巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

境界を超える謳のチカラーIDOLY PRIDE VENUS PARTY The Second DAY2参戦レポ

 逝きかけの記憶の糸をどうにか手繰り寄せ…8月12日に、パシフィコ横浜にて開催された『IDOLY PRIDE VENUS PARTY The Second』DAY2参戦レポを書き殴っていく。

 

 

 ちなみに、DAY1の参戦レポはこちら。

 

akatonbo02.hatenablog.jp

 

 このDAY2では、出演者が大幅に入れ替わっていた。
DAY1に出演されたTRINITYAiLEと、LizNoirから戸松遥さんはDAY2に出演されないとの事。(結城萌子さんに関してはDAY1参戦レポにて触れているのでここでは割愛する)一方で、kana役の田中あいみさんがこのDAY2に出演。

DAY1のLIVEをざっくり総評すると、グループ楽曲のみに絞ったスタンダードな奇を衒わない直球勝負。昨年のDAY1は、前情報の一切無い新曲披露というサプライズがあったが、今回は一切無かった。今ある楽曲で、それぞれが全身全霊を懸けたそのグループにしか出来ないパフォーマンスで観客の魂を掴んで魅了し熱狂させてくれた。

 それを踏まえての二日目。グループそのものがいなかったり、メンバーが全員揃わないグループもあって、前日の様な直球勝負の様なLIVEにはならない事は容易に想像できた。そこで何を魅せ付け、興奮し感動へと至るのか?そんなLIVEに参戦して感じたモノをこれから書き殴っていこうと思う。

 

 

 

 1.IDOLY PRIDE/星見プロダクション


 オープニングアクトでどんな奇襲攻撃をかまして来るかと身構えておったら、アイプラ楽曲において、正統派中の正統派楽曲である、本コンテンツの『アイコンソング』である聴き馴染みの深いイントロが聴こえて来た。

まあ、このDAY2はとんでもねぇLIVEになるのは確実だろうという覚悟で臨んでいた。 
激しい運動の前ってのは、きっちりとウオーミングアップしないと怪我の原因になる。それをLIVEに無理矢理当てはめると……激熱とまで行かなくても、軽妙かつポップなテイストで盛り上がれるこの楽曲で、徐々に雰囲気を肌で感じて声の調子も上げていく。それは、ステージの彼女達だけじゃなく、観客にも当てはまるのだ。
 
 正直な所、とんでもねぇってLIVEの幕開けに相応しい変態楽曲で来るかと決め込んでおったので、少々拍子抜けした感があったが…でも、この楽曲を初手で聴ける事への安心感もあった。昨年の『VENUS PARTY 』以来Zepp Tourでは披露しなかったはず…)ってのもあったからかも。

前述でも触れた様に、多くの人が聴き馴染んでいて、なおかつ、歌う星見の子達も付き合いが長い楽曲という事もあって、LIVEのどこの順番でも盛り上がれる楽曲だけれども…やっぱり、LIVEが開幕して最初に歌われるのが一番似合う気がする。
 

 

  

 2.パジャマパーティ/こころ×千紗×すず×雫


 ステージに四人の人影が見え、聴き馴染みの無いイントロ。いや…まさかねぇ。なんて訝しんでいる内に、ステージ全体が照らされて……豊崎愛生さん、高尾奏音さん、相川奏多さん、首藤志奈さんの姿がハッキリ分かると、客席の至る所から声にならない断末魔の様な叫び声が上がって膝から崩れ落ちそうになったのは俺だけぢゃないはず。

次は、そのまま他の星見の楽曲を続けて披露していくのか?はたまた、前日は月ストから始まったので今日はサニピが来るのか?何なら、前日は披露しなかったサニピの『EVERYDAY ! SUNNYDAY !』で来るんじゃねぇの?!なんて予想してたぐらいだ。そんな所にコレですよ。

 聴き馴染み無いイントロはどうやらLIVE仕様のヤツらしく、仕留め方まで徹底して拘ってると来たもんだ。もう、完全にLIVEの行方が予測不可能な領域に落とされましたwwww

 この楽曲は、可愛らしさの方向へステータスを全振りしたファンシー&キュートさ全開で、脳ミソを優~しく柔らかく蕩けるまで揉みほぐされていく様な究極のヒーリングソング。そりゃ変な声出るのは当然よ。この楽曲は二曲目に披露する曲ぢゃねぇwwww

脳ミソが目の前の状況を把握して処理する速度を超えて、ステージの四人はお構い無しにキュートなパフォーマンスを魅せ付け、この場の制圧にかかっておった。えげつないヒーリング効果抜群のメロディと四人の歌声。更に、ドレス形態になっている今回のLIVE衣裳と楽曲との相性が絶妙にマッチしており、視覚まで彼女達に魅了されて撃ち落された。

 このアクト、ここまででも充分にとんでもなかったんだけれど…一番とんでもなかったのは、夏川椎菜さん(すみれ)がいなくてこのパフォーマンスを成立させ魅了したという事。夏川さんが加わってフルメンバーでこのアクトを観たら、魂が本当に逝ってしまうかもしれないと戦々恐々してたが、同時に、フルメンバーのアクトを観たいワクワク感も抱いておった。

 

 


 3.drop/兵藤雫


 ステージに立つ首藤さん、客席に灯る雫のイメージカラーである緑の光。そして、イントロと雫の口上。もう、コレに耐えられる涙腺が俺には無かった……まさかソロの一番手でこの楽曲を披露するとは思っちゃいなかったから余計に感情が揺さぶられたのだと。

 LIVEのセットリストには、いくつかの決め所というのが存在する。このLIVEに関して言えばはおそらくこのアクト。予想外の奇襲と称しても過言じゃなかったここまでの流れ。意表を突くという点に関しては満点だっただろう。

問題はそこから先へちゃんと繋げていけるかどうかだ。それを切り拓いていく役目を、運営は兵藤雫と首藤志奈に託した。勝手な推測の話だけども、ステージに立つ首藤さんも相当なプレッシャーを背負っていたのは想像に難くない。

