巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

Team S ver.は王者の謳ではなく、反骨の魂を持つ挑戦者の謳。

 さて、今度はTeam S版の『リトル・チャレンジャー2015』の話だ。



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※Team M ver.の話は以下のリンクでしています。

 

akatonbo02.hatenablog.jp

 

 こちらのTeam S版では、島田真夢と入れ替わる形で相沢菜野花が加入している。
真夢以外のメンバーは、岩崎志保、近藤麻衣、吉川愛といったI-1一期生であり、所謂エース級メンバーで構成されたメンバーでもある。

各メンバーの歌唱振り分けは、オリジナル版からの変更がない。真夢が歌っていたパートはこの当時のI-1センターに就いていた志保かと思いきや、菜野花がそっくりそのまま真夢のパートを受け継いだ格好になっている。



そう、このTeam S版の要になっている人物は、相沢菜野花だと自分は思っている。



 こちらのバージョンでの真骨頂は菜野花の歌唱にある。



 オリジナル版での真夢やTeam M版での高科里佳の歌唱は、いたって素直というかなり振り構わない的な叩き上げの情熱を感じさせるような歌声を響かせている。それ故にこの『リトル・チャレンジャー』という楽曲が魂を奮い立たせる様なインプレッションを抱かせる『アンセム』になり得たモノと考えられる。


で、その菜野花の歌唱だが、真夢や里佳の歌唱とはまったく違うアプローチで歌われている。オリジナルとTeam M ver.と聴き比べてみると明らかに違っていて、真っ先に感じるのは軋轢の様な違和感が勝るモノだと自分は感じたし多くの人もそう感じたはず。

どんな歌唱をしているのかと言うと、真夢や里佳の様な真っ直ぐで素直な感じの歌唱ではなく、どこか気取ったようで格好つける凛とした感じの歌声に聴こえる。菜野花のこの格好つけた凛とした歌唱こそが、このTeam S ver.の要であると個人的に感じるのである。


 では、何故菜野花は真夢のバージョンとは歌い方を変えたのか?立場(パート)を継承したのならば、楽曲の世界観を損なわないようになぞった歌唱をするのが大方の意見だと思うが、あえてそこに異を唱え真っ向から抗っていったのは、菜野花の反骨の魂と野心がそうさせたと思えてならない。

島田真夢の脱退というのは、衝撃的な報であると同時に空いたフロントメンバーの一つの枠を勝ち取る絶好のチャンスが巡ってきたということでもある。チャンスの順番待ちに甘んじている者に未来はない。真夢の脱退に喜んだ者は少なくはないはず。菜野花も虎視眈々と野心を抱いていた者として、おそらくは喜んでいた者の一人だったのではないだろうか。

前述の通り、真夢と同じ歌い方をすれば多くの人に受け入れられる可能性は高い。逆に、変えてしまえばそれまで築いてきたイメージを壊し非難の的になってしまうリスクが高い。


だが、この変化に雄飛のチャンスがあると菜野花は感じ取った。


一人が抜けても代わりは幾らでもいるI-1。真に強い者だけが生き残れるI-1clubの絶対的な理の中で、同じ事をただなぞるだけのやり方では生き残って飛躍する機会はない。
真夢と同じ歌唱をしてもそうでなくても比較されるのは一緒。だとすれば、違った歌い方をしてやろうという賭けであり、居なくなった島田真夢の幻影に真っ向勝負を挑んだ。


 作中に生きるI-1ファンは、I-1のアンセムである『リトル・チャレンジャー Team S .ver』をどう捉えたのだろうか?菜野花を推すファンは彼女の抜擢を喜んだ事だろうし、真夢とは異なる歌唱も新しいモノとして受け入れられたのかもしれない。しかし、一方ではファンの間で疑問符を浮かべる人や非難する人もいるのだろう……それは、新世代のメンバーで構成されて歌ったTeam M ver.も同様なんだろうと妄想が膨らんだり。


変わらない想いというのは大事ではある。だが、世のあらゆるモノは同じ状態を保つことなく常に変化し続けているのが世の理でもある。だからこそ、変えようとする想いや一歩踏み出す勇気をもって動かなければ物事は変わらない。一つの結果として、相沢菜野花はこのチャンスをきっちり掴んで飛躍の刻と機を得た。

 

 岩崎志保がそうだった様に、相沢菜野花も島田真夢の幻影との戦いに挑んだ者だった。

 

表情や態度には出さないミステリアスで掴み所の無い貌が彼女の魅力だと思うが、菜野花は真夢に対して並ならない想いというのはあったはず。勝ちたい、超えたいという野心が真夢を見て、考えて、熟考して導き出された答えが、真夢と違う歌唱にチャレンジするというモノだった。

『考えない』というのがI-1の鉄の掟の一つとしてあるが、菜野花は島田真夢とは違う歌唱で『リトル・チャレンジャー』を歌う事を考えて実践した。行儀の良い順番待ちしている受け身の姿勢ではいつチャンスが巡って来るか分からない。見て、考える事を常にして来たからこそ彼女は強く輝く事が出来て、なおかつこの楽曲に新しい血を流せたのだと。


 純然な挑戦者の叩き上げの魂をもって謳われたオリジナル版と新しい未来を拓こうとする気概を持って謳われたTeam M版。そして、反骨の魂と野心を持った者(菜野花)が、オリジナル版とは違った血を流そうと挑んだ楽曲がこのTeam S ver.だと自分は勝手に感じてしまう。

どのバージョンが特別に優れていたりとか劣っているという議論は意味を持たない。
要となっている挑戦者魂を持つ者がこの楽曲にそれぞれ違った血を流した。


 島田真夢、相沢菜野花、高科里佳のアイドルとしての生き様が挑戦者の謳として成り立っている。この『リトル・チャレンジャー』という楽曲についての独自考察という怪文書の答としてはそれが一番しっくりきてる様な気がしている。