巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

限界の扉を壊せ!!!!ーガールズフィスト!!!! GT 南松本高校パンクロック同好会ワンマンライブ Not Lonely!!!! Vol.2 参戦レポ

 1月15日。下北沢ReGにて開催された『ガールズフィストGT!!!!』のLIVE
『ガールズフィスト!!!! GT 南松本高校パンクロック同好会ワンマンライブ Not Lonely!!!! Vol.2』に参戦して来ました。


 

 

 一年前、二代目・藤森月役&ベース担当として井上杏奈さんが加わって活動再開を果たした。
原作になっているコミックスの発売、この数年、世の情勢の為開催休止になっていた公開練習の再開、様々な対バン形式LIVEへの出演。新体制初になる新曲リリースに、ワンマンLIVEの開催もあって、ガールズフィストにとってこの一年は濃密な一年だった様に思える。

そのタイミングで開催されるワンマンLIVE。どう捉えるのかは、それぞれに違うモノで正解も不正解もない。月並みな事を言ってる気は充分あるが……自分の個人的感情としてあるのは、この一年の集大成でもあり、ここから未来の刻への挑戦という始まりの意味も含まれ……

変わらないモノは今まで通り大切にしつつ、でも、変わる覚悟と一歩踏み出す勇気をより強調して示した。今回のワンマンLIVEはそういう位置付けのLIVEだったんだなと。一夜明けて、幾分興奮が鎮まってこのLIVEを振り返って湧き出て来たファーストインプレッションがそれだった。


 そんなこんなで、これからこのLIVEの参戦レポを書き殴っていく事に致します。
毎度ながら、当Blogの参戦レポは著者の出涸らしの記憶を基に書き殴っておりますので、いろいろ抜け落ちているモノが多数あります。正確なレポを期待されて読もうとされる方には非常に申し訳無いという事はこの場を借りて先に言っておきます。

 

 冒頭のグダグダな四方山話でも触れたが、今回のLIVEのテーマとして掲げられたと思えるのが『挑戦』。昨年末に配信されたバンドミーティングでも触れられていたが、今回のLIVEでは様々な試み(=挑戦)があった。

LIVEでは未演奏となる楽曲の披露。メンバー達が作品で演じる事になるキャラクターの朗読劇。一曲のみ写真撮影可能なアクトを設ける。メンバー各々がこのLIVEで特に重視して魅せるポイントを披露出来るか?という挑戦。

しかし、前述したこれらのモノは目新しい要素は何もないし、敢えてLIVE開催前に告知しなくても良かったはず。寧ろ、何の事前告知もせずに当日に言っても良いし、実際のパフォーマンスを見て感じ取るというモノで良い様な感じはする。そうやって事前に様々なアピールポイントを曝け出す事で、見る側の期待値というハードルは嫌でも上がる。彼女達は退路を断って覚悟を決めたという解釈も出来る。

裏を返すと、この一年で四人が培って来たモノに自信があるという解釈をさせてもらった。


 LIVEという事もあり、自分は観るべきポイントにしていたのは、まだガールズフィストのLIVEで披露されていない楽曲の披露と、メンバーそれぞれが課題に挙げたアピールポイントだった。


まず、初披露となった楽曲について。(書こうとしてアレだが…初披露となったのは三曲だったはず……)オリジナル楽曲『パン食うロック!!!!』、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲カバー『世界の終わり』、詳細な説明は省かせてもらうが、作中でアニソンのカバーを演奏するという件からの楽曲チョイスと思われる『残酷な天使のテーゼ』が披露された。


 オリジナル楽曲『パン食うロック!!!!』。この楽曲が与えたインパクトってのは、本当に度肝を抜かれた……あくまでも、自分のインプレッションではあるのだけど、おそらくガールズフィスト楽曲の中で最もやんちゃかつピーキーさを醸し出している無秩序感満載の徹底的に振り切れてるクレイジーな変態楽曲。(←最大級の賛辞を込めてます)

こんな楽曲が流れだしたら、ヘッドバンキングして拳振り上げるしかないってモノですwwww奇を衒わず、シンプルに爆音響かせて激しいビートを刻む。リアルに血が滾って肉躍るみたいで、自分の魂(生命)がサウンドに呼応していくみたいな……大袈裟かもしれないが、何か限界領域を超えた様な感覚を抱いた。このバンドの引き出しはこういうモノも潜んでいたのかって。

ちなみに、この楽曲はリリースするつもりは無いとの事。LIVEでしか披露しないと。今後もガールズフィストのLIVEに参戦する理由がまた一つ増えた。率直に勿体ないとは思うけど、でも、それは素晴らしいモノでもあるのよね。


 で、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの楽曲カバー『世界の終わり』。正直言うが、自分はこのバンドは名前ぐらいしか認識してない不届き者だったりする……そんな不届き者の話は置いといて……この楽曲をカバーしたいと提案されたのは井上杏奈さんとの事。

邦・洋楽問わず、これまで様々なパンクの楽曲をガールズフィストはカバーして披露して来た。しかし、この楽曲のテイストはこれまでカバーして来た楽曲と違っている様に思えた。素人の浅はかな見識なのは充分承知の上だが……曲のテイストが変われば演奏のアプローチもガラっと変わる。所謂未知の挑戦という解釈も成り立つ。

ただ、そんな浅はかな愚者(著者)の偏見という壁を、彼女達の演奏と浅見春那のボーカルはあっさり、ものの見事にぶち壊した。(四人のパフォーマンスについてのインプレッションは後述する)アニソンカバーの『残酷な天使のテーゼ』も同様だった。機会があれば、他のアニソンカバーも見てみたいものである。