 それでも…雫と首藤さんは勇気を振り絞ってステージに立っていた。緑の光で応援してくれる観客が受け入れてくれる事を信じて。そんな彼女達の想いとPRIDEに応える為の答えはコレしかないだろう。雫と首藤さんがステージで戦う姿を絶対に見放さない事と歌声を聴き洩らさない事だと。

 全体が大人しくなり過ぎず、かと言って激しく主張もしていない絶妙な曲調に、語りかける様に歌う首藤さんの歌声はどこか楽し気なモノに聴こえた。それは、彼女が心の底からLIVEを楽しんでいたからだろう。その中心に立って、その状況を楽しめる。自分が心の底から楽しまなければ、人を楽しませる事なんて出来ないから。

雫がアイドルに憧れて楽しんでいた様に、今度は雫がアイドルを楽しんで観客を楽しませる。かつて夢を嗤う人の業に悩んで、自分の感情と戦って来た彼女がそれをやってのけている現実がステージにあった。実際のステージで躍動しているのは首藤さんだけども、その傍らに雫も一緒にいた。

 それこそ雫が過ごして来た全ての刻が報われ、涙が出そうになるのを堪えた……感傷に浸って泣くのではなく、今の雫と首藤さんの魅せるパフォーマンスを目に焼き付けた。言うまでも無く、LIVE序盤の決め所はきっちり決まった。
 

 

 

 4.voyage/佐伯遙子


 『drop』で涙腺ガバガバに緩んだ所に、これまた涙腺決壊楽曲が来てしまった……でも、この楽曲は、今回のLIVEで聴きたかった一曲だったからこの涙は歓喜の涙だったりもするのよね。

沁み入る様に聴かせていく系統の楽曲なので、歌っている佐々木さんも激しい動作は無い。だからこそシンプルに歌唱力が問われる。(誤解を招くとマズイので言っておくが、ダンスの激しい楽曲が歌唱力を一切問わないって事では無い)

聴く者に寄り添い、優しく励まして支える応援ソング。何かの力をもらえる『アンセム』でもあり、魂を癒され救われたり、刻の流れに身を委ねる壮大な楽曲……聴けば聴くほどに、本曲が持っている深みへと誘われていく。その中心にいるのが、遙子と佐々木奈緒さん。

良い事も悪い事も…全てがあって今がある。佐々木さんの柔和で温かい歌声の内に秘めている熱い想いは、アイドルとして生きる事を諦められなかった者の意地と生き様もそこにはちゃんと乗っかっていた。まるで、特定の誰かに歌声が届けと。境界を超えた遙か遠くまで……そして、境界を超えて繋がる奇跡が起こった。


 ―ねぇ、麻奈ちゃん。聴いてる?私は今でも歌っているよ。

 

 正確な言葉ではないかもしれないが……間奏の所で遙子が麻奈に向けて語りかけた言葉。
コレを聞いた時、身体の力が抜けて涙腺が臨界点を超えた……ダメだよ遙子さん。それは本当にズルい言葉ぢゃないの……

きっと、遙子は感じていたのかもしれない。長瀬麻奈が遙子のステージを観に来ていたと。『今』の自分を観て欲しい、歌を聴いて欲しいと願い遙子は歌った。麻奈は、誰よりも遙子がアイドルとして成功を掴む事をずっと信じていた。遙子が麻奈の背中をどれだけ離れてしまっても見失わず追っていた様に、麻奈も遙子をちゃんと見ていてくれた。もしかすると、麻奈も一緒になって歌っていたかもしれない。遙子と一緒にステージで歌う事は、麻奈が果たせなかった夢だろうから……

 このアクトでは、遙子の傍らに麻奈の魂が寄り添っていた。実際の所、麻奈の姿が明確に見えたワケじゃないしスクリーンにも映ってもない。コレは各々で麻奈の存在を感じろと言うしか出来ない。

LIVEという場と刻は、人の想いが集約されて様々な奇跡が起きる所だと自分は思う。今、思い出しても至福の刻だったなと。

 

 


 5.つながる心Binary/白石沙季×白石千紗


 お揃いのカチューシャをつけて、宮沢小春さんと高尾奏音さんがステージIn。
そのカチューシャをつけようと提案されたのは宮沢さん。Zepp TourのFINAL(昼公演)で、この楽曲を歌った時も、宮沢さんはお揃いのイヤリングをつけようと提案され、それをつけて二人はステージに立った。

歌える機会が限られてる姉妹のデュエット楽曲を歌うのなら…沙季と千紗の魂をきっちり宿さなければならない。そして、一緒に歌う高尾さんとも繋がりたい。そうしなければ、この楽曲にちゃんと血が流れないと宮沢さんは感じていた。それらは、この楽曲を歌うにあたって必要な“儀式”なのだ。

 雫と遙子のソロ楽曲で、涙腺が完全決壊した所に…今度は、ナチュラルな可愛らしさと純然さを纏っている尊い楽曲を差し込まれる。もう、情緒が行方不明になってしまった……そうなってしまうのは、この楽曲が一括りで語れない楽曲だから。


 ありがとうの 言葉寄せて

 しあわせ全部 分かち合って

 勇気に変えよう ここから


 ―白石沙季×白石千紗 『つながる心Binary』より引用

 

 Cメロ(だと思う)の、ここの掛け合っていく様に歌うパート。このアクト…いや、LIVEでこの楽曲をこれまで聴いた中で今回一番インパクトが強かった箇所でもあった。高尾さんが主張して力強く歌えば、宮沢さんは更に主張して歌う。二人の歌声はクライマックスに向けて力強くなっていく。

 沙季が千紗を照らして来た様に、千紗も沙季を照らして来た。これまで紡いできた物語、貫いて来た生き様、姉妹の絆、解き放たれた『我』。LIVEで聴く度に感じるが、沙季と千紗は思いの丈をパフォーマンスに乗せて姉妹喧嘩をしている。そこには一切の遠慮が要らない彼女達だけの掛け替えの無い刻と場。沙季と千紗に寄り添って駆けて来たからこそ歌える歌があった。
 

