正直…WUG結成5周年ライブが映像で観れる機と縁は無いと無意識的に思っていた。
ところが、で…ある。
昨年の夏に開催されたファンミーティングで発表されたある一つの報に衝撃を受けた。
『Wake Up,Girls! Solo event2018 WUGLOVE URA』パンフレットの受注販売。
同梱されるBlu-rayの収録内容はこの年の三月に開催されたメンバーのソロイベントツアーの裏側に密着したドキュメンタリー映像とファンクラブイベントであったバスツアーの裏側映像。
そして、このバスツアー内で開催されたWake Up,Girls!結成5周年ライブが収録されていると。
これは、自分の偏見ではあるのだけれども、ファンクラブイベント内のライブを円盤化されているケースは稀な事の様に思っていた。無論、このパンフレットはファンクラブ会員の受注によって販売されるが、それでもこのライブの模様が円盤化されるという事は無いと思っていたものだ。そんな叶わないと思っていた事が叶う機がやって来た。
勿論、あの刻と場で現地参戦して、直に感じられる現場の熱や筆舌にし難い同等な感動を映像に観て感じとるのは不可能なのを承知の上。だが、それ以前にライブを観られるというのはやっぱり嬉しいモノなのである。
5周年ライブの模様は、自分は参戦しておらんので
知っている情報は披露された楽曲だけである。
その結果、沢山の驚きや発見があったので書き記そうと思う。
注:以下、ネタバレ全開で所感を書き殴っているので、未視聴の方はご注意願います。
5周年記念という刻に込められた七人の想いと魂
俺が、このライブ映像を観る前に、ソロイベツアーのドキュメンタリーを先に観た。
その中で一人のメンバーがライブのセットリストに対しての拘りと想いを語っていた。
その人とは、永野愛理さん。永野さんはその中でこの様な事を語られていた。
伝えたい想いをまず一個決めるんですよね。
想いはここにあるんだ、っていうものを
一個決めた上で肉付けしていくというか。
(中略)意味の無いセトリだと頑張れないから。
だから、意味の無いセトリなんて一個も無いんですよね。
Wake Up,Girls!のライブにとって。
永野さんの言葉を噛みしめて、この5周年ライブのセットリストを見ていく。
セットリスト
1 HIGAWARI PRINCESS (全員ver.)
2 恋?で愛?で暴君です!
3 One In A Billion
4 7 Girls War
5 セブンティーン・クライシス
6 プラチナ・サンライズ
7 地下鉄ラビリンス
8 ワグ・ズーズー
9 ジェラ
10 止まらない未来
11 リトルチャレンジャー
12 TUNAGO
13 16歳のアガペー
14 僕らのフロンティア
15 スキノスキル
16 少女交響曲
17 素顔でKISS ME
18 Beyond the Bottom
EN1 Polaris
EN2 言の葉青葉
EN3 ゆき模様 恋のもよう
EN4 7 Senses
WEN タチアガレ!
永野さんが言う、このライブで七人が伝えたい譲れない想いの『核』となるのはこの5周年ライブで初披露となった楽曲『Polaris』だろう。で、こいつは俺の持論なのだが、セットリストの『核』を決め、そこから全体に意味を持たせる為には楽曲の意味を際立たせる為の幾つかの『章』を作ってやる事だと思っている。
だから、永野さんからこの言葉を聞いた時には思わず膝を叩いたものである。
そして、会場となったSENDAI GIGS (仙台ギグス)のステージ設置にも、彼女達の想いが反映されている様に思える。メインステージから客席のど真ん中をぶち抜く様な花道とセンターステージ。間違いない。この設置にした真意は『Polaris』の為なのだと。
勿論、それだけの単純な理由ではないだろう。直に感じたワケではないのであくまでも想像の域でしか書けないが…この会場だが、幕張やさいたまスーパーアリーナの様な規模はない。でもだ。この場に参戦された人達を楽しませようと七人の距離感を出来うる限りで近く感じさせようとする配慮がされていた。
Wake Up,Girls!の結成5周年ライブは、このステージ構成でなければ成立しなかったライブだった。
七人の伝えたかった本気の想いと魂を表現し、最高のライブとする為に細部まで拘ったモノで、これでなければならなかった。
東北六県を繋いで来た想いと魂/HIGAWARI PRINCESS (全員ver.)
