巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #43 未来模様

 

 

 ※画像はイメージです

 


 未来模様/長瀬琴乃

 

 『IDOLY PRIDE Collection Album [未来]』に収録された長瀬琴乃待望のソロ楽曲。

楽曲タイトルのみで捉えて見ると、琴乃自身が抱く未来への希望を謳うポジティブな楽曲だと捉える事が出来て、なおかつ、琴乃役である橘美來さんの名の読みである『みらい』にかかっているのも実にエモーショナル。これらの要素を踏まえて、前述したポジティブな楽曲だろうと勝手に思い込んで、実際に聴くまでそう信じて疑わなかった自分がいた。

 だが、その予想はイントロ聴いた瞬間、見事裏切られて木っ端微塵に打ち砕かれたが…コイツはいい意味での裏切り。琴乃にとって失礼な物言いになるが……やっぱり、彼女にはこういう影のある楽曲が似合う気もする。

完全に暗いとまではいかないが、決して明るいとも断言できないどっちつかずな曖昧さがあるメロディ。それと、1番Aメロ~Bメロの歌詞の内容もメインシナリオ『BIG4』編における琴乃が陥った負の心情をなぞらえたモノになっていて、橘さんによる歌声も切ない要素を纏って拗らせた時の琴乃を想起させてしまう雰囲気の重たい楽曲なのかと思わせ、早めのテンポもまた琴乃の焦燥感を煽る様に感じられる。

しかし、纏わりついていた重い雰囲気はサビに入ると一変する。辛い現実を乗り越えるべく自身を奮い立たせる決意と覚悟が爆ぜた様な歌声を響かせていく。この溢れ出て来る激情を抑制しきれないまさに解き放たれた様な橘美來の歌声は、クソ真面目だけど強情で不器用で危なっかしい……でも、思い込んだら一途な強さを持つ長瀬琴乃の過去と今……そして未来へ向かう決意とリンクする。

 結局の所は前を向くポジティブな楽曲だけれど、それだけではなく、琴乃のネガティブな部分にもきっと魅力はあるのだと感じさせるし、それらを前に進む力を謳へと込めた。ただ、楽曲の雰囲気と流れ、音楽的と感情的の『静』と『動』のメリハリを適切に把握して謳わないとこの楽曲にきっちりと血が流れない。

それを成すのに必要なのは、長瀬琴乃のアイドルとしての生き様とPRIDE、そして、橘さんと琴乃による対話の記憶。ここでカギになるのは歌詞に度々出て来る『君』という言葉だと思える。様々な解釈が成り立つ『君』だが、特に縁としての繋がりの強さを感じさせるのは、琴乃からもう一人の琴乃、琴乃から橘さんを指している存在だと自分は強く感じられた。

 今の刻を最高のモノにするには、過去を受け入れられてこそ。いくら否定しても無かった事には出来ない。もし、彼女がこれまでを否定するのなら今の刻に生きている琴乃自身まで否定してしまう事に繋がる。そんな琴乃に未来への希望が生まれるワケが無いだろう。

 ポジティブな想いとネガティブな想いが混在した複雑な楽曲になっているのは、琴乃の葛藤と希望が表れたモノなのだろう。忌むべき過去を決して忘れない。過去があったから、今があって未来への希望を謳う長瀬琴乃の『決起の謳』という表現が似合う楽曲。

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #42 最高優美ロンリネス

 

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 最高優美ロンリネス/LizNoir


 新年の幕開けをテーマに掲げたLizNoirの楽曲。
音源は、ゲーム内に実装された3DLIVE映像と、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album[未来]』に収録されている。

 リズノワが主役になるイベントストーリー『最高優美*飛躍のカウントダウン』で謳われた楽曲。
ストーリーは、東京編が終了した後の時間軸。年末のカウントダウンLIVEへ出演する為に大阪へとやって来たリズノワ。LIVE会場の下見中、他の事務所のプロデューサーに煽られて、頭に血が上ったこころが突っかかっていき…ライブバトルで決着を付ける事になってしまう流れへ。(ちなみに……葵の言によると、莉央は冷静さを装っていたがキレる直前だったとの事。)
 