 

 

 6.君がのぞくレンズ/長瀬琴乃×伊吹渚


 情緒が行方不明になっておったが…この楽曲が来て、橘さんと夏目さんがステージに登場すると何とも形容し難い安心感が得られた。いろんな方向に入れ替わったギアがようやく本来の位置に戻ったからなのだろう。(※あくまでも個人の感想)

えげつないヒーリング効果も無ければ、涙腺が完全に緩む楽曲でもないし、尊さの暴力で打ちのめされるモノでもない。気持ちいい位に真っ直ぐな友情を謳ってシンプルに盛り上がれる楽曲が来るとやっぱり安心するものだ。

 明瞭で力強い橘さんの歌声は、琴乃のまっしぐらに前へと突き進んでいく潔さと強さがあり、柔和だけども秘めた力強さのある夏目さんの歌声は、渚の他者を支えたいという想いに溢れたモノであり、思い込んだら強引に突っ走る強さも感じられた。

この楽曲のキモになっていると自分が思っているのは、橘さんと夏目さんが爆ぜる感情で聴かせていくハーモニーの力強さ。BIG4編を経て互いにあらゆる困難と苦悩を乗り越えた事、更には琴乃と渚の過去編という要素まで加わっている。琴乃と渚が培って来たモノをしっかりと継承して、昇華へと至る。言わずもがな、Zepp Tourで聴いた時よりも進化していた。

 全ての楽曲に言える事だが、本当に、一回一回で違う楽曲に仕上げていってる。ある意味、上書きされて完成形へ近づけてるというか。この楽曲は今でもLIVE映えしているが、もっと映える楽曲へと持って行って欲しい。

 

 


 7.ひと夏の永遠/早坂芽衣


 『もし恋』早坂芽衣編のTRUEエンディングテーマ楽曲であり、芽衣のソロ楽曲。
この楽曲も今回のLIVEで披露されるだろうなと多くの人は思っていただろう。そんなこんなで、日向もかさんがステージに登場して歌い出した瞬間……


 早坂芽衣がステージに顕現していた。

 
 確かに、ステージ上でパフォーマンスしているのは日向さんなんだけど……彼女の傍らにいるというよりは、もう芽衣の魂と同化している様な存在感がとても大きなモノとなっていた。

芽衣が日向さんに寄って行ったのか?或いは、日向さんの方から芽衣へ寄せていったのか?その明確な答えは、日向さんと芽衣にしか分からないのだろう。とにかく、双方の境界が曖昧になっていって、彼女達の存在が共存されていた様に感じてしまった。おそらく、コレは音源のみでは体感出来ない感覚だと思える。

 夏の清涼感と、どこか甘酸っぱさのあるノスタルジック感が堪らない楽曲。
そんな楽曲の世界観を日向さん=芽衣の純情可憐でそこはかとない色香を纏った歌声が見事に混交していって、もし恋の芽衣編の舞台になっている田舎の夏景色が情景に浮かんで来た。天真爛漫で溌剌な『もし恋』内の芽衣が本当の恋を知っていって変わっていった過程と心情描写が見事に歌声へ乗っかっていた。

 楽曲が持っている力の強さは勿論あるが、それを巧みに引き出して会場の雰囲気を創造し、観客の魂を引き込んで魅了させるには歌う者の力が必要不可欠。このアクトで魅せた早坂芽衣の新しい一面と、それを見事にステージで表現した日向もかの個の力の凄さに改めて舌を巻いた。

 

 


 8.星屑カンパネラ/成宮すず


 ステージに単身立つ相川奏多さん。この流れはまさか?!と期待に胸躍らせてると……初めて聴くイントロが流れ出した。(この辺りの流れは記憶に無いので違ってる可能性大)

 

 な、なにぃッ!!すずのソロ楽曲だとぉッ!!!!!

 

 コレは完全にやられた……でも、星見の10人全員にソロ楽曲が出来た事は本当に喜ばしいモノだ。そんな刻と場に立ち会えたってのもエモーショナルじゃないか。すず以外の9人のソロ楽曲は、どれも音源が発表されてからLIVEで披露されて来た。ところが、すずの場合は未発表のままで、この日に完全な初お披露目となった。そりゃ驚くってもんでしょう。

 そんなめでたい場面だが…そう喜んでばかりもいられない。(んな事考えてるのは俺だけだろうなww)未発表の新曲をいきなりやるのはハイリスクな賭け。この場面ですずのソロ楽曲が響かなくて雰囲気が微妙なモノになってしまったらこのLIVEは死ぬと言っても過言じゃない。すずと相川さんに掛かるプレッシャーはとんでもない重さだったはず。

ただ…そのステージに今立ってるのは誰だ?そう、成宮すずと相川奏多だ。どんなプレッシャーを受けても、すずは「かましてやりますわよ!」なんて言い放って、相川さんは「私は緊張なんてしない」と豪語される人だ。もう面構えと度胸が違う。

 で、すずのソロ楽曲なんだけども……完全な初披露で曲調や歌詞を正確に憶えられるほど俺の脳ミソは出来が良くないwww楽曲のインプレッションはもの凄くざっくりしたモノになるが……ド直球で正統派を往くアイドルソングかなと。すずと言えば、芽衣同様に良く動くキャラクターであり、楽曲の方にもその要素が織り込まれていた様に感じた。

そして、客席を彩っていったすずのイメージカラーである黄色の光に照らされ、躍動して燦然と輝く相川さん。その輝きはまさしくファンタジスタ(多芸多才)。局面が難しければ難しいほど、彼女はより強い輝きで魅了していくのだと。いや、本当にこの子凄ぇわ……って言葉が漏れてしまった。

 俗に言う、成宮すずと相川奏多に魂が持っていかれた感じか。

 

 


 9.shiny shiny/早坂芽衣×成宮すず


 ソロ楽曲を見事に歌い終わった相川さんに駆け寄る感じで、日向さんがステージIn。彼女達が揃って歌うのはこの楽曲しか無い。芽衣→すずのソロ楽曲から繋がって来ての…このデュエットに至る。

