巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

RGR楽曲ライナーノーツ#4 Go!Up!スターダム/秋いろツイード

 どうも。RGR楽曲私的ライナーノーツのお時間です。


今回は3rdシングル『Go! Up! スターダム』とカップリング楽曲『秋いろツイード
2曲ともタイプが違った楽曲でありながら、RGRの新たな魅力が詰まったシングルに仕上がっている。

 

 

 

  Go! Up! スターダム

 

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www.youtube.com

 

 3rdシングル。アニメ『キラッとプリ☆チャン』第三クールのオープニングテーマ。


 前作『キラッとスタート』の系譜を継ぐ女子の煌びやかに輝きたい想いそのものと、後押しする正統派な応援ソングであり、RGR楽曲のアイデンティティだと自分が感じている特有な疾走感も見事に表した楽曲。これを感じるのは原初の楽曲『カケル×カケル』の系譜も受け継いでいるからなのだろう。

歌い出しの林さんの伸びやかで力強い歌声は未来への希望をダイレクトに感じる様であり圧巻の一言に尽きる。ただ、前作と違っているのは,、曲調がアップテンポ要素のみで突き進むのではなく、センチメンタル的な心の葛藤を模した要素も感じられる。この相反する要素を共存させたのはRGR楽曲としては実に挑戦的だと勝手ながら思える。

OPテーマソングなので、作品の登場人物に寄り添った世界観を構築しているのは勿論だが、自分の中で強いインプレッションを抱いているのは、RGRの三人の心情の方が強く、鮮明に反映されていると思えてしまうのだ。


 それぞれのカラー 見つけ出して

 誰とも違う 魅力で光る

 ひとりじゃ意味がない みんなと手をつなぎ
 
 私たちみんな小さな星 輝くために生まれてきたの


 ―Run Girls, Run! 『Go! Up! スターダム』より引用


 
 『それぞれのカラー』とは、RGRのメンバーカラーそのままの意味に直結していくし、三人の個性としての意味合いもあるのだろう。ただ、リリース当時まだ三人のメンバーカラーは決まってなかった。それを先んじて織り込み『それぞれのカラー見つけ出して』という詞でもってRGRの心情描写を強烈にして、テーマ曲でありながらもRGR寄りな楽曲だと喚起させた事は、作詞された藤林聖子さんの巧みな言葉選びの妙…『預言者』と評される謂れなのだろうと感じる。

そして、RGRの三人もこの楽曲を単純な作品のOPテーマソングという括りのみで受け入れていなくてユニットとしての絆と想いを重視している様に思う。


それは、1stツアーでこの楽曲を歌う前に林さんが口上を述べて語った想いがユニット・RGRの方に強く寄り添った楽曲というインプレッションを抱いている大きな要因でもあり、MVで着ていた制服の衣裳は1stライブでも着ていた事からもRGRの心情と決意表明としての楽曲。


 『小さな星』という言葉と、原初の楽曲『カケル×カケル』で使われていた『小さな存在』という言葉で繋がっている事に、自分はRGRの『アンセム』としてこの楽曲が突き刺さって来たのだ。

 

 

 


 秋いろツイード

 

 季節をテーマにした『RGR四季組曲』秋の章。…と勝手に称している楽曲。
前々作『サクラジェラート』の系譜を受け継ぎ、四季をモチーフにした『RGR四季組曲』というRGR楽曲の一つのジャンル・軸として確立させた楽曲でもある。

この四季組曲の特徴としてまず挙げられるのは、曲題はテーマとする季節もしくは季語と、物を示す名詞で付けられている。ちなみにツイードとは、イギリスやスコットランドが発祥とされる太く短い羊の毛を使用した紡毛糸を用いて織られ、表面は粗っぽい毛織物の事を指している。

ツイードという、イギリスやスコットランドに因んだモノを曲題に付けたことから、ブリティシュロック系とかケルト音楽系の欧州的な曲調なのかと思わせる。が……イントロで奏でられる中国の弦楽器『二胡』のオリエンタルな音色がそのインプレッションを見事で鮮やかに裏切る。二胡のゆったりと切なさを思わせる音色が秋が持つインプレッションであるセンチメンタルの要素を湧き立たせる切れ味鋭い変化球的楽曲だ。


 そして、四季組曲もう一つの特徴はそれぞれの季節が持つネガティブなインプレッションと、思春期の少女の恋愛感情(抱いている切なさや葛藤、焦燥感)をリンクさせている所だろう。

全体の曲調としては、スローテンポなダンスチューン。
しかし、ダンスの振りはスロー一辺倒ではなく激しい所作で舞う所がある。おそらく曲調とダンスで感じる差を極端にする事で少女の揺れる心情。自身を『地味』と自嘲する諦めとコンプレックス。変わろうと踏み出す意欲はあるけれども一歩踏み出す勇気が湧いてこない。以下の節々は少女の心情を表しているのだと解釈している。


 おしゃれしたい かわりたい でも わからない

 向こう側には どうやっていくのか 

 勇気とか恋とか それだけじゃない

 門限のように まだやぶれないその壁


 ―Run Girls, Run! 『秋いろツイード』より引用


 ここ用いられているというか…この楽曲の『要』となっているのが『門限』という語句。
少女にとって最後に立ち塞がる文字通りの門そのものであり、一歩踏み出す反抗の覚悟でもあり、想いを寄せる『彼』との関係への比喩。これらは彼女が超えなくてはならない壁ともいえる。

でも、わからない。どうやっていくのか。やぶれない。そう、少女は超えて踏み出せられていない。それを証明しているのがラストフレーズの『門限まで家には帰る』だ。少女にとって門限とは、制約であり縛り付けられている象徴だと思える。


 何か さがしたいよ 夢をともしてくれるもの

 彼に明日あげる 誕生日のプチ・プレゼント

 私もっと きらきらとしているものに憧れている


 ―Run Girls, Run 『秋いろツイード』より引用


 これらの節々は、少女が門を開けた向こう側の世界を象徴するモノだと解釈している。少女が『彼』にプレゼントするのは、単純にモノでもあり彼女の恋慕の情を彼に告げる事でもあって、それは少女にとってのきらきらとしているもの≒変わりたいという想いの本質。
単純なセンチメンタルを謳う楽曲ではない。内に秘めている爆ぜる激情を謳う相反する情念的な楽曲。歌い始めで三人がそれぞれ違う方向で並んでいるのは相反する要素を表しているのだと思えてしまうのである。


 ちなみに、今回取り上げた2曲のライブ映像はRun Girls, Run!の初の冠TV番組であるRun Girls, Run!のらんがばん!』Blu-rayに収録されている。

 


 奇を衒わない王道的なアイドルソングでありつつも、新たな『アンセム』の系譜になった『Go!Up!スターダム』。意外性で魅せて新たなRGR楽曲のジャンル・軸を確立させた『秋いろツイード』。

2曲共に、新しく刺激的な魅力を感じずにいられない仕上がりでした。

Run Girls, Run!』の持ち味を損なわずに、増していく表現力の幅と可能性は三人の変わろうとする想いと一歩踏み出す覚悟が感じられました。