巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #36 君がのぞくレンズ

 

※画像はイメージです

 

 

 君がのぞくレンズ/長瀬琴乃×伊吹渚


 1st EP『それを人は“青春”と呼んだ』に収録。ここまででリリースされたデュエット楽曲は、グループの枠を超えた組み合わせだったが、本曲では同じグループに所属するアイドルによるモノとなった。その一番手として選ばれたのは、月のテンペストのリーダー・長瀬琴乃と伊吹渚。

琴乃と渚と言えば、中学時代からの繋がりで親友同士といった絆の強さもある関係性。先にリリースされた白石姉妹によるデュエット楽曲と同様、彼女達によるデュエット楽曲のリリースというのは本当に多くの人が渇望していたのではないだろうか。(※あくまでも個人の主観)

曲調は、軽快かつ明朗で爽やかで真っ直ぐといったインプレッションを抱き、それはまごう事無き青春ソングのスタンダードと評して過言では無い。詞が紡いでいる世界観も、琴乃と渚が互いに掛け替えの無い存在として想い合い感謝を詰め込んだメッセージ性のある一曲。

 社交的とは言い難く人付き合いは苦手な当時の琴乃。反面、社交的で他者への懐が深くて寄り添える渚。そんな正反対の二人ではあるが、一番の親友として互いの名を挙げている琴乃と渚。とは言え、出逢ってすぐに意気投合して親友とはならなかった。詞にもある様に、互いの心の距離を徐々に詰めていき絆を深めていった彼女達の軌跡。

 思い込んだら一途で、不器用で危なっかしく、真っ向勝負しか出来ない琴乃。そんな彼女が駆け続けられたのは、紛れもなく親友である渚の支えが無くしては有り得ないモノ。特に、最愛の姉である麻奈を亡くしてからはそれが顕著だったのではないだろうか。渚が傍に居なかったらもしかしたら琴乃は壊れてしまっていたと思えてならない。

渚もまた、大袈裟かもしれないが琴乃の存在によって大きく人生を左右された事だろう。琴乃と出逢って、親友になっていなければアイドルになるという選択肢は出て来なかったはず。どうしても琴乃を傍で支えてあげたいという偽りの無い本気の想いが渚を突き動かしてその軌跡へ一歩踏み出した。

 琴乃を救ってくれたと言っても過言では無い渚の存在、渚の人生の軌跡を切り拓く切っ掛けとなった琴乃の存在…二人は互いへ『ありがとう』と伝えたい。特に、琴乃は多弁な子ではない。だからこそこの謳で感謝を伝えて、彼女達を取り巻く全ての刻を尊んでいる。

1・2番のAメロでは、二人の過去・現在・未来といった刻の流れに想いを馳せる様な叙情的で沁み入る様な歌声を響かせる。続くBメロでは、一転して不安や葛藤という負の感情を曝け出していく。それは、未来への不安でもあり、二人の関係性が拗れている様でもあるが…『わかんない』『いらない』と、二人で一気に駆けだす様な勢いを帯びた力強い歌声へ変わる。

 そこからのサビの盛り上がりがこの楽曲の真骨頂。詞もメロディも奇を衒った構成にしないで、ただシンプルに偽りの無い琴乃と渚の歌声を響かせていく。近くにいるからこそ伝えにくい想いと言葉はあるけれども……音の中と謳でなら伝えられる。純然な想いだからこそリスナーの魂にもグッと響くポイントでもあると思う。

 単純に一方的な思いの丈をぶつけあうのでなく、ちゃんと相手を慮る深愛の情に満ちている。
琴乃と渚の感謝と想いを互いに謳で受け取ったからこそ、掛け替えの無い存在である事を再認識させる謳。そんな楽曲を、ゲーム一周年といったタイミングでリリースいうのもまたエモーショナルな衝動を震わせてくれる。