明るく元気にはっちゃけていく日向さんと相川さんの歌声とコミカル&キュートなダンスの両方から楽しさを全開で感じられた。個々でも充分強いが、やっぱり二人が揃った時の安心感と安定感には本当に感心させられる。

 何と言っても、この楽曲のキモになっているのはラップパート。ここをバッチリとカッコよく決めていく事で、コミカル&キュートさがもっと映えていく。このパートは、どちらかが突っ走って主張し過ぎても駄目だし、黒子に徹し過ぎてもいけない。そこの見極めが肝心なのだ。

日向さんと相川さんはその辺の見極め方に優れた資質を感じる。そして、彼女達の付き合いの長さもそこにはあって、互いの事を分かっているからこそ出来るパフォーマンスの掛け合いと駆け引きがある。縁の繋がりの強さがあってこそ出来る意地の張り合いがあった。どこまで突っ走れるか?ついて来れるのか?私の方が輝いてるんだけどそっちはどうなの?…と。

 でも、そこにドロドロとした負の感情は一切無かった。それは、日向さんと相川さんがこの『競演』を心底楽しんでいたからだろうなと。彼女達のポジティブな想いと魂がこちらにも熱として伝わって、観客も全力で楽しめたからこそ、熱狂溢れる雰囲気になっていった。

 これからも、LIVEで披露される機会は多くなっていくと思うが、その時々でどのように日向さんと相川さんの成長したパフォーマンスで魅せてくれるのか楽しみで仕方がない。

 

 


 10.天使と悪魔/赤崎こころ×kana


 突如として流されたボイスドラマ。その声の主は赤崎こころとKana。
その話の内容は、どのアイドルのデュエット楽曲が見たいか?というアンケートの結果で。こころとkanaの組み合わせへの票が1位を獲得。で…二人によるデュエット楽曲をこれから披露していく事も告げられた。

ここでの二人のやり取りは、表向きは仲良しアピールしているが、裏では……みたいなヒリ付き感駄々洩れなやり取りしてて、彼女達の底の見えなさと曲者感が遺憾なく発揮されてて非常に面白かった。まあ、この組み合わせはいつか実現するだろうと思っておったが、いざ来ると普通に驚くよな。まさに悪魔合体と言っても過言じゃなかったwww

そんなこんなでステージには、こころ役の豊崎愛生さんとkana役の田中あいみさんが登場。
一筋縄ではいかないこの二人が歌う楽曲だ。分かり易い楽曲のワケがないと戦々恐々としてたし、どんなモノを魅せ付けてくれるのか?って期待感も同時に湧いていた。
  
 この辺の所感は、かなりざっくりしたモノになってしまうが……前述でも触れたこころとkanaの一筋縄ではいかないパーソナリティが見事に反映されている楽曲というインプレッションを抱いた。小悪魔的なあざとさがあるけれど、どこか易々と掴ませない様なミステリアスな部分も垣間見える。

ちなみに…この楽曲における天使はkanaで悪魔がこころとの事。この楽曲のキモになっているのは、彼女達の極端な部分を押し出して共存させない点だと考える。そして、その役割が入れ替われる事もある。他のデュエット楽曲は、競う合う部分はあるけれど基本的には共存する形に落ち着く。

ところが、この楽曲は、どちらかに寄り添い引き立たせようなんてモノはないwwどちらかがより主張して目立てるかに彼女達は全身全霊を懸ける。こころがあざとい可愛さを見せれば、kanaはミステリアスな部分で魅せ付け……その逆の要素へ入れ替わっても魅せれる。

 完全にこころとkanaの掌の上で言い様に転がされ、また情緒が行方不明になってしまった…
この楽曲を受け入れるには、人類にはまだ早すぎたという事なのか?見事に魂を鷲掴みされただけでなく、握り潰されて落されてしまった。完敗だ……

 

 


 11.Just keep looking at me!/kana


 もしかしたら、kanaのソロ楽曲が来るんぢゃねぇの?なんて予想しておったら…本当に来てしまったww楽曲タイトルの『Just keep looking at me!』の訳は、私を見続けろ!との事。

意味的には、franのソロ楽曲『CHOOSE ME CHOOSE ME』(訳:私を選べ)と相通じるモノを感じるが、完全に一致しているモノではない。franの自己アピールは表現の世界に限定され、そこで生き残ろうとする生存本能から発せられてるモノだと捉えている。

一方、kanaの「私を見ろ」はその範囲が広大だ。四の五の言わずにとにかく「私を見ろ」と叫び続けている。その根底にある想いは、ずっと多くの人に見られ続けていれば、いつかは大切な人(父親)にも自分を見つけてもらえるという希望を抱いている。


故に、このkanaのソロ楽曲は、彼女の純然な想いとPRIDEに満ち溢れている。(と、思う…)


 今回はⅢXではなく、kanaとして単身この戦場に臨む形になった田中さん。
そんな彼女に与えられたミッションはどれも困難なモノ。こころとのデュエット楽曲にソロ楽曲の披露と新曲をいきなり披露する展開に。しかもソロ楽曲の披露は、多くの人が予想していた事から期待値のハードルはどうしたって上がる。そんな中でパフォーマンスをする田中さんの心中は、いろんな意味でまともな精神状態じゃなかったと勝手に思う。

彼女に出来るのはkanaの魂とPRIDEを宿してステージに立つしかない。kanaだったら、どうやって客席を爆盛り上がりさせていくか?彼女が導き出した答えが、初見にも関わらずサビで客席に向けてレスを求めた事だったのかもしれない。

それは、この楽曲の構成が激熱までいかなくても、ノリ易くて盛り上がれる系統ってのが田中さんの頭にあった。その可能性に田中さんは懸けたワケだ。歌詞にある「全然足りない」ってのは、お前らの熱が全然足りねぇ!もっと熱いのをよこせ!とkanaがこちらの熱を煽っている様でもあった。

 まあ、マイク向けられたら、脊髄反射でコールしちゃうんだよ。そういう風にもう我々の身体は出来ているのだから。それでも、あの場と刻の熱を引き出して熱狂的空間を創造していった田中さんには、コンダクター(指揮者)としての支配力とパフォーマーとしての強さがあった。

