巡礼者のかく語りき

自由気ままに書き綴る雑記帳

舞台『Wake Up,Girls! 青葉の軌跡』観劇所感。

 6月10日、草月ホールで開催された演劇『Wake Up,Girls! 青葉の軌跡』
千秋楽の夜の部を観劇して来た。

 

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 前作の舞台版の続編となる今作だが、その発表は本当に急なものであり
まさに青天の霹靂といった所だろう。
で……更に、今回の会場は前回よりも収容人数の少ない会場で
チケットの確保が困難なものとなった。
自分は本当に運が良く、千秋楽の夜公演(座席は二階)のチケットが取れた。

前作の舞台『青葉の記憶』は素晴らしい公演だったので
勿論、今回の公演も非常に楽しみにしており
期待感に胸躍らせ会場に向かった事を憶えておる。
そして、観終わってこの感想を書いている今でもその余韻が未だ抜け落ちない。
それほどまでに今作の公演が素晴らしいものだった事の証明だろう。


そんな『青葉の軌跡』の感想をこれから書き綴っていく。

 

 

 まず、開幕してWUGの楽曲『Polaris』が流れる。これは完全にやられた。
この楽曲を歌っている彼女達の現在の視点から、結成して暫く経った後の
彼女達の視点にまで遡る構成となっていた。
しかも『Polaris』を歌っている時間軸についての描写にあえて触れていないのも
これまた面白くて様々な考察が出来てしまえる。
作中での全国ツアー内での事なのか、新章最終回の頃なのか
はたまた、その先の物語での刻での事なのか……

独自考察(妄想)で恐縮ではあるが自分はラストシーンの
丹下さんと松田さんの会話にあった『遂にここまで来た~』と
『まさかこんな風になるなんて思ってなかった』と言う台詞から
まだ描かれていない先の刻の物語なのではないかと思っておる。

そして『青葉の軌跡』劇中でも『Polaris』へと繋がっていく事をほのめかす様な
描写を盛り込み、そしてラストに持ってくる演出は見事と唸るしかなかった。

 

 物語の刻は、『16歳のアガペー』を引っさげ
MACANAで単独ライブを開催する頃~林田藍里の脱退問題までを描いている。
前作の『青葉の記憶』と同様に単なるシナリオの焼き回し的なモノにならずに
また新たな描写と解釈が盛り込まれ再構築された


新訳『Wake Up,Girls!という印象を前回同様に感じられた。


で、今作において自分が観たいと思っていた点をきっちりと押さえていて
尚且つ…また新しい解釈をさせてもらえた構成になっていた。


 今作の物語で核を成しているのは、藍里、佳乃、真夢。
自分の中においては、TVシリーズの主軸として描かれたのは佳乃だと思っている。

彼女自身やWUGのリーダーとして、そして真夢に対して抱いている感情…
好転しない状況に対しての焦燥感と苛立ち、圧倒的な『才』を持つ者(真夢)への
憧憬と妬心の念が混在した複雑な思い。
この辺りを演じるに当たり佳乃と同様、雌伏の刻を過ごして来た青山さんだからこそ
見事に演じきれたのではと自分は感じられた。
特に、藍里に『戻って来い』と言う件で、感情を爆ぜる様な言い方ではなく
感情を搾り出す様な優しげながらも秘めた力強い言い回しには
胸に熱いモノと心に沁みいるモノを存分に感じさせてもらった。


 藍里。彼女は自分に技量や才能が無い事は自覚していた。
それでも必死に、直向きに努力を重ねていた矢先に
早坂さんの言葉が彼女を繋ぎ止めていた心の楔を打ち壊してしまった。
抱いていたコンプレックスや劣等感は更に大きくなり
『私だけ違う』と頑なに心を閉ざしてしまった藍里の心情を
見事に演じられた永野さんに感服の念を抱いた。


