巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

RGR楽曲ライナーノーツ#18 蒼穹のBlue Grandia

 このアルバム『Get set, Go!』 は聴かれた皆様ならわかるだろうが本当に強い楽曲しかない傑作なのである。

そんな強い楽曲揃いの中において、これから語ろうとするこの楽曲はただ単に強い楽曲というだけでは語り尽くす事が出来ない程に一線を超えている楽曲だと思い知らされたし、やりやがったな…と徹底的にエモーショナルの暴力に打ちのめされた所感も抱いた。

何一つままならない世界に生きているからこそ、何度でも立ち上がって怖れを振り払い前に進む。
この楽曲にはそういうメッセージが込められていると思ったのである。

 


この楽曲は……『Run Girls, Run!』の生き様や自我の証。そして“生命の謳”であると。

 

 

 

 

 

蒼穹のBlue Grandia 

 

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 哀愁感あり空虚的な方向へ振り切った儚げなイントロから、楽曲タイトルにある『蒼穹』の意味である澄み切った大空をイメージさせていく壮大さや荘厳さも兼ね備えているファンタジックな楽曲。

それと、メロディを構成するEDM系特有(※あくまでも個人の所感)の無機質感も加味された事もあって、虚しい儚さや壮大な楽曲というファーストインプレッションを抱いたのである。


 インタビュー記事にて、彼女達はレコーディングの際、広大で朽ち果てた世界に三人しか存在していない雰囲気でもって歌う様ディレクションされたと語られている。この言葉を踏まえて三人の歌声を聴いていくと、叙情的な物寂しさで沁み入る様に聴かせる事、サビでの盛り上がりと力強さはあるけれども芯の強さを表現していく方向性で、なおかつその両方のバランスを均等にする様なアンニュイな感じのボーカルに聴こえ、その塩梅が見事に成立されている。

おそらくは、どちらの要素も突出させ過ぎない落ち着いた雰囲気を醸し出す事が彼女達が導き出した『大人っぽい楽曲』を謳う事だったと解釈している。


 冒頭の四方山話において、俺は『蒼穹のBlue Grandia』という楽曲を“生命の謳”と称した。


その考察に至った理由は至ってシンプルなモノ。前述にあった彼女達への歌う際のディレクションにあった広大で朽ち果てた世界に三人しか存在していない雰囲気を感じる事と、絶望からの決起を描写している詞の内容は三人の内省的な葛藤を描写する事にも結び付いている。それを最も象徴しているのが以下の節々だと感じている。

 

 

 譲れぬ想いを抱きしめて前を向け

 何度だって立ち上がるんだ Don't be afraid

 強くなれる理由ならここにある


 ―Run Girls, Run!蒼穹のBlue Grandia』より引用

 

 

 切ないながらも、どこかこの楽曲が力強いのは、運命すらも覆そうとする何物にも屈しない反骨の魂の在り方を示しているからなのでしょう。それは、彼女達の自立と自我の確立にも繋がるモノ。

三人の魂に在る譲れない想いは、叶えたい願いであり生きようとする執念と本能。それは彼女達の魂で滾っている生命の炎でもある。それはあからさまにメラメラと燃え滾るのではなく、消えかけても静かに燃え続ける強かでしぶとい温度の高い蒼い炎。大袈裟な物言いではなく、実際のRGRの三人の表現者としてこれまでの生き様を模しているモノでもあるのだと。


そして、最後にはAメロと同じ歌詞が用いられている。

 

 

 描くのは群青 移り行くSeason 未来を

 伸ばす手は蒼穹 動き出す本能 目指して


 ―Run Girls, Run!蒼穹のBlue Grandia』より引用

 

 

 群青とは、鮮やかな濃い青色。ここでいう『青』は『青春』の事を指していると解釈できる。
または、若い未熟者の事を『青い』と称したりもする。 RGRの三人も世代的には若者のカテゴリーに入っていて『青春』真っただ中の刻を生きているがいずれはその枠から外れる刻が訪れる。

季節は容赦なく未来へと流れていく刻。『青春』とは、夢や希望に満ち溢れた世代を指すが、ここで言う『青春』≒『群青』は若い世代だけに限られたモノじゃない。魂の在り方は夢の軌跡を駆けだした何者でもなかった頃のままでいようと。それもまた青臭いのかもしれない……でも、その生々しい感情も“生命の謳”たる要素であると思えてならないのである。

 

 

 

 

 

RGR楽曲ライナーノーツ#17 RADIANT

 どうも。RGR楽曲ライナーノーツシリーズのお時間です。

 


 2022年は、『Run Girls, Run!』結成5周年を迎える節目の刻。
そんな節目と新たなる軌跡への門出を彩るべくリリースされたミニアルバム『Get Set, Go!』

収録されている楽曲は、勿論全て新曲。グループでの楽曲が三曲に、メンバーの新たなソロ楽曲が三曲の全六曲の構成という意欲溢れる力作と評しても良いと思える。

で、今回から六回に渡って、ミニアルバム『Get Set, Go!』に収録されている楽曲についての所感諸々を好き勝手に語っていこうと思う。

 

 

 

 

 

 RADIANT

 

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 『Get Set, Go!』のリードトラック。解釈はいろいろあるが、リードトラックの解釈として自分の中にあるのは、アルバムを最も象徴する楽曲であり、アーティスト側からも最も力を入れていてイメージを形作っていく重要な位置の楽曲であるという事。RGRサイドもこの楽曲のフルMVを公開して来たという事を鑑みると、この楽曲を前面に押し出してプロモーションしていきたい事の表れだったのだろう。


 『RADIANT』の注目ポイントの一つとして最もインパクトが強烈だったのは、サウンドクリエイターチーム『Elements Garden』の参戦だろう。作曲は『Elements Garden』に所属されている藤永龍太郎氏。作詞はSpirit GardenというElements Gardenと連動している作詞家集団。

純度100%のElements Gardenブランドの楽曲がRun Girls, Run!にもたらされたという事になった。


 バンドサウンドが得意とされる藤永氏が書き下ろしたのは、ダークな雰囲気を纏う格好良いバンドサウンド。楽曲のタイトルである『RADIANT』の和訳の一つの意味にある光輝くとは対になる要素。

バンド(ロック)サウンド自体は、これまでのRGR楽曲の中では珍しいモノではない。自分の勝手な範疇の中において、RGRの『アンセム』の系譜に連なって来た『カケル×カケル』『ランガリング・シンガソング』『無限大ランナー』の世界観を構成している苦悩と向き合い、そこから逃げずに立ち向かって駆け出す要素を受け継いで来ている。

そういう点から『RADIANT』という楽曲は、RGRの『アンセム』の系譜に連なる楽曲でもあるのだけれども……グループ結成5周年という節目の刻にリリースされたという事を踏まえると、RGRの第二章の『アンセム』という側面もある様に思えるのだ。



 飛び出して Run&Junp!!! “RADIANT”超えてこう

 過去と現在と 未来の先を

 雨の日も 曇りの日も いつだって 

 表情だけは 晴れ晴れとして

 走り続けたい


 ―Run Girls, Run!『RADIANT』より引用

 


 2番のサビであるこの一連のパートが、自分が言うこれまでの『アンセム』からここから先へ往く為の『アンセム』の系譜である事を象徴している件だと感じられた。

それと、雨の日と曇りの日という詞がまたグッと感情を揺さぶって来ている。ここ2年ほど思うような活動には至らずもどかしい刻の中を彼女達は過ごして来た。雨と曇りという語句はその比喩なんだと。

そういったままならない苦悩の経験を経て、彼女達はOTONAの表現者として一歩踏み出せたとも言えるのかもしれない。突破というのがこのミニアルバム『Get Set, Go!』に掲げられたテーマだと言う。突破は未知の領域に一歩踏み出す事と同義でもある。詞もそうだが、鬱積とため込んでいた感情を爆ぜさせて滾る情熱を一気に解放させるサビのメロディと三人のパワフルでエネルギッシュな歌唱が、リスナーの熱を煽って滾らせつつエモーショナルな衝動も満ち溢れていく。


 そして、この楽曲の最大のエモーションを感じさせるのが、落ちサビ(?)後で差し込まれる林さんの『さあ、行こう』という台詞から大サビへと流れていく構成だと思う。

 


 何度でも Run&Junp!!! 凛として進むんだ

 私たちには 限界なんてない

 プレッシャーよりもワクワクの方が

 大きく咲いて 止まらないから

 踏み出して Run&Junp!!! “RADIANT”超えてこう

 自分自身と 世界の向こう

 いつまでも キミと一緒に見たいんだ

 生まれ変わった夢の続きを

 歌いたい歌がある


 ―Run Girls, Run!『RADIANT』より引用

 


 この終盤のくだりこそ、三人が真に伝えたい本気の想いと魂が込められていると自分は捉えている。リスナーの魂を揺さぶるフレーズを階段を駆け登るかの様なメロディと、ギアをあげブースト加速した様な彼女達の歌声で畳み掛ける……いや、殴りかかる様な激しさを感じさせたのは見事だと膝を叩くしかなかった。最後に音を高く取って歌い上げる締め方も素晴らしいの言に尽きる。

バンド(ロック)サウンドと、林さんの歌声の質との親和性は鍵と鍵穴の様にガッチリとハマる見事な組み合わせ。彼女の張りがあって晴れやかな歌声は本当にバンドサウンドに映えるモノ。

で、格好良い路線である『Break the Blue!!』にて低音域を艶やかに心地よく格好良く響かせた森嶋さんの歌声。それは同じく格好いい要素で聴かせるこの楽曲でも遺憾なく発揮されていて、あくまでも自分の所感ではあるが…この楽曲の要になっているモノだと強烈に感じさせた。

勿論、厚木さんの歌声も素晴らしいモノだ。彼女の歌声は繊細ながらも芯が通っている凛とした清廉さがある。厚木さんの歌声が持つ独特な質は林さんや森嶋さんには無い要素。だからこそ彼女の歌声も二人の歌声に埋没しない強さと親和性がある。

 


 これまでのRGR楽曲で多くあった疾走感溢れるキャッチ―さに、新たなチャレンジとされるダーク寄りな雰囲気。それを振り払って未来の刻と未知の領域を切り拓く強さを表現する楽曲と、それを表現の形としてきっちり落とし込んだRGRの三人の成長を偽り無く魅せ付けるという節目の刻にリリースされたアルバムのリード楽曲に相応しい強い楽曲。

楽曲というのは、歌い続けていく事で血が流れて成長していくモノで歌う者の生き様もそこに反映されていく。自分は『RADIANT』をこれまでのRGRのアンセムの系譜と繋がりつつ、新たな章のアンセムであると称した。この楽曲にはそれだけの可能性を秘めている。そして……林鼓子森嶋優花厚木那奈美の三人にしか謳えないし、血を流す事も出来ないのだ。


