巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

ガールズフィスト!!!!GT 3ndシングル WISH/Brand New Worldを斯く語る。

 ―このバンド、こういう引き出しもあったのか…!!

 


 語彙力の欠片も無いが……この楽曲を、五月に開催された公開練習で初めて聴いた時に感じたインプレッションがそれだった。勿論、凄く素晴らしい楽曲だったってのが前提としてあるのだが。

そして、LIVEで聴き…つい先日には、この楽曲が各音楽サービスにて配信されて、じっくりと聴いた際に一つの確信へと至った。それは…今年の残りの刻において、どんなに素晴らしい楽曲と出逢っても、この楽曲を超える楽曲は無いというモノだ。聴けば聴くほど、この楽曲が持つ深みに誘われていく様に……

 そんな楽曲の持つ魅力をどこまで文章化出来るか分からんが……感じたモノを書き殴っていこうと思う。

 

 

 

 WISH

 

 

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 新体制となっての3rdシングルとなった本作は、1stシングル『Bugging Me!!!!』や2ndシングル『Zettai』の様なソリッドでアグレッシブなハードロックテイストではなく、ガールズフィスト楽曲では初となった壮大なミディアムバラードという変化球で攻めて来た。軽快なアコースティックサウンドの曲調は、青春時代を懐かしむノスタルジック感に溢れているバラードに仕上がっている。

作詞は、前二作同様にメンバーの一人を中心に据えて書かれるスタイルで、奥村真由さんがその中心になっている。ワーナーミュージック・ジャパンのEric氏と対談した動画の中で、彼女はこう語られている。(この動画は他の新曲についても語っている)

 


 バラードではあるがサビの箇所は力強さを意識し、切ないだけにはしたくは無かった。

 楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうけれど…でも、過ぎて欲しくない。

 ずっとこのまま続けばと…出逢いと別れが楽曲のテーマになっている。

 

 

 奥村さんの言を踏まえつつ…曲の展開を捉えていくと、A~Bメロの進行は容赦なく過ぎ去っていく刻の流れを惜しんでいる様な切なさを醸し出している。メロディも浅見さんのボーカルも抑え気味な『静』の要素を感じさせる。

2番の「時よ止まって」は、今の楽しい刻が過ぎ去って欲しくない感情を最も強く表現していると思える。ただ、この切なさがグッと楽曲を聴かせていく方向へと誘っていく。この要素はこれまでのガールズフィスト楽曲では無かった要素だと勝手に思っておる。

 そして、この楽曲の『貌』(かお)がサビで一気に変化していく。変わらぬ想いは大切にしつつ……未来の刻への希望へ胸躍らせていく様な心情を感じさせる『動』の開放感に満ちている。刻が過ぎる事と巻き戻せないのは、抗う事の出来ない無情な自然の理である事は誰もが知っている事。先の見えない未来に不安と恐れを抱くのも人の持つ性(さが)。それでも…彼女達はこう謳っている。



 10年後も20年後も 同じとは限らない

 でもね 変わらないものも きっとあると信じて


 ―ガールズフィスト!!!!GT『WISH』より引用


 
 変わらない想いは大切だけれど…でも、変わらなければ前に進んでいく事は叶わない。
勿論、コレが全てじゃない。逆の事もあり得る。それは、過去があったからこそ現在の自分が在るという事だ。前述でも触れたが、我々は刻を戻せない事を嫌って程に痛感しておる。だからこそ…過ぎ去る刻で体験した数多の経験を糧にして未来へと進む。

 自分は楽曲の考察をする際『~の謳』という表現をする。この楽曲についてはコレ!という適切な表現が見つからない……いや、いろいろな『貌』が『WISH』という楽曲には存在しているのだ。仲間との絆の尊さを謳っている『深愛の謳』、巡り逢いの縁の謳、未来への希望の謳、大いなる刻の流れの謳、祈りの謳、卒業の謳……と、まあ一つに絞る事が困難な楽曲。

