プラチナ/DayRe:
2ndEP『刹那的ロマンティック』の3曲目に収録されている楽曲。
今作のEPのHighlight Medleyを聴いて、最もインパクトが強烈でフルサイズが聴ける事を熱望していた楽曲。で、そのインパクトを受けた要因は…
サビのみの段階でも、本曲の異質さが他の楽曲とは明らかに方向性とテイストが違いすぎたのだ……その異質さは、この2ndEPだけの範囲じゃなくてDayRe:楽曲全体に言えるものだった。
本曲のどんな要素に異質さを感じられたのか?それは、本曲のテイストがどうしようもなく儚くて切なさに溢れている悲歌・哀歌(エレジー)の要素を感じられて、DayRe:楽曲におけるエポックメイキングと言っても過言じゃないと思っておる。
本曲のテーマになっているのは、”恋”に気付けず後悔を抱えた切ない春の想いを、ピアノとシンセのサウンドで仕上げた楽曲との事。メロディ構成についての知識はからっきし無いが…とことんシンプルに組まれていて、ボーカルを際立たせて聴かせるぞという意識がある様に感じられる。
ボーカルを際立たせるという意識からか、五人のボーカルは力任せに行くのでなく、高音域を張り上げつつも行き過ぎない絶妙な塩梅で歌っていて、淀みが無く沁み渡っていく綺麗な歌声を響かせる。
この儚げでいて繊細なメロディを活かして、綺麗な歌声の主軸になっていると自分が感じたのが、宮沢小春さんと橘美來さん。あくまでも私見の域ではあるが……彼女達は五人の中でも高音域の歌声が映える人達だなと思っている。
※異論・反論は潔く受け付けます……
ただ、高音域が映えると言っても二人の歌声の質は違っている。儚げで透き通るという例えが相応しい宮沢さんの歌声。凛としてエネルギッシュな要素を纏う橘さんの歌声。高音域が映えるという系統は一緒だが、高音域の質は違っている。その彼女達を対にした歌割りが、切なく物悲しくも美しい楽曲への昇華に至る。
冒頭で本曲はどうしようもなく儚くて切ないテイストになっていると評した。
全体のテイストの真髄になっているのが歌詞が紡ぐ”恋”に気付けず後悔を抱えた者の物語。ざっくり言ってしまうと、この物語は失恋がテーマになっている。
失恋とシンプルに言っても、そのパターンは一つに限定されるものじゃない。あまりにも多彩すぎるので本稿では挙げないが……本曲の歌詞を読んでみると、主人公と思われる『私』は『君』とは恋人関係にまでは至っていないが気の置けない友人関係だろうか。
ところが、その関係は終焉を迎えてしまい途切れた。そうなって『私』は痛感したのだろう。『君』に対して抱いていたのは、友人としての愛情もありつつも恋心も抱いていた事に。
『私』と『君』は、近くに寄り添っている事が当たり前の域までなっていたと考えられる。双方共に大切な人ではあったのだろう。もしかすると、心の片隅に恋心はあったのかもしれないが、その気持ちは素直に伝えられない、そもそもどう伝えていいかが分からない、恥ずかしい、今更いう必要は無い、いつか伝えればいい……そんな想いをしまい込んで蓋を閉じた。
どういう経緯で『私』と『君』の関係が終焉を迎えるのか?それは2Bの歌詞「いつからか私たち違う道を進んでいたんだろう分からなくて」にヒントがある様に思える。ここの箇所だが、1Bとはテイストが異なり、メロディと歌っている相川さんの歌声が激しめの主張をしている。(ここ歌っているのは、多分相川さんだったと思う……)
その激しさは『私』が抱く過去の後悔なのだろう。互いの想いがすれ違っていた事を気付かなかったのか、あえてそれから向き合う事をしなかったのか?『~たら、~れば』が『私』の脳ミソを駆け巡って負の感情に囚われる事を徹底して描いていく。心情や距離がすれ違ってしまったか、いろいろな要因が重なって徹底的に拗れたか、詳細は分からんがもうどうにもできない所まで行きついてしまった。まあ、円満的な別れ方じゃないのは確定だろう…
『プラチナ』という本曲のタイトル。貴金属の名称であり、変色や変質しにくい特性から『永遠の愛』なんて石言葉があるそうな。また、希少な貴金属であるため貴重な物の比喩として使われる言葉でもある。
『私』が『君』に抱いていた好意は深愛の情だった。だが、それに気が付いた刻に『君』は傍にいなかったが……互いを思いやっていた刻は確かにあって何よりも貴重で尊い刻だったのだと。そんな想いを表現していく五人の綺麗な歌声がこのどうしようもなく切なく哀しい物語を美しく彩る。このアンビバレントな落差が魂へじんわりと沁み込んで来る。
『私』が過去と『君』の幻影に囚われてしまったのは、ただ素直な想いを言の葉に乗せて伝える事が出来なかった事による後悔の念。関係と距離が近すぎるが故に起きてしまった悲劇で、踏み込まなければいけなかった。伝えて拒絶されたら全部が壊れてしまう事を何よりも恐れた。
距離と関係が近く、それが当たり前の縁に身を置いていると、想いを言葉にして伝える大切さを隠してしまう。そして、伝えられずに大切な何かを失って負の感情に苛まれる…ある意味そいつは人の『性』であり『業』なのかもしれない。
ちなみに本曲は、失恋による囚われた負の感情を振り切って未来へ進もうなんて救いは無い。終始『私』が後悔に苛まれたどうしようもなく切なくて哀しい楽曲に仕上げている。ラスサビのフレーズはそんな本曲を最も象徴しているのではないだろうか。
今は頭の中痛んだ(一人の)
君の声と匂いが(坂道)
紙の上で滲む言葉
変われない私みたいなプラチナ
―DayRe:『プラチナ』より引用
『君』が傍にいない現在の刻を生きる『私』にとって、『君』の声と匂いの記憶は苦しいもの。いつだって救いの刻は突如訪れない。コレは刻が経ち徐々に解けていくのだろうか。前述した救いが無い事とは矛盾してしまうが……唯一の救いとなり得るのが「変われない私みたいなプラチナ」という歌詞。
『君』を想い生きて来た貴重な刻の記憶を魂に刻んで自問を繰り返すのか。このパートの歌声ははどこか力強さを感じさせる。ただ、それは明確に未来へ向かう為の答えではない。そこも含めてこの儚くて物悲しい楽曲が堪らなくて魂へ沁み込んでいくのだと思えてならないのだ。