 

 

 

 

2022ワールドカップ抽選会所感。

 このBlogでは久々になるsoccerのお話。


 先日、何やかんやの末、ワールドカップ出場の切符を勝ち取った日本代表。
で……その余韻に浸る間も僅かに、本戦のグループリーグ抽選がつい数時間前の刻に行われた。

 


グループリーグの組み合わせは以下の通りになった。

 

 

 

 

 

【Group A】 カタール エクアドル セネガル オランダ

 
 順当に考えるならば、オランダが頭一つ飛び抜けている感じか。それに続くのがセネガルって所かなーという印象。開催国のカタールが地の利と気候の利を活かして引っ掻き回すと面白い展開になりそう。

 


【Group B】 イングランド イラン アメリカ 欧州PO※3


 まだ最後の一枠にどこが来るか分からんが、どの国が来ても政情的に色々キナ臭い空気が醸し出される別の意味でのデス・グループwwww特にイランvsアメリカ戦はいろんな意味で激熱な戦いになりそうだ……

普通に考えれば、イングランドが固いだろうな。残りの一枠争いが熾烈になりそうだが…アメリカが普通に行きそうな感じはする。

 


【Group C】 アルゼンチン サウジアラビア メキシコ ポーランド


 総合力で言うならアルゼンチンが飛び抜けてるし、普通に勝ち抜けは固い。
注目となるのがもう一つの通過枠争いと考えると…メキシコが最も有力なんだろうなと現時点では予想。

 


【Group D】 フランス 大陸間PO※1 デンマーク チュニジア


 日本がここに入ったらなーという声がおそらくは多かったのではないかと。とは言え、勿論大苦戦は覚悟の上の話だが……

前回大会覇者のフランスが1位抜けは確実だろう。ただし……御家芸とされる内紛勃発という固有イベントが発生しなければだが。その辺の手綱はデシャン監督がきっちりコントロールしているだろうから多分空中分解は起こらないとは思うし優勝候補の筆頭だろう。

ここも、もう一つの枠争いが注目ポイントになる。とは言え、デンマークが一番固そうではある。
ちなみに、ペルーがPOを勝ち上がって来ると前回大会とほぼ一緒の組み合わせになる。
(前回も、フランスとデンマークは同組だった)

 


【Group E】 スペイン 大陸間PO※2 ドイツ 日本


 このグループについては後述する。

 


【Group F】 ベルギー カナダ モロッコ クロアチア


 異論・反論は承知の上で書くが…今大会屈指のデス・グループがここではないかと。
ゴールデン・エイジの高齢化が囁かれるがベルギーの強さは説明不要。クロアチアの強かさやしぶとさも説明は要らないだろう。モロッコも侮りがたいが…一部の主力とハリル氏の確執が解消されてベストメンバーで臨めればという所か。

で、このグループをデス・グループと称した最大の要因がカナダの存在。
欧州でも活躍する選手を要に据え、北中米予選をアメリカ・メキシコを抑えての首位通過は見事と言わざるを得ない。カナダは今大会最大のダークホースと評しても良いかもしれない。初戦のベルギー戦は注目の一戦になると思われる。

 


【Group G】 ブラジル セルビア スイス カメルーン


 カメルーン以外の国は前回大会も同じ組だったってのはまた凄い偶然である。
とりあえず、ブラジルの絶対的優位はよっぽどのやらかしがなきゃ揺るがんだろう。GLでやらかしたら熱き国民に何言われるか分かったモノぢゃない。

残り一枠をそれぞれが争う構図になっていくだろうが、個の力と身体能力が高いカメルーンがチームとしてまとまったら面白くはなりそう。

 


【Group H】 ポルトガル ガーナ ウルグアイ 韓国


 ここも、グループGと似た様な構図になっていく予感がしている。そんな中で韓国がどう出るかなんだけど、突破出来ないグループではない様な感じもする。個人的にはポルトガルウルグアイが勝ち抜くだろうなと思う。


※1 (オーストラリア vs UAEの勝者)vs ペルー の勝者
※2  ニュージーランド vs コスタリカ の勝者
※3 (スコットランド vs ウクライナの勝者)vs ウェールズ の勝者

 

 

 日本は、スペイン、ドイツ、大陸間プレーオフの勝者(ニュージーランドvsコスタリカの勝者)と同じグループに入った。

スペインとドイツは言わずもがな、世界でも屈指のタレントを多く擁し国際大会での実績も申し分ないサッカーの強豪国。まだどちらが来るかは確定していないが、ニュージーランドコスタリカも楽観視出来ないチームでもある。異論はあるだろうが…日本にとっては所謂、デス・グループ(死の組)にぶち込まれたと称してもいいだろう。サッカー漫画ではよくある話だが現実に拝める刻がやって来たのは僥倖の極みである。

普通に考えてみると、ドイツとスペインがこのグループを勝ち抜ける確率は極めて高い。で、ニュージーランドorコスタリカも前述の通り侮れない相手。徹底的にボコボコに打ちのめされる可能性が脳ミソをよぎるが……勿論、厳しいが突破できる可能性もゼロではない。やってみなくちゃ分からんのよサッカーってのは。

個人的な所感かつ、観る側の勝手な意見ですが、ドイツやスペインとW杯の大舞台で戦えるというのは楽しみだし、どのグループに入ったとしても厳しいという現実を踏まえて見ると、ここまでぶっ飛んだグループに突っ込まれたってのは、最初からクライマックス感満載で逆に美味しいと感じた。

目先の勝敗に拘っていくのも当然大事だが、GL全体を通して計算高く勝ち点や得失点差を計算して強かにいく事も大事だろう。それは、素人の俺なんかが言わずとも代表チームの選手やスタッフは痛感している所だと思える。勿論、戦う前から負けを前提にして考えろと言う意味ではない。綺麗で内容が伴う戦い方なんて求めちゃいないし、できねぇんだから本当しぶとく戦って欲しいわね。


 で……気の早い話だが…肝心要となるのは、実際にW杯で戦う事になる選手の選考。


 今回のW杯は、これまでの6月開催ではなく11月開催。
今季のJリーグはW杯開催を踏まえて11月の頭にシーズンが終わる日程になっている。そして、欧州リーグは開幕してしばらく経った頃。欧州の各リーグにて戦う選手達にとっては6月開催よりはコンディションが良いだろうから面白い大会になるだろうと予想される人は多い。

個人的な願望としてだが、Jのシーズンが終わってのW杯なので今季目覚ましい活躍をした選手は勿論の事、あとは若い世代(特にパリ五輪世代)を出来得る限り連れていってもらいたい。誰とは敢えて言わんが欧州の二部でもロクに試合に出れていない選手はハッキリ言って要らない。

本戦で戦う相手が決まった。刻は短いがそれまでにどういう戦術で臨むのか?これから組まれるであろう限られた強化試合で意識のレベルを組み上げなくてはならないのもある。おそらくはそこで新しい選手を見ていくだろうと思われる。(ってかそう願いたいモノだが……)

W杯開幕の刻にて、最も優れたパフォーマンスを出せるであろう選手が一人でも多く選抜される事をただ願うばかりである。

 

 

 と、まあ……好き勝手ここまで書き殴ってしまいました。


日本のいるグループEの戦いが楽しみなのは勿論、おそらくはこの大会が(年齢的に)ラストのW杯になるだろうとされる、アルゼンチンのメッシとポルトガルC・ロナウドの活躍も楽しみな所でもあるし、個人的に推すオランダやダークホースと評したカナダの戦いも楽しみだったりする。

どこのグループに入っても厳しい戦いにしかならないのは、これまでのW杯でも証明されて来ました。
期待通りの結果になった事もあったし、期待をいい意味でも悪い意味でも裏切った事もありました。


今大会は一体どんな戦いが観られるのか。気の早い話だが今から楽しみにしたいと思う。

 


 

 

 

想いと魂が在り続けられる場と心遣い。

 今回の内容ですが……自分の中では一応の整理が付いたという事と、触れないでおいたままではここから前に進めないという想いで一筆執っていますが、読まれた方の捉え方によってはセンシティブなモノを感じると思っております。

なので……読み進めて不快なインプレッションを少しでも抱いたのなら、すぐさまブラウザバックされる事をお薦め致します。

 

 

 

 


 昨年の暮れ(2021年12月18日)に、『IDOLY PRIDE』で長瀬麻奈役を務めていた神田沙也加さんが亡くなられました。

彼女の急で早すぎる訃報は多くの人の嘆きと心に影を落としました。前述にて一応の整理が付いたから書いているとか言っておるが、いまだに神田さんのフルネームを打ち込む事すら躊躇ってしまうのだ……


 そんな中、運営サイドが今後の方針と称してこんなツイートをアップされた。

 

 

 

 神田さんの代役を立てることだって出来たはずだし、検討して熟考されて苦悩された事というのは言わずもがなだっただろう。

今後何があろうとも、長瀬麻奈のキャラクターボイスは神田沙也加以外にはあり得ないし、代える気は無いという意地と覚悟の証明。ここに記載されている文章にも運営サイドの心遣いが溢れていた。

こういう場合『コンテンツを支え続けてくださった』と過去形で記すのが通例だと思うし間違いではないと思う。でも、『支えて続けて下さっている』と現在進行形で書いてくださっている所に、彼女への尊敬と感謝の念がまた激熱なのだ。


そんなこんなで、年が明けて二月。単独LIVE『IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “奇跡”』が開催された。自分は夜の部に参戦し、後日参戦レポを書き殴ったが、その参戦レポにには敢えて書かなかった事があった。それをこれから書いていこうと思う。

 

*ついでなので貼っておく。興味のある方は読んで下さい。

 

akatonbo02.hatenablog.jp


 あのLIVEでは、長瀬麻奈と神田さんを、直にもしくは想起させるような要素は一切なかった。
コレに関しての受け取り方はそれぞれにあるモノだと思えるし、どれが正解なんだと言うつもりも無いし断定できるモノじゃない。だから、ここから書く事はあくまでも俺の私見の域でしかないという事は予め断らせていただく。


 神田さんの訃報から刻もそこまで経っていなかったあの当時。LIVEで神田さんの事や麻奈の楽曲を一切歌わなかった事実は、彼女達を除け者、蔑ろにしたと憤られた人はおそらくゼロではなかった様に思う。楽曲のバリエーションの一つとして、琴乃やさくらが歌うバージョンで披露という形でも良かったし、麻奈と莉央のデュエットという形だってある。

そうしなかった理由の一つに、会場との契約の中で時間的な都合と尺が合わなかったってのもあったかもしれない。でも、俺は、敢えて麻奈と神田さんの事については触れないという選択であのLIVEを完遂させる決断を下したのだと勝手に解釈している。

