スフォルツァート/井川葵
『LizNoir』メンバー・井川葵のソロ楽曲。
音源は、本曲のみの配信リリースと、アルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [Chronicle]』に収録されている。
いずれは、星見の10人(月スト&サニピ)と長瀬麻奈以外のアイドルのソロ楽曲もリリースされるだろうとは思っていた。たが、その一番手にグループのリーダーである、TRINITYAiLEの天動瑠依、同じLizNoirの神崎莉央、ⅢXのfranではなく、グループのブレーン(参謀)役の葵に白羽の矢が立ったのはいい意味での驚きだった。
タイトルに銘打たれた『スフォルツァート』は、イタリア語で強めるという意味。本曲のテイストはその言葉通りな強さを感じさせるアグレッシブな楽曲で、高垣彩陽さん曰く「笑っちゃうほど難しい楽曲」。強く激しいという要素のみで捉えると、ダンスが好きな葵のパーソナリティに合致した楽曲とも言える。
本曲を聴いた際、ダンサブルな楽曲というよりも歌声が突き抜けていく力強さに振り切った楽曲という意外性。これは歌声であからさまに曝け出している葵の激情で、高垣さんがBlogに綴られていた「新たな葵の一面を感じてもらえる一曲」の根幹になっているモノだろう。
しかし、作中において葵の歌唱力についてはベールに包まれているし、歌とダンスだったらどっちが好きかと問われて迷わずダンスが好きと断言する葵。故に、このボーカル特化へ振り切った楽曲を歌っているのは戸惑いを感じる。キャラソンなので当たり前の話だが、葵の声色で歌ってはいるけれど、演じる高垣さんの歌手としての『我』も曝け出している様に聴こえる。
本曲は井川葵のキャラクターソングであるが、同時に葵のイメージソングとしての面もある楽曲だという事。前述でも触れたが葵に歌唱力が高いという描写は一切ない。だが、この楽曲は高い歌唱力でリスナーをぶん殴っていくボーカル特化に尖らせた楽曲。歌詞が紡いでいる世界観も葵の激情を見事に表現しているし、ボーカル特化の楽曲ではあるが曲調は激しめでテンポは早い。
そこに、最初からクライマックス感全開な高垣さんの熱く溢れ出てくる激情を抑えきれない解き放たれた様な歌声…いや、血の流れる魂の絶唱。ダンスで生き様とPRIDEを表現していく葵と、彼女の激情を絶唱で代弁していく高垣さんの魂がリンクしていく構成が効いている。
ここまでに葵が駆けて来たアイドルの軌跡。様々な出来事の経験や多くの人との巡り逢いがあって…彼女はいろいろと学んで変わる一歩を踏み出せた。やっぱりその中で最も大きなウエイトを占めているのは、同じグループのメンバーである、莉央・愛・こころとの縁と絆。「孤独じゃないから」の詞が示す様に、葵はリズノワと仲間への情が人一倍強くて本当にリズノワの事を大切に想っている。
LizNoirの四人なら、最高の景色が見られるトップアイドルへと到達出来る。葵は本気で思っているし出来ると信じている。その激情も本曲を彩るモノで、あくまでも個人の印象だが……井川葵の余す所無く解き放たれた激情は、本曲を『決起の謳』でもあり『アンセム』としての説得力をもたらしている。