 そして、このLIVEにて披露された楽曲陣にちゃんと血を流せたのは、ボーカルの浅見春那さん、ドラムの内山つかささん、ギターの奥村真由さん、ベースの井上杏奈さんによるモノであるのは言うまでもない。前述で触れた様に、彼女達は今回のLIVEで魅せつけたいポイントを挙げてこの『戦』に臨んだ。そんなつもりは毛頭ないだろうが、言い訳という退路を断つ覚悟を見せて。


 覚醒するという意気込みで臨まれたのは、ベースの井上杏奈さん。
自分が見ていた位置からは彼女のパフォーマンスをよく観る事は難しかったのだけど、前にも書いたが、自分が彼女に抱いたファーストインプレッションは、相当肝の据わった(=度胸)感じの人かなと。

井上さんにとって、加入してからのこの一年は激動なモノだったと思うんです。日々の努力だったり、数多のLIVEという戦いを経て培って来たモノ……で、彼女にとって今回のLIVEはそういったモノを魅せつけるアニバーサリー的な位置だったと。このLIVEで限界突破して覚醒というよりも、この一年の戦いの中で覚醒した数多の成果を魅せつけてやるという気概に満ちていたと自分は捉えている。


 前に出ます!!!!というテーマで臨んだのは、ドラムの内山つかささん。
ドラムがどうやって前に出てアピールするのか?と言ったら、方法は一つしかない。演奏を爆音で魅せつけるしかないと自分は思う。

内山さんのドラムプレイのインプレッションとして真っ先に浮かんで来るのは、どんな時でも笑顔を絶やさず本当に楽しみながらドラムを叩いている姿。更に、アグレッシブかつ躍動的に叩くのが自分の網膜に強烈に焼き付いている。

で、今回のLIVEだが……これまで観て来た中で一番凄いと言うしか出来ないぐらいに圧倒された。セットリストに組み込まれた楽曲がどれも激しいモノ揃いってのもあったんだけど、LIVEの後半に進むにつれて、彼女のボルテージがHIGHを超えゾーンに入ったかの様にドラムの音圧がブースト加速していく様に増していったのが本当に印象深かった。爆音でぶん殴られるって表現が一番しっくり来る圧巻のパフォーマンスと存在感だった。


 自分に酔うというテーマを掲げていたのは、ギターの奥村真由さん。
この自分に酔うという言葉の真意は、自己暗示をかけポジティブな思考を持ってパフォーマンスするという事なのだろう。

奥村さんも、他のメンバー同様にこれまで弛まぬ努力を重ねて来たのは言うまでもないワケで、自分を追い込みまくって来たと思うのです。その努力の成果あってスキルは上達している。

でも、そのスキルを持っている身体という器を動かすのは、魂(メンタル)という無尽蔵の燃料無くしては叶わない。……まあ、カビ生えた古くせぇ考え方なのは痛感しているけれど、ただ上手いだけじゃ響かないのが音楽だと思うんですよ。


で……やっぱり、彼女を語っていく上で自分の中で外せないのが……『Full of Lies』なんです。


人によりけりだが、この楽曲は、自分にとってはクリティカル特効みたいなモノなんだろう。LIVEで『Full of Lies』のイントロが流れた瞬間、心揺さぶられてしまって、膝から崩れ落ちそうになる。ノスタルジックでちょいと哀愁漂う楽曲だけれど、根本に抱くモノは変わろうとする想いを持って決起していく覚悟を秘めた楽曲。そんな思いが込められた楽曲を奏でる奥村さんの佇まいに見惚れていたのは言ううまでも無かった。


 魅了します!!!!という意気込みを表明されたのが、ボーカルの浅見春那さん。改めて思い知らされたのは、スイッチ入ってそこから更に振り切った時の歌声が凄ぇなと。


特に今回、凄かったのは低音域の歌声のエロさだ。(←艶やかとか色っぽいと書け……)


 自分の消滅している語彙力で伝わるか不安しかないが……低音域の歌声の重心的なモノがこれまでよりグッと増していた様に聴こえたんですよ。その影響によってバフを付与させてたのか、エロ艶っぽさが強調されて聴こえたのかもしれない。去年のLIVEよりも強烈になってた。

MCでは、不可思議な雰囲気でもって周りを翻弄させるフリーダムな面を見せてからの、歌うとなったら、180度変化して色香を纏わせた歌声を響かせる。こういうタイプのボーカルは数多いるが浅見さんもそのカテゴリーに入る人なんだなと。

井上さん、内山さん、奥村さんもそうだったが、浅見さんも三人の熱や観客の熱に当てられて、限界を超えた先へ踏み込んだのだろう。その成果みたいなヤツがボーカルの質をアップさせた。パワフルだし、キュートだし、エロティック(最大級の賛辞)な浅見春那の歌声は見事で聴き惚れさせられた。

 

そして、何よりもあの四人が全力であの刻と場を思いっきり真剣に楽しんでいた。それが観れたってのが何よりも尊くて素晴らしいモノだったんだ。

 

 

 最初から最後までペースを一切落とさずフルスロットルで突っ走る構成で圧倒され打ちのめされた。見事という言葉しか終演直後は出て来なかった……それは、観てた自分が全身全霊をもってこのLIVEを楽しみ尽くせた証明でもあった。まあ、全力で楽しんだ結果、首やら肩とか腰にダメージを負ったワケだがwwwwでも、そういうLIVEに参戦出来たのは本当に素晴らしい事。