開演して流れた映像映されるのは……東北六県を巡り、繋いできた七人。
青森の青山吉能さん、秋田の田中美海さん、山形の山下七海さん、福島の吉岡茉祐さん
宮城・石巻の永野愛理さん、岩手の奥野香耶さん、宮城・仙台の高木美佑さん。
東北六県を巡り、繋いできたツアーのファイナルとなるこの結成5周年ライブという終の物語がこれから始まる。そんなライブのオープニングアクトとなったHIGAWARI PRINCESSの全員ver。
このプリンセス七人バージョンは5周年ライブと、SSAでのファイナルライブの二回のみの披露だった。この楽曲は、東北地域限定で放映されていたAEON(イオン)のCMソングだ。勝手な印象だが、この楽曲を仙台の地で披露する事の意義はとても重いものだと思う。
このバージョンの正確なパート割は分からんが、歌い出しを担ったのは東北出身の永野さんと奥野さん。彼女達が初手を担う事でよりこの楽曲の意義が深いモノとなっていくのだろう。
そして、このライブはこの楽曲だけでなく全編生バンドの演奏となっている。バンドメンバーの方々も彼女達と共に東北を駆けてきた戦友でもある。
結成から五年の刻で、東北の地でそれぞれが紡いで来た物語があった。そのどれもが唯一無二の物語でその主役は七人全員なのだと。
ここから始まった新たな物語/地下鉄ラビリンス
ステージ上にいるのは前に披露したユニット楽曲『プラチナ・サンライズ』を歌った田中さんと青山さんのみ。前奏が奏でられても、他のメンバーは姿を現さない。
それもそのはず。他の五人は客席の間に設けられた通路に姿を現したからだ。
さながら、迷宮と化している東京の地下鉄網を表現しているようであり、ステージは都心の中心部を模していてそこへと集約していくかの様でもある。
この客席の間の通路から出現する演出だが、後のGreen Leaves Fesやファイナルツアーにもきっちり継承された演出。
演出も物語の一つとして括れるのならば、ここでの演出も新しい物語なのだろう。
嫉妬・未来の刻・挑戦者魂の謳/ジェラ・止まらない未来・リトル・チャレンジャー
この三曲は作中のボスユニット・I-1clubの楽曲。
WUGもこれまでのライブで歌い継いで来た楽曲でもある。
数あるI-1楽曲の中でも、この三曲を5周年ライブという節目にセットリストに組み込んだ真意。
あくまでもこれは、俺の暴論の域と後付けであるという前提で書いてしまうが……WUGの解散が根幹にあると思えてならないのである。
無論、当時の彼女達の腹の中は窺い知れるものではないが、いつかは終わる事であるのは覚悟していただろう。そして、話として出ていたとも思われる。そんな思いをそれぞれ抱きながら、ソロイベツアー、バスツアー、5周年ライブへと臨んでいたのだろう。この選出も意味があるモノだろう。
ジェラは、歌詞に綴られている嫉妬の語が象徴的な楽曲。
嫉妬という語に良いイメージを持たれる人はおそらくは少ないと思う。ただ、嫉妬の念が純然な、あいつに勝ちたい、切磋琢磨して高め合いたいというプラスの感情へ変換して捉えられるとも思える。
I-1では、岩崎志保と鈴木萌歌の関係性を謳った楽曲なのだと捉えられる。WUGでは?と考えると、俺は七瀬佳乃=青山吉能さんの楽曲ではないかと感じている。それを強く感じられるのがソロイベツアーのドキュメンタリーの映像内で、青山さんが語られていたこの言葉だ。
ライバルは自分以外、言っちゃえば。
みんなの良いところをすごいわかってしまう分、
もっと頑張んないとって思う。
声優になりたい事を家族に言った時に、笑われたんですよ。
『絶対に上手くいくわけないし、辞めれば?』(笑)みたいな感じで
言われたのがあって、そういうのがあったのは悔しかった。
(中略)
私が『理解してほしい』って説得した訳でもないから
正直私は『見とけよ』くらいにしか思ってなかったので。
雌伏の刻に遭っても絶やす事無く滾らせ続けた反骨の魂と炎。
上記にある、良い所をすごくわかってしまうの言にある様に、青山さんは他者の才・迸る気を感知するアンテナが敏感な方と見える。言ってしまえばWUGという括りを取り払ってしまえば彼女らは一人の表現者でライバルだ。
特に青山さんはその意識がより強く在って、嫉妬の念が生み出すエネルギーを上手く変換出来る人なのではないだろうか。誰にも負けたくないという想い、自分の夢を叶える為には『闘う』という選択肢を貫き通す事。頑なに、彼女が信じて貫いた想いが凝縮されている様に思えても来てしまう。そして、その想いは六人にも同様なのだ。
薔薇が咲いた窓辺 選ばれる時を待つ
