巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

RGR楽曲ライナーノーツ#8 Share the light/キラリスト・ジュエリスト/スノウ・グライダー

 どうも。RGR楽曲私的ライナーノーツシリーズのお時間です。


今回は、6枚目のシングル『Share the light』の収録楽曲について色々書き殴ろうと思う。
相変わらず、フィーリングで楽曲を聴いておるので、感覚的な表現が多くなっております。

聴いた当時の率直なインプレッションを思い返しそのまま勢いで文字にしているので読みにくい箇所だらけだと思います。
更に、制作者や歌手の意図とは異なる所感を述べている可能性があります。
あくまで一人の聴者が感じた個人的な所感として捉えていただけますと幸いです。

 

 

 

 

  Share the light

 

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 テレビアニメ『アサシンズプライド』OPテーマ楽曲。
更には、2020年1月~10月までFm yokohamaで放送されたRGRがパーソナリティを務めたラジオ番組のタイトルにも付けられていたりする。

作詞を只野菜摘氏、作曲はMONAKA所属の作曲家によるスタイルはこれまでのRGRの系譜通りだが、RGR楽曲では初めてになる田中秀和氏が作曲している。

近年、注目されている電子音を中心としたサウンドが特徴とされるジャンル、フューチャーベース系統の曲調がこの楽曲の大きな特徴だといわれ、更にストリング(弦)の音も加えており、田中氏の新境地となる楽曲とも評されたりもする。

音楽知識の欠片も無い自分でも、この楽曲は音の構成が複雑で難しいインプレッションを抱くのだから、実際に歌う彼女達は自分が勝手に抱いた以上のモノを感じてるのだろう。


 初聴時に抱いたインプレッションは、RGR楽曲では稀有な静と動の変化の振り幅がかなり大きい楽曲で、三人の歌声もメロディの強弱に寄り添っていてインパクト重視ではなく時間経過を経ていく度に何か浸食する様に沁み込むスルメ曲的な中毒性のある楽曲だと感じられた。盛り上がるよりは醸し出している雰囲気に浸る……そんな方向性の楽曲だと思える。

CDジャケットやMVで彼女達が着ている青と黒を基調とした衣裳の様な妖しい艶やかさ。
この艶やかさと大人っぽさこそがこの楽曲のキモで、RGRの新たな魅力でもあるのだけれども、キュートさを効かせる部分やしっとりと傾聴させる要素まであって、前述の振り幅の大きな変化はこれらの要素へと繋がっていて、尚且つ、作中のヒロインであるメリダの揺れ動く思春期の心模様も描写していると思う。


 胸の蕾はもう 昨日よりもひらいた

 気づかないでしょう?


 ―Run Girls, Run! 『Share the light』より引用



 胸の蕾とは、自分の中に秘めている才能と可能性を例えた言い回しだろう。
僅かな刻の流れでも、人は変われる事をここの節では問いかけて来るのだ。

ここの節は厚木さんのソロパート。音源のみでも彼女の歌声の艶やかさは存分に表れてはいるのだが、ここは是非ともMVの厚木さんが歌い切った後の表情を見ていただきたい。

変われた事を勝ち誇ってる様でもあるし、それを気付いていない相手に対して煽っている表情にも見える厚木さんの微笑みが妖しくてエロ魔性の艶っぽさを醸し出している。
表情のみでも見る人を殺せる魅了してしまう厚木那奈美の強かさがここに凝縮されてると個人的に思い知らされた……

……ここに書いた駄文ではこのパートと厚木さんの魅力は伝えきれていないので
興味を持った方はMVを観る事をお薦めしておく。


 これまでのRGR楽曲は、聴き終わった後に清々しいモノを感じる事が多いのだが
この『Share the light』は違ったモノ……それは、五感にまとわり付いて来る的なモノ…余韻深いモノを強くこの楽曲からは感じられる。

 

 

 

 

 キラリスト・ジュエリスト

 

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 テレビアニメ『キラッとプリ☆チャン』2019年10月からの新主題歌。
これまでのプリチャンOP楽曲の系譜をきっちりと受け継いだ明瞭な可愛らしい楽曲。

軽妙でポップなバンドサウンド、詞には合いの手調のフレーズがあってライブ映えは必定。そう思わせる程にこの楽曲のポテンシャルは高いモノだと思える。

インタビュー内で林さんが語られていたが、歌う時には明るい要素を強く押し出す事と、言葉がハッキリと聴こえる様に母音を意識して歌っているとの事。私見だが、これはこの楽曲だけに限らずプリチャンOP楽曲では、作品のメインターゲット層である女児が聴き取りやすく歌う事を常に意識されて歌われていると思うし、詞の紡ぎ方もシンプルだ。

 
 そして、この楽曲は応援ソングとしてのテイストも受け継ぐ楽曲。
OPのシーンで、この楽曲に合わせて桃山みらい達が躍動している姿に、縁と魂の繋がりを強く感じると三人は語る。

彼女達からリスナーへの応援ソングであるが、キャラクター達から彼女達への応援ソングでもあって互いを励まし合っていく想いの相互循環はエモーショナルな要素がある。

私見の域だが、応援ソングがより響いて深みを増す要素は、ネガティブでマイナスな心情描写を詞の中に落とし込められるかだと思う。

これまでのプリチャンOP楽曲では、ダイレクトなマイナス感情を示す要素は無かったとされる。今作では『不安』『見えなくなった』『真っ暗』といったマイナスなワードが出てきている。物語が続いて来て、更に踏み込んで深みを持たせる為とこれまで歌い継いで来た系譜にも深みを持たせていく。OP楽曲も作品の彩りには不可欠な要素である事の証明だと感じさせられた。