今回のLIVEは、ガールズフィストにとって間違いなく集大成的なモノだった。でも、ここでバンドが終わるワケではないし、これがガールズフィストのピークでもない。フェスにもこれからどんどん出演していくだろうし、公開練習開催の報も告げられた。そして、3月にはワンマンLIVEの開催も決定している。

勝手な印象ですが、今年はより打って出て勝負を仕掛ける年になりそうなので楽しみになって来ました。


 最後に、本当に会心のパフォーマンスを魅せてくれた事に賛辞を感謝の念を。
気の早い話ではあるけれども……三月のワンマンLIVEでは、このLIVEを超えるモノを魅せてくれる事を期待しているし、最高を更新できる事を信じて筆を置かせていただきます。





 



アイプラ楽曲ライナーノーツ #18  GIRI-GIRI borderless world

 

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 GIRI-GIRI borderless world/LizNoir


 TVアニメ第11話挿入歌。11話では、『NEXT VENUSグランプリ』のセミファイナルにて、LizNoirと月のテンペストの直接対決が描かれる。そのステージでLizNoirはこの楽曲を歌った。

『The Last Chance』と同様、こちらの楽曲も莉央&葵ver.と四人全員で歌う2種類のバージョンが存在している。なお、アニメ11話で歌ったのは莉央&葵のバージョンとなる。


 『Shock out, Dance!!』や『The Last Chance』から連なる、ハードロックテイストがベースになっているデジタルロック色の強い楽曲というインプレッション。
前の二曲も結構ハードで攻める印象を抱く曲調の楽曲であったが、この楽曲は、そこから更にハードさ(+変態性も……)を増して、さながら狂気に似た激情を歌に乗せたLizNoirにとって勝負曲と称される楽曲。

タイトルの解釈については、色々意見が分かれる所ではあるが……自分の解釈としては、限界ギリギリまで追い込んで、未知の領域へ挑戦しようという挑戦者魂を謳っていて、『The Last Chance』の続編的な位置にある楽曲として捉えている。


 前述でも触れた様に、この楽曲はLizNoirの狂気に似た滾る激情を謳う楽曲。
その要素(激情)を最も色濃く出しているのが、MVとはまた別にあるアニメ版LizNoirの裏側を描くアニメーションMVでの莉央と葵の心情だと思える。

最大のライバルであり、同時に理想のアイドルとしていた長瀬麻奈を超えるべく戦いへ臨む莉央の生き様、そんな莉央を支える為、彼女が邁進出来る様にいろんなしがらみを背負いながらも戦っていた葵の生き様。どちらかと言えば、歌詞の世界観は葵の心情の方が結構濃く反映されている様に感じられる。莉央と同様で、麻奈と決着を付けられなかった事は葵にとっても心残りであり、葵の刻も止まっていたのだと。

歌詞の一節にあり、11話のサブタイトルにもなっている『命の音燃やして』という言葉通り、莉央と葵は想いと魂を込めた全身全霊のパフォーマンスで魅せる。このLIVEシーンは、アニメ版後半屈指の名シーンの一つと評しても過言ではないと思っている。


 この楽曲のテーマとされる限界を超えて何かを追う者。それは、後にリズノワに加わった愛とこころにも当てはまる。当然と言えばそれまでだが…この楽曲は愛とこころの叩き上げの魂を謳う楽曲でもあり、彼女達の生き様にも添った歌詞でもあった。

彼女達にとって、憧れであり目標であったLizNoirのメンバーとなり莉央と葵と一緒になって活動出来るチャンスを得た。不安や緊張、莉央や葵との圧倒的な実力差でいっぱいいっぱいだったに違いないが、そんな状況下でも愛とこころは必死に食らい付いていった。曲調のキモになっている狂気的なモノは、そんな愛とこころの命の音を燃やしている様に捉えられる。

莉央と葵は、愛とこころの命の音を燃やした『熱』にあてられ、いつの間にか置き去りにしてしまった『熱』と叩き上げの魂を取り戻す切っ掛けを掴んだ。


 剥き出しで偽りの無い本気を魅せつけて、形振り構わず真っ向から勝負を仕掛ける。そこには、泥臭さだったり生々しさも含まれているけれど曝け出す事をいとわず、遥か高みへ駆けていく挑戦者魂を謳う。

 『ホントの願いを叶えるんだ 叶えるんだ』。この歌詞が記す通り、この楽曲は莉央・葵・愛・こころの決意と生命の謳なのだと。聴けば聴くほど、リスナーの魂を滾らせて奮い立たせてくれる楽曲だ。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #17 The Last Chance

 

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 The Last Chance/LizNoir


 TVアニメ第3話・11話エンディングテーマ楽曲。
『Shock out, Dance!!』と同じく、LizNoirが莉央と葵による二人体制時代の楽曲。この楽曲も、莉央&葵のデュエットver.と、後にLizNoirに加入する小美山愛と赤崎こころを加えた四人ver.