 この楽曲で、まず気になったのは、タイトルに銘打たれている『ロンリネス』の異質さ。
一般的に広く知られている『ロンリネス』の訳は、孤独感や寂しさを表すネガティブなインプレッションを抱くモノ。一方で、同じくタイトルに銘打たれた『最高』と『優美』は言わずもがなポジティブなインプレッションを抱く言葉。更には、曲調や歌詞も前向きで力強い決意を感じさせる。

それらは、孤独感と寂しさという要素を感じさせない。どちらかと言えば『孤高』の意味として捉えていくと、前述したポジティブなイメージと合致する様に思えて来る。グループの楽曲ではあるんだけれども、その枠組みから一旦外れて、各々の内面と向き合い対話し……そんな四人の飛躍へと変換したエネルギーが合わさり未来の飛躍を誓う謳へと昇華を果たす。そんな楽曲が弱いワケが無い。

 これまでの(セカイは夢を燃やしたがるは別)リズノワ楽曲の系譜に連なる、激しくスタイリッシュさのあるハードロックテイストは、未来の飛躍を誓ったストレートで力強い歌詞の世界観を見事に彩り、激熱な滾りを呼び起こさせる。最初からハイスパートで飛ばした疾走感満載な曲調は、サビでブーストが発動して息継ぎを挟む間を与えない程に加速していく。

 何よりも圧巻なのは、ハイスパートで難度の高いこの振り切れた変態楽曲を、華麗に颯爽と歌い上げるキャスト陣が発揮した表現力の強さには流石だと唸るしか出来なかった。聴けば聴くほどに魂を奮い立たせてくれる楽曲だ。

 

 

 

青き原初の謳ー 青いリフレイン&名もなき青のハルモニアを斯く語る

 その報はまさしく『青天の霹靂』と言っても過言じゃなかった。
良くも悪くも、予期せぬ突然の出来事の意味を持つ言葉だが、今回の報に対してはいい意味での事だった。

 

 

 昨年(2023年)に実施した『モノコン2023』空想アニメ賞の大賞作品からインスパイアされた楽曲(計3曲)を収録したミニアルバム『~まだ見ぬ青を探して~時々カルテット』に、ミュージックレイン3期生五名の歌唱参加が決定したとの事。この報に胸が熱くなる衝動を抱き……魂が震えた。そりゃそうだろう。ミューレ3期生にしか謳えない彼女達だけの楽曲がリリースされるのだから。

デビューしてからここまでの軌跡で、彼女達は様々な楽曲を謳って来た。キャラクターソングだったり、世に溢れる数多の楽曲をカバーしたりと。どの楽曲を謳っていてもいいモノではあるのだけれども、やっぱり求めてしまう……ミュージックレイン3期生にしか謳えない五人だけの謳を。それが、ようやく叶った。クドい様だが…本当に胸が熱くなったのだ。

 で、この作品『~まだ見ぬ青を探して~時々カルテット』(著・舟津湊)は、似た者同士の少女4人が織りなすポップでリアルな音楽×青春ストーリー。物語の作中に描かれる少女たちの青さや生き生きとした表情を、オープニングテーマ、エンディングテーマ、挿入歌として三曲の楽曲に落とし込んだ。3期生の五人は、OP楽曲『青いリフレイン』とED楽曲『名もなき青のハルモニア』の二曲を謳った。


ようやく叶った、この五人にしか謳えない謳である二曲の所感をこれから書き殴っていこうと思う。ちなみに、作品の方には一切触れず楽曲のみを聴いた薄~いインプレッションなのであしからず……

 

 


 青いリフレイン

 

