巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #23 恋と花火

 

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 恋と花火/月のテンペスト 


 月のテンペストによるゲームアプリ版最初の楽曲。
ゲームアプリ以外の音源は『IDOLY PRIDE Collection Album [奇跡]』と、2022年7月に立川ステージガーデンで開催された際の音源が収録されたLIVE盤『Live at IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “約束”』に収録されている。

 ゲームアプリ版におけるこの楽曲の関わりは、イベントストーリー『月夜に輝く恋の魔法』で描かれている。とあるアイドルフェスに出演する事になった月スト。そんな中…早坂芽衣は、折角夏フェスに出演するからには夏をテーマにした新曲を作りたいと提案するところからストーリーは始まり…5人は『月ストらしい夏』を楽曲で表現していく為に楽曲のイメージを模索していく。

海へ出かけて遊んだり、花火を見たり、恋バナに花咲かせたり…という具合に5人は夏を満喫し、そこから芽衣がインスピレーションを感じた楽曲の完成形。更に、彼女が抱く月ストへの想いが描かれる展開となっていく。

 で…楽曲そのものについてだが、前述した様に夏をテーマにした楽曲。
ただ、同じく夏をテーマにしているサニーピースの楽曲『サマー♡ホリディ』とは真逆の方向性を持つ楽曲に仕上がっている。

『サマー♡ホリディ』が、真夏の青空と燦燦と照らす模様を描写した元気溌剌で楽しい楽曲なのに対して、この『恋と花火』は、タイトルにある『恋』が示す様に、夏の夜、花火の下で意中の男子に告白しようとする少女の揺れる恋心をテーマに掲げている。

それと、イベントストーリーのクライマックスにて芽衣が語った月ストへの想いが重なる事で相乗効果が生まれている。彼女の言を引用させていただく。

 
夜空じゃなきゃ、花火も月も綺麗に見えないよ

太陽みたいに眩しくはないけど…だからこそ綺麗な光があるんだと思うの

私達は、そんなグループでいようよ。これからも

 

 

 『眩いくらいに圧倒的な 一瞬の輝きが欲しい』『弾けてきらりきらり夜空に咲き誇る花のように』と謳う芽衣の歌声は、いつになく純然な優しさに溢れている。ラブソングではあるものの…このパートは寧ろ、アイドルとして目指すべき在り方にも聞こえる。彼女は、本当に月ストの事を大切に想っている。

 少女の様々な想いが交錯していく模様を繊細なピアノの旋律とビートの激しい旋律で彩られていく。Aメロでは、5人のアンニュイさとセンチメンタルさのある叙情的な歌声が『静』の雰囲気を醸し出している。そして、Bメロ~サビでは花火が上がって咲き誇る様なメロディと、一変した彼女達の感情が爆ぜた歌声が組み合わさり『動』の雰囲気で楽曲をドラマチックに盛り上げていく。

この『静』から『動』への揺れ幅の明確な差でもって、リスナーのエモーショナルな感情に畳み掛けて来る構成は、自分が勝手に定義している変態楽曲と称するのに相応しいモノだ。

 自分が初めて聴いた時(2021年リリースのアルバム音源)に感じたのは、これまでの経験と研鑽によって彼女達のパフォーマンスの質は格段にレベルアップしており、魅せる歌声でもってこの楽曲を自分達のモノにしていたと感じさせられた。それこそ、月ストのキャストである、橘美來、夏目ここな、宮沢小春、相川奏多、日向もかの歌声が楽曲にちゃんと血を流せた事の証明でもあるのだと。

全員の歌唱力がレベルアップしているのは音源を聴いていても理解している。その中で特筆すべきは、夏目ここなと宮沢小春の歌声の質。きっちりとした理論が無い為、完全な個人の感覚での物言いになってしまうが……二人の声質と楽曲との親和性が見事で、いい意味での粘度になり二人の歌声と絡み合って艶やかさを醸し出し、楽曲全体の奥行きと深さを創造している。

 メンバーそれぞれが楽曲と真剣に向き合い、魅せ方への工夫があり、月ストの新たな『挑戦』が実を結んだ格好の一曲になっているのではないだろうか。