングシリーズについて書いていこうと思う

 

毎度ながら、これから書いていく所感について異なる意見があってぶつけたくなる方もいるでしょうが、あくまでもコイツは所感の一つ。一個人の所感として読んでもらえるとありがたく思う。

 

 

 


 スキ キライ ナイト/菊間夏夜(CV:奥野香耶)

 

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 楽曲の随所で差し込まれている雅楽器(龍笛&琴らしい)とメタルチックの曲調は、所謂、和メタルと呼ばれる部類であり、菊間夏夜というキャラクターが迸らせている気風の良い格好良さというインプレッションを抱かせる。
そして、菊間夏夜と魂を共有している奥野香耶さんの艶やかな歌声がこの雅な雰囲気な曲調と見事に合致して魅力的なのだ。
楽曲の表層のみで捉えると、この楽曲はアッパーソングとしてのインプレッションが強烈。
しかし……菊間夏夜のバックボーンや歌詞と照らし合わせ捉えていくと単なるアッパーソングで括ってしまうのは自分の中では違うモノなのである。この要素もまた楽曲の魅力を更に引き立たせている要因であると思える。


 キャラクターソングという枠組みである事から、この楽曲は菊間夏夜の心情を謳う楽曲という解釈で間違いではない。肝要となるのはどういった心情をメロディと詞で表現しているのか?だと思われる。
自分がアッパーソングというインプレッションより強烈に感じているのは、恋心・慕情を謳う楽曲であり、エレジー(哀歌)の要素も感じられるという事。慕情や哀惜を謳っているのであればその対象となる相手が存在する。その相手を示しているのが、歌詞にある『少年』ではないだろうか。

 

『ナイト』という語は夏夜の字にある夜と彼女を指す語でもあるが騎士という意味もある。
よく恋仲の男性の事を称してナイト(騎士)と表現する事があり、それは詞にある『少年』の存在としての解釈も成り立つ様にも思える。では、この『少年』とは何処の誰なのか?その人物は夏夜の幼馴染の少年だろう。



 友情は 少女と少年のあいだに 

 ちゃんと生まれるのを知っている

 ひとつだけの恋のための席は 

 あいているままでもいいの ずうっとね

 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『スキ キライ ナイト』より引用



 少女=夏夜と少年=幼馴染との明確な男女の関係については作中では描かれてない。
ここの節から察すると少年とは親友という間柄の様に思える。同時に、夏夜の心の奥底の恋慕の情を描写している様にも捉えられ、この楽曲をラブソングの種とするならばここの節々は夏夜の恋愛観を描写している様にも感じ取れる。『ひとつだけの恋』とあるが、彼女はその想いをまだ少年に伝えられていなかったのだろうか…表には決して抱えている哀しみを出さない夏夜の秘めている想いを謳っているのかもしれない。


 前述にて、この楽曲はメタルチックな曲調と書いた。
それはこの楽曲の要となる要素であり、もう一つの解釈へと繋がる要素でもある。
そのもう一つの解釈だが、夏夜の変わろうとする想いと踏み出す覚悟を抱きつつ、焦燥感と苛立ちに揺れる心情をメタル調の激しくて早いリズムで模していると自分は解釈させてもらった。

故郷である気仙沼の地から『逃げる様に仙台にやって来た』と夏夜は作中で想いを吐露している。彼女を取り巻くあらゆる状況や縁を絶って忘却という逃避でもあるが、それと同時に彼女の中で変わろうとしたい想いと踏み出す覚悟でもあったのだろう。何となく無為に過ごす日々の中で焦り、苛立つ要因となってしまったのは彼女の魂に在る挑戦し続ける魂までも忘却へと置き去りにしてしまう事への感情だったのではないだろうかと思えるのだ。

そして、夏夜は『Wake Up,Girls!』に巡り逢い活動していく中で、その中で巡り逢った新たな縁と本気の想いと魂に触れる事によって、置き去りにした原初の魂=挑戦し続ける魂を取り戻していく。



 きれいでもきらい あの海

 走りながら海岸線を見た 

 きらいよ でも私は逃げない

 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『スキ キライ ナイト』より引用



 挑み続けるという原初の魂を取り戻した彼女は再び故郷の海へと帰る。
挑み続けろと彼女に言っていたのは大切な存在である『少年』。その彼を奪い去り忌むべき存在して関わる事から逃げたあの海との決着を付けて先へと進む事。ラストフレーズである『でも、私は逃げない』という言の葉に、変わろうとする想いと踏み出した先で彼女が乗り超えて掴んだ『答え』なのだと思える。


 

 


 Into The Light/菊間夏夜(CV:奥野香耶)

 

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 夏夜が抱いているとされる世の中(東京)への無常感、WUGとの絆、菊間夏夜という人物の闘う魂をデジタルロック調で格好良くも変化の振り幅が大きな変化球的な曲調に仕上げた楽曲。最も特徴的で強烈なインプレッションを抱かせるのはDメロとされる箇所でのラップパート。前作同様に気風の良い格好良さを纏う夏夜の魂を奥野香耶さんの艶やかな色香漂う歌声が堪らなく良い。

曲の世界観だが、1、2番のAメロでは共通して夏夜視点で見た世間の無常感を表現した詞が綴られている。『冷たいレモネード』と『甘いイチゴキャンディ』が世のプラスの表情である煌びやかさ=夏夜が身を置くアイドルの世界として捉える事も出来るだろう。けど、すぐ後の詞にて無常感=負の表情を増幅させる『飲みきれずに捨てる』、『味わいもしてないのに躊躇なく噛み砕く』とあって、この比喩表現は面白いモノだと感じさせる。