 

 


 12.恋心 ああ無情/こころ×kana×愛×葵


 この楽曲における本来のメンバーは、こころ、kana、愛、優、すみれの五人。
しかし、このLIVEでは、優(麻倉さん)とすみれ(夏川さん)は出演されていないので、前述した三人構成で披露するのかな~なんて思っておったら、ステージ上に一人いるんですよ。


 ん?……あれ?!何で高垣さんがいるのよ!って叫んだwwww


 まあ、すぐには状況を飲み込めなかった。そもそも、葵(高垣さん)とこの楽曲との相性が未知数過ぎて、良くも悪くもどんな化学反応を起こすか全然読めないってのがあったのよ。このDAY2はそんなんばっかぢゃねぇかwwwと、そんな慌てふためくおっさんを置き去りにしてLIVEは容赦無く進行していく。

 LIVEのみの限定ユニットとは言え、葵がこのトリッキーでエキセントリックな楽曲を歌うのはまだ理解が追いつけなかったが、実際聴いてみると、意外とすんなり入って来てコレはコレで有りだなと感じられた。葵だったら、こういったちょいとトリッキーな恋愛ソングはこう歌うんだろうなってのを、高垣さんは実践されたのだろう。その適応力と表現の引き出しは流石だなと唸るばかりだ。

 それぞれが自由奔放に躍動して盛り上げていくこの楽曲。印象的だったのは、サビでの地団駄踏んでる様な振り付け。その仕草が某芸人の一世を風靡したギャグ(そんなの○○ねぇ!)をモチーフにしたのかどうかは分からんが、とにかく全力感が出てて非常に面白かった。昨年は初披露でもあったし、トロッコの演出があったから振りはよく分からんかったがコミカル要素もこの楽曲にはあったのかという新たな発見でもあった。

 ユニットのメンバーが揃わなくても、誰かを突っ込んでみて未知の化学反応を起こして楽曲の秘めた領域を引き出す。コレもまた楽曲を成長させる事でもあり、意欲的なチャレンジだなと感心させられた。LIVE演出の手札が増えるってのは強さに繋がる事でもあるから。

 


 13.Slurp It Up/小美山愛


 小美山愛のソロ楽曲。コレも今回のLIVEで披露されるだろうなと思っていた楽曲。寿さんは、愛のBirthdayガチャで獲得できる「ツインテリング」をされていた。

愛の好物であるラーメンと、彼女がアイドルとして生きるエンターテインメントの世界をかけている変化球的なテーマだが、曲調は愛の純粋で素直なパーソナリティをダイレクトに盛り込んでいて、清々しい程に真っ直ぐなアイドルソング。ダンスの振りも独特で、ラーメンの湯切りをする仕草や丼持ってラーメンを啜る仕草もあり、観て楽しいし、曲調もポップで明るくてノリ易いので、まあ、盛り上がったわね。(語彙力どこ行った…)

 そもそも、楽曲そのものが盛り上がれるテイストでLIVE映えするだろうなってのは言われておった。実際、ちゃんと楽しめて盛り上がれたのは言うまでも無かった。ステージに立って歌っているのは寿さんだけれど、愛も寿さんの傍らでちゃんと楽しんで歌っていた。

愛にとってラーメンとアイドルは大好きなモノの象徴だと思う。そんな想いが詰まった楽曲を歌えるってのは何にも代え難い喜びだろうなって。愛の『大好き』という純然な想いと魂を、彼女の身体と心でもって歌声とダンスで解き放つ。人の『大好き』に触れられるのは本当に素晴らしいモノだ。

彼女は、自己肯定感の低い子だと思う。特別な才能やセンスのあったエリートでもなかったし、アイドルの軌跡も順調なモノじゃなかった。でも、貫き通して来たのは、諦めて立ち止まる事が無かった事だ。そんな子が明るく楽しい楽曲をアイドルとして観衆の前に立ち一人で歌っている。愛の全身全霊で楽しんでいる姿には、魂を揺さぶられないワケがなかった。

 アイドルの物語と生き様も、楽曲をより引き立たせる最高の調味料だと。

 

 


 14.スフォルツァート/井川葵


 ステージに高垣さんが現れた瞬間、彼女から何かが漲ってる『気』を感じた。直感で何となく悟ったワケだ。こりゃ、とんでもねぇモノがこれから来るぞって緊張感が走る。こちらがたじろいでしまう程に高垣さんに呑まれていたと言っても過言じゃなかった。

 歌い出した瞬間、そのとんでもねぇ予感は現実のものとなって襲い掛かって来て、戦慄し身の毛がよだつ様な感覚にみまわれて鳥肌が治まらなかった……この楽曲は葵のソロ楽曲。葵の中の人である高垣さんの歌唱力は一旦置いといて…葵と言えば、ダンス特化に振り切れたアイドルと言うイメージがどうしてもついて来る。

ただし…この楽曲はそうじゃない。ダンサブルな楽曲じゃなくて完全に高垣さんの方に寄せた……魂の絶唱でぶん殴る楽曲だなと。音源の段階でそう思ったんだから、実際のLIVEではもっととんでもねぇモノで殴られるのは確定事項だ。これまた情緒が行方不明になるヤツである。

でも、ここまで歌の方へ特化させたのは、葵の秘めた激情の表れなんだろう。ダンスで自己表現しては来たが、ダンスだけで鬱積した数多のモノを完全に解放出来るワケじゃなかった。特に、最新のストーリーでの葵の心情はまともな状態じゃないってのもある。高垣さんはそんな葵の想いも背負っていたのだろう。

 最初からクライマックスと言わんばかりの迫力と凄みが歌声に宿っていて圧倒されたが…サビでの血の流れる魂の絶唱がまたとんでもなかった。戦慄して鳥肌が立つマイナスのパッションと、内から燃え滾って来るプラスのパッションが同時に湧き上がって来た。あまりにも凄すぎて変な笑いまで込み上げてた……

