巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

IDOLY PRIDEを斯く語りたいおっさん。【物語編…のほんの一部】

 どうも。今回もまた、『IDOLY PRIDE』に関する記事。

 

 惹かれた経緯、楽曲の事、特定の楽曲への独自考察と書き殴ってきまして、今回はアニメにて紡がれた物語についての独自考察を書き殴っていこうと思う。


当Blogの独自考察の類は、著者の妄想&暴論によって書き殴ったモノになっております。
当然ながら、これから書くモノに関して『コレはこういう結論で正解である』などと言うつもりは一切ありません。

読まれていって『コイツ、アホな妄想してやがるwww』ぐらいのお手軽なノリで捉えてもらえるとありがたい限りであります。

 

 

 

 青春を懸けた10人の成長の軌跡

 

 

 この部分が描かれないのは話にならんし、プロモーションムービー(第一弾)でいろいろ語られた事が嘘になってしまう。あそこで語ったモノは、この作品で描きたい事でもあり、アイデンティティでもあるからだと思っている。

その展開は奇を衒ったモノではなく、オーソドックスかつシンプル。
志望動機や将来どういうアイドルになりたいかもバラバラな子たちが集まっていって、グループを組み、目標達成(NEXT VENUSグランプリ優勝)を目指す。

アイドルとして仕事を通じて成長を描くと言うよりは、一つの成果を勝ち取るという部活・青春もの寄りな描写になっていた。こういった大会があるという設定ならば、部活もののテイストに振り切って描いた方がとっつき易いだろうし、ただ単純に煌びやかなモノだけにフューチャーせず清濁併せ吞む描写もあり、賛否両論あるだろうがラストでのあの結果の演出は、最終的には10人の努力が報われ勝利する姿をきっちりと描いた事は意義があっただろうし、アニメ後のストーリーを実装されているゲームへの橋渡しも成されている。


(ゲームの方は未プレイだが……)


 12話という短い尺で、これらの要素を余す事なく描き切るというのは無謀ではあったのだけれど、全話視聴して率直に感じたのは、短い中でも強烈なインプレッションを残した満足度の高い作品だったというモノで自分は高評価を抱いている。

 

 

 

 姉妹の光と影と絆。

 

 自分の他に、『IDOLY PRIDE』の事を考察されている方のBlog等でも触れられているが、この作品は姉妹の絆についても重要な要の一つとしてある。
姉妹としての設定があるのは、長瀬麻奈と琴乃、白石沙季と千紗の二組。この二組の姉妹に共通しているのは、姉妹の仲は良好で共にアイドルの軌跡を駆けている。


ただ、長瀬姉妹と白石姉妹が辿った軌跡は真逆。


 麻奈がアイドルになる前は、姉妹仲は良好そのもので琴乃は『お姉ちゃん大好き!』的な雰囲気が溢れ出ていた様に見えたが、麻奈がアイドルとなって忙しくなってからは疎通になってしまい、琴乃はアイドルを疎ましく忌み嫌う存在として捉えてしまった……

 白石姉妹の方も姉妹の仲は良好で、アイドルを志した沙季が千紗を誘ってオーディションに応募して(千紗は落選したが最終的には合格している)共に星見プロのアイドルになる。
千紗の方も、ただ姉に促されただけではなく、今の自分を変えたいと願い応募している。


 前述の通り、真逆な要素でこの二組の姉妹は存在しているが、共通している要素もある。

それは、姉離れ・妹離れという要素が二組共に乗り越えるべきテーマだったと思う。


 スペシャルでイレギュラーな存在に昇華した麻奈の替わりを目指してしまった琴乃。
麻奈はそんな妹の姿を見て、届かないが声を掛けたかったはず。でも、それはアイドルが好きになって欲しいと言う事と、形はどうあれ自立しようとしている琴乃を邪魔したくないという想いから彼女に関わろうとはしなかった。琴乃も不器用だが、麻奈も不器用なのだろう。

麻奈が幽霊となっている理由はいくつかあって、その一つに琴乃へのあらゆる想いがあるのは間違いない要素だと思っている。


 星見プロのアイドルとして共に頑張る白石姉妹にも、姉・妹離れする刻が訪れる。
なんやかんやあって、総勢10人となりその10人を二つのグループ(月のテンペストとサニーピース)に分ける事になり、沙季は月のテンペスト。千紗はサニーピースへと別れた。

ただし、全12話という限られた尺の中で一人のキャラクターに割ける時間は多くはない。長瀬姉妹の事は欠く事の出来ない要素だし、その中で白石姉妹の事をどこまで描けるか?

