巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #49 voyage

 

 

※画像はイメージです

 

 

 voyage/佐伯遙子


 シングル『Gemstones』に収録された、佐伯遙子(CV:佐々木奈緒)による待望のソロ楽曲。

 

 タイトルに銘打たれた『voyage』は、主に船による長距離の旅行や航海を指す英単語。遙子や他のアイドルを含めて自分たちの夢に向かって進む旅路を「voyage=航海」に準えているとの事。

ノスタルジック感ある1980~90年代のアイドル歌謡曲やシティポップスを彷彿させる聴き心地の良い曲調は、遙子のパーソナリティとされる、皆を優しく包み込む様な雰囲気と、柔和で温厚な性質と強く結びついている様に感じる。

 歌詞の中にも、航海を感じさせる言葉が散りばめられている。大海原は、アイドル業界の例えで、その大海原を往く様々な船は遙子を初めとしたアイドル達。最も印象深いフレーズは1番サビとラスサビの締めになっている「先に行ける 遙か彼方 きっと行ける」。遙かの字に彼女の名を用いた事で、遙子のキャラソンである事への強い印象付けとなり、佐伯遙子というアイドルの歴史(=生き様)を示す楽曲である様にも思われる。全ての経験が糧となって今がある。

三枝さんが星見プロを立ち上げ、第一号のアイドルとして遙子は芸能活動を始めた。その航海は順風満帆なモノではなく……思う様に進んでいく事は叶わなかった過去の事を回想している様に捉えられる。だが、本曲に負の暗さを感じさせる要素は感じられない。遙子=佐々木さんの歌声が揉みほぐしていく様な柔和で慈しみがあり、聴覚からスッと何の抵抗も無く入っていってじんわりと心に沁み渡る。それでいて、確かな芯の強さも感じられたからだろう。

 

 そして、佐伯遙子について語る際に忘れてならないのは、長瀬麻奈の存在と縁。本曲にもそれは盛り込まれていて、両者との繋がりの強さを感じさせるのが以下の節と解釈している。(あくまでも個人の私見だが…)



 先を行く背中を見送ると とめどなく 胸が痛むのは 

 逃げ出さないで 前を ちゃんと 見てるからでしょ?


 ―佐伯遙子 『voyage』より引用

 

 遙子のずっと先を往く麻奈の背中を、彼女はずっと見て追いかけて来た。
でも、その差はどんどん開いてしまっていた。自分の近くにとんでもなく凄い子(麻奈)がいる。必死の全速力で追いかけても背中が見えない程に速くその子は進み続けている。楽になりたければ追う事や見る事を諦めれば済む事だが、遙子は諦める事はなかった。

ここの節は、雌伏の刻を過ごしながらも…アイドルとして生きる事を諦めなかった遙子の執念と意地とPRIDEが垣間見えて来る。

 本曲を遙子が歌っている時間軸については、現在まで明確な設定が明らかになっていないので様々な考察があるだろう。不遇のソロ時代なのか?サニピがBIG4へと駆け上がれた刻なのか?実際の楽曲リリース時(ゲームリリース二周年近く)は抜きにして、自分は『今』の遙子の心情を謳っている楽曲だと解釈している。

麻奈の背中を追う事を諦めなかったからこそ、今の遙子が存在出来ている。麻奈の魂に感謝を伝え、今の自分を見てもらいたい……それは、今までの出来事や葛藤を彼女の中で受け止めて出て来た真っ直ぐな偽り無い言葉。そう願う遙子(=佐々木さん)の歌声は、張り上げたモノでなく優しく寄り添って語りかけてる様な感じに聴こえる。

 聴く者に寄り添い、優しく励まして支える応援ソング。何かの力をもらえる『アンセム』でもあり、魂を癒され救われたり、刻の流れに身を委ねる壮大な楽曲……聴けば聴くほどに、本曲が持っている深みへと誘われていき、この楽曲は多種多様な『貌』を見せてくれる。それは、アイドル・佐伯遙子が持つチカラの様に思えてならない。