当然と言ってしまえば当然なのかもしれないが、歌声の力でその楽曲の力というモノも変貌を遂げるんだなと強く思い知らされたアクトになった。音源のみで聴いた時も激熱な楽曲だと思っていたが、LIVEで聴き自分が想像した以上の圧と強さをもった楽曲だと知った。

 それを引き出して証明してみせた高垣彩陽の有無を言わせない説得力、表現力……最前線で戦う表現者の凄みが溢れ出ていた。

 

 


 15.SUNNY PEACE for You and Me!/サニーピース


 歌い出しの「SUNNY PEACE for You and Me!」からの…会場に轟くWow Wouの大合唱。
サニピの集大成となる楽曲であり、『アンセム』でもある楽曲。この楽曲の強さは彼女達がLIVEで歌う度にどんどん進化して強くなっていった。
 
ただ、くどい様で本当に申し訳無いが、今回のLIVEにおいてこの事について触れないといけない。それは、このLIVEには怜と結城萌子さんはいないという事実。そこに一人いない。サニピのPEACEは欠けた不完全な状態でここに来ている。当然、彼女達は全身全霊でパフォーマンスするし、実際そうだった。それでも一人いない現実は曲げられない。

 それでも…さくらと菅野さん、雫と首藤さん、千紗と高尾さん、遙子と佐々木さんには届けたい歌があった。姿は無くとも怜と結城さんへの想いを背負って歌う事、会場に来てくれた観客を楽しませる事。寂しいという感情を抱かせてしまう事は置き去りにしてしまう事を意味している。それは、繋がるって事をアイデンティティにしているサニピの信念に反するモノだと。


 この指止まれ!

 隣の笑顔 寂しい顔も 繋がればほら幸せ!

 SUNNY PEACE for You and Me!

 世界中が輝きだす 響け! このハーモニー

 ―サニーピース『SUNNY PEACE for You and Me!』より引用


 何度聴いてもこのサビのフレーズには、魂が滾って来る衝動が湧いて来る。
掲げた指に止まれないのなら、彼女達の方から出向いてでも止めようとする。でも、負の感情に苛まれた人には指を掲げて待っている彼女達の存在自体がどこで待っているか分からない。

そこで必要なのが、圧倒的な輝き。彼女達の輝きはそんな人達を導くモノになる。確かに、一つの輝きはあの場には無かったけれど…物足りないという印象は全く感じられなかった。この逆境が四人を更に強くしたのだろう。絶対に繋がってやるという意地が四人の限界領域の壁をぶっ壊した。そして、この『アンセム』に新たな血が流れてもっと強くなった瞬間でもあった。

 

 


 16.Hi5でピースサイン!/サニーピース


 サニピブロックのLAST SONG。サニーピースの『これから』の旅路を往く為の『アンセム』。
この楽曲を、DAY1同様サニピブロックの締めに持って来たのは、やはりこれからのサニピの物語を紡いでいきたいモノとして外すわけにはいかない世界観があるのだろう。

DAY1のレポの方にも書いたが、『星空編』でサニピは、グループの危機が訪れる挫折の物語が描かれると思われる。具体的にそれが何なのか?ってのはいろいろな要素があるが、彼女達の中の何らかのズレがあって互いの想いがすれ違っていき、全体の不調に至ってしまう…みたいな。

この楽曲の歌詞に感じられるどこかネガティブな要素は、繋がりが近すぎる為に感じられなくなってしまった事を想起させる。それは、何か大切なモノを見失って行き詰まる事でもある……そんな時だからこそ、初心に立ち返って奮い立たせようとする『アンセム』としてサニピは歌う。

 今回のLIVE。ゲームリリースから三周年記念となるLIVEだ。個人の主観だが、三年という年は節目の年だと思っていて、更にはTVアニメにて、サニピが結成される物語が描かれたのも三年前だ。この節目のタイミングだからこそ、グループとしての初心、原点に立ち返る意味を持つこの楽曲をサニピのLAST SONGに据えた。

 何故なら、そうしないとサニピはこのLIVEでちゃんと戦う事が出来なかった。たとえ何度躓いて転んでも諦めない。迷わない。みんなと一緒なら、きっと明るい方へ歩いて行けるから。そんな願いを込めてサニピは歌ったのだと。

 

 


 17.最愛よ君に届け/月のテンペスト


 すずは言った。『あの曲』のセンターの座だけは誰にも譲れないと。
『あの曲』とは……これから五人が歌う『最愛よ君に届け』の事である。琴乃が一時的にとは言え、月ストを脱退していた時に作ったこの楽曲に、彼女は並ならない想いを抱いている。すずの、この楽曲への譲れない想いと覚悟を充分理解した上で敢えて言いたい。


DAY2の『最愛よ君に届け』は、長瀬琴乃と橘美來が全部持って行ったと。


 知っての通り、この楽曲は琴乃のソロパートは一切無い。それは、ストーリー上で彼女が月ストに居ない時期に作られたという設定だからだ。自分がこれまでLIVEで聴いて来たアクトでも、琴乃の歌声が表に出すぎて主張している印象は受けなかった。

だが、この日のアクトは違った。沙季と宮沢さん、芽衣と日向さん、そして、この楽曲のキモとなっている渚と夏目さんのソロ、すずと相川さんのソロまでもが霞んでしまう位に、琴乃と橘さんの歌声の力が凄まじかった。特に、サビでの彼女の歌声がとんでもなかった。まるでそこだけ琴乃のソロなんじゃないかと錯覚するほどに……

 伝えたい想いを言葉で尽くすのではなく、アイドルならパフォーマンスで証明してみせろとすずは琴乃に言った。そして、琴乃は抱えている数多の感情と、ここから未来の刻へ向かって突き進む意志をパフォーマンスへ込めた。この時の琴乃と橘さんは限界を超えた『Zone』の先の領域に踏み込んだんだろう。そうじゃないとあんな歌声で歌えない。まさに、血の流れる魂の絶唱だった。

