巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #25 ココロ Distance

 

www.youtube.com

 

 

 ココロDistance/一ノ瀬怜×早坂芽衣


 サニーピースに所属する一ノ瀬怜(CV:結城萌子)と、月のテンペストに所属する早坂芽衣(CV:日向もか)による、『IDOLY PRIDE』として初になったグループの枠を超えて結成されたユニット『MACARON DONUTS』*1  によるデュエットソング。音源は、2ndアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』に収録されている。

 タイトルの『ココロ Distance』の解釈だが、ココロとは心情や想い。Distanceは距離だったり間隔という意味。これらを直訳すると心の距離・間隔だろうか。そのテーマで紡がれた歌詞はゲームアプリ版でのイベントストーリー『夢踊るステージに架け橋を』にも通じている。

このストーリーでは、星見プロ内のアイドルでダンスパフォーマンスに定評のある怜と芽衣が限定ユニットを組む事になる所から始まり、アニメの5話にて少し触れられていた怜の家族関係(父親との関係)に踏みこんだ描写が成されている。

『NEXT VENUSグランプリ』に優勝したものの……未だに父親との関係が冷え切ってしまっている怜。その事情を聞いた芽衣(…とすず)は、限定ユニットのLIVEに向け親子関係の修復を画策する。そこで、芽衣とすずは大胆な行動に出る…まあ、何やかんやとあった末に、クライマックスにてこの楽曲を披露する流れに。

怜のアイドルに対しての真剣な想いと、反目している父親に抱く本当の想い。それと、芽衣の怜に対する想いと優しさ…彼女達に関わっていく人達による心の移り変わりがストーリーの見所となっていく。

 EDM調のクールでスタイリッシュなメロディをベースに、そこへラップや掛け合いが織り交ざって、メリハリの利いたキレ味鋭いダンスが激情的なパッションを醸し出し、イベントストーリーの主軸となった怜と芽衣の揺れ動く繊細な心情とシンクロしている歌詞は、多感で繊細なセンチメンタリズムを醸し出している。単に、スタイリッシュで格好良い楽曲というインプレッションではなく、複雑多岐なインプレッションを抱ける楽曲だと思える。

 凛とした格好良さが目立つが、内から覗かせてくる切なさと艶っぽさを纏わせる怜(結城萌子)のボーカルは陰の部分を担う。彼女の根底にあるのは、父親に認めて欲しい…ちゃんと自分の本気を見てもらいたいという想い。だからこそ、この楽曲での怜の歌声からは情念めいたモノが感じられるのだろう。本当にどうでもいいと思っている相手にはそんな感情は抱けない。その情念は怜が父親や共にこの楽曲を謳う芽衣の事を本当に大切に想うからだと。

 一方、芽衣(日向もか)のボーカルは怜とは対照的で、芽衣本来が持つ溌剌なキュートさを前面に押し出した陽の部分を担う格好になっていて、彼女の歌声は怜の魂を明るい方へと導こうしている感じに聴こえてくる。2番のラップパートで芽衣が歌う『君が君だとわかるから 君の気持ち 伝わるから 突然に 大胆に 背中押してしまうの』の節は、怜の為に何とかしたいという芽衣の想いがより強く溢れている。

心(ココロ)の距離を何とかして近づけたい…諦めたくないという想いを怜と芽衣は楽曲で表現していく。二人の想いが最も強く表れていると感じられるのが以下の節であり、自分がこの楽曲において最も気に入っている箇所である。
 

 ゆっくりでも 一歩一歩 近づけたなら

 いつかきっと同じ景色を

 「きっと見れるよ」

 ―一ノ瀬怜×早坂芽衣『ココロ Distance』より引用

 
 ここのパートは、伴奏がこれまでよりもシンプルであり、穏やかで静かな雰囲気の曲調になっている。しかし、その曲調とは逆に、彼女達の歌声は力強く突き抜ける様な伸びやかさを纏わせている。それは、彼女達がそれぞれ違う想いを持ちながらも、同じ志で繋がっていく事を暗示する様であり、ここの詞は掛け値無しで怜と芽衣の本能が発した言葉なのだと思う。

 

 

 

*1:カロンは怜の好物、ドーナツは芽衣の好物