更には、2022年7月に開催されたLIVEイベント『IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022“約束”』で、愛&こころによるデュエットver.が披露された。


 曲題である『The Last Chance』は、普通に訳すと最後のチャンス(機会)となるが、最上の機会、またとない好機という意味としても捉えられるらしい。物語内でのリリース時期は不明だが、妄想の域として考えられるのは、莉央が活動休止から復帰した頃とするのがしっくり来ると思える。

『Shock out, Dance!!』が決起の謳とするならば、この楽曲はその先の軌跡へ突き進んでいく気概を謳った楽曲ではないだろうか。疾走感にあふれたハードロックテイストな曲調と、現在の刻と未来を見据えて走り続ける事をテーマに掲げた歌詞は、前述の通り前へ突き進む気概を表しているモノだ。
個人的には『Shock out, Dance!!』よりも、激情を爆ぜさせている印象が強い。


 未来を掴むと言えば、この楽曲に一際強い思い入れを持っているのが小美山愛。ゲーム版では、この楽曲をモチーフにした期間限定イベント『芽吹く黒ユリの蕾』で、愛がこの楽曲への思い入れを語っているシーンが描かれている。

愛曰く、辛い時に自分の心を支えてくれた宝物の様な楽曲であると。歌詞の『燃え上がるよ、そこへ行きたいよ』というフレーズが一番好きで、リズノワがいる場所に私もいつか行くんだと自分を奮い立たせていたと言う。彼女にとっても、この楽曲は未来を掴む希望に満ちた謳……すなわち、愛にとっての『アンセムだと言っても過言ではないのだろう。


 そして、それは愛だけに限らず、この楽曲はLizNoir全体にとっての『アンセムでもある。
止まってしまった刻を取り戻そうと再起し、麻奈の幻影を超えようと決意を固めた莉央と葵。僅かなチャンスを掴みとってリズノワに加入を果たした愛とこころ。どちらの立場で捉えても、四人全員で捉えても、LizNoirの生き様が凝縮されている様に思えて来る。


 何もせず、ただ黙って見てる者をすくい上げてくれる……そんな世界どこにもない。
心に蓋をするな。意志を示して動けという彼女達のメッセージでもあるのだと。


 

 

 

 

2022 My Best Song10選。

 今年も残り僅かになりました。一年が経つのは本当に早いモノであります。

依然として、世情はコロナ過の真っただ中にありつつ、数多のモノの物価上昇は留まる気配すら無い……ただ、そんな暗い話題が多かった年でも、良い事ってのは少なからずあったりもしていた。

毎年の事ではあるが、そんな日々の生活の中に於いて心に彩りや昂りをもたらしてくれたのは、世に放たれた数多の楽曲であり、今年も本当にいい楽曲との巡り逢いに恵まれたと思う。


 と、言うワケで……今年最後の投稿は、2022年に魂を揺さぶられたBest Song10選をお送りしたいと思います。


※自分が今年初めて聴いた、または購入した楽曲を挙げますので2022年リリースではない楽曲もあります。その辺りはご容赦願います……

 

 

 

  Page/青山吉能

 

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 今年は、彼女の年と言っても過言ではないと思っておる。年間通じて青山吉能の名を目にする機会は多かったのではないだろうか。そんな彼女が、三月にソロデビューを果たして楽曲をリリースされた。

彼女の謳を聴いて特に心揺さぶられるのは、清廉かつ伸びやかな高音域……よく自分は魂の絶唱と称しているアレである。この楽曲はそんな彼女の絶唱とメロディとの親和性が見事な具合で響いて来る。


 来年には、1stアルバムのリリースも決定しており、今からどんな楽曲を揃えて聴き惚れさせてくれるのかは非常に楽しみな所である。

 

 

 

 dawn of infinity/frip side

 

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 こちらも、自分の中に於いては大きなニュースだった。fripSideの二代目のボーカルを務めた南條愛乃さんが脱退されて、三代目のボーカルとして上杉真央さん、阿部寿世さんによるツインボーカル体制となって最初の楽曲。

ボーカルが替わった事、更にはツインボーカル体制。正直な話、ネガティブな方向でのどうだろう?という感覚を抱いて聴いてみたら、何の問題も無くこれまで通りの『frip side』テイストの楽曲だなと。

楽曲名の和訳は、無限の夜明けだそうな。新体制となる最初の楽曲のタイトルとしては良いんじゃないでしょうかね。

 

 

 

 蒼空/all at once

 

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 映画『世の中にたえて桜のなかりせば』主題歌。ちなみに…映画の方は未見だが……

四月の頃から、TOKYO MX観ているとこの映画の予告編が多く流れ、主題歌であるこの楽曲も流れていて、刷り込み的でBGM的な感覚でこの楽曲(特にサビ)を聴いて来た。結構長い期間流れていた感じなので、単純に聴いた数ではこの楽曲は今年一番聴いていた楽曲だったかもしれない。

楽曲の印象は、楽曲名通りに澄み切った春の蒼空を想起させるようなメロディに、NARITOとITSUKIのツインボーカルのハーモニーが聴き心地の良さを醸し出す。他の楽曲もチェックしてみようと思う。




 

 RADIANT/Run Girls,Run!

 

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 2022年は、『Run Girls, Run!』結成5周年を迎える節目の刻。
そんな節目と新たなる軌跡への門出を彩るべくリリースされたミニアルバム『Get Set, Go!』この楽曲は、そんなアルバムのリードトラックとなる。

楽曲リリース直後はそんなこと微塵も感じなかったが、新たな門出の意味にグループの解散という意味が込められているとは思わなんだ……

RGR楽曲の『アンセムの系譜に連なる、決意表明的な意味を持つ楽曲。感情を爆ぜさせて滾る情熱を一気に解放させるサビのメロディと三人のパワフルでエネルギッシュな歌唱が堪らなく良い。

 

 

 

 拝啓ディアナイト/厚木那奈美

 

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 『Run Girls, Run!』ミニアルバム『Get Set, Go!』からもう一曲。こちらの楽曲は、メンバーである厚木那奈美さんのソロ楽曲になる。

EDM調のミディアムテンポなメロディと、フワっとした浮遊感と繊細だけど芯のある厚木さんの歌声が織りなす上質なヒーリング効果で聴き心地の良い“癒しの謳”

林さんや森嶋さんのソロ楽曲とは正反対で『静』の極致に全振りした楽曲でもあり、二人のソロ楽曲との落差でもって、この楽曲がより魂に突き刺さって来た。

 

 

 

 

 さよなら MY LONELINESS/ガールズフィストGT!!!!