勿論、橘さんだけが目立っただけじゃこのアクトの意味を成さない。彼女の剥き出しの想いと魂は、四人にもきっちり伝わっていって互いのぶつかり合った情熱が、大きな嵐となって更なる熱狂を巻き起こす。

 すず、渚、沙季、芽衣だけの『アンセム』でもなく、琴乃だけの『アンセム』でもない。月のテンペスト五人全員にとっての『アンセム』なんだと改めて思い知らされた。

 

 


 18.月ノヒカリ/月のテンペスト


 『最愛よ君に届け』が生み出した嵐が去って……柔和で沁み入る様に響くイントロは、まさしく『月のヒカリ』を彷彿とさせた。強い輝きだけど、どこか優し気でしなやかな柔らかさもあるヒカリだ。

DAY1で観た時も、凄く目を惹いて魅入られるパフォーマンスだったが、このDAY2ではより洗練されていた様に感じられた。一度実戦で披露して見事にやり遂げたってのが大きな安心感になって自由で伸びやかなパフォーマンスになっていた様に思える。そして、何よりも…五人が本当に美しかった。

 五人の内側から滲み出て来た美しさは、ダンスのしなやかさや力強さだったり、歌声の質にも出ていて、そこに余計な緊張感や力は入っていない。まるで、あらゆるしがらみから解き放たれた様な奔放さ……ここまで人は解き放たれた動きや歌声で歌えるのかと、ただただ感心して聴き入っていた。

月ストが紡いだ物語。その軌跡の一つの到達点に『月のヒカリ』があると言っても過言では無い。彼女達の純然な想い、覚悟、生き様、絆、アイデンティティ、PRIDE……月ストの全てを背負う楽曲へと昇華された。

 大変な事やキツかった事もあったが、一つとして無駄なモノじゃなく、全ての出来事が今の彼女達の力と強さになっている。どちらに進めばどういう道があるのか、そもそも道があるのかどうかも分からない。でも、進んでいかなきゃいけなかった彼女達が、踏み出す勇気を出して進んだから今があるのだと。

 夜空の闇があるからこそ、月のヒカリの輝きはより美しくなって闇を照らしていく。そのヒカリに魅せられた視線の先には、本当に、心からこの楽曲をモノにした月のテンペストの五人の姿であった。

 

 


 19.song for you/長瀬琴乃×川咲さくら


 『月のヒカリ』の余韻に浸ってまったりしていた所に響いたイントロ。そのイントロの楽曲を認識できた瞬間、背筋に電流が流れた様な感覚になって、「へっ?嘘だろ?この楽曲歌うのか……」って思わず声出て、身体の力は抜けて膝から崩れ落ちた……


そして、俺の涙腺の臨界点が壊れた……


 ステージには、橘さんが登場して歌い始めていた。ただ…同時に違和感を感じた。客席から見て上手側(右)から橘さんは登場されてそのままセンターで歌うのかと思っていたら、センターへは移動せず出て来た位置で歌っていた。センターを敢えて空けてるのは、麻奈(神田沙也加さん)が真ん中にいるって事なのかなって。そして、二番に入った瞬間にとんでもない光景を目の当たりにしたんだ…

 
 下手側に設置されていた階段の最上段を橙色の照明が照らし…その光の下に立っていたのは菅野真衣。彼女の姿が見えた瞬間……


俺の涙腺が第二次臨界点を超えてしまった……


 こんなのダメだろ……あくまで私見の域だけど、LIVEでこの楽曲を披露する上で大事な三つの要素が全部揃っちゃったんだもの。泣いたというかは、自然と涙が溢れ出ていた。

さて、その三つの要素とは何か?まず一つ目は、琴乃と橘さんか、さくらと菅野さんのどちらか一組が歌う事。二つ目は、麻奈と神田さんを感じさせる空間を設ける事。最後は、前述に挙げた二つの要素が全て揃う事。と、まあ、見事に揃ったワケだ。

 ちなみに、俺の記憶が確かなら菅野さんがアイプラLIVEで麻奈の楽曲を歌うのはコレが初めてのはず。実際のやり取りがどうだかは分からんが、これまでのLIVEで歌う機会を設けようと、菅野さんに振ったとは思う。でも、彼女は首を縦に振らなかったのか、そもそも話を持ち掛けなかったか。俺は、話を振らなかったと思っている。

菅野さんに麻奈の楽曲を歌わせるのは簡単。業務命令と称して強引に振ってしまえばいい。ただ、大昔ならいざ知らず、今の時代でそんな強引極まりない要求が通るワケ無い。それに、強制されて歌った楽曲に血は流れないし、それを聴いて感動は出来ない。

これまでそうしなかったのは、菅野さんの意志を尊重して来たからだろう。本当に彼女が麻奈の楽曲を心の底から歌いたいと願い出る刻を待っていた様に思えるし、あるいは、話を振って菅野さんがちゃんと納得して承諾する刻まで待っていた。

そんな菅野さんが想いを覚悟を背負ってステージに立って歌う。誰にも出来る事じゃない……それをやってのけたんだ。コレが泣かずにいられるか……

 そして、橘美來さん。貴女も本当に凄い人だ。菅野さんとは逆に、彼女は麻奈の楽曲をLIVEで何度か歌って来た。麻奈と神田さんが大切にして来た想いとPRIDEが込められた楽曲を歌い継ぐ事は、並大抵の覚悟じゃないし、ましてや簡単に出来る事でも無い。彼女の決断も間違いじゃない。誰かが歌い継がなければ楽曲も朽ちて忘れ去られてしまうのだから……

琴乃は言った。今もまだお姉ちゃんはステージにいて感じられて、歌えばきっと想いは伝わると。麻奈の遺志と楽曲を歌い継ぐ琴乃。受け継いだ歌声じゃなく自分の声で歌ったさくら。長瀬麻奈と神田沙也加へ贈る歌としての説得力がステージにはあって表現を超えたありのままの感情を剥き出しにして魂が震えた。そして、琴乃とさくら、橘美來と菅野真衣の歌声は、境界を超えて繋がり……