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 フレッシュな清々しい風が軽やか吹き抜けていく清爽な雰囲気と、奇を衒わない素直なメロディ構成は、王道を往くOP楽曲テイストだという主張をイントロから強烈にして来て、ラストまでその勢いのまま駆け抜けていくテンポの良さ。そして、相川奏多・橘美來・夏目ここな・日向もか・宮沢小春の歌声が、潔いメロディと歌詞に更なる彩りを添えている。

 力強さと明瞭な声質を活かし、弾んで跳ねる様な歌い方をしている橘さんと相川さん。アップテンポでシンプルな曲調と、発音がハッキリしている彼女達の歌声の親和性は本当に見事。一方、飾りっ気の無い純朴さを出している夏目さんと日向さんの歌声からは、未来への希望をひたすらに信じているエネルギーを感じた。そして、四人と一線を画していたのが宮沢さんの歌声。透き通る様な繊細さと芯の強さを併せ持った彼女の歌声は、独特の深みになっていて清々しさの要素を際立たせていく。

 メロディと五人の歌声は奇を衒わない、潔いと評した様に、歌詞もまたOP楽曲らしくポジティブな方向性の言葉で綴られている。詞の世界観をもの凄くざっくり言うと…直向きに夢を追い求めて、好きな事に情熱を燃やしていたあの頃。置き去りにした当時の情熱を呼び醒まして今の刻を生きる為の燃料へと変換させたいエネルギーを求めている的な感じか。

タイトルに銘打たれている『リフレイン』は、楽曲や歌詞を繰り返すという意味の音楽用語だが、思い出や心情を繰り返して思い起こす意味も含まれている言葉でもあるとの事で、そちらの意味でも解釈出来る詞になっていて、ここで謳われる『キミ』は、仲間でも良いし、過去の自分という捉え方も出来る。

 この楽曲をフルで聴き終わって感じたファーストインプレッションは、いい意味の青臭さ全開な楽曲というモノ。そもそも『青』自体が本作品の根幹になっているテーマであり、楽曲も奇を衒わない構成で作られている。そして、物語の登場人物と謳っている五人も若い世代の表現者ってのも大きな要因。これでもか!って位に青を主調されるとかえって気持ちが良く、本曲を優秀な青春ソングへと昇華させている。

 本当に、一度聴けば、この楽曲がどういう楽曲なのか一発で分かる楽曲になっていると思う。そういう意味で、難解さも無いストレートな楽曲なので伝わりやすいなのかと思える。

 

 


 名もなき青のハルモニア



 『~まだ見ぬ青を探して~時々カルテット』のED楽曲といった位置付けの楽曲。
『青いリフレイン』がOP楽曲の王道を往くテイストだったが、この楽曲はED楽曲の王道を往くテイストの楽曲へと仕上がっているというインプレッション。

タイトルの『ハルモニア』は、英語の『ハーモニー』のギリシャ語読みだそうな。
調和するというのは、英語のハーモニーと同じ意味だが語源になったギリシャ語では、『繋ぎ合わせる』『結びつける』という意味とか。そこから調和という意味になったらしい。

EDテーマという事なので、一つの物語の締める役割を担っている。(まだ読めてないが…)物語の登場人物達が、ここまでの刻で体験した事や葛藤を受け止めて出て来た言の葉を楽曲に落とし込んでいる作りになっている様に感じた。OP楽曲『青のハルモニア』よりその傾向が強い楽曲なのかとも思える。

 さざ波の音から始まって、柔和な『静』のリズムと歌声から徐々にテンポが『動』のリズムと歌声へと進行して盛り上がっていく。ただ、明朗な雰囲気一辺倒ではなく、しっとりとした中にある芯の強さを謳っている様に聴こえて来る。彼女達の歌声は明瞭過ぎでもない。かと言ってしっとり過ぎてもいない絶妙なバランスのハーモニーを響かせて聴き心地の良さを醸し出している。