明確な定義も正解も無いが、エンターテインメントは第一に楽しませる事が主題。だからこそしんみりさせる要素には触れずにおこうという事だったのかもしれない。


 で…コレは、俺は全然気づかなかった鈍感の極みで恥ずかしい話なんですが……LIVE後に多くの方が参戦レポを執筆されていました。その中で、LizNoirの衣装と月のテンペストの衣装に白い花が付けられている事を言及されている方がいました。(ただ、サニーピースの衣裳と10人楽曲用の衣裳には確認が取れなかったという。)

この白い花は、親しい方が亡くなった時、哀悼の意を形として表すために贈ったり身に着けたりされる『供花』で間違いないだろう。
神田さんを除け者、蔑ろにしているのだったら弔いの意味の花を衣裳に付けたりしないだろうし、付けてないからと言って亡くなられた方への想いが一切無いとは言えたモノではない。我々とは違ってもっと近い距離で神田さんと関わられたキャストの皆さんのショックというのは想像以上に重いモノ。簡単に割り切れられないモノなのだから……


 あの刻では叶わなかった。で……七月に開催されるLIVEですぐに謳って欲しいとは言えませんが……どこか未来のLIVEでも構わないので長瀬麻奈の楽曲を謳って欲しいとただ願うばかりであります。


非常におこがましい話ですが、麻奈や神田さんもきっと謳ってくれる事を望んでいるだろうから……

 

 

 

 そして……先日、Youtubeのアイプラ公式チャンネルで配信された「IDOLY PRIDE 生放送」において
ゲーム内で配信される麻奈の楽曲『Precious』(Collection Album [奇跡]に収録)と新規のイラスト及びストーリーが追加されると発表された。この報についての詳細な説明が運営サイドから即座にもたらされる。

 

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 思えば、彼女が亡くなった直後、運営サイドのTwitterには神田さんの代役は立てないで欲しいという書き込みが多数寄せられた。それは、神田さんが麻奈と『IDOLY PRIDE』という作品を本気で愛して懸けていた事を多くの人が知っていたから。麻奈は既に亡くなっているキャラクターではある。代役を立てなくても今後何も出さないという展開だってアリだが、その選択はしなかった。

全部にボイスが付くわけではないにしろ、長瀬麻奈の存在を終わりにしないで今後も生かしていくという決断には本当に頭が下がる想いしかない。運営サイドの皆様にとっても長瀬麻奈と神田沙也加は『スペシャル・ワン』の存在なのだという熱く滾る覚悟を感じさせられたし、残る形でもって表明してくれた事も素晴らしいとしか言いようがない。

勿論、この決断に異を唱えられる人もいる。その感情も否定されるモノじゃないが、俺は前述の通りこれらは英断だと感じているので繰り返しになるが、本当に感謝の意しか湧かない偽らざる想いである。

 

 

 と、まあ……ここまで好き勝手に書き殴ってみました。
書き出しにも綴った様に、一応の整理が付いて自分の言葉で神田さんや長瀬麻奈、運営サイドの英断について思いの丈を吐き出してみたつもりでありますが、支離滅裂な怪文書にしかなっていない…

結局の所、彼女といくつかの英断について、文章として相応しい落し所が出来なかった。この先もずっと出来ないかもしれない。想いを言葉にして伝えるというのは本当に難しいモノだと痛感させられる。

 


 改めて、神田沙也加さんへの哀悼の意を表すとともに、運営サイドの皆様の心温まる気遣いと数多の対応に敬意と感謝の意を表します。


長瀬麻奈と神田沙也加さんの想いと魂が在る場を存続させていただき本当にありがとうございます。


 

 

 

新たなPageに紡ぐ歌姫の物語。ー青山吉能ソロデビュー楽曲『Page』所感。

 『未完成のままでいい 愛おしい日々を行け(往け)』と。清廉かつ高らかに、感情を爆ぜて力強く謳う……“彼女”の血の流れる魂の絶唱をどれだけ待ち焦がれた事か。

 


 2022年3月9日。あるアーティストがソロシンガーとしてデビューを果たした。
この日、3月9日に彼女がソロデビューしたという事がとても重要な意味を持つ。

彼女の魂の絶唱に魂を揺さぶられ身震いさせられた者として、この件については触れないワケにはいかない。


 彼女……青山吉能が突き進む第二章の新たな“Page”に紡ぐ物語である楽曲を。

 

 青山さんのソロデビュー決定の報が告げられたのが、昨年末に開催された単独LIVE『青山吉能 SPECIAL LIVE 2021 よぴぴん家』にて発表された。

この報を聞いた時、自分の中では勿論嬉しかったというのが率直なインプレッション。でも、そんなに驚きはしなかったというインプレッションも同時に感じていた。青山吉能なら遅かれ早かれ歌で糧を得る軌跡を行く選択を下していただろう。また、選ばれる資質を備えている人でもあるから『歌』の方から逆に彼女を選んだのだろうと思えて来る。


それほどに、青山吉能と歌は切っても切れない強くて固い縁でもって繋がっているのだと。

 

『Wake Up, Girls!』の一員として活動していた頃から現在に至るまで、青山さんの歌声並びに歌唱力は高く評価される人は多い。自分も参戦したLIVEや彼女が歌う楽曲での歌声について言及して来た。

清涼感を感じさせる透き通る様な声質、それに反するかの様に自身の魂を削り『顔』で歌う。そうしたモノが織り重なっていき…血の流れる“絶唱”の域へ彼女の歌声は昇華し彼女を際立たせる。

前述の通り、そんな彼女のソロデビューという報は、自分も待ち望んでいたことだったし、青山さんを熱烈に応援されている方々にとっては、本当に幸せだろうし歓喜の咆哮と滂沱の涙を流されたことでしょう。そして、デビュー楽曲のリリースを3月9日という日にしたのは……3年前の3月8日はWUGのファイナルライブが開催された日。その翌日に新たな挑戦であるソロデビューする日を選んだというのは、彼女が本気である証だろうし強い拘りと覚悟が窺える。


 と、彼女の事について書き殴っていくとキリが無くなってしまうので……ここからようやく本題であるソロデビュー楽曲『Page』についての所感を書き殴っていきます。

 

 

 

 Page/青山吉能

 

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 青山さんの歌声も当然注目されるポイントだが、もう一つの大きな注目ポイントが、歌詞を青山さん自身の手によって書き下ろされたというところだろう。

青山さん曰く、楽曲のデモを聴いたファーストインプレッションは爽やかさや始まりを想起させるモノだったと言う。完成された楽曲を全体通して聴いて抱いた自分の感じと彼女が詞が紡ぐ世界観の軸に据えたのが朝(明け方)の刻から感じられる爽快感と晴れやかさに繋がる。


 曲調についてだが、率直にまず感じられたのは奇を衒わないオーソドックスさ。こういう感じで進行していってサビでこう盛り上がっていくというのが想定出来て分かり易いという事。テンポや雰囲気が劇的に変化していくトリッキーさも無ければ、変態的な進行や展開も当然ながらこのオーソドックスさの中には一切無い。驚きよりかは聴き心地の良さが勝るという感じで、例えるなら、乾いた砂に水撒きしてその水が徐々に砂に染み渡っていく的な。

で、その沁み渡る様な雰囲気を醸し出ている最大の要因はやっぱり青山さんの歌声。
静かで穏やかな歌い出しから、日の出から徐々に陽が昇っていく刻の経過をなぞっていく様に感情が爆ぜていってサビで解放させていく……ハイスパートで歌い上げ、身震いさせる程の凄みではなく、雑念を取っ払ってナチュラルに歌う様はこれまでの彼女とはまた違ったモノ。

MV観てもらうと分かると思うが高らかで伸びやかな絶唱を響かせる彼女の晴れやかな表情が本当に気持ちよく歌っているというのが伝わって来る。


この『顔』で謳うというのが、青山吉能血が流れる魂の絶唱の真骨頂だと思い知らされる。


 朝の刻で感じるポジティブで晴れやかなインプレッションだけを彼女は詞に綴ってはいない。
鬱積するネガティブな感情も包み隠す事無く詞に綴られている。それも含めて偽る事無く、青山吉能は現在突き進んでいる第二章という新たな『Page』に余すところなく書き残すのだと。

ポジティブもネガティブもそれぞれに意味のあるモノ。それは、青山さんがこれまでの軌跡にて感じた事だと思える。

 

 真っ白なページ 今日を忘れず進め 

 未完成のままでいい 愛おしい日々を行け


 ―青山吉能 『Page』より引用

 

 ラスサビでのこの言の葉は、青山さんがこれまでに貫き通して来た生き様を模したモノではないだろうか。いい事も悪い事も全部含めてこその『忘れずに進め』や『愛おしい日々』なんだと。

真っ白というのは未完成にも繋がっている。すなわち、何をこれからそのページに描くかは彼女の可能性に掛かってもいて、決まりも無いし自由そのもので、青山さんが真に伝えたかった事だと自分は捉えている。


 青山吉能さんの魅力を、自分はおそらく一割未満も分かっていないかもしれません。ただ、今後も彼女の事を微力ながら応援したいという心情が湧いて来ました。


現在の刻において、そして…3月9日という日にこの楽曲に巡り逢えた事に感謝を。


 青山吉能さん。そして青山吉能さんの熱烈なファンの皆様。ソロデビュー本当におめでとうございます!歌姫・青山吉能がここから未来へ新しい『Page』に紡ぐその物語がどんなモノなのかは非常に興味をそそられるし楽しみにしております。

 

 

 

 

 

IDOLY PRIDEのキャラクターを斯く語る #13 長瀬麻奈編

 『IDOLY PRIDE』キャラクターの独自考察記事も、今回で感動の最終回となります。

 

作品に登場するアイドルの中で、イレギュラーであり、スペシャル・ワンのアイコン(象徴)という存在で、数多の登場人物に様々な影響を及ぼした長瀬麻奈編をお届け致します。彼女について取り扱わない事には、『IDOLY PRIDE』のキャラクターを斯く語る事は出来ないだろうと思う。

麻奈との巡り逢いによって、憧れを抱く者、または負けたくないと対抗意識を抱き超えたいと闘志を滾らす者…彼女の様になりたいと願う者。そして、人生の往く軌跡を決めた者や…更には、生命を救われた者……とその影響は計り知れないモノ。彼女を考察していく事で、『IDOLY PRIDE』の物語そのものを考察する事にも繋がっていく。

それ故に自分は長瀬麻奈を、イレギュラーかつスペシャル・ワンのアイコン(象徴)と称したのであります。


 と…まあ、大風呂敷を広げてみましたが、どう転んでいくかが未知数でありきっちりした落し所は見当が付いておりませんが……暖かい目で読んで下されば幸いであります。

 