東京に進出したWUGメンバー達は、東京という地で活躍する為に『色んな味』を出そうと摸索するが空回りしてしまった。そんな無常の風潮に夏夜は真っ向から反発の意を示す。その反発の意と闘う意思を汲んでいるのがBメロとサビ。守りたいモノと信じる道の為に闘う意思を見せて突き進む。サビで堰を切るかのように感情爆ぜる夏夜の歌声がこの楽曲を一筋の光を掴み取る闘いの謳である事を証明する様である。


 失う事に慣れる時はこないからさ 

 後悔はするもんか 裸足で歩いたこの軌跡

 誰かのせいじゃない 負けっぱなしで黙ってばかりじゃいられない

 弱さが集まれば 強い光に変えてゆけるから

 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『Into The Light』より引用


 何かを失うという事に夏夜は非常に敏感で恐れを抱いている。
幾度経験してもそいつに慣れる事など絶対に無い。彼女はこれまでに失うモノがありすぎ孤独の意味を痛感している者でもある……けど、彼女の魂が孤独に苛まれて道を外れず優しい魂で在り続けられたのは多くの良き縁に巡り逢えたからなのだろう。親戚のおばさん、幼馴染の少年、丹下社長と松田さん、そしてWUGメンバー達との縁。

負けっぱなしじゃ終われない、何かを頑張れなくなった人の為に何かを頑張る。取り戻した原初の魂を持って夏夜は闘いを挑む。
夏夜の感情が爆ぜる様なインプレッションを抱かせるのは、彼女の中に渦巻いているであろう強い相手≒世の無常感・理不尽に対しての反骨の魂がこれらの節々から迸っているからなのだろう。
曲題の『Into The Light』は光の中と言う意味を持つ。夏夜にとっての光の中とは、自分らしく在って『我』を貫き通して挑戦し続ける事。それが彼女の情熱(Passion)であり流儀(Fashion)である様に思えて来る。



 きっと きっと 辿り着ける…

 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『Into The Light』より引用



 イントロとアウトロに差し込まれている囁く様でありつつも彼女自身の魂に言い聞かせるかの様なこの節々。独り闘いを挑む彼女の魂を戦がせて鼓舞させる為の言の葉にも思えなくも無い。でも、夏夜は独りじゃない。虹の架け橋を作れる心の光を共に灯せる仲間がいる。故にこの言の葉の意味は独りで光へ辿り着くのではなく、皆で一緒に光へと辿り着くという想いが込められているかもしれない。

 

 

 

 

 プライド/菊間夏夜(CV:奥野香耶)

 

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 ジャズテイスト(ディスコ・ファンクチック寄りだと個人的に思う)のレトロチックな曲調が印象的。WUG楽曲では稀であるアダルトチックな雰囲気は異彩を放ち、メンバー最年長者という夏夜のパーソナリティを踏襲していると思える。
この楽曲でも夏夜(奥野香耶さん)の気風が良い格好良さと艶やか纏う歌声が見事に調和している。特にその格好良さが出ているのがサビ前での『私は本気だよ』『怪我するよ』という台詞だ。
本気とは言葉そのままの菊間夏夜の挑戦していく事への本気であり、怪我~というのは彼女の生半端ではない懸けている覚悟を喩えた節なのだろう。



 弱音は吐くもんじゃない その時は強気な娘(こ)を演じるわ

 気付かぬポーカーフェイス 気まぐれなプライドが 私の邪魔をする
 
 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『プライド』より引用

 


 気まぐれなプライドというのは、上手くやろうとする余所行きの偽った自分という事だろう。
それは彼女が貫きたい本気ではなく軽々しいモノじゃない。未熟でも格好悪かろうが無い袖は振らないのだ。強気に攻めの姿勢は崩さず闘って在りのままの自分を魅せる事。この潔い想いと魂が彼女の『プライド』(誇り・矜持)の証明なのだと。
 
 
 I want to try 知らない世界

 I want to try この眼で見たい

 I want to try 未来に向かって

 I want to try 飛び込んでゆきたい

 
 ―菊間夏夜(CV:奥野香耶) 『プライド』より引用


 
 彼女は明確にアイドルの理想像をイメージ出来てはいないが、気合いで挑んでいく事を続けていけば答に辿り着けると信じて闘いを挑んでいる様に思えるのだ。それは夏夜の変わらない想いであり、未知の領域へと果敢に挑んで踏み込む事は変わろうとする覚悟と勇気であり魂の誓約なのだ。
原初の想いである挑み続ける事。それを呼び醒ます要因となったのは本気を夏夜の傍で見せ付けてきたWUGメンバー。ここのパートでは無いが詞にある星たちという語とWUGメンバーが繋がる様に思える。


そして、夏夜にとって尊く大切な縁で繋がる奥野香耶も星たちの括りに入っているのだろう。


歌い出しの節であるここの箇所だがこの節こそこの楽曲の『要』であり
菊間夏夜と奥野香耶の『プライド』の根幹を成す部分だと個人的に感じるのだ。

 

 

 

 以上が、菊間夏夜キャラクターソングシリーズの考察になります。
本文中でも書きましたが、菊間夏夜の気風の良い格好良さをどの楽曲からでも感じられる一方で、作中ではあまり表には出なかった彼女の内に秘めている想いも楽曲に乗せて解き放ったというインプレッションを抱かせてもらいました。

 

取り敢えず、この記事で楽しんでいただけたのなら嬉しく思います。
それでは今回はこれにて失礼致します。


最後まで読んで下さりありがとうございました。