複雑なハーモニーへの昇華は、彼女達の魂がそれぞれ違った想いを抱きつつ…音楽でもって繋がって結びついている事を思わせる。この楽曲では、誰の歌声が主軸を担い、目立った聴き所といった感じは無い。楽曲タイトルに『ハルモニア』(ハーモニー)と冠された様に、五人の歌声が一つになった、どこかノスタルジー感ある切なくも優しくて力強い歌声が、こちらの魂へと沁み入るままに任せる楽曲なのだろう。

 


 
 終わりに


 かなりの駆け足だが……ミュージックレイン3期生にしか謳えない五人だけの謳についての所感を書き殴ってみた。

彼女達の謳については、『IDOLY PRIDE』や『日々荘3号館』のLIVEパートにて聴かせてもらって来たのである程度理解している。3期生の五人名義として、原初の楽曲となったこのミニアルバムに収録された二曲を聴いてまず思ったのは安心して聴けた事だろう。コレはやっぱり大きな要素。

その安定感をもたらした要因は、これまでの経験の賜物なのは、この怪文書で自分が一々書かなくても皆さんは充分に理解されている事だろう。

 気の早い話ではあるのだけれど……ようやく叶った五人にしか謳えないこの二曲をLIVEやイベントにて聴ける機と刻が訪れる事を切に願って待ち望みたい。おそらく、音源で聴いた時以上にエモーショナルな感情を揺さぶってまた新しいインプレッションを刻んでもらえるはず。


 それだけのポテンシャルをこの二曲は秘めているのだから。

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #41 クリスマスには君と

 

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 クリスマスには君と/月のテンペスト


 『名は体を表す』を地で行く、クリスマスをイメージした月のテンペストの楽曲。
音源は、ゲームに実装された3DLIVE映像と、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album[未来]』に収録されている。

 アイプラ・クリスマスソングシリーズの系譜に連なる(※著者が勝手に命名……)TRINITYAiLEの『lumière』(リュミエール)は、荘厳とまではいかないが、幻想的で繊細な曲調と沁み入って傾聴させる歌声が特徴的な『静』のクリスマスソング。本曲は、『lumière』とはガラっと雰囲気を変え、煌びやかさを纏ったポップでアップテンポな曲調と、月ストの五人による可愛らしさを前面に出した歌声が特徴になっている『動』のクリスマスソングだと自分は感じられた。

イベントストーリー『君と願う月灯の祝祭』では、クリスマス当日の単独LIVEに向け、そこで披露する新曲の作詞を月ストのメンバーが担当する事に。話し合いの末、クリスマス当日に誕生日を迎える琴乃を一緒に祝う楽曲として楽曲制作する流れになりストーリーは進行する。

 歌詞の解釈だが、クリスマスを一緒に過ごす大切な存在とされる『君』への想いを謳う楽曲でもあるし、イベントストーリーの根幹になっている琴乃の誕生日を四人が祝う謳という解釈も可能なダブルミーニングの楽曲。

大切な人を想って祝う『祝福の謳』であるからこそ、気取って斜に構えず仕掛けに頼らないしっかりと地に足着いた誠実なメロディと歌詞。自分は「この世に生まれてくれて本当にありがとう」という歌詞が一番好きだ。シンプルだが魂にまで届く様な力強さと、純然な深愛の情が満ちた言の葉に胸打たれる。

 どんな存在でも、この世に生まれなければ出逢う事は絶対に叶わないし、繋がれる切っ掛けも出来ない。その奇跡に感謝を伝える事をどこか置き去りにしてしまっている。特に、身近にある大切に想う存在ほどその大切さが隠れてしまう。それは、人の性であり業でもあるのだろう。気障な物言いなのは承知しているが……クリスマスや誕生日は、そんな大切な存在への感謝と祝福を伝える為の特別な一日なのかもしれない。

 月ストの五人の歌声が、可愛らしい要素だけじゃなく、柔和で優しい温かさも感じられるのは、特別な日となった奇跡の刻への感謝と祝福が込められていたからだと思えてならないのである。

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #40 Top of the Tops

 

 