 

 

 

 『持つ者』として……スペシャル・ワンというアイコン(象徴)


 まあ、散々言ってはいますが…麻奈をスペシャル・ワン』と称しているのは自分だけですwww


訳すると、特別な存在という意味であり特別な才能を有した存在。最強の存在と称しても差し支えない。長瀬麻奈とはそういう存在であるというインプレッションを彼女に抱いております。

何故、麻奈が最強のアイドルと称され、彼女が死してもなお語り継がれて意識させられる絶対的存在までに至ったのか?最大の要因としては、グループが主流となるアイドル界においてソロアイドルとしての名声と地位を勝ち取ったという点。そして……彼女の突然の訃報がその年の最大のニュースとなったというのはアイドル・長瀬麻奈という存在の大きさを証明している様に思えます。

 
 ソロで活躍する事の難しさは、麻奈とほぼ同じ時期にデビューして不遇の刻を過ごす事になってしまった遙子の境遇や、姉と同じくソロ活動を希望していた琴乃を諭す為に牧野がその難しさを語るシーン(3話)、実力はあっても莉央をソロでデビューさせなかったバンプロ時代の三枝さんだったりと、この作品ではとにかくソロアイドルで活躍……即ち、アイドル業界を仕切る(≒支配でもいい)『VENUSプログラム』では勝てないという要素はキャラクターのバックグラウンドだけでなく視聴者にも強烈に印象付けさせた。


 そんな中、世に出て突然変異的に龍の雲を得る如き勢いで活躍する麻奈は、異質=イレギュラーな存在。世間で既に確立されたVENUSプログラムというシステムが打ち出したソロでの活躍は難しいという概念を、麻奈が活躍する事でことごとくぶち壊していく。

まごう事無きホンモノのアイコン(象徴)が現れたというムーブメントが巻き起こす熱狂と興奮、更には唯一無二の特別性を長瀬麻奈の存在そのもので描写し、そして……不慮の事故による早逝による悲劇により伝説の域まで昇華した。


 前述の通り、自分はこれらの要素から長瀬麻奈に対してスペシャル・ワン』もしくは、最強のアイドルというインプレッションを抱いたという事なのであります。

 

 

 

 

 光から陰へ


 1話で牧野はモノローグにて、人気者である麻奈を光と称し、自らをいたって普通で目立たない存在である事から陰であると称して、決して交わる事のない存在であると言う。

何やかんやあった末に……彼は、アイドルの軌跡を駆けようとする麻奈のマネージャーになる事に。アイドルとして輝きを放つ麻奈が光で、彼女を支える彼が陰という構図は、麻奈の死で二人の縁を分つまでは不変の理だったワケです。


 そして……麻奈は幽霊として再び牧野の前に現れる。でも、今度はその立場は逆転している。彼は現実の刻を生きている生者という光。一方の麻奈は死者という陰の存在。勿論、幽霊である麻奈が現実に生きる人間に干渉する事は出来ない。今度は麻奈が奮闘する牧野の背中を叩いて押して支える立場になっていく。

 

 

 牧野くん。もっと自分の直感を信じなさい。

 貴方はこの長瀬麻奈のマネージャーだったんだから。

 

 

 麻奈が全速力で駆け続けられたのは、牧野が背中を押してくれて支えていてくれたから。その事実を最も理解しているのは他ならない麻奈自身でもある。彼にとってこの麻奈の激励は何よりも嬉しかっただろうし、彼女が成仏して去った今の刻においても、彼の魂に深く刻まれた言葉だと思えるのです。

本編(2話以降)での二人のやり取りは、麻奈が在りし日と何ら変わらなく他愛無いやり取りをしていた日常の延長線上だったのでしょう。もしかすると、麻奈はアイドル時代よりも生き生きとしていた様にも見える。その辺りは死を経た事で全てのしがらみから解放されたという事かもしれない。

そして、牧野以外で自分の魂を認識出来る芽衣が現れて友達になってくれた事も、麻奈にとっては本当に嬉しい事だった。普通の少女として刻を過ごすというのは、アイドルとなった麻奈が失ってしまったモノでもあったのだと。


 しがらみから解放された麻奈だけれども、妹の琴乃がアイドルを目指していた事は全く知らなかった。11話で琴乃が言っていた様に妹が心配なら琴乃の所にまずは現れるはずだと。実際、琴乃は麻奈が幽霊となって現世にいる事は牧野から告げられるまで分からなかった。結論として琴乃が言う様に他人=牧野の為という理由が現世に留まっている理由の一つなのだろう。

だからこそ、幽霊だからと言って好き勝手にどこでもふらふらと現れる事は出来なくて、牧野や認識できる芽衣の近辺という限定された範囲にしか出現出来ないのでしょう。


  では、麻奈はどうして隣の席にいる単なるクラスメイトでしかない牧野に、自分のマネージャーになって欲しいと頼んだのか。牧野をマネージャーにしなければスカウトは絶対に承諾しないという条件まで付き付けても。

彼女にもたらされたアイドルへのスカウトはそれこそ長瀬麻奈の将来と人生を懸けた軌跡への扉。牧野を引き込むという事は彼の人生も一緒に巻き込むのと同義であり、麻奈のエゴでしかない。

当然ながら、麻奈も彼にマネージャーになって欲しいという申し出は我儘(エゴ)であるのは承知の上。でも牧野航平という唯一無二の存在じゃなきゃダメだった……それが、成仏の間際で告白した『好き』という言の葉に込めた恋慕の情に結びつくのでしょうし、無心で彼になら自分の背中を預けられる信頼もあった。

立場や状況に流されないニュートラルな感性を保てるという信念……それが牧野にとっての『普通』。麻奈が彼に惚れた部分でもあった。更には、彼の返答(告白)も麻奈にとっては想定通りで納得のいく答えだったのでしょう。

 
 そして、麻奈は光となって天に逝く。陰としての役割を全うし、真の夢を継ぐ者達に願いを託して……

 

 

 

 

 すれ違う想いと絆が繋がる刻


 麻奈が琴乃の前に現れる事が出来なかったのは、琴乃の事を蔑ろにしていたワケではない。
それはアイドルとして多忙だった頃、僅かに空いた時間でも琴乃と関わる時間を作ろうとしていたし、何よりも、自分が歌う楽曲の詞に彼女への深愛の情を綴った事から、琴乃への想いと愛情は変わらないモノとして在り続けた。いつの日か、琴乃にも認めてもらえる日を願って。

そんな妹が、麻奈が亡くなった事が切っ掛けで忌み嫌うアイドルの軌跡を駆ける事になった。
自分が死んだ事で妹が自立の一歩を踏み出せた。更には、果たせなかったトップアイドルの夢を継いでくれたのが何よりも嬉しかったのは間違いのない事だった。


 ただし、幽霊である麻奈の方からは琴乃にアプローチする事は出来ない。むしろ、敢えて距離を置く様な素振りを見せていたし、麻奈を認識できる牧野や芽衣を介していても積極的に関わろうともしなかった。更には麻奈の幽霊がいる事を知ったさくらにも琴乃に存在を明かすなと口止めさせる。

自分がいないという事実があるからこそ琴乃は直向きに頑張って来れたし、麻奈もアイドルになってからの琴乃の成長を見守って来た。本当なら牧野を介していろいろと口出したかっただろうが、そこは彼を信じて妹を託した。彼なら間違った方向へは導かないだろうという無心の信頼があるから。

でも、幽霊とは言え麻奈がいる事が琴乃に分かってしまったら、彼女は真の意味で自立が出来なくなってしまう事を恐れた。琴乃の方も、麻奈との対話に臨んだら何かが跡形なく崩れてしまう危機感を抱いたから対話出来ると聞いても頑なに拒んだと思える。


 でも、今の琴乃は麻奈が生きていた頃の琴乃ではない。悩んで迷いながらも抗って懸命にアイドルの軌跡を駆けて来た。ちゃんと自分の意志と魂があればこそだ。麻奈の方も、現世に留まれる刻が残り僅かである事を痛感していたから『最後の宿題』と評して琴乃と対話する覚悟を決意する。

琴乃は麻奈の幻影の先が見えていた。だから、牧野や芽衣の通訳という形ではない独白という一方的な形で琴乃は麻奈の魂に、麻奈の替わりという立場では叶える事が出来ない琴乃だけの夢を追う事を誓った。独白にしたもう一つの理由は、麻奈がどう思おうがもう関係はない。自分の生き方はこれなんだという決別の証明でもあったのでしょう。
麻奈もそんな琴乃の決意を汲み取ったから誰も介さない事を受け入れたと。

 

 

 それでいいんだよ。

 

 

 例え幽霊であっても麻奈が存在している事を知っても…琴乃はアイドルとしては勿論、一人の人間としてもちゃんと自立=姉離れが出来た。それを証明する誓いの言葉が妹の口から出た事が麻奈は何よりも嬉しかった。だからこその『それでいい』という言葉で、琴乃に触れあえる事は出来ないけれども抱きしめた事にも繋がって、すれ違って拗れてしまった姉妹の刻が再び交わって繋ぎ止める事が叶った。


 妹とすれ違ったままではちゃんと逝く事は出来なかった。どんなカタチであれ、琴乃と関わり合うという要素は麻奈が成仏する為には必要な自然の理だった気がするのです。

 

 

 

 

 感謝と誓い。そして……PRIDEの謳


 本編のキモとなったのが、麻奈が歌詞を紡ぎ『NEXT VENUSグランプリ』の決勝で歌う予定だったが、彼女の死によって歌う事が叶わなかった楽曲『song for you』にまつわる物語。麻奈はこの楽曲を歌う事が出来なかった事が心残りとなって、それが成仏できなかった要因の一つだと考えられる。

麻奈が綴った詞に込めた想いは単純なモノじゃない。応援してくれるファン、巡り逢いの縁や歌える事への感謝、最愛の妹・琴乃への想い、そして……牧野への想い。だからこそ、『私の歌は私だけのモノだから!』と感情を剥き出しにしてさくらがこの楽曲を歌う事を頑なに拒んだのは当たり前の話である。

……にしてもだ。そこまでの重い楽曲を新人枠という限定された中での頂点を決める大会でしかない『NEXT VENUSグランプリ』の決勝で歌う事に彼女は決めていたのか?それは『song for you』の詞の文脈に紐解くポイントが存在している。


 コレ(NEXT VENUSグランプリ)に優勝出来れば、一気にトップアイドルの仲間入りと麻奈自身も言っていたので、彼女もこの大会は一つの通過点として捉えていて『遠く果てしない夢のまだ途中』という詞で歌い出す事からそれは窺えるのではないだろうか。

