巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

WUG楽曲 ライナーノーツ #22 One In A Billion/王様のカデンツァ

 『Wake Up,Girls!』の数多くある楽曲には『Wake Up,Girls!』の作中にて披露されたり、キャラクターソングとして登場する楽曲だけではなくWUGという枠組みから解かれて、一組のアーティストグループ『Wake Up,Girls!』としての楽曲だったり、七人それぞれの個人としてのソロ楽曲が存在しております。

これから書き殴っていくのは、アーティストグループ『WUG』としての楽曲達。そして、アーティスト『WUG』としての新しい挑戦を感じさせる意欲に満ちた楽曲になったと自分は思っています。

 

 

 

 

One In A Billion (Wake Up, May'n!)

 

 

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youtu.be

 

TVアニメ『異世界食堂』のOPテーマ楽曲。
ユニット名にも冠され、ジャケットにもある様にこの楽曲はWUG単独の楽曲ではなく、アーティスト・May'nさんが加わったコラボレーションユニットとしての楽曲。
所属レーベルの枠を越え、May'nさんとWUGが繋がった。奇しくも、この楽曲がリリースされた頃は『繋がり』をテーマに掲げたWUGの4thツアーの最中(2017年8月)という要素も導きと引き寄せの『縁』を感じさせ、楽曲タイトルのOne In A Billionの和訳でもある10億分の1という天文学的な数字が示す様にこの両者の巡り逢いというのは奇跡レベルの繋がりだと思えるだろう。

OPテーマとして、縁の巡り逢いへの感謝を表す楽曲らしく、アップテンポな曲調による構成は奇を衒わない王道といったところではあると思う。ただ…残念な事に著者はコードのコの字を知らんド素人。メロディ構成の妙だったりは楽曲自体を聴けば分かるモノなので、今までのライナーノーツシリーズと同様に歌詞と楽曲の世界観について書き殴っていこうと思う。


リリース当時、May'nさんはインタビュー内でこの楽曲は『一期一会』をテーマにしていると語っていた。
その点を踏まえて歌詞を追っていくと、『出会う』や『めぐり逢う』という出会いを強烈に訴えるストレートな語句を多く使って書かれている。そして、出逢いという事へのネガティブな印象も詞の中に描かれている。1番でMay'nさんが歌うAメロ~サビ前のパートはそれを如実に描写しているワケだ。

 

 避けてきた ものの中 苦手って 記憶が消せずに

 運命を 変えるような 出会いが あるかもしれない
 
 私のフツー君には とんでもサプライズかも!?
 
 違いを遊べ フュージョン! ミクスチャー! So Wonderful!

 
 ―Wake Up,May'n! 『One In A Billion』より引用

 

未知との出逢いへの躊躇いと葛藤。別の表現をするならば、『食わず嫌い』と称してもいいだろう。煮ても焼いても、どうしても食えないものは人間誰しも一つはあると思える。それは、人との関わりにも通じる要素だったり。『苦手』と『記憶』は食わず嫌いという語句の暗喩にも捉れて、自分の価値観にある普通という感覚も、他者の価値観にしてみたら特別で稀少だったりもする。それを知って自分の中に落とし込んでみる事は、また違った刺激をもたらしてくれたりするモノだと。

フュージョン(融合)、ミクスチャー(混合)この語句を使っているのがまた面白くあり、そして、『違いを遊べ』という語句がコラボユニット『Wake Up, May'n!』の存在意義やアイデンティティを示している様に思える。あくまでもコレは俺の『違いを遊べ』の言葉の解釈だけれども、WUGとMay'nさんが、まずただ混ざっただけ(ミクスチャー)の状態から、この楽曲と出逢い融合(フュ―ジョン)を成していく。それは、単に繋がりたいと想うだけでは混ざって溶け合う事は出来ない。互いの違う要素を知り、受け入れた時が…『違いを遊べ』という言の葉がより深い意味をもつモノとして想いの根幹を成していたのではないだろうか。


この楽曲は、WUGのみのバージョン*1とMay'nさんソロバージョン*2が存在している。
それぞれの個別の立場、また違った視点でこの楽曲と向きあってみた時、前述の『違いを遊べ』と、冒頭の『この広い世界で 君とめぐり逢う』という言の葉が、楽曲に更なる深みや奥行きをもたらす要素だったと思える。

 

 


王様のカデンツァ(Wake Up, May'n!)