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 Top of the Tops/ⅢX


 音源は、単独での配信にダウンロード販売。他にはアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album[未来]』に収録とフル尺でのMVがある。余談だが……この楽曲が単独でリリースされた日である1月25日はメンバーであるmihoの誕生日でもある。

 イントロからズッシリと響いて来る重低音によって聴覚が制圧されていく感じは、スリクスの圧倒的強者感を表しているかの様だ。原初の楽曲であり『アイコンソング』でもある『Bang Bang』の時点で、K-POPテイストを軸にした大胆不敵な格好良さというスタイルの基礎は完成されていた。
そこに、本曲で加わる彼女達の勝利への渇望と執念といった生の感情を剥き出しにした荒々しさと勇ましさがプラスされ、グループとしての魅力と強さを更に引き立たせていく。

 テンションが上がり気合の入る楽曲ではあるが、ハイテンポで情熱的に歌い上げるテイストではなく、ややテンポは抑え気味でゆっくりと歩を進める様な地固めをしながら階段を上っていく……そんなイメージをメロディからは感じ取れる。そして、溜めに溜めてから、この楽曲の根幹になっている三人の勝利への渇望と執念といった生の感情を剥き出しにした荒々しさと勇ましさを最も色濃く感じられるサビへと突入していく構成が熱く沸き立たせてくれる。

 楽曲タイトル『Top of the Tops』は『最高の中の最高』を意味する英語表現。
三人にはそれぞれ真に叶えたい夢があり、トップアイドルの座は単なる一つの通過点でしかないと豪語する。その為には勝ち続けなければいけない。失敗だったり自分を見つけてもらえない事に対し、とても敏感で恐れを抱く。

 彼女達にとって敗北は受け入れ難い最大の屈辱。その事実は傷痕となって蝕んでいる。
でも、このまま敗者でいいとは思っちゃいないし、この程度だと蔑まれ軽く見られたまま終われない。貪欲に走り続けて戦うしか道は拓けない。それは、三人の反骨の魂の炎を滾らせる最高の燃料。歌詞からは、彼女達のスタイリッシュな格好良さよりも、泥臭く生々しい感情が駄々洩れしている。ただ勝利の為だけに懸ける想いは本物。

互いの人となりはとにかく気に入らないし、寄り添うつもりは一切無いが……個のチカラの強さは認め合っているドライでヒリ付いた関係性を、スリリング感と不穏な雰囲気を醸し出すメロディへ落とし込んでいる。調和しない歪な要素だが、スリクスの場合だとそいつが不思議と合致する。それは、彼女達にしか結べない『絆』なのだろう。

 今を全力で戦えない者に未来を語る資格は無い。強いから戦うのではなく、戦い続けるからこそ強くなれる事。fran、kana、mihoの反骨の魂と野心を謳うこの楽曲は、ⅢXの『戦いの謳』であり、『アンセムであると勝手に思っている。

 

 

 

待ち望んでいた新曲~ガールズフィスト!!!! GTの新曲を斯く語る。

 ―このバンドのこういう楽曲を待っていたんだ。


 それが、ある楽曲を聴いた際のファーストインプレッションだった。もう、イントロの瞬間から魂を鷲掴みにされた感覚に陥り、血が滾って鳥肌が治まらなかった。盛ってるワケじゃなくてコイツは本当に在りのままに感じたインプレッションなのだ。

そんな楽曲について、魂を掴まれた感情が揺さぶられた要因をありのまま書き殴っていこうと思う。

 

 

 Bugging Me!!!!/ガールズフィスト!!!! GT

 

 

 二年振りのリリースとなった『ガールズフィスト!!!! GT』の新曲。これまでに彼女達が謳って来た楽曲は、思春期の少女の等身大な姿と心情をパンキッシュなロックチューン調の楽曲で占められていた。

だが、この楽曲はそれまでのGFGT!!!!楽曲の系譜とは明らかに違った道筋を往く。パンキッシュな要素は鳴りを潜めて、イントロから怒涛の如く重厚でアグレッシブにこちらの感覚へと攻め込んで来るハード&メタルチックなサウンドで殴りかかって来る。その荒々しいサウンドに負けない四人(浅見春那さん、内山つかささん、奥村真由さん、井上杏奈さん)の歌声もまたアグレッシブなモノになっている。