あくまでも、個人の所感でしかありませんが……この楽曲が持つ一つの顔として、麻奈を取り巻くあらゆる縁への感謝の念が詞に込められている事を挙げている。

アイドルへの想い、目指すもの、応援してくれる人や支えてくれる人への想い。それらを総じて、麻奈は1話で『私はいろいろ背負っている』と言い、自覚していく事で負けられない自分が出来上がっていった。そんな想いに応えて感謝を謳に乗せて伝えたいと願う。独りのアイドルではあるけれど、独りじゃない。独りじゃないから歌えるという信念……というか執念とも言える。

だからこそ『歌』で『感謝』を決勝という晴れのステージにて伝えたかった。言い換えると『歌』でしか彼女は感謝を伝えられない事なのかもしれない。妹の琴乃も不器用だが麻奈も相当不器用…というか素直じゃない……


 そして、琴乃やさくらの『song for you』に関わる項でも書いたが、この楽曲は理想の姿で輝く事を目指す誓いの謳という意味もある。この事も加えて、一つの到達点という場にて歌うのも麻奈にとっては重要な意味であった。



 あなたに あなたに もらった勇気を

 今度は わたしが 返して ゆきたい

 誰より 眩しい ヒカリになること

 誓うよ 強く sing out


―長瀬麻奈(CV:神田沙也加) 『song for you』より引用



 前述の通り、この楽曲で言う『あなた』とは複数の意味を持つ。牧野や琴乃を指す事でもあり、麻奈を繋いでいる縁そのものでもある。

そんな数多の『縁』からもらった勇気を『返礼』の意味を含ませ、未来の刻で麻奈がアイドルとしてもっと輝く事を誓う。それが麻奈に勇気を与えてくれた数多の縁と人に応える事……礼に対して礼を尽くすという麻奈の想いなのだろう。

ただ歌う事が好きで、それを聴いて欲しいではアイドルとして成り立たない。長瀬麻奈の歌が誰かの人生に何らかの影響を及ぼしたのなら、その全ても背負う覚悟で挑まないとアイドルとしての本質を疑われる。そこに全身全霊を懸ける事が長瀬麻奈が貫き通すPRIDEなんだと。


 結果として、麻奈がこの楽曲を歌う事は叶わなかった。
でも、琴乃にどうしてもどんなカタチでも聴いて欲しいという願いから麻奈はステージからではなく琴乃の部屋の前で歌った。たった一度聴いただけだが、麻奈の歌に込めた想いはちゃんと琴乃の魂に刻まれた。

姿を継承(似せた)者である琴乃が、魂(心臓)を継承して生命を繋いだ者であるさくらが、詞の意味や想いを汲み取って謳った事でこの楽曲に血を流せた。

 琴乃やさくらが歌うのは麻奈の本意ではなかった。しかし、この二人がいなかったら、大観衆が見るステージで歌われる事も、『NEXT VENUSグランプリ』優勝を勝ち取ったウイニングステージで歌われる事はなかったのも事実としてある。その事実も、麻奈にとっては『救い』だった様に思えてならない。

 

 

 

 

 真に描いていた夢~決着は“人”の想いで

 
 作中のアイドル達は、アイドルの実力をAIで判定しランキング化したVENUSプログラムというモノに支配されていると言っても過言ではない。それは数値化され集客数、パフォーマンスの質、オーディエンスの反応もそこに含まれ、緻密かつどんな些細な差でも無機質で容赦ないジャッジが下されて、このシステム下では100点が最高であり、完璧に勝者と敗者が分けられる仕組み。

 

 

 私……長瀬麻奈は100点満点なんかじゃ評価出来ないアイドルを目指すの。

 

 

 1話で麻奈が言ったこの言葉に、彼女が本当に叶えたかった夢の真髄があったと思える。


琴乃とさくらが駅前でレッスンと称して歌った時に、多くの人達が二人の歌声に耳を傾けて聴き惚れていた事、さくらが『LizNoir』の莉央と葵のダンスに理屈抜きで魅了されたり、芽衣が怜のダンスに輝きを見出して憧れを抱き、優とすみれが『サニーピース』のパフォーマンスに心揺さぶられたり、莉央が麻奈に真のアイドルが放つ輝きを感じたり……

これらの事象は、何点以上でそういう(魅せられた)状態になったのか?を証明する具体的な数値では計る事の出来ないモノ。これはVENUSプログラムに対してのアンチテーゼとなる描写でもあった。

その極めつけとなったのが、『月のテンペスト』と『サニーピース』による『NEXT VENUSグランプリ』同時優勝という前代未聞の結果だ。このあらゆる要素を数値化する絶対的な理を壊す事こそ、麻奈が真に抱いていた壮大な夢だった様に思えてならない。大袈裟に言い換えると、麻奈は神に真っ向勝負を挑んでいたのかもしれない。『song for you』の詞にある『冷たい世界』はVENUSプログラムの比喩なのだろう。

 麻奈が勝ち続けていく事で、いずれはもう数値では判別できない領域に達する事。それはVENUSプログラムというシステムが存在する意味を失うに等しい。存在するという事はシステムであってもいずれは崩壊する未来が待っているという事。もしかすると…そのシステムには収まりきらない規格外で絶対的な象徴となるアイドルの出現を望むシステムでもあったのかとも思わされる。


 と、まあ…書いておいてアレだが…VENUSプログラムが無くなる論は妄想と暴論に過ぎない。
もし、麻奈があのまま生きていたり、琴乃やさくら達が未来の刻でシステムの概念の意味を失う領域へ上り詰めたとしてもVENUSプログラム自体が無くなるという事は無いのでしょう。

完璧である事がVENUSプログラムにおいて勝つ為の最良の方法とすると、それは人間ではなくアイドルとしての役割を全うする事。でも、麻奈は100点満点では評価出来ない…即ち、計算では計れない人間の持つ限界を超えた人の可能性を信じていて、アイドルではあるけれど人間であるというプライドをどこまでも貫いた麻奈だから抱けた夢なのかもしれない。

 

 

 

 

 と、いう事で…長瀬麻奈編でした。

 

取りあえずは、アニメ版におけるキャラクター独自考察編はこれにてひと段落となります。
手前勝手な妄想&暴論で勢いのまま書き殴っただけでしかない駄文に長々とお付き合いして下さって本当にありがとうございました。


今後は、おそらく『IDOLY PRIDE』楽曲の事について書き殴っていく私的ライナーノーツ的なモノを、今年の7月に開催されるゲームリリース一周年LIVEに向けて書く事になるでしょう。


まあ、自分の遅筆具合で、7月までに全部の楽曲については書ききれないでしょうが……一つでも多くの楽曲の魅力を書ければなんて思っていたりします。

 

 

 

 

そこにあった奇跡。そして、約束の刻へ……ーIDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “奇跡”参戦レポ

 

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 2月19日に、中野サンプラザホールにて開催された

 

LAWSON presents IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “奇跡”夜の部に参戦して来ました。

 

 年明け早々より、例のアイツの変異株が猛威を振るう現状。感染対策の一環としていろいろなイベントが中止になったり延期という断腸の思いで下した決断は少なくない。昨年の丁度この時期に刻が押し戻された様な感覚に陥らされ、IDOLY PRIDE VENUS STAGE 2022 “奇跡”も開催が危ぶまれた。開催直前でキャストやスタッフに感染が確認されたら即中止や延期の決断を下さなくてはならない。

 

そんな開催一週間前頃、公式よりこんなツイートが投稿される。

 

 

 

 LIVEは予定通り開催されるとの報。コレについては当然賛否両論あった。
開催出来る事に安堵した人。かく言う俺もそのうちの一人だ。その一方で極大のリスクを抱えて開催するのは如何なモノか?と危惧され無観客&配信でやれないのかという意見だってあった。

特に、開催地である東京は感染者が異常に多い地でもある。チケットを幸運にもゲット出来て参戦する気だったがこの状況を踏まえて泣く泣く断念された人は少なくないだろう。その疑問や良しとしない声に対して噛みつくつもりは一切ない。

その疑問や断念した決断はあって当然で尊重されるモノで、人それぞれに抱える事情は違って当たり前なのだ。


 まあ、世情についてこれ以上論じるのはここまでにして……結論から言ってしまいますが……本当に素晴らしくいいLIVEだった。ただ、コレは俺個人の所感でしかありません。『IDOLY PRIDE』のLIVEに参戦したのは今回が初めてだったし、そういった補正の様なモノがかかって『いいLIVE』という所感を抱いたというのもある。


でも、この率直に抱いたインプレッションこそがIDOLY PRIDEのLIVEなんだと。


 紛れもなく、『IDOLY PRIDE』がどういう作品であるのか?というモノを存分に魅せ付けて思い知らせてくれた……そういうLIVEであったというのは疑う余地のない真実だった。

それを意識したのか、はたまたキャスト陣の想いと魂によってその領域まで昇華出来た賜物なのか、それは自分が『IDOLY PRIDE』という作品に感じた魅力がそのまま今回のLIVEできっちりと表現されていたのではないでしょうか。

そんな刻と場に参戦出来た“奇跡”の物語と勝手に称したこのLIVEにて、自分が何を観て、何を感じて魂を滾らせ、戦(そよ)いだのか……それを書き殴ったモノを誰かに知っていただき、もしくは共感や興味を抱いてもらえたら嬉しく思います。ちなみに、MCパートはすっ飛ばして書き殴っておりますのでご容赦願います。

 

 

 

 Introduction~開戦までの刻と戦う準備

 

 現地、中野に到着したのは17時過ぎ。着いた頃には傘を差すかどうか迷う程の降り方の雨。
ただ、戦場(会場)である中野サンプラザホールは駅から近いので傘は差さなかったが。

そんなこんなで会場の刻が訪れ入場を済ませる。で、席なんだが……一階の3列目の端側という相撲で言うなら砂かぶり席、プロレス会場ならリングサイド席、サッカーならピッチサイド席……(しつこい)要するにステージが異常に近い席だったのである。

座席運の無さには定評のある俺に、こんな近い席が割り当てられたのは本当に“奇跡”と称するしかなかった。勿論、嬉しかったのはあるけれども……おそらく今年は今後ロクでもない事が色々降りかかってくるんぢゃねぇかと戦々恐々したのもある。実際に、LIVE中こちら側のサイドに寄って来られた場面が多くあったが視覚が逝くので来ないでくれ!!と思ってしまったりwwww


 ステージの構成は、階段が設けられ背面にデカいスクリーンが鎮座。その画面にはVENUS PROGRAMの文字にあのピラミッドが写し出されていた。そして、スピーカーからは『IDOLY PRIDE』を彩り魅力ある数多の楽曲が流れていた。