 

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 新メンバーに井上杏奈さんを加え、新体制になって最初の楽曲。
楽曲のテイストは奇を衒わないパンクロックテイストで、血が滾って拳を空高く振り上げたくなる衝動に駆られる。

勝手な推測&妄想の域なんだけど、『THE BLUE HEARTS』の楽曲に近い曲調なのかと思う。おそらくは、オマージュの要素をもってこの楽曲は作られたのかもしれない。

で、この楽曲をLIVEで直に聴けたってのも思い出深い一曲。参戦してみたかったLIVEでもあったし、直に音を浴びる感覚は本当に堪らなくしびれたモノだ。

 

 

 

 

  MY ENTERTAINMENT/水樹奈々

 

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 やっぱり、この人の楽曲は外せない。


 二年半ぶりにリリースされたアルバム『DELIGHTED REVIVER』のリードトラック。
水樹さん曰く、この数年の刻において停滞したエンターテイメントを復活させるという想いをテーマに掲げていると。

鬱積している心情を模した様な不穏な曲調から始まり、徐々に、勇ましく力強い曲調へと雰囲気が盛り上がっていく、現状に抗って未来の希望を信じ鼓舞して突き進む気概を謳った、水樹楽曲の真骨頂であるド直球な応援ソングに仕上がっている。



 燃やせ 感情の灯-ひ-を

 絶望の風に吹かれても

 決して負けない

 大切な誰かを守る為に


水樹奈々『MY ENTERTAINMENT』より引用



 サビのこの節が凄く好きなんだよな。今の世情をきっちりと表していて歌として聴いても響いて来るし、言葉として読んでも響いて来る。前述の応援ソング(=エール)としても、そして“生命の謳”としても素晴らしい楽曲であると。

 

 

 

 

 星の海の記憶(莉央&琴乃ver.)/神崎莉央×長瀬琴乃

 

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 『IDOLY PRIDE』の楽曲。元々は、長瀬麻奈(CV:神田沙也加)の楽曲。
コレは、麻奈の妹である長瀬琴乃(CV:橘美來)と麻奈の最大のライバルである神崎莉央(CV:戸松遥)によるカバーソングとなっている。

このバージョンが収録されたアルバム『IDOLY PRIDE Collection Album [約束]』は、昨年のリリースだが、著者がCDを開封して聴いたのが今年の初めであったのでノミネートさせていただいたwww


莉央と琴乃によるバージョンの細かいインプレッションと所感は、別の機会できっちりと書く事にして……一番印象深かったのが、7月に参戦した『IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “約束”』のアクト、そして……この楽曲がモチーフになっているゲーム内で描かれたイベント。


 麻奈の最大のライバルだった莉央とその妹である琴乃が彼女の遺したこの楽曲を謳う。届けたい謳があるとありったけの想いと魂を謳に込めて天高く煌めく星(麻奈)に届けと……そんな彼女達の想いと魂はエモーショナルな感情を揺さぶって来る。

 

 

 

 

 Bang Bang/ⅢX

 

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 こちらも『IDOLY PRIDE』の楽曲。歌っているのは、ゲームの方で描かれたアニメ版の続編になる『東京編』に登場するボスグループ的な位置にいるⅢX(スリーエックス)の楽曲。

ボスグループが歌う楽曲ということもあってか、どこか不敵で洗練された格好いい強さの様なモノを感じさせる。どこかヒリ付く様な危うさや妖艶な雰囲気も内包し、聴けば聴くほど深みに嵌っていく様な中毒性のある変態楽曲。(最大級の賛辞)

 

 

 

 

 それを人は"青春"と呼んだ/長瀬琴乃・川咲さくら・天動瑠依・神崎莉央

 

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 ラストを飾るのはこの楽曲。ゲーム『IDOLY PRIDE』リリース1周年記念したアニバーサリー楽曲。
作中に登場する4グループ(月のテンペスト・サニーピース・TRINITYAiLE・LizNoir)のリーダー(長瀬琴乃・川咲さくら・天動瑠依・神崎莉央)がこの楽曲に血を流す。

アニバーサリー楽曲という事もあり、歌詞には前述した4グループのアイコン(象徴)となるワードやイメージが織り込んであったり、ただ清々しいモノだけではなくて、理不尽なモノに翻弄されたり、葛藤を想起させる負の要素もちゃんと織り込まれていて、そこから運命に抗おうとする意志の強さや四つのグループのアイデンティティとPRIDEもあり……

そして……四人と縁深い長瀬麻奈への想いもちゃんと織り込まれて、生きた感情と流れる血の温度を感じさせる。


 東京編のエンディングの後に聴くと、この楽曲がより魂に突き刺さるのではないでしょうか。

 

 

 

 以上が、今年自分の魂を強烈に揺さぶった10曲を挙げさせていただきました。


ここに惜しくも挙がらなかった楽曲も当然数多くありましたが、明確な差というモノはありません。どの楽曲も本当に素晴らしく、等しく魂を揺さぶられて奮い立たせてもらいました。

そして、今年も多くの楽曲に巡り逢えたのは、自分がそれだけ様々な部分でアンテナを伸ばせて楽曲の存在を知り得た証でもあります。それは、来年も続けていきたいしその先の未来に於いても続けていきたいと思っています。


 今年、自分が触れられた全ての素晴らしい楽曲に、心からの賛辞と礼賛を。そして……来年もまた一つでも多くの素晴らしい楽曲に巡り逢える事を祈りつつ筆を置かせていただきます。

