巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

アイプラ楽曲ライナーノーツ #15 réaliser

 

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 réaliser/TRINITYAiLE


 曲題の『réaliser』(レアリゼ)は、フランス語で実現するの意。TVアニメ第4話、10話エンディングテーマ。『Aile to Yell』や『les plumes』と同様、作詞・作曲・編曲はkz氏が手がけている。


 『Aile to Yell』の、応援歌的テイストに奇を衒わない純然なアイドルソングとしてスタンダード感を抱く『動』の楽曲というインプレッションから打って変わり、この楽曲は落ち着いた曲調を主軸に据え、余分な装飾的な音を削ぎ落しシンプルにボーカルを聴かせる『静』の楽曲という意識がある様に感じられる。

トリエルの三人も歌い上げるのではなく、一つ一つの音をなぞって確実に発音して柔和で透き通る様なノスタルジックかつセンチメンタル感を感じさせるボーカルを聴かせていって、見事に三人のボーカルが際立つ仕上がりとなっている。それらが高い純度で混じり合った事で、メロディとボーカルがすんなりと入って来て、穏やかに広がって染み渡っていく様な聴き心地の良さを感じさせる。


 この楽曲のテーマとして掲げているのは、トリエルの三人がこれからなりたい理想の姿、それに向かって頑張る過程、そして、実現していきたいものを描写しているとKz氏は語る。

言わば、ステージで輝き、ファンを導いて引っ張っていく絶対的なアイドルとしての姿を描写するのではなく、一人一人の等身大の少女達の心情描写に寄せた世界が表現されている。詞の内容だったりMVでは、瑠依、優、すみれが空を見上げている描写が多い所から察していくと、大空(夢)へと羽ばたこうという意志が込められた決起の謳でもあり、彼女達の初心の魂が再生される謳でもあるのだろう。


そうしたいろいろな背景を鑑みると、『réaliser』と『Aile to Yell』は『対』になる関係だと思える。ここで言う『対』の関係性とは、単純に対極・対照という意味だけではなく、二つの要素が揃って一組の要素として捉えられるという事。


アイドルとしてのTRINITYAiLE、一人一人の等身大の少女達でもあるTRINITYAiLE。片方の要素だけではTRINITYAiLEとして成り立たない。彼女達の過去・現在・未来という時間軸に意味を持たせていく。Cメロ(?)である、優→すみれ→瑠依→三人の順で歌い継ぐパートがこの楽曲の要を成す箇所だと自分は思っている。

 

 輝く場所まであとどれくらい?
 
    誰にも聞けずに胸に隠した

    3つの願いを紡いだ 翼に託そう


 ―TRINITYAiLE 『réaliser』より引用



 変わらない想い、変わろうとする覚悟。良い事も悪い事も全てに意味がある事。敗れてもなお諦めず貫き通したいPRIDE、共に寄り添う絆と魂への感謝……

前述で触れた様に、TRINITYAiLEの決起の謳でもあるし、原点回帰の意味の謳でもある。そして、究極的に言ってしまうと、TRINITYAiLEの生き様を示す真骨頂でもあり、魂が還れる集大成としての表情も見えて来て……瑠依、優、すみれの生き様を全部懸けて、夢を実現する為に謳う。ここで言う『翼に託そう』とは、彼女達の夢のアイコン(象徴)であるアイドル・TRINITYAiLEの比喩なのだろう。


 故に、TRINITYAiLEを取り巻く要素を全て内包させているこの楽曲は、TRINITYAiLEにしか謳えないTRINITYAiLEだけの『生命の謳』。大袈裟かもしれないが、そう称すのは過言では無いという説得力を、優しげだが内に秘めている熱い想いが漲る三人の歌声から感じさせる。