ここで流れている楽曲をもって、どういったパフォーマンスがこれから観られるのかと期待は更に膨らみ、鳥肌が沸々立っていくのが分かり戦う準備が徐々に整っていく。そして刻が訪れ、会場が暗転しやって来たのである。


待ち焦がれてきた開戦の刻が。

 

 

 

 

 1. IDOLY PRIDE/星見プロダクション


 オープニングナンバーは、作品名を冠しアニメ版のOPテーマとなったこの楽曲。
奇を衒わなくて、激熱過ぎず大人しすぎない王道チックなテイストを持つこの楽曲は初手に持って来る確率は非常に高いだろうなと見立てておりました。前述の通り、作品名をそのまま冠した楽曲でもあるし、アニメから作品を知った人も多いという事や、初めてLIVEというモノに参戦された人にも雰囲気に馴染みやすい様なLIVE全体のアイドリングも位置付けとして持って来たというのもあったのでしょう。

颯爽と登壇した10人のキャスト陣は、アニメ1話の冒頭と最終話のウイニングステージで纏った衣裳で登壇。本作では数多の衣裳が存在するが、この衣裳『The IDOL』って感じが一番出ていていいなと思ったり。


 さて、肝心なのは彼女達10人のパフォーマンス。とは言ったものの……自分はこの10人のパフォーマンスのポテンシャルやクオリティ自体をそもそもよく分かっちゃいない。公式のYouTubeチャンネルにバーチャルLIVEの模様があるが、敢えて何の情報も入れずまっさらな状態でこの10人の歌い踊る姿を観た。

その良し悪しを判断出来るほど、自分は歌とかダンスに精通しているワケでは無いがそれぞれにレベルの差というのはあって、圧倒的で完璧なモノというインプレッションは抱けない拙いモノ。


 だが、ただ上手いだけじゃ魂を揺るがせ、滾らせるまでには至らない。


力強い歌声を響かせ舞い踊ったり、クセのある歌声の子もいるし、ダイナミックに魅せようとしている子だっている。言わば雑多な個の集団が織りなして生まれた爆発力が俺の感性を震わせた。おそらくこの感覚はこの刻でしか観れなかった貴重な瞬間でもある。


だからなのかもしれない。このアクトを観て鳥肌が治まらなかったのって。


 清廉で清々しい楽曲なんだけど、ステージで歌い踊る彼女達10人がそれぞれに魅せ付けたのは紛れもなくアイドルを背負ったPRIDEの証だったと思わされた。

 

 

 

 

 2. Shine Purity〜輝きの純度〜/星見プロダクション


 俺の中では、イントロが聴こえた瞬間に血が滾る楽曲がいくつか存在している。 
『Shine Purity〜輝きの純度〜』はまさしくそういう楽曲で、この10人にとってのアンセムソングであると勝手ながら思うのです。

この楽曲って『IDOLY PRIDE』(楽曲の方)とはまた違った趣きで、ボーカルとダンスの力強さでぶち抜て来る『闘いの謳』。飾りっ気のない叩き上げの真っ直ぐな魂で歌い踊る彼女達の姿に魅せられないワケが無く、既に鳥肌が立ちまくっているのにも関わらず身震いする衝動に駆られる。

まだ『熱』と『血』の滾りが全然足りねぇ!と脳ミソが交感神経に指令を下していたのかもしれない。
オープニングアクトで感じた熱を貯めておいて、この楽曲でフラッシュオーバーさせるかの如く一気にテンションをHIGHにさせた。

数多ある魅力的な本作の楽曲陣で、最もLIVEで聴きたかったのが『Shine Purity〜輝きの純度〜』なんだ。それが叶ったというのも興奮に繋がった要因ではあるが、何よりも、10人のキャストと10人のキャラクター達の叩き上げの想いと魂によってこの楽曲が限界領域を超えたからだろう。

この楽曲の詞には『君』という単語が多く出て来る。『君』をどういう解釈するかでこの楽曲は様々な顔を魅せる。俺がこのアクトで感じられたのは、前述でも触れたキャストとキャラクター達との縁と絆。偶然の巡り逢いじゃない、巡り逢うべきだった縁の結びつきなんだって。

 

 

 君がいて 輝くのさ もう一人じゃないから
 

 ―星見プロダクション 『Shine Purity~輝きの純度~』より引用

 

 

 キャストによって魂と血を流した事で存在するキャラクター。キャラクターという存在のおかげで挑戦出来る機を得たキャスト。双方にとっての闘いの謳=アンセムソングとしても成立している。

実際のところ、ステージに琴乃やさくら達はいない。勿論彼女達の姿も見えやしない。でも、一緒に立っていたんだと感じさせられた。それほどの強さと凄みをステージから滾らせていた。この楽曲に出逢えたのも“奇跡”であり、このLIVEで期待以上のモノを魅せ付けてくれたのもまた“奇跡”だった。

 

 

 

 

 3. Shock out, Dance!!/LizNoir


 登壇の前に『GIRI-GIRI borderless world』のアニメーションMVが流れてからの……この楽曲は意表を突かれた。で……アニメ版におけるボスグループの一角である『LizNoir』の四人がステージインした。LizNoir参戦決定が発表された時から観れるのを楽しみにしていた。

照明が灯された瞬間に分かるんですよ……何かもう雰囲気が一変したのが。もう完全に会場の雰囲気を制圧していた。あっ…ヤベぇのが来たなって本能が囁く。完全体のLizNoirがステージに降臨したんだって。


 LizNoirの中のお姉様方(戸松さん、高垣さん、寿さん、豊崎さん)は星見プロの若人たちにただ花を添える為の『お邪魔しまーす。ちょっくら歌います』的な感覚で来たんじゃない。出て来る芽を根っこごとブチ抜き更地にする気満々で来ているのだと。

この楽曲が強いというのもある。だが、それを引き出し人の魂を揺るがして響かせるのは表現者の持つ力でしか出す事は出来ない。LizNoirの四人はそれをきっちりとやって魅せたのは流石と唸るしかない。公演中は声を出す事はNGだったが観客各々が滾ったボルテージから発せられる熱量がその証明だったと思える。


 実際、彼女達のパフォーマンスのクオリティは星見プロの子達とは段違い。それは必然な事。
最前線で闘って来た場数と経験、それに培ってきたモノが圧倒的に違うのだから。アニメ3話で琴乃が徹底的にきっちりと打ちのめされたあんな顔を俺はしていたし、さくらが理屈抜きで圧倒的な輝きに魅了されてもう感情が忙しすぎた。


あの瞬間の刻は、LizNoirのワンマンライブだったと称しても過言じゃなかった。

 

 

 

 

 4. Darkness sympathizer/LizNoir

 

 な…なにィッ!!!!『Darkness sympathizer』だとッ!!!!

 

 まさかこの楽曲が披露されるとは完全に予想外だった……変態的な楽曲が多く揃っているのも『IDOLY PRIDE』楽曲が持つ魅力でもある。この楽曲はそんな変態楽曲の中でも飛び抜けて振り切った楽曲。更にはボスグループとしてリズノワの強さを遺憾なく発揮されるというモノでもある。

ハードロックテイストと言うかヘビメタテイストに寄ってる激熱なビートは、LIVEで絶対盛り上がれると確信出来たし、そこにリズノワの表現力が融合されたら、触るな危険以外の何物でもないのです……しかも、フル尺の完全バージョンだ。盛り上がらないワケがなく火に油を注ぎこむに等しい…いや、火にニトロを投げ込んだんすよこのお姉様達wwww


 声は出せないがイントロの瞬間から血が滾って『うおぉぉぉッ!!!』って吠えたくなる様な衝動が襲って来る。そうやって向かい合わないとこの楽曲に魂ごと喰われるから激しくヘッドバンキングして何とかリズノワが創造する圧倒的なエモーショナルな暴力に抗う。このアクト前のMCで芸人感丸出しのトークをしていた人達とは思えないwww


 それはさて置いて……このアクトの『要』となっていたと自分が感じたのは、こころ役の豊崎さん。
こころというキャラ自体があざとさをウリにしている傾向が強い。(勿論、それだけのキャラではないが)他の三人は、リズノワのアイデンティティとされる格好良さを全面に出したパフォーマンスを『Shock out, Dance!!』の時と同様に出されていたのに対し、豊崎さんは格好いい要素も出しつつもこころのパーソナリティでもある『あざとさ』を随所に出してた様に見えた。

曲入り前に、豊崎さんが『甘いけれど苦みの効いた…』(メモ取ってないので詳細な言い回しかどうか分からんが)と言ってた言葉の意味が、格好良さ=苦みとあざとさ=甘いに通じていたと。


 ただ格好良くて、高いクオリティのパフォーマンスを魅せただけじゃなかった……
それをベースに据えつつも、甘さという『毒』を効かせ異なるエモーションとインプレッションを抱かせられた。何の文句もつけようがない圧倒的な貫禄で徹底的にきっちりと打ちのめされて唸る事しか出来なかった……

 

 

 

 

 5. 月下儚美/月のテンペスト


 月のテンペストのメンバーを演じている橘美來さん、夏目ここなさん、宮沢小春さん、相川奏多さん、日向もかさんは、同じ事務所(ミュージックレイン)に所属するミューレ3期生と呼ばれる同期の間柄。で……先に出ていたLizNoirのメンバーを演じている『スフィア』の直系の後輩でもある。

LizNoirが創造していって置き去りにした激熱な興奮が冷めやらない会場の雰囲気。その後に出て来るというのは大変なプレッシャーだろうなと。言わばコレは先輩達から月ストの五人に与えた『課題』。このLIVEの主役は貴女達なんだから自分達の色で塗り直してみろ。限界超えて挑んで来いと言うメッセージを投げつけた。

先人(水樹奈々さん)曰くLIVEとは闘いであると。この局面、彼女達五人にとっては絶対に退けない闘いなのだ。そんな彼女達が初手に持って来たのは、月のテンペストのアイコン楽曲(象徴)とされる『月下儚美』。月の冴える様な冷淡さと幻想的な雰囲気を纏い…内に秘める激情を謳う楽曲。


 橘さんの張りのある凛とした歌声が主軸を担い、夏目さんのクセのある独特な歌声、相川さんの斬る様な鋭さのある歌声、日向さんの溌剌さと艶やかさが混在している歌声……そして、俺が今回実際に聴いて一番衝撃を受けたのが宮沢小春さんの歌声だった。

上手く形容出来ないが、音源で聴いた時の宮沢さんのソロパートの歌唱は儚さと澄み切ったモノを感じたが、このLIVEで聴いたのはまるで違った質。会場の最奥まで響かせて通そうと力強く、沸々を湧き上がる感情を解き放った荒ぶったモノ……MCだったり、配信番組とかでの彼女の淑やかな佇まいとは真逆。ゾーンに入った宮沢さんの感情が爆ぜた瞬間、おそらく驚愕したのは俺だけじゃなかったはず。