 

 


 

青山吉能 3rdシングル『My Tale』を斯く語る。

 限界に挑み続け、闘う者の新境地がそこに在った……


誇張でも何でもなく、この楽曲を初めて聴いた後に抱いたファーストインプレッションがコレだった。狭い範囲でしかないが、彼女……青山吉能が持っていて普段見せていた領域というか『貌』(かお)はほんの一部分でしかなかった事を思い知らされた瞬間でもあった。


 そんなインプレッションを抱いて思い知らされた、青山吉能3rdデジタルシングル『My Tale』についてこれから斯く語ってみようと思う。

 

 

 

 

 My Tale/青山吉能

 

 

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 青山さん曰く、この楽曲はデビュー楽曲のコンペに寄せられたうちの一曲だと言う。
様々なテイストの楽曲が寄せられたらしく、中には結構攻めたテイストの楽曲があって、そんな中の一曲がこの楽曲だったと。

曲調の方は、R&B色とEDM的な要素がミックスされた様な、ミステリアスさとスタイリッシュ感を醸し出し格好良さに全振りした、サイバーチックなダンスチューンに仕上がっていると感じられた。夜の都会を全力疾走しながら彷徨う的な画が浮かんで来る。

ミステリアスと評した様に歌う青山さんの歌唱も、彼女のストロングポイントとされる感情を全部歌声に乗せて爆ぜさせていく歌い方ではなく、あえて抑え気味でアンニュイ(物憂げ、愁い)さのある歌い方。この楽曲のジャケット写真の青山さんの表情もどこか愁いを帯びた表情が印象的。

ソロシンガー・青山吉能の門出となるデビュー楽曲『Page』や、彼女の抱く夏の日の記憶とノスタルジー感を描写した2ndシングル『あやめ色の空』とは趣きがガラッと変わっていて、上手くいかない、ままならない現状に戸惑っているが、なんとか抗って前に進んでいこうとする心情を彼女は歌声に乗せていっている。だから、この楽曲で青山さんは感情を爆ぜさせる歌い方ではなく抑え気味に聴こえる様な歌い方にしたのだろうと思える。



 専門的なモノは全然分からないが……全体的にこの楽曲のキー(音域)は、青山さんにとっては低い。もっと高いキーで張り上げて伸ばす歌い方……自分は血の流れる魂の絶唱と勝手に称してしまっているが……前述でも触れたが、この楽曲ではそういった絶唱を響かせていない。サビでは、感情がいくらかは乗って上がっていくものの、全体通して感情を抑えて囁く感じの歌声になっている。

サビの歌声の件になるが、抑え気味とは言っても青山さんの歌声のストロングポイントでもある澄み切った高音域での歌声の伸びは失われていない。イメージとして感じられたのは、極細な糸なんだけどもちゃんと張りがあって遠くに伸ばす様な感じ。全方位に解放させていくのでなく限られた範囲に凝縮させた感じでもいい。何か感情をどこかに置き忘れた様な歌声に聴こえたのはその影響なのかもしれない。

メロディを忠実になぞった歌い方ではなく、ただ単純にメロディに身を委ねたいい意味での無機質的な歌い方に彼女は挑んだのだろう。ボーカルを主張させ過ぎないのがこの楽曲で設けたテーマだと、青山さんはインタビューにて語っている。いい意味での無機質的な彼女の歌声は、そうした彼女の挑戦が実を結んだ成果だと思える。

それは、青山吉能がこれまでの軌跡で限界と闘った末に得られた成果でもある。今を戦えない者に未来は無いという事は、彼女が実感している事だろうからこそ攻めた楽曲を持って世に戦いを挑んだとも言える。



 で、詞の方だが、1st・2ndシングルに共通している青山吉能の心情描写とは違っていて、曲調の世界観に合うモノを自由に書いて欲しいと作詞されたタイラヨオ氏にオーダーされたと。そのテーマを汲み取って、曲調に合わせてビターでクールに仕上げた印象。青山さんの言によると、この詞の解釈については明確なモノを定めていなくて、リスナーそれぞれの解釈に委ねると。

詞で特に印象深かったのは、『遠く近く』『喧騒と静寂』『明確と曖昧』といった対義する言葉を多く使っている所。自分の解釈だが、これらの対義する言葉はポジティブとネガティブな感情を指している言葉で、前述した青山さんのアンニュイでどっちつかずな歌声が合わせていく事で、変わろうという想いは抱きつつもその一歩先へ踏み出せずに悶々としている。

しかし、各サビの締めのフレーズである『形の無い多面性の~』『決まりの無い無限大の~』『未来へ続く未完成の~』は、彼女自身やリスナーをも鼓舞していく風にも捉えられる。そしてサビのラストフレーズとなる、『My One And Only Tale』(私の唯一無二の物語)というフレーズで締めていく。

迷って彷徨いながらも……そんなままならない世界を受け入れ抗う反骨の物語。この楽曲はそんな謳なのだろうと感じ入る。最終的には、苦悩や葛藤を断ち切って進む覚悟を括ったと捉えている。

誰もが、ずっとその良くない状況を続けたいワケではない。何とか好転していく事を望んで前に進もうとしていく。そういった意味では、メッセージソングという枠を越えてリスナーの魂の火を燃え滾らせる“何か”をもたらしてくれる様な気持ちにさせられる。

派手さは無いけども丁寧に織り込まれたメロディ。洗練された大人な世界観のダンシングチューン。苦悩と葛藤しているビター感が沁みて来る歌詞。一曲の中に悲哀や希望が入り混じった人間臭さに満ちたドラマチックな楽曲。



 初聴時のインプレッションも強烈なモノだったが、聴き込んでいく事でもっと深みが出て来るタイプの楽曲だと思うので、そういった意味も含んで今後も長く付き合えそうな楽曲だと感じられた。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #16 EVERYDAY! SUNNYDAY!

