突然だが『月季花』の話をしたい。
『月季花』(ちょうしゅんか)とは…『ガールズフィスト!!!!GT』の楽曲で、音源は先日リリースされたミニアルバム『F1RST!!!!』に収録されている。本曲を含んだこのミニアルバムに収録された全6曲の作詞は、白瀬双葉役の内山つかささんが担当されている。
まず、本曲を聴き終わって抱いた印象は…いい意味でガールズフィストらしくない楽曲だなと。その『らしくなさ』を強く感じさせたのは『ガールズフィスト』公式の楽曲紹介にある、本曲は切なく胸を打つ壮大な純和風エレジーというモノだ。
エレジーとは、和訳で哀歌、悲歌といった悲壮感をテーマにした楽曲を指している。確かに、本曲を構成している要素は悲壮感や陰の要素が目立っていて、これまでのガールズフィスト楽曲には無かったモノ。なおかつ、全体通して醸し出している幻想的な雰囲気も『らしくなさ』に拍車をかけていく。陰がある要素だけで言うとバラード調の『Full of Lies』や『WISH』も当てはまるが本曲はそれ以上の陰を感じさせた。
内山さんが綴った歌詞も壮大なテーマが盛り込まれていた。要約させてもらうが……中国の『えくぼ』の言い伝えが詞のモチーフになっていて、長い刻を耐え忍んで愛しい人の記憶を残しつつ……未来の刻での再会を願う女性の純然な想いが綴られている。長い刻を過ごす、しかも正気を保つのも困難な長さ……唯一の希望として在ったのは耐え忍んで訪れた未来の刻で思い人にただ再び逢える事だけ。
でも、その未来への希望が本曲を単なるエレジーにしていないのだ。サビで一気に解き放たれる激情をリズム隊(内山さん、奥村さん、八木さん)によるメリハリの利いた演奏、そして、詞の中で登場する女性の情念と純然な想いを浅見さんのボーカルが見事に表現し、ドラマチックかつ情熱的な熱さへと昇華していく。
その熱が長き刻を耐え忍んでいる女性の想いと魂を燃やし続けている燃料なのだと。愛しい誰かを強く想う事は、良くも悪くも人の生きるチカラとなる。
本曲は台詞パートがあって、そこには、長い刻を独りで耐える事は苦ではないと。でも、想いが消えてしまうのは怖いと。いずれ訪れる新しい出会いはいらない。ただ…想い人に逢える為だけに生き続ける覚悟……
この台詞パートの締めである『ただ私は……』からラスサビの歌い出しになる『貴方に逢いたい』と繋がっていくのが本当に見事で尊いというインプレッションとなって感動へ至っていく。
曲調の大部分を陰の要素である切なさや悲壮感で埋められているが、どこか叙情的であり未来への希望も感じさせる前向きな楽曲という解釈も出来る。そういう多角的な解釈が出来る点も壮大な楽曲なのだと思える。
それと、コレは自分の勝手な解釈だが……愛しき人への想いをテーマにした楽曲ではあるが、恋愛に限らない友情や敬愛の情も内山さんは歌詞に盛り込んでいる様に思えた。一人の表現者として彼女がこれまでに体験した事やあらゆる想いが詞に乗っかってるのではないだろうか。
誰かに直に逢いたい。現代は技術の発展によって様々な想いをカタチにして発進できる術がある。ただ……やっぱり直に対峙して想いを循環させていくチカラの強さと熱さを越える事は出来ない。内山さんにとってそれも愛しいモノの括りに入ってるのかなと。
ただ、前述した様にこの解釈は個人の勝手な妄想によるモノ。当たり前だが声高々に正解だなんて言えたモノじゃない。正解を示せるのは本曲の詞を書かれた内山さんだけだから。
最後に…本曲は今後いろいろなLIVEで歌われていくだろう。
ガールズフィストのメンバーがその経験が糧になって成長していく様に、楽曲も伴うカタチで成長してまた新しい顔と解釈が生まれていく。大切に歌い継いでいって育てて欲しいと切に願いつつ…この怪文書の筆を置く事にする。