 勿論、宮沢さんだけが際立っていたワケじゃなかったが、このアクトに関しては彼女が一撃で残したインパクトが強烈過ぎた。勝手ながら、月ストのボーカル部門の2トップを担ってるのは橘さんと相川さんだと思い込んでいたから、そこに割って入った宮沢さんの件は本当に意表を突かれたとしか言えない。


 これが今の月のテンペストの全力全開なんだ!!!!!と。瞬間最大風速を巻き起こした。
橘美來、夏目ここな、宮沢小春、相川奏多、日向もかの咆哮は渦を起こし『嵐』となった。


そんな五人の溢れんばかりの気骨に魂が揺さぶられないワケが無いんだ。

 

 

 

 

 6. Daytime Moon/月のテンペスト


 『月下儚美』とはテイストが変わってポップで爽やかな楽曲。今回のLIVEで初めて披露が叶った。
あくまでも自分の勝手な解釈だけれど…この楽曲は渚が琴乃に対して抱く深愛の想いに溢れた楽曲だと思っている。そういう解釈からこのアクトは夏目さんのパフォーマンスに注目して観てた。

タイプ的に分類すると夏目さんは、どう動いたら自分が良く魅せられるのか?というのを徹底的に探って分析して得られたロジックを基にされる人なのかなと思われる。ステージ上からあらゆる方に視線を飛ばしていたり、その目配せは時に艶っぽさを秘めていたり。モニター観ていた人は夏目さんのカメラアピールの妙に魅了されたし、ステージから近い座席の人も表情や所作に魅了されたと思います。

何と言うか…独自な決め所の嗅覚を持っているんでしょうな。ここでは外せないというポイントできっちりと魅せる。


 そして前述した様に、夏目さんの歌声は独特なクセを持つ。失礼極まり無いのは承知で言ってしまいますが……他のメンバーと比較したら歌唱が上手い方ではない。けど、いい意味で聴覚にまとわり着いて中毒性がある。一度聴いたら頭から離れない程に強烈なモノだ。

スキルはこれからいくらでも叩き込めるし彼女はまだ若い。今の時点で夏目さんが持っていてこのLIVEで魅せてくれたモノは紛れもなく彼女の才能なのだ。


 
 君が君でいるから好きだと言えるんだ


 ―月のテンペスト 『Daytime Moon』より引用



 渚が琴乃に寄り添った様に、夏目さんにも渚はちゃんと寄り添ってくれている。
グループでのアクトだったけれど、渚が夏目さんの手を取って未来への軌跡を一緒に行こうと導いてた様な錯覚に陥ってしまった。

 

 

 

 

 7. 恋と花火/月のテンペスト


 奇を衒わない正統派楽曲揃いな月スト楽曲の中において、唯一の変態楽曲。
自分の鈍感な視覚&聴覚でもこの楽曲の難易度は高いんだろうなと思えてしまうのです。

そんな楽曲をLIVEで観たらどういうインプレッションを抱くのか?これもまた、今回のLIVEにて楽しみにしていた部分でもあったし、勿論月ストの五人がどう魅せてくれるのかも楽しみにしていた。


 ノスタルジックとセンチメンタルなエモーションが共存している独特な世界観。それは夜の闇が指し示している『静』の要素と、花火が爆ぜて輝きをもたらす瞬間と少女の滾る恋慕の情を示す『動』の要素に繋がっていく。時に憂いを秘めた彼女達の表情、爆ぜる様な激情を思わせるダンスの振りと歌声に、打ち上げ花火を模した照明の演出も見事で唸ってしまう。LIVEパフォーマンスでもあるし歌劇を観ている様でもあった。

正直、その感覚はちょっとした混乱でもあるのです。でも、音源だけで捉えただけだとその混乱というのは体験できないモノでもあったのだと。あの刻と場で、彼女達がステージで歌い踊り照明の演出も加わって楽曲の世界観を引き出せたからに他ならない。これはLIVEに参戦しないと味わえない。


 散々言っているが、このLIVEで声を出す事は御法度。だからこそ、ただただ彼女達の歌とダンスに目と耳を傾けて聴く。『聞く』という字ではなく目と耳と心を用いる『聴く』という字が相応しい。盛り上がるだけがLIVEじゃない。聴く者を楽曲の世界に引き込み沁み入らせてただ傾聴させる。こういう魅せ方だって出来る…!って、月ストの五人の意地と可能性を感じさせる素晴らしいアクトだった。

 

 

 

 

 8. The One and Only/月のテンペスト


 月ストのパートのラストソングに持って来たのが、自分らしく自分の道を切り拓いていく意思が込められた月ストの『アンセムであり『生命の謳』と称すこの楽曲。

彼女達のユニット名に冠されている『テンペスト』は、嵐・もしくは暴風雨の意味を持つ。ここまで彼女達は、叩き上げの魂と情熱、爽やかな可憐さ、少女の淡くも激しい恋慕の情を歌とダンスに込めたパフォーマンスを魅せてくれた。さしずめ、それらはエモーショナルという『嵐』でもあった。

嵐が去った後の夜空は一点の曇りもない清廉で澄み切ったモノ。この楽曲を傾聴している刻は、何か魂がしがらみやら煩悩から解脱している様な……その清廉な夜空を翔けている雰囲気に没入させる。歌っている彼女達は、単に音をなぞって歌い上げるのではなく本能のまま言の葉を紡ぐ。淡々と語りかける様に、全ての言の葉、全ての音を余すことなく大事にして、一言ずつ噛みしめる様にして歌い踊る姿。……不純なモノを浄化したかの如く、五人の歌声が本当に純然で綺麗だった。


 それは、観客に伝える為のパフォーマンスに留まらず、彼女達に反芻させる為のモノだったのかもしれない。更には、きっと彼女達の傍らに寄り添ってステージにいた琴乃、渚、沙季、すず、芽衣に向けてのメッセージでもあったのかもしれないし、琴乃達から彼女達へのエールでもあったと。

この楽曲は、どこかキャストとキャラクターがオーバーラップしていく印象が強い。キャラクターソングの枠組みではあるものの、琴乃達を演じるミューレ3期生の軌跡とも多分に重なり合っている様に思えて、双方の境目が曖昧になって繋がりが密接で強固なモノへ昇華した。『唯一無二』の輝きを謳うこの楽曲は、橘美來、夏目ここな、宮沢小春、相川奏多、日向もかにしか謳えない楽曲なんだと圧倒的な説得力で思い知らされた……


 楽曲に秘められた限界領域を突破して、更に成長させるのに必要なのは人の力。
歌というものは嘘や誤魔化しが出来ないモノ。歌う表現者の心情が楽曲にハッキリと反映される。このアクトで創造した世界観に魂を包みこませたのは紛れもなく、橘さん、夏目さん、宮沢さん、相川さん、日向さんが本気の想いを全身全霊懸けて一切出し惜しみせずに挑んだ結果なのだ。

 

 

 

 

 9. SUNNY PEACE HARMONY/サニーピース


 月のテンペストがステージから降りて……菅野真衣さん、結城萌子さん、佐々木奈緒さん、高尾奏音さん、首藤志奈さんが登壇するや否や、沸々と客席がオレンジの光を灯しだす。それは夜が明けて太陽が昇るかの様でもある。彼女達も月スト同様に初手に持って来たのは、アイコン(象徴)と称される楽曲『SUNNY PEACE HARMONY』でもあった。


 それと同時に覚悟したのである。ここからは苦行…いや、拷問の刻の幕開けだとwww


 何度も言うが、このLIVEは声を出す事が御法度。即ち、コール&レスポンスを入れる事が出来ない。この楽曲はその要素がふんだんに盛り込まれている。と、言うかサニピ楽曲はそういう楽曲しか無いwww


(自分の中ではsong for youはカバーという認識なのでノーカウント)


 ただし、声上げられないからという理由だけで、サニピのアクトがつまらなかったなんてアホな事をいうつもりはないし微塵も感じなかった。それだけサニピの五人のパフォーマンスがそう感じさせない程に凄かったから。曲題にある『HARMONY』とは、複数のものが対立することなくまとまっている状態という意味がある。ここで言う複数のものとはキャストとキャラクターの境界を越えたという事。

そう、このステージに立っていたのは、川咲さくらであると同時に菅野真衣であり、一ノ瀬怜であると同時に結城萌子であり、佐伯遙子であると同時に佐々木奈緒であり、白石千紗であると同時に高尾奏音であり、兵藤雫であり首藤志奈だった。感情の乗っけ方やダンスの所作から醸し出す雰囲気が双方の魂の結びつきの強さを感じさせるのだと。さくら達の想いと魂がキャストにポゼッション(憑依)したと称すべきか。

勿論、そんな曖昧なモノだけで彼女達のパフォーマンスが凄かったとは言えない。向こう側の領域にいるさくら達にどれだけ近づく事が出来てどれだけステージの上で再現出来るのか……その為に努力と研鑽があり、何度も繰り返して向こう側への対話を続けて来たのかは想像を絶するモノなのでしょう。それは、サニーピースの五人だけに限った話ではなく月のテンペストやLizNoirも同様。


 LizNoirにしか出来ないボスユニットとしての貫禄と矜持を魅せ付けたパフォーマンス。月のテンペストにしか出来ない叩き上げの直向きな魂を懸けたパフォーマンスがあった。
そして……サニーピースにしか出来ないパフォーマンスがあった。澄み切った青空に燦燦と輝く太陽の如き強く堂々としたパフォーマンスをサニピの子達は魅せ付けたのだ。

 

 

 

 

10. EVERYDAY! SUNNYDAY!/サニーピース


 圧倒的な極光と極上の『HARMONY』で我々の魂を焦がし、この空間はサニーピースによって支配されたといっても過言ではない所でこの楽曲が差し込まれた。


サニーピースにしか謳えない、サニーピースだけの謳であり『アンセムであるこの楽曲が。


 ステージ背面のモニターにはこの楽曲のMVが流され、ステージではキャスト側のサニピが歌い踊る。MVで描写されているのは、さくら、怜、遙子、千紗、雫が抱えている負の感情や翳りを振り払って輝こうとする意志と覚悟が描かれる。サビ入りの前のパートでそれぞれの双眸に色が付いていくのが本当にもう胸熱。そのMV流すのは反則だよアンタ……

そのMVとは対照的に、彼女達は一部の翳りすら見せず明朗快活で溌剌としたパフォーマンスを魅せつける。太陽が刻の経過によって天高く昇っていくかのように、会場内の雰囲気が滾って高調していく。10話で優とすみれがサニピのアクトを観てノリノリになってたあんな感じ。