 

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 EVERYDAY ! SUNNYDAY !/サニーピース


 TVアニメ第10話挿入歌。この回で描かれた『NEXT VENUSグランプリ』セミファイナルにて、サニーピースが歌った楽曲。



 完全な私見の域ではあるが……この楽曲は、楽曲単体だけではその魅力は完全には伝わらない。50%程だと思っている。(勿論、楽曲のみでも素晴らしい楽曲ではある)作中でサニピが紡いできた物語とこの楽曲のMVが組み合わさっていく事によって、サニーピースにしか謳えないサニーピースだけの『アンセムの域へ昇華する楽曲なのである。

この楽曲は、サニピの物語とMVで描かれるモノを考慮せずに聴いてみると、『SUNNY PEACE HARMONY』の系譜に連なるスタンダードなアイドルソング。言うなれば、アイドルがファンに向けて歌い、元気付ける太陽の様な輝きを持った楽曲。当然、そういった面があるとは思うしその解釈でも何ら問題はない。

しかし、前述の通り、サニピが作中で紡いできた物語と、国宝指定されたMVで描かれる世界観が加わるとこの楽曲はまた違った表情を見せてくれる。



 アニメ9話において、さくら達サニーピースは長瀬麻奈が遺した幻の楽曲『song for you』を歌った。その際にさくらは、受け継いだ麻奈の歌声で歌うのは『song for you』をもって最後にすると決めた。そこには、麻奈への感謝の念と、麻奈の歌声からの決別が含まれていた。

そんなこんなで、さくらは『長瀬麻奈』という幻影の先に広がる未知の軌跡への一歩を踏み出す事が出来た。そして、サニピの他の四人(怜、遙子、千紗、雫)も、さくらの変わろうとする想いと覚悟を知って、ここから先は、これまでみたいにさくらの歌声に依存していくのではなく、サニーピースのメンバーとして、これまで以上にきっちり輝かなくてはという想いと覚悟が芽生える。

変化の刻を迎えたサニーピースは、彼女達の新たな門出としてそれを証明するために、五人が作詞と振付を担当したこの楽曲を携えて、『NEXT VENUSグランプリ』のセミファイナルのステージに臨む。
そして、さくらにとってもこの楽曲は、麻奈の歌声ではなく川咲さくらの歌声で歌う初めての楽曲でもある。自分の想いと魂をさくらにしか出せない歌声で歌う。


 さくら、怜、遙子、千紗、雫は、この楽曲の詞にどんな想いと魂を込めたのか。
それを紐解いていくキーワードとなるのが、詞にある『みんな』と『君』という言の葉だと考えている。

この楽曲のMVは、五人の過去を主軸として描かれていく内容となっている。
ソロアイドルとしてデビューを果たしたが、チャンスに恵まれず不遇と雌伏の刻を過ごしていた遙子。ダンスの全国大会で優勝という成果を出しても、父親に本気を認めてもらえない怜。遙子と怜はそんな中でも独りで闘って来た。1番の歌詞は、この二人の心情描写に沿ったモノになっている。

アイドルに憧れを抱くけれど、根暗かつ無口で笑顔が苦手な自分にアイドルは務まらないと諦観の念に苛まれていた雫。内気な自分の殻を破りたいという想いを抱いてアイドルを志すが……同じ軌跡を共に行く最愛の姉・沙季と一緒にいられる方のウエイトに傾いていて、その姉と違うグループに組み込まれることとなり、真に行くべき軌跡を見失ってしまった千紗。

千紗と雫は、アイドルとして自分の力では立ち上がって歩く事も出来なかった者として描かれる。彼女達の人物考察の記事でも書いたが、千紗と雫は互いを思いやって支え合いながらアイドルの軌跡を駆けて来た。2番サビの『出逢えてよかった そう思えるかな』の節は、アイドルとしての彼女達の関係性を示すのに相応しいと思えてしまう。



 そして、その巡り逢いの縁という環の中心にいるのが川咲さくら。
ここまでは、怜、遙子、千紗、雫が過去に抱いていた葛藤、不安、挫折といった『負』の感情を盛り込んで来た。他の四人と同様にさくらも例外ではなかった。

川咲さくらという少女は、天真爛漫で天性的とも言える明るさを持って人を惹き付けていく。まさしく太陽の様な輝きを持つさくらではあるけれど、彼女も内に抱えている負の感情があった。

幼い頃から心臓に病を抱えて、普通に生きるという事も困難だったさくら。そのせいで、立ち上がって歩く事も、闘うステージに立つ事すら出来なかった。でも、生きる事は諦めなかった。

そんなさくらの生きようとする強い想いは奇跡を呼ぶ事になった。長瀬麻奈の心臓を移植されて彼女は生命を繋ぎ止める事が叶い、過酷なリハビリを経て普通の生活が送れるようになって……アイドルへの軌跡を踏み出し、サニピのメンバーと巡り逢った。



 始まりのあの夜に 見つけた小さい花

 空の青さに似てた 君にも見せたいな

 いつかは (1,2,3 GO!)