その問いの回答が、サニーピース全体の成長の一端として千紗の成長を描く事だったと思っています。一方で、沙季の方は割りを食ってしまった印象はありましたが……

 千紗の持つ問題は、前述でも触れた姉への依存と変わろうとする目標と現実とのギャップ。
変わりたいという想いは勿論あっただろうが、根本としてあったのはやっぱり姉と一緒にいたいというモノだった。故に、千紗は受かった時点で目的をほぼ果たしてしまったと捉えています。

そこで、千紗の殻を撃ち壊す切っ掛けとなったのが、外部からの刺激である一ノ瀬怜の存在だった。怜の頑張れる魂のエネルギーに触れて、姉ではない存在から変わろうとする想いを叶える軌跡へと本当の意味でのスタートを切った。


そして、7話で描かれた姉妹それぞれの違った面が見れたのも面白い。


 沙季は、高い志を持って頑張るのは良い事だが、アイドルの世界とVENUSプログラムがもたらす現実の過酷さに向き合う事の不安を漏らした。10人のアイドルの中で年長者の部類に入る沙季が、身内の千紗の前という事もあっただろうがこういった弱音を吐露するのは珍しい。だからこそ、沙季の言葉の後の千紗の言葉がより印象深くて彼女の成長の証が見られたシーンでもあったと思う。


 

 私も同じ…怖いけど頑張る。

 
 お姉ちゃんと同じ舞台に立ちたいから。立たないと後悔するから。

 

 

 姉と離れ離れになり、最後にはNEXT VENUSグランプリの決勝のステージに姉妹揃って立つ事が叶った。結果を待つ間姉妹の視線が交わり姉に微笑みを向けた千紗。
彼女の目はもう気弱で姉に依存していた頃の千紗ではなかった。

描写の割合では要の一つとなっている麻奈と琴乃が多いのだけれど、沙季と千紗の絆の物語も立派な成長譚であり楽しめた要素と思っている。

 

 

 

 

 

 死人(長瀬麻奈)に魂を縛られた者達の闘い。

 

 

 突如現れた、長瀬麻奈というイレギュラーでスペシャルなアイドル。そして、彼女が不慮の事故でこの世を去るという悲劇によって、彼女はレジェンドと称された存在にまで昇華させる事になる。『IDOLY PRIDE』に登場する数多のアイドル達は目の前に立ち塞がるアイドル達と鎬を削って競う事と、目の前には居ない長瀬麻奈という幻影(亡霊でもいい)とも競う。


該当するキャラクターを挙げ出すとキリ無いので、本稿では琴乃とさくらについて書いていく。


 それは、麻奈と同じ時代に生き、同じアイドルへの軌跡に進んだ者達に課せられた宿命でもあった。特に、実の妹である琴乃と麻奈の心臓を持つ川咲さくらは麻奈の幻影との闘いは避けられない要素であり、麻奈の存在を越えて自立する事が作品の大きな要になっていたと思う。後半(8話~最終話)はその辺りの葛藤やらをテーマに絡めて物語のインプレッションが重厚になって、さくらの心臓に関わる謎もこの後半にて明らかにされていく。序盤で散りばめられた要素を回収されていく過程がドラマチックで、クライマックスの感動へと繋がっていく。


 そこで、大きな役割を果たしたのが長瀬麻奈の幻の楽曲『song for you』だった。
この楽曲をただ単純にグランプリを勝つためだけの手段にせず、さくらが麻奈からの自立と当たり前に今の刻を生きている事への感謝を謳ったからこそ、物語が盛り上がったし楽曲自体もより深いエモーショナルを作り出して感情が揺さぶられた。


 琴乃の場合はさくらより複雑なモノだった。姉の様なアイドルになる事が目標であり、完全な妄想だが、琴乃が昔短かった髪を伸ばしたのは姿から麻奈の様になろうという意志表示の表れではと勝手に思っている。姉と同じ軌跡を駆ける事を選んだが為に、更には血の繋がりという縁もあり、琴乃に浴びせられる重圧は誰も経験する事のできない特別なモノ。
誰とも苦しみを共有出来ない、それを自分の力のみで乗り越えなければならないどうしようもなく高く険しい壁……けど、琴乃は必死にその壁を壊そうと努力を重ねて彼女は答えに辿り着く。


 最終話、優勝を勝ち取りウイニングステージで琴乃は姉が遺した『song for you』を謳った。
本来なら月のテンペスト全員で楽曲を歌うのが当然な事だろう。だからこの選曲は琴乃が我儘を通したと思っている。

琴乃が麻奈の立つ事が叶わなかったステージであの楽曲を謳う意義は大きいモノ。
さくらが謳ったバージョンの様に、彼女もありったけの感謝と深愛の情を込めて懸命に謳った。姉に残された刻は残り僅かだというのは聞かされていないが、おそらくは感じていたのだろう。琴乃がこの楽曲を謳っている頃、麻奈は牧野に想いを告げて天に召される過程も同時に描写しているのもまた見事に心揺さぶられるモノだった。

 

 

 

 

 

 同点優勝という人の手で付けた決着。

 

 

 NEXT VENUSグランプリの決勝は、琴乃率いる『月のテンペスト』とさくら率いる『サニーピース』が競い合う事になり、その結果は天文学的確率でしか発生しないドロー(引き分け)と判定され、大会の規定により同時優勝となった。