歌詞のテーマになっていると思われるのは、求められている『いい子』からの脱却と反逆の魂だろう。それは、実際のLIVEで彼女達が叫んでいる『拳を上げろ!!!!』というこれまた反逆のシンボルへと繋がっている様にも感じ取れる。

 で…この楽曲に血を流していくのは、ボーカル・浅見春那の表現力と爆発力だろう。
パワフルかつエネルギッシュな軸になっている部分が際立っているのは勿論の事、クールでスタイリッシュさも駄々洩れして、更に…低音域で滲み出てるエロさ色香に惹き込まれてしまう。コレをLIVEで謳っている彼女の表情を観たいと思わせてくれる。

そして、忘れてならないのが、荒れ狂い情熱的で血湧き肉躍るサウンドを奏でる楽器隊である、ギターの奥村真由さん、ドラムの内山つかささん、ベースの井上杏奈さん。自分は、演奏技術について語れる事は全くと言っていい程無いが…これまでのGFGT!!!!楽曲の系譜とは明らかに路線が違っておる上に、難度もおそらく段違いに高いモノだろう。彼女達の技術の助けになっていたのは、LIVEで度々カバーされて演奏して来た過去のパンクロックの名曲を演ってきた経験=戦いの記憶なのだろう。それがあったからこそ演奏出来た様に思える。

 未知へのジャンルへの意欲溢れるチャレンジではあるが、それを成し遂げられる下地を丹念に積み重ねられたからこそ見事に実を結んだ。それは、『GIRLS' F1ST!!!! GT』の『アンセムとしてド真ん中に据えられる確かな強さと説得力がこの楽曲にあった。

間違いなく、LIVEに参戦してイントロかかった瞬間にヘッドバンキングして終わったらもれなく首が逝くまでの光景が脳ミソに浮かんでいるし、その刻と機が来るのを待ち望んでいる。

 

 

 missing you/ガールズフィスト!!!! GT


 この楽曲は、これまでの系譜を踏襲しているパンキッシュなロックチューン。
ファーストインプレッションは、爽快感満載な応援ソングと言った所。『Bugging Me!!!!』がこれまでと違ったアプローチで放たれる変化球かつ変態楽曲だったのに対して、こちらは奇を衒わないこれまで通りに培ってきた直球で勝負するという感じだろうか。

 公式サイトの楽曲紹介文には、ボーカルの奈川芳野が落ち込んでいる自分自身やメンバーを想定して書いたかのような、無垢で飾らない歌詞に勇気づけられるとある。その対象は、キャラ同士の間のみならず、彼女達を演じて魂を共有する存在である、浅見春那、奥村真由、内山つかさ、井上杏奈に向けられたエールの様にも思えて来る。

曲題の『missing you』の訳は様々あるが、その中の一つに『あなたのこと想っているよ』というニュアンスを含んだモノもあると言われている。個人的な意見だが、この楽曲はそういう意味合いの楽曲なのだと思っている。

 溌剌としたフレッシュな雰囲気に、浅見さんのキュートさに全振りした歌声が彩りを添えている。この振れ幅の広さと深さは流石だなと膝を叩いてしまう。要所で鋭く切れ込んで来るギターに、熱く激しくも楽し気な鼓動を刻むドラム、主軸をガッチリを支えていくベースと聴き所は満載。全てを見て来たワケじゃない奴がほざいても説得力の欠片も無いのは承知だが……これらの要素も彼女達がここまでの軌跡で培ってきた賜物ではないだろうか。

 

 

 と、まあ……こんな感じで所感を書き殴ってみた。
待ち望んでいた新曲のリリースは勿論、その出来栄えが想像以上に素晴らしかった事もあり非常に満足したのが総合的な所感となった。