 血が流れる魂の絶唱へと昇華していった。


 琴乃とさくら、橘さんと菅野さんも、いろんな事を乗り越えて来たから今がある。
そんな自分達が成長した晴れ姿を見て欲しい…麻奈と神田さんに届けと願い、全身全霊を懸けて歌った。そんな彼女達の絶唱を、麻奈と神田さんはきっと見てくれて聴いてくれたと思わずにはいられない。何なら、彼女達と一緒になって歌っていたかもしれない。多分、麻奈と神田さんならそうしただろう。

 橘さんと菅野さんが歌い終わっても、現世に魂は還ってなかった。本当にとんでもねぇ刻と場にいたし、その余韻に浸っていたかったのだと。正直、いくら言葉を尽くしてもこの奇跡のアクトを称賛出来る言葉は出て来ない。ただ……最大の敬意と感謝をもってこの言葉だけは贈りたい。


 歌ってくれて、本当にありがとう。

 

 


 EN1.Shine Purity ~輝きの純度~/星見プロダクション


 自分がこの楽曲をLIVEで聴くのは二年前の立川以来か。
このコンテンツにおける原初の楽曲。あれから刻が経つに連れて、多種多様な魅力溢れる楽曲が増えて来た。

楽曲が増えれば増えるだけ、LIVEで披露出来る楽曲も減る。それには公演時間の関係や、セットリストのテーマに合わないとか様々な理由がある。ただ、その事について批判しているワケじゃない。コンテンツの歴史が進めば、いつかはそういう機会が来るのは必然な事で喜ばしい事でもある。

それはさて置き…『song for you』と同様に、この楽曲も今回のLIVEで聴きたかった楽曲だったので、イントロ聴こえた瞬間に魂が還って来て思いっきり吠えた。

 『Shine Purity』を生で観ると、何と言うか、叩き上げの魂を彼女達から感じられる。
デビュー楽曲として披露されていた頃より、当然今の方がパフォーマンスの質は向上されている。単純に刻が経ち、経験を重ねて、みんなが成長したからというのが理由だが、その洗練された中から滾って来るガムシャラさみたいなモノを隠す事無く曝け出してる様に感じられる。

 でも、それはネガティブなインプレッションではなかった。成長する事で何かを置き去りにしてしまうってのは割とある話だ。彼女達は叩き上げの魂をちゃんと今でも持ち続けているんだなと。原点回帰し、また新たな旅路へと駆け出す為の『アンセム』。三周年はゴールじゃない。大きな節目になる通過点だ。

 当然、彼女達はこれからもっと強くて魅力的になる。そして、この原初の『アンセム』も強くなる。

 

 


 EN2.Fight oh! MIRAI oh!/星見プロダクション


 曲名が告げられてから、イントロが流れ客席が盛り上がる。見事なコンボの完成である。
この楽曲は、ただ楽しいって要素しか詰まっていない。もう、脳ミソの理性が留まっているネジを緩めてただ楽しめ。グダグダ考えてないでブチ上げていこうぜ!って言われている気分になる。

 いつも思うが、この楽曲の弾け飛ぶ様な爆発力って凄まじいなってww
曲調自体が完全に振り切ってるのもあるし、星見の子達もめっちゃ楽しんでパフォーマンスしてる。音源だけじゃその楽しさと爆発力は醸し出せない。楽曲の限界領域を壊して楽しさ満点のLIVE定番曲へ引き上げたのは、紛れもなく星見の子達の功績。

もう、この刻の感情の爆発は言葉で表す事が出来ない。会場全体のボルテージも凄まじかった。LIVEで観る度に思う。このアクトはどこで戦ってもきっちりと会場をブチ上げさせる強さがある。そんな未来の刻と機が訪れて、その場に居合わせられたらこんな幸せな事は無い。

 

 


 EN3.星色のカレイドスコープ/星見プロダクション


 二日間に渡って繰り広げられた夏の陣のLAST SONG。ここまでで散々書き殴って来たのであえて書かないが、本当にいろんな事があり過ぎた二日間のLIVEだった。

それは、ゲームリリースしての三年間にも繋がっていて…喜ばしい事もあったし、筆舌に尽くし難い悲しい事もあった。複雑で、多面的で、常に新鮮な驚き。それは曲題にもあるカレイドスコープ(万華鏡)を彷彿させる様な物語だったのかも。

 『IDOLY PRIDE』の物語は、星見の10人の子が中心になって引っ張っていく物語。どの子も個性豊かで魅力的だ。いろんな見方や組み合わせ方でその魅力は様々なインプレッションとして我々を楽しませてくれるだろう。

 それにしても、本当に良い楽曲だなって…勿論、この楽曲に限った事じゃないが、良い楽曲があまりにも多すぎる。歌っている彼女達も、それは強く実感されているんだろう。それぞれが何かとちゃんと向き合って戦って、しっかりと乗り越えられた。そんな安堵とやり切れたという充実感に満ちていた感じで、本当にいい顔してパフォーマンスされていた。

 

 

 あとがき


 こうして二日間に渡る『IDOLY PRIDE VENUS PARTY The Second』の戦いは終演した。
DAY1が終演した時は、身体中の力を根こそぎ絞り尽くされた様な疲労感に陥ったが、このDAY2で感じた疲労感はまた違ったモノだった。

身体で感じる出し尽くした疲労感よりも、受け取ったインプレッションが脳ミソのキャパシティをオーバーして、完全にオーバーヒートして脳ミソの疲労がとんでもなかった……それもまた心地いい疲れで、この二日間はきっと忘れられない極上の刻になった。

 ここから先もまた会える刻と機がある事。新しい景色を見せてくれる期待感。それが幻想では無く確信だと言える事が本当に嬉しい。何度も言うが、この二日間の奇跡の刻を忘れる事は出来ないし、これから日々を戦う魂の支えになる力を貰えた。

 今まで通り、寄り添いながら前だけ見据えていければちゃんと戦っていけるし、その力は充分に備わってる。これからの未来の刻でどんな新しい景色を魅せてくれるのか。いい意味で予想を裏切り、期待に応えてくれる事を願い、この参戦レポの筆を置く事にします。