一人に魂を釘付けされたと思えば、次の瞬間には別の一人に魂を持っていかれて、気が付いたら五人全員が一斉に魂を撃ち抜きに来るというエグさ……(顔面が強過ぎるのよ……)

『SUNNY PEACE HARMONY』のアクトと同様にこのアクトも声出し不可のデバフという鎖で拘束されているのにも関わらずそれだけの熱量の滾りを生み出す。声出しがOKになったらとんでもない域までこの楽曲は化けるんじゃないかと、戦々恐々としたしその刻を楽しみにしている期待も感じた。


 そして、思い知らされたんです。菅野真衣がバケモノだって事を……


それを確信させられたのが『EVERYDAY! SUNNYDAY!』という楽曲なんだ。いやね、この子本当に楽しんで気持ちよく歌ってるんだなってのが凄ぇ伝わって来るんよ。


 胸の鼓動が発する血の滾りをエネルギーにして、魂を声に乗せて遥か遠くに響かせようとばかりに吐き出された歌声……いや、あれは血の流れる絶唱の域へと昇華していた。全身全霊を懸けて、川咲さくらの歌う事が好きだという想いと魂を菅野さんが『顔』で謳って表現していた。



 菅野真衣の魂の絶唱に巡り逢えて聴けたあの刻は、紛れもない“奇跡”の刻だった。

 

 

 

 

 11. Shining Days/サニーピース


 夏の夕立ゲリラ豪雨だと風情ぶち壊しなので……)の後、雨雲が切れて日が差す模様を想起させる様なちょっと落ち着いたテンポの楽曲。先程までとは違って、五人のハーモニーを沁み入るかのように傾聴して浸る。首藤さん曰く、この楽曲の振りのエモーショナル・ポイントは傘を差して舞い踊る所作だという。

『IDOLY PRIDE』楽曲の魅力は、振り幅のデカさと奥行きの深さでエモーショナルの落差を揺さぶって来る所だと思っている。雨がモチーフとなっている楽曲という事もあり、この楽曲もさくら達の不安と葛藤を詞に乗せている。でも、暗い雰囲気にはならず前述の通り雨上がりの晴れ間にかけている様に、さくら達も迷いを振り切って未来への刻に前向きな想いを馳せている。

それを表現するかのように、五人の歌声もしっとりし過ぎないけれども単純に明るく楽しいだけの歌い方にはしてなかった絶妙なバランスは見事と唸るしかなくただ聴き惚れていた。



 見上げた空には たくさんの光 

 輝くよ いつまでも

 手をあわせたなら どこまでも行ける


 ―サニーピース 『Shining Days』より引用



 ステージに立つ彼女達の双眸から見える客席は、空と称すに等しいモノなのかもしれない。
サニピのグループカラーでもあるオレンジの光は、雨雲がゆったりと流れた後で差し込んだ太陽の光。止まない雨はない…風向きが変わるって本気で信じて突き進んださくら達やキャストの想いを汲んで灯した心の光でもあったのだ。


 太陽の光は明るく照らすだけのモノじゃなく、暖かくて安心をもたらしてくれる。
それは、さくら達がいろんな負の要素を乗り越え成し得られた事に繋がっているのだと。

 

 

 

 

 12. 全力!絶対!!カウントダウン!!!/サニーピース


 サニピブロックのラストソングは、当たり前の奇跡と巡り逢いの縁の奇跡に感謝を謳うこの楽曲。
このクライマックスにこの楽曲を選曲したのも激熱だったが、楽曲自体も非常にエモーショナルな衝動を駆り立てていく。イントロから強過ぎるチアフルなアッパーソング。この楽曲もいつか思いっきり声出して盛り上がりたい一曲ですな。

これまで歩んで来たサニピの軌跡をリスナーに思い出させて、どんどんと強く成長していく楽曲なんだと痛感させられた。歌詞と彼女達が一緒になってどんどん成長していくみたいな。

『一人じゃないって こんなにもそう無敵なんだね』という箇所では、彼女達自身やキャラクター達に言い聞かせている様なニュアンスだったと思えるのだ。でも、LIVEで披露していってそのフィールドは解放されて新しい解釈が成り立った……キャラクターとキャストが巡り逢えた奇跡への感謝のみならず、声援と親愛の情を向けてくれるファンへの想いも一緒に囲ってくれた。


一方通行の想いだけではなく、双方向への想いを循環させる事の大切さを説いているのだと。だから、このパートの意味がとんでもなく重くて胸熱なんだ。



 ありがとう

 『みんなと出会えた奇跡に』 『幸せのお裾分け』

 『みんなで、もっと幸せ』

 ありがとう

 『これからもずっと』 『一緒にいようね!』


 ―サニーピース 『全力!絶対!!カウントダウン!!!』より引用



 彼女達の信愛の情に我々は声は出せなくとも共感して魂で応えた。
『ありがとう』と言うのはこっちの方だって。それまでの流れも含んであったのかフレーズがグサグサと突き刺さって来て、楽しいんだけど感激もしてて涙腺が決壊しそうな衝動が襲う。今回、初めて直で聴いてみて、想像以上にLIVE映えして凄ぇ感情揺さぶる楽曲だと思わされた。


言わずもがな…クライマックスをきっちりと締めくくれた極上のアクトだった。

 

 

 

 

 EN1. Fight oh! MIRAI oh!/星見プロダクション


 ライブTシャツを着た10人が颯爽と登場して、アイプラ楽曲随一のピーキーでハイスパートなアッパーソングを歌い踊る。アクトの所感とは離れてしまうが…日向さんがTシャツの袖を肩まで捲ってたのは日向小次郎をオマージュしたのかしらwwww

そんな事はさて置いて……この楽曲を初めて知った時、絶対ライブで盛り上がってブチ上がれる楽曲というファーストインプレッションを抱いた。他のコンテンツの楽曲になってしまうが……『Wake Up, Girls!』の楽曲で『極上スマイル』という楽曲を初めて聴いた時と酷似したインプレッションでもある。


 『Fight oh! MIRAI oh!』と『極上スマイル』との共通項は、ただ盛り上がれるってだけじゃなく、もう骨ごと食らい尽くされるような獰猛な激しさがあって……『ピーキー』と評したのはそこに繋がるのよ。
更には、この先楽曲がLIVEを経て披露が多くなればなるほど進化するだろうって確信を抱いた事も共通している。

曲調の楽しさと激しさが象徴している様に、ステージの10人は所狭しとあっちこっちに多動してわちゃわちゃと歌い踊る。それは視覚の限界を超えて捉えられない程に激しいモノ……眼球二つだけぢゃ認識出来ねぇ!なんて思ったりwww

狭いステージでこれだけはしゃげてブチあがれるんだから、もっとデカい会場でそれこそトロッコとか客席まで使った演出や生バンドで披露されたらとんでもない領域までこの楽曲は絶対化けるんだろうなって。


 この楽曲も、いつの日かどこかのデカい会場で大声で吠えて全身全霊で楽しみ尽くしたい。

 

 

 

 

 EN2. サヨナラから始まる物語/星見プロダクション


 今回のLIVEのALL LASTとして締め括るにこれ以上ない程ふさわしい楽曲。
アニメの最終話での物語を反芻しつつ感慨深い想いで、ただただ10人の謳に聴き惚れて沁み入ってた。声は出せずとも、会場の観客、ステージのキャストやスタッフを含めての全員に響き渡った。純潔でいて本当に澄み切った歌声だった。

サビの『駆けだしたらそこがスタートライン』の所で10人が横一直線に並び、前方を指した後天高く掲げる所作は見事に揃っていて本当に素晴らしかったなって。コレは実際に観たいと思っていた所作だったのでもう感無量だった。


 このアクトで最も印象深かったのが、橘さんが涙を堪えながら(堪えきれてなかったかもしれん…)歌っていた事。まあ…いろいろとプレッシャー抱えてたのもあっただろう。無事に終演まで辿り着いて一気に解放された安堵から来るモノもあったでしょう。もしくは、もっと出来たはずという悔しさもあったかもしれない。彼女の真の想いは俺如きが窺い知るモノじゃない。それは橘さんにしか分からない溢れ出した感情なのだから。その涙はきっと彼女をもっと強くさせる為の最高の燃料でもある。


 でも……彼女が最初の挨拶で言った『絶対に後悔させません』という『誓い』に嘘偽りはなかった。
勿論、他の9人やリズノワの先輩達も同様の想いで全身全霊懸けてきっちり闘えたのだから。

 

 

 

 

 終演の刻、そして未来の刻へ……


 こうして“奇跡”の物語は幕を閉じた。そして…未来への“約束”が一報として届けられた。



 

 ゲームリリース1周年を記念し、各グループのリーダーである長瀬琴乃、川咲さくら、天動瑠依、神崎莉央による特別楽曲の制作が決定した事(昼公演後)と……

 

 


 7/2(土)立川ステージガーデンにてゲームリリース一周年記念ライブ開催決定ッ!!!!

 


 次の単独LIVE開催決定の報。これは本当に嬉しすぎる報じゃないか。
まず、チケット争奪の戦を勝ち取れるかどうかが最重要事項ではあるが……次も参戦したいものだ。


 余韻に浸りながら退場を済ませ外に出ると雨が降りしきっていた。大して降ってなかったし駅まで近かった事もあって傘は差さずに駅へと歩を進める。何と言うか高揚して火照った身体をクールダウンして脳ミソを整えたかった。

まず、終演して思い知らされたのは…とんでもねぇコンテンツに巡り逢えて惹かれた奇跡に戦慄と興奮を覚えた。そして、今年最初のIVE参戦が『IDOLY PRIDE』のLIVEで本当に良かった事。夜の部のみの参戦だったけれども、全身全霊でガッツリと楽しんで燃え滾れた最高のLIVEだった。

『IDOLY PRIDE』はまだまだこんなものじゃない。もっと凄いステージへと駆け上がれる。そんな未来の刻への可能性も感じさせてくれた。この作品に惹かれて追う事を決めた自分の本能は間違っちゃいなかったと……いろんなモノが込み上げて来た最高な奇跡の物語だった。


 ここまで読んで下さった方。本当にありがとうございました。
あの奇跡の刻での物語の余韻は一週間経ってもまだ燻ぶり続けております。それを余す事無く書き殴れたとは思っちゃいませんが……出来得る限りあの刻と場で受け取ったモノを書き残せたとは思います。

この難しくナーバスな状況下で開催を決断された事は本当に感謝しかありません。最高のパフォーマンスを魅せてくれたキャストの皆様と支えたスタッフの皆様、そして参戦して盛り上げたマネージャー(観客)や参戦の叶わなかったマネージャーが飛ばしてくれた想いと魂に最大の感謝と賛辞の念を。

 


 最後に、7月の単独LIVEが無事開催される事を祈りつつ…筆を置かせていただきます。