巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #44 drop

 

 ※画像はイメージです

 

 

drop/兵藤雫


 『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』に収録された、兵藤雫のソロ楽曲。
タイトルの『drop』は彼女の名の英訳。自らの名を冠した、まさに“キャラソン”と呼ぶに相応しい楽曲。

 雫と瑠依がユニットを結成するイベントストーリー『並び立つ歌姫のフルリール』にて、雫にソロデビューの話が舞い込む。しかし、このストーリーでは彼女のソロ楽曲にスポットライトは当たらない。推測と妄想の域だが……雫がソロ楽曲=この楽曲を謳う決意を固めたのが、ストーリー終了後と考えるのが自然だと自分は思っている。

 『drop』は、雫の内面を凄く投影している楽曲。彼女の抱いている想いを謳っていて、自己表現が苦手な雫のパーソナリティを出しつつ上手く歌わない様にし、一生懸命頑張る気持ちで謳った……と首藤さんは語られていた。そして、この「上手く歌わない」ってのが、この楽曲のキモだと解釈している。

 この楽曲は所々……特に、A~Bメロにおいては忠実にメロディをなぞって歌い上げるのではなく語りかける様に歌っている。それは流暢なモノではない。たどたどしいけれど…言葉を大切にし想いを吐露していく雫の語り口の様に…。A~Bメロの歌詞は彼女のコンプレックス及び秘めた情熱という相反したモノを描写していた。

この箇所、メロディをきっちりなぞって「上手く」歌い上げても当然何の問題もない。だけど、自己肯定感が低く、ソロ楽曲を謳う事に特別な感情を抱く雫のソロ楽曲だからこそ……全て流暢に「上手く」謳うのは何かが違ってしまう。大袈裟な物言いだが…『drop』という楽曲にちゃんと血が流れない。彼女の名そのものを冠した楽曲ならなおさらの事だと勝手に解釈している。

 そして、この楽曲最大のカタルシスが得られる箇所と言えば……サビで解放されていく雫の歌声だろう。凝縮されてきた変わりたい想いと覚悟とPRIDEが一気に弾け、サビの歌詞にある「しずくが弾けるよ」の通りに、彼女の未来への希望に満ちた明朗な歌声でもってリスナーを聴き惚れさせていく。

曲調は、口数が少ない雫のパーソナリティを模している様な、多くの音を重ねていく構成じゃなく、歌声を聴かせる為のシンプルなモノに感じられる。サビの響きは、盛り上がって膨らみは増して最高潮を迎え、雫(首藤さん)の歌声を効果的に際立たせていく。全体が大人しくなり過ぎず、かと言って激しく主張もしていない絶妙な曲調も聴き所だと思える。

 この楽曲のみで聴くのも勿論良いが、雫が所属するサニーピースの楽曲『EVERYDAY! SUNNYDAY!』MVの2番A~Bメロの描写と、ゲームの方で公開されているサニーピース番外編・兵藤雫のストーリー『Shizuku's Memories』の内容を知っていると『drop』の解像度が高まり、楽曲がより魅力的なモノになると勝手ながら思う。