 

 シングル 『One In A Billionカップリング楽曲。
こちらの楽曲もWUGのみのバージョンがある。*3
One In A Billion』とは違い、しっとりと沁み入る様でいてお洒落かつ可愛らしさを感じさせる曲調。


この楽曲は、『One In A Billion』以上に個の心情に深く切り込んだ描写になっている様に思える。それを強く感じさせる要因は歌詞に出て来る『裸の王様』というフレーズだと自分は見ている。周囲からの批判や反対を受け入れないために、真実が見えなくなっている人の喩えでもあるが、身のほどを知らずに大それた目標を掲げる者に対しても『裸の王様』という表現を用いたりしている。楽曲の世界観のテーマも『裸の王様』が根幹を成しているのだろう。
この楽曲では、『裸の王様』の持つネガティブな要素ではなくポジティブな要素……つまりは、抱いた大志を信じて貫き通そうする想いを謳う前向きな楽曲だと思えて来るのである。


『意味無い厚着』、『君』というフレーズが楽曲の世界観を紐解くキーワード。
これらのフレーズが指し示すのは内面の心情描写ともう一人の自分自身。具体的に挙げていくと『意味無い厚着』は、虚勢だったり見栄で本質を偽り着飾り重ね着した事の喩えに捉えられるし、『君』は本質であり、裸の偽り無い本気の想いだと捉えられる様に思える。

更に『意味無い厚着』と『君』を掘り下げると、自分を信じきれない、情報がない故の知識不足から来る不安と恐れに行き当たるのではないだろうか。不安や恐れは視野を狭くしてしまい冷静に物事を判別するのは難しいモノだ。
出来うる限り集められるだけ集めそいつが真に有益であるかどうかは吟味せずに見栄と虚勢で次々と着込んでいく。見られたくない、悟られたくない弱みは人それぞれに備えている面で、尚且つ見えないモノを信じられないというのも世の理でもあり、人の抗えない『性』だという気がしなくもない。

前述にもある様に『裸の王様』は真実が見えなくなっている人の喩え。しかしこの楽曲では、あえて裸をさらけだしていく事を謳い、サビにあるこれらのフレーズはその事を強烈に訴え掛けているのだと。

 

 誰かが言うだろう 笑われるだろう

 それでも確かな想いを身に纏うよ

 はだかの王様


 ―Wake Up, May'n! 『王様のカデンツァ』より引用

 

見栄と虚勢で着飾った窮屈な鎧を脱ぎ捨て、本質をさらけだし自由になる。そして肝要なのは、自分と見えるモノ見えないモノを信じぬき、いくら言われようが笑われようとも構わない。
魂から、本気の想いという新たな鎧を纏い偽り無い全力の自分を魅せ付けてやるのだという沁み入る曲調とは裏腹な強い決意を秘める要素を感じさせる雰囲気だと思っている。

 

 


アーティスト『Wake Up,Girls!』としての新しい挑戦とは、異なる者(May'nさん)を『受け入れる』という事だったのではないでしょうか。WUGの七人もMay'nさんにも要となる部分、譲れない想いを持っていると思う。
一斉に軌跡を歩み出した七人の時とはまた違う関係性の構築。それを築いていくのには細心の配慮や真剣さ、潔さが欠けちゃいけない。だからこそ互いにきっちり向き合って受け入れた……縁の記憶と物語の次の1ページの様に自分は思えてならないのであります。


そして、『Wake Up,May'n!』にはもう一つ楽曲があります。
その楽曲についてはまた別記事に。

 

 

 

 

 

*1:Wake Up,Best3!とCDのみでWakeUp,Best! MEMORIALに収録

*2:アルバム PEACE of SMILEに収録

*3:Wake Up,Best! MEMORIAL *CDのみに収録