 ―サニーピース 『EVERYDAY! SUNNYDAY!』より引用

 


 ここの節で言う小さい花は、アニメ5話や10話で着ていた衣裳のアクセサリーとなっていたネモフィラの花という解釈で良いと思う。自分は、このネモフィラの花はサニーピースの絆のシンボルだと思っている。また、夜というのは彼女達が過去に囚われていた負の感情の比喩。

事の詳細は割愛させていただくが、事務所の近所で咲き誇っているネモフィラの花畑で結束を深めたサニピ。これは完全な妄想になるが……円陣でさくら達がやっているピースサインを寄せて星型を作るのは単に輝く星を目指す意味もありつつ、星に形が似ているネモフィラの花という意味もあるのかもしれない。



 『みんな』というのは、今の刻にいるサニーピースのメンバー全員を示していて、『君』というのは、今の刻にいるサニピのメンバーが、負の感情に囚われていた過去の彼女達自身を示していると解釈させてもらった。その解釈に至った要因は、語りかけていく様な詞の構成になっている事だと思っている。

さくら、怜、遙子、千紗、雫の過去、今、そして未来の刻へ……彼女達を取り巻く全ての時間軸と縁と絆。それら全てに意味がある。負の感情に囚われている過去の彼女達を、今の刻を生きる彼女達が手を差し伸べて輝く未来へ導く様に……

そんな過去があったから、今の彼女達が強く輝ける事にも繋がる。MVで描かれるサビ前のパートのカットで、瞑っていた瞼を開くと五人の双眸がそれぞれのイメージカラーで眸が彩られていく所は、彼女達の決起の魂が輝いていく様に思えてならない。この箇所はMVで最も好きな場面だったりする。

さくら、怜、遙子、千紗、雫。誰一人欠けても駄目だし、この五人の組み合わせでなければ『サニーピース』として成り立たない。他の誰でもない、この五人でしか響かせられないHARMONYとアイドルとしての生き様とも呼べるPRIDEがあった。



 この楽曲は、五人が辿り着いた一つの到達点。だからこそ……彼女達が謳う『今』には力が漲っていて、サニーピースにしか謳えないサニーピースだけの『アンセムとして段違いな説得力を持って我々に訴え掛けて来ているのかもしれない。

 

 

 

 

 

アイプラ楽曲ライナーノーツ #15 réaliser

 

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 réaliser/TRINITYAiLE


 曲題の『réaliser』(レアリゼ)は、フランス語で実現するの意。TVアニメ第4話、10話エンディングテーマ。『Aile to Yell』や『les plumes』と同様、作詞・作曲・編曲はkz氏が手がけている。


 『Aile to Yell』の、応援歌的テイストに奇を衒わない純然なアイドルソングとしてスタンダード感を抱く『動』の楽曲というインプレッションから打って変わり、この楽曲は落ち着いた曲調を主軸に据え、余分な装飾的な音を削ぎ落しシンプルにボーカルを聴かせる『静』の楽曲という意識がある様に感じられる。

トリエルの三人も歌い上げるのではなく、一つ一つの音をなぞって確実に発音して柔和で透き通る様なノスタルジックかつセンチメンタル感を感じさせるボーカルを聴かせていって、見事に三人のボーカルが際立つ仕上がりとなっている。それらが高い純度で混じり合った事で、メロディとボーカルがすんなりと入って来て、穏やかに広がって染み渡っていく様な聴き心地の良さを感じさせる。


 この楽曲のテーマとして掲げているのは、トリエルの三人がこれからなりたい理想の姿、それに向かって頑張る過程、そして、実現していきたいものを描写しているとKz氏は語る。

言わば、ステージで輝き、ファンを導いて引っ張っていく絶対的なアイドルとしての姿を描写するのではなく、一人一人の等身大の少女達の心情描写に寄せた世界が表現されている。詞の内容だったりMVでは、瑠依、優、すみれが空を見上げている描写が多い所から察していくと、大空(夢)へと羽ばたこうという意志が込められた決起の謳でもあり、彼女達の初心の魂が再生される謳でもあるのだろう。


そうしたいろいろな背景を鑑みると、『réaliser』と『Aile to Yell』は『対』になる関係だと思える。ここで言う『対』の関係性とは、単純に対極・対照という意味だけではなく、二つの要素が揃って一組の要素として捉えられるという事。


アイドルとしてのTRINITYAiLE、一人一人の等身大の少女達でもあるTRINITYAiLE。片方の要素だけではTRINITYAiLEとして成り立たない。彼女達の過去・現在・未来という時間軸に意味を持たせていく。Cメロ(?)である、優→すみれ→瑠依→三人の順で歌い継ぐパートがこの楽曲の要を成す箇所だと自分は思っている。

 

 輝く場所まであとどれくらい?
 
    誰にも聞けずに胸に隠した

    3つの願いを紡いだ 翼に託そう


 ―TRINITYAiLE 『réaliser』より引用



 変わらない想い、変わろうとする覚悟。良い事も悪い事も全てに意味がある事。敗れてもなお諦めず貫き通したいPRIDE、共に寄り添う絆と魂への感謝……

前述で触れた様に、TRINITYAiLEの決起の謳でもあるし、原点回帰の意味の謳でもある。そして、究極的に言ってしまうと、TRINITYAiLEの生き様を示す真骨頂でもあり、魂が還れる集大成としての表情も見えて来て……瑠依、優、すみれの生き様を全部懸けて、夢を実現する為に謳う。ここで言う『翼に託そう』とは、彼女達の夢のアイコン(象徴)であるアイドル・TRINITYAiLEの比喩なのだろう。


 故に、TRINITYAiLEを取り巻く要素を全て内包させているこの楽曲は、TRINITYAiLEにしか謳えないTRINITYAiLEだけの『生命の謳』。大袈裟かもしれないが、そう称すのは過言では無いという説得力を、優しげだが内に秘めている熱い想いが漲る三人の歌声から感じさせる。