 未だWUGの一員になりきれていない真夢……
それを象徴しているのが、レッスン時での微妙な皆との距離感。
でも、藍里が辞める事となった時彼女は一歩踏み込んでいった。
真夢がかつていた場所(I-1)は、闘えない者は容赦無く淘汰される。
藍里を切って存続するか、藍里と共に辞めるかの究極の二択を迫られた時
彼女は迷わずもう一つの選択肢を皆に提案した。


―私は、藍里に居て欲しいと思う。七人揃ってWake Up,Girls!なんじゃないかな


歌い踊るだけの存在だけじゃなくて『人間』である事を許容される居場所。
かつての自分の様な思いを皆にさせたくないという思いと
I-1を脱退後、世間から拒絶され腫れ物に触れるかの様な接し方をされた真夢。
そんな彼女の魂が完全に凍りつかなかったのは
I-1の島田真夢ではなく、島田真夢という人間として藍里がきちんと接してくれた。
その彼女が過去の自分と同様に心を頑なに閉ざしてしまう。

 
 今度は自分が藍里の魂を救う番だと思い真夢は踏み込む決意をした……
真夢の藍里への説得の言葉は穏やかながらも情が溢れんばかりの
魂の言葉だった様に自分は感じました。
改めて書くまでもないが、吉岡さんの演技は素晴らしいものでした。


この場面は本当に涙腺がヤバい事になり、目頭が熱くなるのを抑え切れなかった…

 

 前作でも観られたがI-1サイドの描写が観られたのも嬉しいところだ。
TVシリーズでは登場しなかった高科里佳の登場が良いアクセントになっていた。

里佳に言った志保が抱く真夢への感情『真夢は一番勝ちたい相手』
前作にて、辞める真夢に対し『勝ち逃げは許さない』と志保は言った。
志保自身きちんと闘って勝ったわけではない事を痛感してしまっている。
TVシリーズでは憎悪に近い感じの対抗心を出していた感があったが
里佳や麻衣とのやり取りの中では、何か清々しさの様な雰囲気を感じられた。


 そして、近藤麻衣の心情に切り込んだ描写が観られたのも良かった所だ。
I-1のキャプテンという立場としての言葉ではなく個人として抱いていた
真夢への想いと彼女を止める事の出来なかった後悔の念……
何も無かった頃から共に軌跡を駆けて来た同胞でありライバル。
簡単に割り切れる想いじゃないが、今の真夢の幸せを願う事……
彼女の複雑な心情に踏み込んだ描写は素晴らしいと想った。

 

 

 以下、箇条書き形式となって申し訳無いが他に感じた事をざっくりと……

 

 

 前作からの続投となった
丹下社長役の田中良子さんと松田さん役の一内侑さんの演技は
前作同様に安定感抜群でアドリブで笑わせてもらったり
またシリアスに魅せる所はきっちりと魅せてもらえたりと本当に素晴らしかった。
続編の舞台があるのなら…
またお二方に丹下社長と松田さんを演じていただきたい。


 I-1Clubは、前作同様ボスユニットとしての存在感を見事に魅せてくれた。
特に印象深かったのは高科里佳を演じた松田彩希さん。
ライブパートでのダンスのキレの凄まじさに圧倒されて魅入ってしまった……
勿論、他のI-1キャスト陣も素晴らしかったのは記載するまでもない。


 まさかTwinkleが歌う『ゆき模様 恋のもよう』が聴けるとは思わんかった。
WUGとI-1に引けを取らない素晴らしいパフォーマンスを魅せてもらえた。
これは本当にまた見たいのでこの公演の円盤化を切に願う!!!!!!


 早坂さんを演じた福山聖二さん。
台詞の言い回しや所作はアニメの早坂さんそのままで
本当に良い味を出していましたね。

 

 裏方で支えてくれたスタッフ陣と共に、心よりの敬意と感謝の念。
そして…素晴らしく心に刻み込まれた最高の公演を魅せていただき
本当にありがとうございました!!!!!!!

 

 

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