巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

WUG楽曲 ライナーノーツ #29 Character song series 島田真夢編

 今年最初のWUG記はWUG楽曲ライナーノーツシリーズから始まります。
本年もこれまでと変わらず、いろいろと感じた事を書き殴っていきますのでお付き合いしていただけると幸いであります。


今回書いていくのは、Wake Up,Girls!のセンター・島田真夢のキャラクターソングシリーズ。
島田真夢という人物像と楽曲の曲調、詞とを照らし合せていってこれらの楽曲達を読み解いていきたいと思います。

 

 

 

 ハジマル/島田真夢(CV:吉岡茉祐)

 

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 アップテンポで奇を衒わないド直球な曲調、晴れやかで力強い歌声は聴き心地が良く、島田真夢の清廉な佇まいを彷彿させる様である。
曲題にある『ハジマル』=始まる。曲題もこれまた単純明快で小細工が無く潔い良い。島田真夢にとってのアンセム・ソング、魂が再生される模様を描写した楽曲に相応しい曲題だと思える。

この楽曲で印象深いのは、カラフル、描く、線など絵画的な表現が詞に入っている事だ。
絵という造形表現は視覚へと訴え掛ける表現としては最も強烈なモノ。真夢の心情、魂が再生して未知の領域への期待に胸躍らせる心模様を絵を描く工程になぞらえていっているのが面白い。

失意の底で心を閉ざしていた真夢は目に映る景色に目を背け、あるいは映る景色に色が無い景色だったのかもしれない。真夢が置き去りにしてしまったのは眸に映るあらゆる景色と色なのだろうと。
そして、WUGと出逢った彼女は魂という名のキャンバスに景色を新たに描き色を塗っていく。

 
 さぁ 一歩ずつ行こうよ 人間らしくていいよ

 正直で不器用な手描きの夢がいい

 まっすぐにたどれずに 迷い込んだ曲がり角

 そこで見つけたの 間違っていない未知がはじまる


 ―島田真夢(CV:吉岡茉祐) 『ハジマル』より引用

 

 真夢が新たに描いたのは、新しいモノではなくかつて描いたモノの続きだった。そして、失う事無く在り続けた人間らしく在るという彼女のアイデンティティ。詞にもあるように彼女は本当に一途であり不器用なのだ。
まっすぐ(真っ直ぐ)、夢。と彼女の名を示している字が詞に用いられている事と、未知が新たな道という意味にも掛けているのがまたエモーショナルであり、この楽曲の要となっている箇所だと思えるのである。

 

 

 

 

 走り出したencore/島田真夢(CV:吉岡茉祐)

 

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 前作『ハジマル』の系譜を受け継ぐ正統派なポップミュージック路線を踏襲している。
だが、この楽曲ではまた違った彩りというか趣きを感じさせてくれるのである。

『ハジマル』の項でも述べたが、晴れやかで力強く、未知へ対しての期待感を感じさせる歌声があの楽曲へのインプレッションだ。勿論、この楽曲でもその要素は損なわれていないのだが、歌声の質に違ったインプレッションを抱いている。違ったインプレッションの正体は表に出すのではなく内に秘めさせたモノであるのだと。

初めて聴いた時にまず感じたのが、『ハジマル』と比べると抑えたような叙情的で大人しめなインプレッション…言い方と変えてしまうと物足りないというインプレッション。だが、島田真夢という人物の続劇場版までの立ち振る舞いを見ているとこの楽曲が持つ雰囲気に合致している。真夢=吉岡さんが朗々と歌い上げるのでなく、句を意識して語りかけるような柔和な歌声は真夢の魂を共有していく事で秘めている想いを表現している。

 
 はじまるintro はじける音符が 新しい私を呼ぶから 

 加速をしていく 私のencore


 ―島田真夢(CV:吉岡茉祐) 『走り出したencore』より引用


 曲題とここの節で使われたencoreとは、再演または第二部という意味の言葉。
真夢の第一部はバッドエンドだったのかもしれない。そして、第二部=再起への扉は開いていたがその先を見ようとしていなかった。けど、真夢は変わろうとする想いを持って扉の先へと歩を踏み出した。
魂を再び滾らせて原初の想いを取り戻してグリーンリーヴスへと駆けて行った様に…今度のencoreは止まらない、どこまでも駆けてやろうという真夢の強い意志と決意を感じさせる。

 

 

 

 ユメ、まっすぐ。/島田真夢(CV:吉岡茉祐)

 

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 『ハジマル』で決起してスタートを切り、『走り出したencore』で文字通り走り出して加速して…そして、この楽曲『ユメ、まっすぐ。』で飛び立った。真夢の背に翼が生えて大空へと羽ばたくかの様な躍動感溢れる曲調と吉岡茉祐さんの絶唱は熱く滾るモノもありつつ、優しげな晴れやかさも感じるのである。

ユメ(夢)、まっすぐ(真っ直ぐ)。この楽曲には真夢の名の文字が用いられている。
夢を追う事と道を閉ざされてしまった彼女は心を閉ざし魂の火を消した。あらゆる事から目を背けていたのだ。大袈裟だが死んでしまったと同義なのだと……

だが、魂の奥底で密かに燻っていた原初の本当の想いは消しきってはいなかった。真夢は生きる事=夢を追う事を諦め切れてなかったのだと。

 

 生きている事 それは美しい 生命(いのち)輝くから

 今を歌える 全て託した この私達の物語を抱きしめて

 まっすぐにユメ伝えたい 羽ばたいてどこまでも飛んでゆくよ

 まっすぐに描いた未来の私 みんなに贈る溢れるほどの 幸せ


 ―島田真夢(CV:吉岡茉祐) 『ユメ、まっすぐ。』より引用

 

 真夢は人間らしく在る事を説いてきた。あの白木徹に噛み付いてもだ。
でも、その明確な答えというモノは真夢も分からないのだろうが……人間だからこそ出来る事がある。真夢にとっての生命の輝きとは夢を真っ直ぐ追い続ける事なのだろう。
WUGと出逢ったことによって結果的に真夢は原初の想いを取り戻し、魂に再び火を灯していく。救われたといってもいい。

救ってくれたWUGそのものへの感謝の想いと歌い踊る事が真夢にとっての幸せ=生への実感。大好きな事で輝く真夢を見てもらって幸せになってもらう事が真夢が思い描いて届けたい『真っ直ぐ』『夢』
ここの節々がこの楽曲の要であり、『ハジマル』『走り出したencore』から繋がってきた系譜の締めとなるアンサーソングとしての役割をこの楽曲は担っていたのだと個人的には思えてならないのである。

 

 

 

 以上、Character song series島田真夢編でした。
どの楽曲の解釈も困難なモノですが、今回はとりわけ困難でした……


さて、次回はこのライナーノーツシリーズ30回目。そして、ラストまで残り5回。

(ある楽曲の突然の出現により、1回増えましたwww)


 今回も最後まで読んで下さりありがとうございました。