それと、新曲リリースと同時に新たに開設された公式サイトには、第四弾までのシングルリリースが発表されていて、これらの楽曲も新境地開拓的な楽曲揃いみたいだ。

 あとは……是非ともワンマンLIVEの開催を期待したい所。そのLIVEでこれらの楽曲が聴けてブチ上がれたら本当に最高だろう。その日が一刻も早く訪れる事を願いつつ……この怪文書の締めとして筆を置く事にする。

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #39 Magical Melody

 

 

 

 Magical Melody/TRINITYAiLE with 初音ミク


 2022年8月10日に配信された『IDOLY PRIDE 生放送』内で、初音ミクとのコラボレーション企画の報が告げられた。このコラボ企画への参加アーティストが『あの』初音ミクというのは、まさに晴天の霹靂と言っても過言では無い衝撃だった。

本曲は、『IDOLY PRIDE』と『初音ミク』とのコラボレーション企画にて発表された楽曲。
歌うのは、TRINITYAiLEと世界的な人気を誇るバーチャル・シンガー初音ミク。音源はこの他に、初音ミクのソロver.(ショート尺)と、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album[未来]』に収録されたトリエルのみで歌うTRINITYAiLEver.がリリースされている。

 曲調は、トリエル楽曲の定番とされる(注:個人の所感)アップテンポのデジタルポップ調。そして、このコラボに通じているテーマとされる『巡り逢いの奇跡』を盛り込んだ歌詞。軽妙洒脱で煌びやかなメロディと、純然な伝えたい想いと感謝を謳う詞が絶妙な調和となってリスナーの感性を揺さぶる。

ミクも出演し、本曲を題材にしたイベントストーリー『未来とつながるマジカルメロディ』での瑠依によるこの言葉に本コラボ企画の精髄があったと思える。

 

 体の有無や技術なんて関係ない。私達には歌があるんだから。

 

 

 形も刻も距離も超えられるバーチャル・シンガ―であるミク。しかし、彼女は人と直に触れ合う事は叶わない。一方、あらゆる制限はあるけれど、人へ寄り添えて触れられる事が出来るトリエル。血の流れる者達とそうじゃない者という対極に在る両者だが双方共に完璧な存在ではない。それでも、彼女達には、多くの人へ伝えたい想いとPRIDEを『歌』に乗せて伝える手段がある。

 瑠依、優、すみれ、そして…ミクの純然な偽り無い想いと魂。彼女達の想いを汲んだ奇を衒わないシンプルな歌詞。それらが組み合わさり、巡り逢えて、境界を超え、魂が繋がれる奇跡を起こす魔力の宿った謳へ昇華した……自分はそう思えてならなかったのだ。


 そして、この楽曲については、もう一つのバージョンである『TRINITYAiLEver.』へのインプレッションも書き記しておきたい。

 こちらのバージョンでも、根幹になっている『巡り逢いの奇跡』への感謝は変わらない。ただし、その対象は、コラボ相手のミクではなく、星見プロとの絆への感謝を謳っている様に思える。東京編での彼女達の軌跡を見るとなおさらそう思えてしまうのだ。

 東京編におけるトリエルの軌跡についての詳細は長くなってしまうので省かせてもらうが……OTONA達の都合と策謀に翻弄され、裏切られ、貶められる…でも、新たな絆が彼女達の『翼』を朽ち果てさせず再び舞い上がるチカラをもたらしてくれた。詞にある『あなた』を星見プロの皆へ当てはめると、その『絆』は、瑠依、優、すみれにとっては掛け替えの無い『希望』だったに違いない。

 三人は信じて待っていてくれた星見の皆へ感謝を伝えたい。三人は『私達には歌があるんだから』と瑠依が言った様に歌でもって感謝を謳った。勿論、感謝を伝えたい対象は星見の皆だけじゃない。三人を取り巻く全ての刻と縁への感謝も込めて未来の刻へと羽ばたいていく。そんな決意表明と覚悟をこのバージョンからは強く感じられたのだ。