
欲しいよ/伊吹渚
ゲーム内ゲーム(正式名称が不明なのでこう称す)第二段『もしも恋をしたら~伊吹渚編』TRUEエンドにて流れる伊吹渚のソロ楽曲。音源は本曲単体でのデジタルリリースと『IDOLY PRIDE Collection Album [Chronicle]』に収録されている。
前作(と称して良いのかは分からんが…)に当たる『もし恋』一ノ瀬怜編のTRUEエンディングで流れる怜のソロ楽曲『No.1』は、ビッグバンドジャズ調の爽快なダンスチューンで華やかなパレードを彷彿させる様な楽曲になっていて『動』の要素が強いテイストだと個人的には思っておる。
そして、第二段の『もし恋』楽曲=渚のソロ楽曲はスローテンポのラブバラード調。
伊吹渚役の夏目ここなさんは本曲を「もし恋とリンクしたような楽曲なので結構甘々なテイスト」と評されていて、この『甘々』という要素が本曲の根幹を成しているモノだと自分は感じている。
その『甘々』なテイストの真髄になっているのは、渚=夏目さんの歌声ではないだろうか。彼女の柔和な歌声によって本曲が持つ『甘々』なテイストが際立ち、絶妙な聴き心地の良さに変換されて魂へ沁み渡っていく。
『もし恋』渚編のテーマになっているのは、幼馴染との友達以上恋人未満の関係から恋愛への発展。ちなみにコレは渚がゲーム内でやってみたいシチュエーションでゲーム内ではそれが取り入れられたカタチになり本曲の歌詞にも反映されている。
前述でも触れたが、本曲は『甘々』なテイストのラブソング。しかし、歌詞の方は妙な生々しさが宿っている様に思える。さしずめ、渚の繊細な心情やもどかしさを吐露するモノローグ的ニュアンスか。
『もし恋』の渚は詞にある君=幼馴染との恋愛を歌い、現実の渚は彼女の抱く恋愛観を歌う。現実と妄想(いい意味での)が混ざり合っていく不可思議さが本曲の魅力になっていると感じた。
本曲と『もし恋』渚編のテーマの根幹を成しているのは現在の関係性からの発展と先述した。その事を強烈に想起させる歌詞があって、その詞はある時間帯に繋がる。
「いつもの帰り道」。この詞がその時間帯に当たる詞だと解釈する。
渚が学校から帰路に就くのはおそらく夕刻。その刻は一日の終わる時間帯と言っても過言では無い。更に、ある関係性が終わりを迎える刻とも捉えられる。しかし、詞の内容を見ると渚は『君』=幼馴染の彼に想いをまだ告白していない様に思え、渚の感情が揺さぶられてセンチメンタルになっている。渚の心情と歌声が醸し出していく叙情的な雰囲気は夕刻に聴くとより沁み入る様な感覚に誘われる。
『君』に対して深愛の情を伝えたいけど、どう伝えて良いのか分からない。
『もし恋』内の渚が想いを打ち明ける事を躊躇っているのは、彼に想いが受け入れられなかった場合。それと、友達という関係性まで破綻してしまう事も恐れているのだろう。
気持ちを素直に伝えられない、恥ずかしい、今更自分の方からいう必要もないし察して欲しい…でも、コレは恋愛だけに限った話じゃない。身の回りにいる大切な誰かに想いを言の葉に乗せられない人は多い。身近な人ほどその大切さが曖昧になっているのではないだろうか。渚も本心では理解しているのだ。だからこそ彼女はこう歌うのだと…
伝えたいよ 好きだよ
素直になれたら良いな
ちょっぴり 勇気が 欲しいよ
―伊吹渚(CV:夏目ここな) 『欲しいよ』より引用
あくまでもこの解釈は個人の妄想ではあるが……本曲は渚の恋愛における心情を謳うラブソングである。しかし、恋慕の情だけに留まらず『想い』を言の葉に乗せて伝える為の勇気を奮い立たせるメッセージが込められている様にも思えてならないのだ。