本作で描かれるライブバトルは、VENUSプログラムによるAIがパフォーマンスの質、観客の盛り上がりや数多の要素をリアルタイムで計算して判定を導き出す。その計算は厳密であり一切の情が微塵も入る隙間がない情け無用なジャッジを下す。だからこそ、同点による引き分けが起こる確率は天文学的確率=有り得ない事。


 ただし、人間は軽々と完璧とされる揺るぎようの無い事態を超えることがある。
窮地や限界を超えた時に発揮される予測不能な人間の底力は、どんなに複雑で緻密な計算でもその可能性を明確に出来ない。麻奈に対して激しいライバル意識を滾らせる神崎莉央が、麻奈のパフォーマンスを見て感情や理屈抜きに魅了されたというのも明確な数値とかでは示せない奇跡の一端ではないだろうか。

 散々触れてきたが、アニメ版のテーマの要となってるのは、長瀬麻奈というスペシャルでイレギュラーな存在の幻影を越えてその先の軌跡を拓く事だと自分は思っている。
琴乃とさくらが、麻奈の幻影を越えたアイドルとしての自立もあるけれど、星見プロのアイドル達もまた、麻奈の幻影を越えて自立しなければならなかった。故に、どちらかが負けてしまう形の決着を描くワケにはいかなかったと思えてならない。


 この同時優勝について、言及されているモノをいろいろと見聞したら賛否両論あった。
ちなみに、自分はこの結果の描写は肯定的に捉えている。確かに、都合の良すぎる結果だし、あからさまに過ぎてしらけたというインプレッションを抱いたという声は理解できる。勿論、否定派の人にいちいち噛みつくつもりはない。

ただ『NEXT VENUSグランプリ』という大会は、真のトップアイドルを決めるモノではない。
新人・若手アイドルによる所謂新人戦という限られたカテゴリーの中での大会であるという事を鑑みると、この時点と12話という限られた尺できっちりした決着を描くのはなんか違うのだろうと思えたし、納得出来る落しどころだと感じた。

 

 

 

 

 

 始まりと終わりが集う場所での奇跡。

 

 

 本来交わる事の無い光と影。1話で牧野は麻奈との関係性を麻奈が光で、自身を影と評している。アイドルとマネージャーの立場に、生者と死者(幽霊)。一緒にいる刻はあれど二人の間には越える事が出来ない境界線が存在していた。どれだけ深くて偽りのない真愛の情をもってしても、一線を越える事は叶わない自然の理。


 でも、その理が綻んだ瞬間があった。現世で果たせなかった夢と伝えられなかった想いは未練となって、麻奈の霊魂が現世に留まり、二人にとっての始まりの場である星見高校の教室で邂逅を果たせた。牧野があの場に赴いたのは麻奈に導かれたのかもしれない。

最期の刻、麻奈が消えゆく前に牧野がまたあの場所へと駆け付けたのも、そこでなら麻奈に逢えるという根拠のない自信と確信があったのだろう。何も言わせないままで逝かせるかと。


そして、二人は想いを伝え合い、触れられぬと分かりながらキスを交わす。


生きる者と霊魂が口づけを交わす事は意味の無い事ではある。だが、これまであらゆる理で交わらなかった二人が永遠の別れの間際に願った感謝と真愛と別れに必要な儀式だった様に思える。だからこそ、この儀式がエモーショナルな奇跡としてクライマックスを彩ったのではないだろうか。

 

 俺は…マネージャーだ。だから…だからずっと……

 

 

 どんな物語でも終わりは必ず訪れる。麻奈が成仏した事で一つの物語が終わり、新しい時代が始まる。牧野は麻奈の想いと現実をきっちりと受け入れたからこそ一線を越えない覚悟と矜持を上記の言葉に込めた……彼にとっても、麻奈の幻影を越えてその先の軌跡が拓けたのではと思っている。

 

 


 

 

 終わりに。

 

 

 と、グダグダといろいろ書き殴りましたがこれはほんの一端。まだまだ書き切れていないものがまだ自分の中に渦巻いております。それほどまでに、『IDOLY PRIDE』の物語が自分に与えたインプレッションが大きく、キャパシティオーバーに陥っているのが現状です。

それをどうにかして言語化して文章に残したいと思い、こうやってBlogにいろいろ書き殴っていますが、読んで下さる人には雑な乱文で毎回申し訳ありません。

前の記事でも言いましたが、自分は『IDOLY PRIDE』を知り始めてまだ日が浅いにわか勢というヤツです。アニメをまた観直したり、楽曲聴いたり、配信されているモノを観ていろいろ知ろうとしている最中です。


 自分に出来得る限りで、魂込めて書いたつもりです。
この所感がどなたかの胸に届いてくれる事と、僅かでも興味を持ってくれたらという願いを込めて筆を置かせていただきます。