 ただ、敢えて決めてしまうのなら、ここまでの『ガールズフィスト』の集大成の謳と称するのが自分の中ではしっくり来るのであった。その最大の要因になったのが、作詞の主導をされた奥村真由さん。

コレはあくまでも私見の域&妄想の域ではあるのだけれど……曲中の人間関係が指しているのは、物語のキャラクターよりも、キャスト側の刻の流れに重きを置いている様に思ってしまったのだ。奥村さんが書かれた詞かどうかは分からないが…「出会いも別れも抱きしめて来たからたどり着いた」は彼女がこの楽曲で伝えたかった精髄の様に思えてならない。新体制へ移行し、いろんな想いを伝えられる機を得て、奥村さんは詞に『願い』と生き様を詰め込んだのかなと。

 そして……彼女達が語る『今』に力を与えていくのが、ボーカル・浅見春那の歌声。
格好良さでもなく、魅了させてしまう艶やかさでもない…包み込んでしまう様な慈しみすら感じさせる優しい歌声。当然ながら、メロディの持つチカラに一切引けは取っていない。むしろ、彼女の歌声が相乗効果をもたらして…本曲の深みと聴き心地の良さに繋がっていってる。

 素晴らしい、エモーショナル、感傷的、尊い……と本曲を称賛する言葉が尽きないまごう事無き名曲だと膝を叩くしか出来ない程に打ちのめされた……

 

 

 

 Brand New World


 公式サイトにある本曲の紹介文にはこうある。
キーボードによるシンフォニックなサウンドを取り入れるという初の試みを採用した意欲作と。

あくまでも個人の私見だが…シンプルな音の構成で聴かせた『WISH』と真逆の路線で攻めて来たのかなと感じさせる。何か、異世界を舞台にしたアニメ作品のOPテーマ楽曲の様なインプレッション。ちなみに、コレは非難ではない。率直な感想だ。自分の鈍さを極めた聴覚で例えるのは非常に恐縮ではあるが……音の厚みを出していってるのは、キーボードが関係しているのだろうと。

こちらの楽曲の作詞は、内山つかささんが中心になって紡がれている。以下は彼女のコメント。

 

 

 曲を聴いてイメージしたのは、明るい未来へ向かっていく歌詞。

 何か新しい事、やりたかったことへのチャレンジを後押し出来る様な楽曲になれば良いと。

 

 

 メロディの複雑さに反して、歌詞の方は本当に奇を衒わない王道な応援ソングのテイスト。
誰もが完璧な存在じゃない…でも、無限の可能性を秘めて未来へと駆けていく背中を押してくれる様な楽曲。人というのは、自分で自分のリミットを切ってしまっている人が多い。自分の事は自分が一番分かっているという言葉がある。でも、自身の中に秘めている無限の可能性を自分自身が一番分かっちゃいないってのもまた真実。

 勿論、切らざるを得ない状況、時期、環境ってのもあるのだが……まあ、とにかく挑んでみてから、どうしても限界を悟ってダメなら結論を出せという事なのだろう。努力すりゃ絶対に報われる保証なんて無い無情な世界だけど…何かを成し遂げる者は、動く事を止めずに自分自身を信じて戦い続けられる者だ。この自分を信じるという点において、本曲は、ガールズフィスト原初の楽曲『自分自信』の続編に連なる楽曲だと勝手に解釈した。

 『WISH』とはガラっと雰囲気が違い、高揚感満載で意気揚々としたアグレッシブな楽曲。
アグレッシブな要素のみで捉えると、1stシングル『Bugging Me!!!!』や2ndシングル『Zettai』の系譜に連なる楽曲に思えるが、本曲は、荒々しさよりも、どこか吹っ切れた様な清々しさを纏っている様に感じられた。それは、曲題の『Brand New World』の訳の一つである『真新しい世界』へ踏み出せる喜びと興奮に満ち溢れているのだと。