 散りばめた憧れたち 一生懸命が軌跡になる
 
 ねっ 夢 奇跡うまれる その瞬間 間にあいたいの


 ―Run Girls, Run!『キラリスト・ジュエリスト』より引用


 この楽曲で最も印象深いインプレッションは、韻の踏み方(特に脚韻)だと思う。
上記に挙げた箇所は自分が特に強いインプレッションを抱いた箇所。
『軌跡』と『奇跡』の掛け方はシンプルだけれども、シンプル故にダイレクトに響いてくる。

曲題の『キラリスト・ジュエリスト』からそれは盛り込まれている。
ファイナリスト、リスペクト、カラフル、チャンネル…etc単体ではなくパートの中できっちりと落とし込んでいて、それが聴き心地と響きの良さを作り出して明解。こういった点が只野氏の用兵の妙であり多くの人を惹き付ける所以だと思える。


 この楽曲は、個性を尊重して輝く事がもう一つのテーマであると林さんは云う。
そして、それは子供だけに限った事ではなく様々な年齢層の人に聴いて欲しいとも云った。前述に挙げたパートの詞『一生懸命が軌跡』も幅広い年齢層に訴え掛けるワードだ。

日々を懸命に、疎かにしない者にしか好機=奇跡はやって来ないし掴めない。
走り続ける事をアイデンティティにしている彼女達が謳うからこそ、この楽曲は説得力があって響くのだろうと感じる。

 

 

 

 

 スノウ・グライダー

 

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 “RGR Season Song”の冬の章にあたる楽曲。
曲題にあるグライダーは、動力(エンジン・プロペラ)が無く上空の気流を利用して滑空する航空機の事。スノウは英語で雪を意味するワード。

さしずめ、雪が降りだしそうな空を滑空しているグライダーがイメージとして浮かんで来る。

 

ダンスの振付は厚木那奈美さんが担当されていて、ここまでのRGR Season Song”をオマージュし、動きを多くする様にされたと語っている。


 さて、“RGR Season Song”でキモとなっておるのは、揺れ動く少女の恋慕の情の描写。
その系譜にあるこの楽曲もそれに外れず、もどかしさや切ない感情がキモになっている。
だが、この楽曲はマイナス方向へのベクトルが異常に振り切れて墜ちる所の極致まで墜ちた…そう思わせる凄みすら感じさせられる。

しかもだ。明瞭なテクノポップ調のメロディが、詞とのアンバランスな落差が気流の力のみで空を滑空するグライダーになぞらえているようであり、少女の感情だけではもうどうにもならない葛藤、儚さ、繊細さ、壊れやすさ等を描写してる様にも捉えられなくもない。

マイナスのベクトルへ振り切った詞、ポップで明瞭なメロディ、浮遊感を醸し出すRGRのボーカル。三つのアンバランスな要素が絶妙に絡み合った結果、楽曲の雰囲気が見事に決まる。


 『スノウ・グライダー』の世界観の要となっているのは、詞の所々にある『もういいの』というフレーズだろう。この五文字は物語の主人公である少女の心情が凝縮されたフレーズ。この部分の表現はレコーディングの際苦戦したと三人は語る。

切なく、儚げに語りかけたり、強がりを隠す言い方だったり、爆ぜる感情を解き放つ伝い方をそれぞれの箇所にて謳う。自分が最も印象深かったのが以下の箇所にある。



 誰よりもね きみの 理解者でいたいよ
 
 恋人より近い存在に 自分にいいきかせて 

 涙をごまかして 許していけるはず もういいの


 ―Run Girls, Run!『スノウ・グライダー』より引用

 

 

 前述にある爆ぜる感情を解き放った『もういいの』と謳うのがここの箇所。
ここは、厚木さんが爆ぜる感情を絞り出すように歌い上げているところに意外性という強烈なインプレッションを抱いた。

あくまで、コレは自分の勝手な所感でしかない事を先に書いておくが……
林さんと森嶋さんの声質は太い部類だと思っている。一方の厚木さんの声質は二人に比べると細い。

勿論、声質が太いから良い。細いから駄目なんてモノはない。

しかし、この楽曲のこの箇所では厚木さんの細い声質が少女の爆ぜる感情を表すのに最も適していたと……勝手ながら思ってしまうのである。


 RGR楽曲の中でも随一のネガティブで切なく儚い楽曲。
救いがない様に思えて来るが、ほんの少しだけ救いがあるワードがある。
それは、雪の色でありイメージの一つでもある『真っ白』だ。

これも、少女の心模様を表すワードで、ポジティブ=救いの要素だと思える。

白紙に戻してなかった事にする。逃げの様にも思えるがそれは未来の刻へ進む事でもある。故に、この楽曲は哀愁だけの楽曲じゃない。救いもあったのだと。

 

 

 

 

 結成二年、CDデビューから一年の刻が経った『Run Girls, Run!』がこれからの軌跡をこれまでと変わらず走り続ける事と、未知の領域にも果敢に挑む気概が込められたメッセージ。

表題曲の『Share the light』に、C/W『キラリスト・ジュエリスト』&『スノウ・グライダー』という形式ではあるが、トリプルA面として評しても何も問題がない楽曲それぞれの強さと貌は説得力がある素晴らしい名盤だと自分はこの作品から感じたのである。