そうよ、準備はもう できているわ
―I-1club『ジェラ』より引用
七人の中では、もうある覚悟は決まっていたのかもしれない。
未知の領域へと挑む闘いへの準備が……
WUGバージョンでの披露はおそらく3rdツアー以来となった『止まらない未来』
これも後付け感満載ではあるが、当時先の展開(未来)に不安を抱え臨んだ3rdツアー、結成5周年という節目になる年と解散という終焉の刻への想い……まだ見えない未来に畏怖の念を抱いて不安になる点では当時と被る要素であるだろう。
しかしだ、当時とまるっきり違うのは終着点=終焉の刻が定められている事なんだ。
でも、動く刻を止める事、何人も自然の理という枠から逃れる事は出来ない。人の眼が前にしか付いていないのは前に向かって進む使命の為なのだと。
彼女達がここまでの軌跡を駆ける為に歌詞にある自転車で来たとしよう。その軌跡は平坦な走り易い道じゃなかった。
荒れ放題の獣道に対応する為に努力を重ねてその自転車をカスタマイズして来た。で、その自転車を走らせるペダルを漕ぐのはそれぞれの気持ち・魂だ。どんなに高性能な自転車でもその自転車を乗りこなす魂が無いとその自転車はただの置物。
ならば、ペダルを漕がせるのが魂ならどうすればいいのか?想いや夢、それぞれが背負っている何か、それらが在って受け止めて自分らしく在ろうとする意思を信じる事。それがペダルを漕がせる魂の持つ無尽蔵のエネルギーとなる。歌というモノは嘘がつけないモノであり、歌う者の生き様が反映される。
駆けて来た過去の軌跡、辿り着いた結成5周年という現在、そして未来の刻。彼女達が巡った刻とこれからの刻、全ての時間軸に意味を持たせる為にこの楽曲を組み込んだ
きみのこと、見えるもの、見えないもの、自分のこと……
『信じてる』という四文字の言の葉に詰め込んだ、ありったけの本気と想いと覚悟。
3rdツアーの時とはまた違うムードある、ジャジー&ファンク感のあるお洒落なメロディが、この楽曲に更なる深みを加味させている様に思える。
そして、リトル・チャレンジャー。
I-1ゾーンがあって、一つの節目となるこのライブで披露されない理由はないだろう。
ハイレベルな演出とそれを成立させるハイレベルなパフォーマンスがWUGには出来る。
彼女達のパフォーマンスがハイレベルだからこそ、ライブの世界観に惹き込まれて圧倒されて燃え滾る衝動を覚えてしまうのだ。
けど、洗練された中にも感じられる彼女達の『叩き上げの魂』を存分に感じられる楽曲が幾つか存在する。I-1楽曲の中では『リトルチャレンジャー』がそれに当たるモノと思える。
輝くチャンスは誰にでもある
だから素直に 今を吐き出せ
今だ!いざ行け! リトル・チャレンジャー
―I-1club『リトル・チャレンジャー』より引用
叩き上げの挑戦者魂を燃え滾らせて、未知の軌跡へと踏み出していく。
変わらない想いは大事。でも、変わろうとする覚悟と一歩踏み出す勇気も大事。
彼女達が自身に問いかけているのだろう。
闘う準備と踏み込む覚悟は出来ているのか?と……
点で繋いできた相互の想い/TUNAGO
東北六県を巡り、繋ぐツアーに題された『TUNAGO』という言の葉。
静寂が場を支配し、響いているのは演奏と七人の清廉な歌声だけである。
コールも起こらなければ手拍子も起こらない。七人の歌声や伴奏に耳を傾け、目で七人の舞い踊る姿を見て、心に沁み入るモノを感じ…『聴く』事に集中しようと想いと魂が繋がる。
映像を観て、間接的な感覚であってもこの雰囲気に呑み込まれて傾聴させてしまうモノがある。
きみの想いも きみの想いも
未来と今を 夢と命を
きみの想いと 僕の想いと
愛を込めてGo TUNAGO
―Wake Up,Girls!『TUNAGO』より引用
七人が東北の地での個の闘いを経て掴んだ『TUNAGO』という語への答え。
そして、彼女達がこれまでに繋いできたモノに偽りが無かった事の証と説得力。
七つの瞬く星が繋がり一つの『星座』(絵)になる刻/Polaris
東北六県の各地に瞬く星々は『Polaris』を紡ぐ詞と共に満天の空へと翔び発つ。
そして、七瀬佳乃の言葉を青山吉能さんの生の声で魂が繋がる。
この曲の歌詞はみんなで一所懸命に考えました。
私達が今感じている事…
みんなに伝えたい事……
大切な沢山の想いを込めて………聴いて下さい。『Polaris』
島田真夢は、声を届けようと客席に舞い降りる時に言った。
(これは俺が勝手に付け足したもので、ライブでは言っていない。)
私達に今出来る事は精一杯歌う事だけ。一人でも沢山の人に届くように!!!!!!!
繋がって…
導いて……
輝く………。七つの星の謳の物語がここ仙台から始まった。
冒頭にも書いたが、結成5周年ライブにてWUGの七人が伝えたい譲れない想いの『核』を成す楽曲が『Polaris』だと思っている。
ここまでに披露出来る機は色々あったと彼女達は言う。楽曲が完成したら、多くの人に聴いて欲しいのが表現者としての本音であり願いだろう。冬の幕張(WUGフェス2017)で披露する事も出来たとも言っていたがそれは叶う事が無かった。
で、福島・いわきでのチャリティライブでも披露はされなかった。幕張やいわきでの初披露が駄目だという事ではない。前述に書いたが早く聴いてもらいたいというのが七人の本音なのはおそらく間違い無いだろうから。
でも、七人はその気持ちを押し込んだのだろう。ライブで披露される楽曲には、最適な出し所や刻があるもの。幕張やいわきはその機と刻ではなく披露を見送る決意を七人はしたのだと。
『Polaris』という楽曲の初披露に意味を持たせて、楽曲の価値というか、One offとしての重みを持たせる為には聖地・仙台での初披露が絶対条件であり、東北を巡り繋ぐツアーのファイナルで披露する事の意味としても繋がっていく。
新章の作中に於いても、真夢達はプロモーション活動としてメンバー個々でゲリラライブを行う描写があった。二次のキャラと三次の彼女達との狭間にある境界線を越えて繋げる事でまた楽曲の持つ力と重みが違ったモノになる。正解や満点が付けられないのが表現の世界の理ではある。でも、だ。それを承知の上で俺は言いたい。
このライブでの『Polaris』初披露は正解であり、満点だと。
七人の『URA』の物語とこのアクトを観て改めて思い知らされた。
『Polaris』の初披露はこの機と場と刻でしか在り得なかった……
そして…ここからまた始まる。/タチアガレ!
Wake Up,Girls!のセンター・吉岡茉祐は言の葉に想いを込め解き放った。
この曲が私達の始まりの曲です。
持ち曲がまだ無かった頃から歌って来た曲ですね。
そんな曲を、ここ…5周年4月1日に歌える事を本当に嬉しく思います。
順風満帆じゃなかったここまでの軌跡。寧ろ、常に逆境と背中合わせだった。
理想と現実の狭間で思い悩んだり、心無い言葉に惑わされたり自分たちがちゃんと前進しているのかどうか不安を抱えていたり、徹底的にきっちりと打ちのめされ涙を流した事やぶつかり合いぶっ壊れかけたりしそうになった事も何度もあったでしょう。
でも……彼女達七人は諦めずに必死に前を向いて挑む事を止めなかった。
Wake Up! この祈りよ届け
今 夢に向かうよ 両手伸ばして
Stand Up! 迷いなく走り出そう
この世界で 生きるために
―Wake Up,Girls!『タチアガレ!』より引用
七人でいられる刻を大切にして この七人で何かを成し遂げたい『想い』を遂げる為に、進化・成長を重ねても変わらない想いが七人の中にぶれずに存在している。
日々の闘い、同業者との凌ぎ合い、受け取り側との闘い、自分自身との闘い……
彼女達の中にしかない『芯』が彼女達をもっと強く輝かせる。
真の目標を見失わずにそれぞれの信念を貫く為に。
見えるモノと見えないモノへの感動
観ていて……胸に熱く滾る衝動が起きて込み上げて来るモノがあった。
演出やパフォーマンスに感動した事は勿論なのだが、それ以上に七人の偽り無い本気の想いと魂を感じた事が要因だ。
正直な話…参戦して直に感じる独特の『熱』がもたらす感動を映像では感じづらいと思った。でも、違った。あの七人を俺は侮っていたつもりはないが、どこかにその心情があったのだろう。
目と耳で感じた感動だけじゃなく、魂に突き刺さる七人の本気の想いを
画面越しからでも存分に魅せ付ける圧倒的な説得力。
刻と場を越えても、伝わる想いと情熱が確かに在った七人の『URA』の物語と縁と懸けて来た記憶の物語。またクソ長い駄文になってしまったが、それでもこのライブを観て感じた感動を余す事無く書ききれてはいないだろう。
ここには書けなかった他のアクトも本当に素晴らしいモノだったというのは言うまでもない。
思えば…自分が惹かれ、七人を応援しようと決意させた切っ掛けが2015年のソロイベントの配信放送だった。あれから直に彼女達のパフォーマンスを観る機会が増えていった事で俺の中で感覚がいろいろ麻痺してしまったのだろう。
終焉の刻が過ぎ、あの七人が揃ってのパフォーマンスを直に観れる事は叶わんが、七人が残したWake Up,Girls!の楽曲と記録は残っていて触れることは出来る。
そして、今後もあの七人の事や楽曲の事を語り継ぐ事は出来る限り続けていく。